複雑・ファジー小説
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- たか☆たか★パニック(松浦鷹史くん・武藤なみこちゃんCV)
- 日時: 2013/04/11 17:11
- 名前: ゆかむらさき (ID: E/MH/oGD)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
※たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜を読んでくださる読者様へ
この物語はコメディーよりの恋愛物語なのですが 性的に刺激的な文章が処々含まれております。
12歳以下、または苦手な方はご遠慮頂く事をお勧めいたします。
☆あらすじ★
冴えない女子中学生が体験するラブ・パラダイス。舞台はなんとお母さんに無理やり通わせられる事となってしまった“塾”である。
『あの子が欲しい!』彼女を巡り、2人の男“たか”が火花を散らす!
視点変更、裏ストーリー、凝ったキャラクター紹介などを織り交ぜた、そして“塾”を舞台にしてしまったニュータイプな恋愛ストーリーです!
読者の方を飽きさせない自信はあります。
楽しんで頂けると嬉しいです。
☆ドキドキ塾日記(目次)★
>>1 宣伝文(秋原かざや様・作)
>>2 はじめに『情けなさすぎる主人公』
>>3 イメージソング
塾1日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>4-5 『塾になんかに行きたくない!』
>>6-7 『いざ!出陣!』
>>8 『夢にオチそう』
塾1日目(主人公・松浦鷹史くん)
>>9-10 『忍び寄る疫病神』
>>11-12 『もの好き男の宣戦布告!?』
塾2日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>14-15 『初めての恋、そして初めての……』
>>16-17 『王子様の暴走』
>>18-19 『狙われちゃったくちびる』
>>20-21 『なんてったって……バージン』
塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>22-23 『キライ同士』
>>24 『怪し過ぎ! 塾3階の部屋の謎』
>>25-26 『一線越えのエスケープ』
>>28 『美し過ぎるライバル』
塾3日目(主人公・高樹純平くん)
>>29 『女泣かせの色男』
>>30-31 『恋に障害はつきもの!?』
>>32-34 『歪んだ正義』
塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>35-37 『ピンチ! IN THE BUS』
>>41 『日曜日のあたしは誰のもの?』
>>42-44 キャラクター紹介
>>45-47 >>48 キャラクターイラスト(ゆかむらさき・作)
>>49 >>50 キャラクターイラスト(ステ虎さん・作)
>>102 キャラクターイラスト(秋原かざや様・作)
日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
>>51 『祝・ドキドキ初デート』
>>52 『遅刻した罰は……みんなの見てる前で……』
>>53 『少女漫画風ロマンチック』
>>54-55 『ギャグ漫画風(?)ロマンチック』
>>56 『ポケットの中に隠された愛情と……欲望』
>>59 >>61-65 >>68-69 たか☆たか★“裏ストーリー”第1章(主人公・松浦鷹史くん)
日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
>>70 『残され者の足掻き(あがき)』
日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
>>74-78 『王子様のお宅訪問レポート』
日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
>>79-80 『拳銃(胸)に込めたままの弾(想い)』
>>81 『本当はずっと……』
日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
>>82-83 『闇の中の侍』
>>84-85 『こんな娘でごめんなさい』
>>86 『バスタオルで守り抜け!!』
>>87-89 『裸の一本勝負』
>>90-91 『繋がった真実』
>>92-96 インタビュー(松浦鷹史くん・高樹純平くん・武藤なみこちゃん・蒲池五郎先生・黒岩大作先輩)
>>97 宣伝文(日向様・作)
>>98 キャラクター紹介(モンブラン様・作)
>>99 たか☆たか★“裏ストーリー”(主人公・高樹純平くん)
日曜日(主人公・高樹純平くん)
>>106 『もう誰にも渡さない』
>>114 たか☆たか★(松浦鷹史くんCV・トレモロ様)
>>115 たか☆たか★(武藤なみこちゃんCV・月読愛様)
- ピンチ! IN THE BUS ( No.35 )
- 日時: 2012/11/11 10:00
- 名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
《ここから再び武藤なみこちゃんが主人公になります》
キーンコーン……。
終了のベルが鳴り、今日の講習は終わった。
「ごめん、なみこちゃん。僕もう帰るね。帰りにちょっと寄りたいトコがあるから。日曜日……ちゃんときてね」
高樹くんは無造作にジャケットを羽織りながらカバンを持ってソワソワとした様子……なんだか急いで帰ろうとしている。
(寄りたいとこ……? どこなのかな、こんな夜遅くに……)
聞きたいけれど聞けない……。
だって……恋人じゃないのに、なんか恋人気取りみたいで……。いちいち『どこ行く?』とか、『何する?』とか詮索すると鬱陶しがられるよ……ね。多分……。
由季ちゃんみたいに顔も性格も可愛かったのならば、ためらいなくできると思うけれど、あたしはこんなだから……。
そう……あたしみたいのはこうやって離れた所で見ているだけで充ぶ————
「ちょっと、ちょおっと、なーに高樹くん、もう帰っちゃうのー? なんでー?」
由季ちゃんが小走りで高樹くんに近付いてくる。
嫌な子だ、あたし……。今、彼女に『近づかないで!』と反射的に思ってしまった。
高樹くんにさっき『心配しないで』って言われたばかりなのに……。
高樹くんの腕を掴み、くちびるをとんがらせている由季ちゃん。なんだか自分はここ……高樹くんの傍には居てはいけない子なのじゃないかと感じ、あたしは1歩後ずさった。
『羨ましいなぁ……』
あたしはこんな風に他人……自分よりも“できた”人に対して生まれてから何度も思った事がある。でも……その“羨ましい”の気持ちとは違うんだ。どう言えばいいんだろう……“羨ましい”に“憎い”が混じった様な————由季ちゃんは健くんの彼女なんだし、いい子なのに————
「え!? あそこ9時に閉まるよ! はやく行きなよ!」
彼女は高樹くんの背中をぺチンと叩いた。
(高樹くんに触らないで——!!)
「……だからもう行くって」
————あたしの胸が……ズキンと痛む。
漫画では読んだ事があるけど、コレが“妬きもち”ってモノなのだろうか……。
「たっ……高樹、くんっ……」
小さな声だったのに、彼はあたしの声に反応して振り向いてくれた。
「……気をつけて、ね」
どうして由季ちゃんに対してこんなに意地になっているのか自分でもよく分からない。
(由季ちゃんは健くんの彼女……)
そうさっきから自分に何度も言い聞かせている。
高樹くんはあたしに笑顔とウインクを残して教室を出ていった。
「じゃ、なみこちゃん、下まで一緒に行こっかぁ」
今まで気が付かなかったけれど、よく見れば腰のあたりまであった長いツヤツヤの黒髪をかき上げ、ほっぺに“えくぼ”を付けた笑顔で由季ちゃんがあたしに手を差しのべている。
考えてみたら、あたしは高樹くんと知り合ってまだ三日だけ。しかも塾の時間の中でだけでしか一緒に過ごしていない。
彼に少し触れられるだけでドキドキする。見られるだけでさえも……。
いつか……もっといっぱい一緒に過ごしていって、彼の事を知っていけたら————由季ちゃんの様になれるのかな……。
あたしは彼女の手を掴もうとして止めた。
「きっと健くんが表で待ってるよ。はやく行ってあげなくちゃ。————うん、大丈夫だよ、あたしは」
無鉄砲に飛び出た精いっぱいの……あまりにも惨めな————強がり。
(ごめんね、由季ちゃん……)
「あんっ、もうっ。そんな照れなくってもいーのにサ! それじゃあ、またネ、なみこちゃんっ。
——ヘンな男の子に捕まるんじゃないよッ!」
「えへへ…… (あたしにかぎって絶対ない……)」
由季ちゃんはドアから出ていくまで、あたしに何度も手を振ってくれた。
そんな彼女に手を振り返しながら感じた。なんとなく由季ちゃんが……なんだかあたしのお姉ちゃんみたいなのだと。——そうだ! “お姉ちゃん”って思うといいかもしれない。あたしの頭の中で由季ちゃんを“自分のお姉ちゃん”だと設定してみたら少し心が落ち着いた様な気がしてきた。
今度の塾の日にまた彼女に会った時はあたしの方からから声を掛けてみよう————
塾のカバンに筆箱を入れようとして手を止め、フタを開けた。中に入っているげろげろげろっぴの消しゴムを取り出してそれを見つめながら、さっき由季ちゃんを送る時に言ったセリフを、もう1度心の中で唱えた。
『大丈夫だよ、あたしは』
———と。
学校と塾でやりたくない勉強をして……いや、勉強だけではない。塾に入るまでのあたしにはとても考えられない事が色々と起こり過ぎて、なんだか今日もとても疲れてしまった。
(早く家に帰って寝ちゃいたい……)
本当に……寝て、朝起きてみたら夢でした。……みたいな、夢の様な出来事だらけで————
あたしは高樹くんにキスをされた事“だけ”を考えながら階段を降りた。
「?」
階段を降りたところで、ふと強い視線を感じ、振り返った。
(……気のせいかな)
確か……さっき講習の休み時間に突然雷が鳴り大雨が降ったせいで、みんな急いで帰っていったからなのか、いつもガヤガヤと賑わっている塾の入り口が今日はガランとしている。
駐車場に出てバスに向かって歩き、あたしはもう一度振り返った。
どうしても誰かに見られている気がするのに、やっぱり誰も居ない。
「!」
夜のとばりの中、あたしが歩き出すと同時にどこからかかすかに聞こえてくる足音。そして重みのあるドロドロとした気配……。人に恨みを買われる様な事なんてした覚えは全く無いけれど、間違いない。誰かがあたしの後をつけてきている。
しかし後ろを振り返っても誰も居ない……。
この塾は、ほとんどの生徒が自転車で来ている。その他の生徒は歩いて来ている。
バスの駐車場に向かってくる人は蒲池先生と松浦くん、その二人しかいないはず————
(こ、こわいよぉ……。やっぱり由季ちゃんと一緒に来ればよかった————)
「——ッ!」
途中で転びそうになりながらも無我夢中で駆け足でバスに乗り込んだあたしはスライド開きのドアを思いっきり両手で閉め、席に座り……一息ついた。
先生も松浦くんもまだ来ていない。
(おばけだったらどうしよう……。1人じゃ、こわいよ……。
どうして居ないの、先生……。松浦くんでもいいから居てほしい……)
あたしは耳を塞いで目もつむり……口もつむった。
————ガチャン。ガラガラガラガラ……。
「!」
誰かがバスの中に入ってきた気配を感じた。
運転席のドアからじゃないから先生ではない……って事は————
「……松浦くん?」
あたしは目を開けてゆっくり顔を上げ、バスの中に入ってきた人の顔を見た。
- ピンチ! IN THE BUS ( No.36 )
- 日時: 2012/11/18 15:51
- 名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「————高樹の女だろ、おまえ……」
まるで“ガリバー旅行記”に登場する“ガリバー”の様な体型をした大きな男の人が、眉間にシワを寄せてあたしの方に近付いてくる。
「だ……だれです、か?」
彼はあたしが座っている座席の背もたれと、前の座席の背もたれの裏側に両手を付けた。ソバージュのロングヘアを真ん中から半分に分けた前髪の間から、眉毛の無い細い糸の様な目を不気味にギラリと覗かせて、あたしの顔を睨み付けてくるこの人……。全身に力を込めて押しても、びくともしない岩壁の様に“通せんぼ”をされていて、あたしはバスから逃げ出したくても逃げる事ができない。
「釜斗々中学……3年の、黒岩大作……」
(————高樹くんと同じ学校の人だ!)
たしか、健くんと聖夜くん……だったっけ。あの個性的な彼等以上に高樹くんのお友達には結び付かない雰囲気の漂うこの人。
直感だけれど何かイヤなことが絶対に起こりそうな予感がする。しかもこんな……塾から離れた駐車場に止めてある、他には誰も居ないバスの中、という“密室”で————
「おい、女……。おまえらは今……一体どんな関係、なんだ?」
「……え?」
「おまえと高樹が……何をした関係、かと聞いている……」
「…………」
「言え」
「……いやっ!」
心の中だけにそっと残しておきたい“あたしと高樹くんの秘密の(キスをした)関係”だという事を、あたしの前に突然現れエラそうな態度で威圧してくる(……あれ? 名前なんだったっけ)……ガリバーなんかに教えたくない。あたしがほっぺたを膨らませて顔を横に逸らすと、彼は大きな手であたしのほっぺたをつねって強引に引っ張り寄せてきた。
ガリバーの“にきび”だらけのゴテゴテの顔がいやらしく微笑んでいる————
「高樹をあれほどまで夢中にさせる女か。————ふん、おもしろいな……一度、お相手願おうか……」
“お相手”、って……このガリバーは、一体あたしに何するつもり————
「おう、おう、こんなに赤ーくなっちゃって可哀そうに。……ごめんな。痛かっただろ……?」
自分でやったくせに何を言っているのかガリバーは、釣り上がっていた目尻を急に下げ、ゴツゴツした手であたしのほっぺたを撫でながら何度も謝ってくる。
まあ、よく分からないけれど、こんなに謝ってくれている事だし、このまますぐにこのバスから出て行ってくれるのならば仕方ない。さっきの事は許してあげようか……と思ったら、
「おまえも謝れ」
今度はいきなりあたしの髪を鷲掴みにして命令してきた。
(なっ! なんであたしがっ——!)
————納得いかない。いくらこの人が“あたしのことを好き”だからとはいっても、一方的にこんなメラメラと嫉妬に満ちた攻撃的な愛情をぶつけてくるなんて酷過ぎる。第一、この人とあたしはコイビト同士でもなんでもないんだから————!
あたしは震えながら歯を食い縛り、ガリバーを睨んだ。
会ったばかりでどんな人かはよく分からないけれど彼は————かなりアブナイ人だという事だけは分かった。
「……蒲池いねぇな」
「!」
松浦くんがバスの中に入ってきた。しかし、あたしがこんなに怖い思いをしているのに、チラッと一瞬だけあたし達の方を見て“俺は何も見なかった”という様に素通りし、一番後ろの席に座ってしまった。
大男ガリバーに髪を掴まれて、睨みをきかせた表情(かお)で上から思いっ切り見下ろされているこの状態を、頭のいい松浦くんならなおさらあたしの身に何が起こっているのか一目見ただけで察してくれるはず。いくら冷酷な彼だとはいえ、知っている女の子がこんなにピンチな状況に陥っているのだから、もしかしたら助けてくれるんじゃないか、と僅かな期待を持ったあたしがバカだった。
やっぱり松浦くんなんて、当てにならない。
(松浦くんなんかに期待なんてするもんか……。もういい……ひとりで頑張るもん……)
「さっ、触らないでよ、もうっ! あ、あたし、あなたのことなんて大っキライッ!! ……なんだからねっ!」
(こ、これでどうだ……)
いつかテレビで“犯罪ドキュメント番組”で見た事がある。ストーカー犯罪に巻き込まれた女の人が曇りガラス越しで音声を変えた声で語っていた。こういうガリバーの様な自分勝手なタイプの人には特に……今のうちに、できるだけ早く勇気を出してハッキリ、バッサリと言っておかないと、後にヒドい目に遭う、と。内心ビクビクしながらあたしはタンカを切った。
「あ? 何言ってんだ? この女……」
あたしの髪から手を離し、ガリバーは目を丸くして驚いている。
手強いと思っていた彼が……信じられないけれど、これは予想以上に効き目があったようだ。とにかく勇気を出して言ってみて良かっ————
「ぶっ! くくくっ……あはははは……!」
————しかし、何故か後ろの席で松浦くんが大爆笑をしている。
(え? なに? ……どうしたの?)
あたしの頭の中が“?”でいっぱいになった。
『大嫌い』と言った言葉がよっぽど応えたのか、さっきよりも格段にレベルを上げて進化した怪獣・ガリバーは再びあたしを睨んできた。
「ビッ、ビリヤードッ!! あたしと高樹くんは一緒にビリヤードをした関係ッ! ただそれだけ!! ……なのッ!」
「はぁっ……
はぁっ……
はぁ……
ごくん」
(よし、言った……。
————ちゃんと教えたんだから、もう帰ってよね、ガリバーめ……)
あたしよりも一年先輩で、しかもこんな大きな図体をした、読めない……っていうより読みたくもないアブナイ思考回路の男の人と対等で向かい合うなんてとても敵わない。悔しいけれど、ここは下手に出るしかないと思った。
「……フーン。ビリヤードとは、ずいぶんと遠回しに言ったもんだな、女……」
これでもういい加減諦めて帰ってくれるかと思ったけれど————甘かった。ガリバーは隣の席にドカッと座り、再び眉間にシワを寄せながらあたしの腕を凄い力で掴んできた。
車体と一緒にあたしの身体も恐怖で揺れる————
「——痛いッ!! いや……やめて……」
嫌がれば嫌がるほど喜ばせてしまうのか。必死で抵抗するあたしの声を聞きながら笑顔で頷いているガリバー。
あたしはシートの上から顔を出し、松浦くんに向けて視線を送った。
(おねがい……! たすけて松浦くん——!)
松浦くんは携帯電話をいじっていて、全くあたしを見てくれない。
「棒で……玉を突いて……穴に入れた関係、か。こんなガキみたいな顔してるくせに……たいしたもんだな————よくヤった」
ガリバーは掴んでいた腕を離し肩に回して、今度はあたしの履いているショートパンツのボタンを外した。
(ひぃっ——!)
あたしはもう一度シートの上から顔を出して松浦くんを見た。
松浦くんはまだ携帯電話をいじっている。
「残念だな。あの男はおまえを助けない……」
ガリバーはいやらしくニヤニヤしながらショートパンツのファスナーを下げた。
あたしの顔を近距離で覗き込んでくる彼の荒々しい鼻息が顔に掛かって気持ち悪い……。松浦くんの冷たいミントの息よりも更にもっと————
「——おい待て。このゴリラブッチョ……」
「!」
頭の上から降り注ぐミントの香り————
シートの上から松浦くんが見下ろしている。
「ハン! なに勘違いしちゃってんの? おまえの言う、こいつと“ビリヤードの関係”の相手っつーのは……俺なんだぜ。
————そーだよなぁ、なみこ」
- ピンチ! IN THE BUS ( No.37 )
- 日時: 2012/11/18 15:55
- 名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「どけ」
こんなにも大きくて恐いガリバーが相手なのに、なるほど……“態度”だけは大きいからなのだろう。物怖じをした顔なんてこれっぽっちもしないで松浦くんはあっさりと彼の太い腕を掴んだ。
(あっ……もっとお手柔らかにしておいた方が……)
あたしの心の中の助言に全く気付きもしないで、彼はそのまま強引にガリバーを引っ張り出し、あたしの隣に座ってきた。
この先ガリバーがどう出てくるのかは気になるけれど、“ムリヤリ襲われる”事はなんとかまぬがれた様で、とにかくこれで安心した……はずなのに、ガリバーにすごまれていた時よりも、あたしは今ドキドキしている。何故だろう……このドキドキする気持ちは高樹くんと一緒にいる時の気持ちに似ている。きっとこれは今まであたしに意地悪な所しか見せた事の無かった彼に助けてもらったからに違いない。
隣のシートで松浦くんはあたしの顔をジッと見つめている。
あたしの心臓がさらにドキドキしだした。だって……“あの”松浦くんが不思議とかっこよく見えてしまうのだから————
「……なみこ、おいで」
(おっ、おいで?)
松浦くんはいきなりあたしの肩に腕を回し、なんと抱き寄せてきた。そしてあたしの耳元に口を近付け囁いた。
「不自然に振る舞うな。俺に合わせろ……」
(え……?)
「おい、おまえら2人……本当に愛し合ってんのか? あ?」
ガリバーがあたしたちに疑いの目を向けている。そういえば、さっきの松浦くんの言ってた“作り話”によると、あたし達は“深く愛し合っている関係”になっている事に気が付いた。
「——ホラみろ」
松浦くんは再び耳元で囁き、あたしの足のつま先をかかとで踏ん付けてきた。
「俺の目をまっすぐ見ろ————うっとりした顔でだ」
(げっ! ちょっと待ってよ、不自然に振る舞うな、とか、うっとり……って!! でっ、できるわけないでしょ、松浦くんなんかに————!)
あたふたしていたら再び彼につま先を踏ん付けられた。
(ああ、もうっ! 松浦くんが高樹くんだったらいいのに……。————あっ、そうだ!!)
あたしは頑張ってムリヤリ松浦くんを高樹くんだと思い込んだ。————しかしダメだった。やっぱりこれは少し……どころじゃない、かなりムリがある。
ガリバーは腕を組み、不気味に八重歯を光らせてあたしたちを見下ろしている。
とにかくあたしは松浦くんに言われる通りに頑張ってみることにした。……そうするしかない。
とりあえず……まずは松浦くんの顔をうっとり(?)した顔で見た。しかし、その顔がどうやら不自然だったらしく松浦くんは「プッ」と吹き出した。
————果たして、こんなやり方でガリバーを騙すことができるのだろうか……。
心配だったけれど、やはり頭のきれる彼はあたしの頭を撫でながら話し始めた。
「なみこ……。何おまえ、そんなに恥ずかしがってんだよ……ん? いつもはもっと求めてくるくせに……」
「そ、そうだね……」(……いらない)
そして松浦くんは今度はあたしの耳に、「フーッ」とゆっくり息を吹きかけてきた。ミントの香りの気持ちの悪い風が全身を駆け巡り凍りつきそうになったけれど、目をつむって堪えた。
「……いいぜ、その顔」
彼は囁き、再び話し出した。
この人は本当にわたしを助ける気があるのだろうか……。なんだかいつもの様にからかわれているだけの様な気がしてきた。次はどう出てくるのか……今はガリバーに対してではなく松浦くんに対して思っている。
「車の中で“こーゆーコト”するのって……燃えるな……」
「も……もえるね……」(……バスガス爆発)
松浦くんはあたしのあごに軽く指を添え、くちびるを親指で撫でてきた。
あたしは思った。もしかしたらこの人は自分にうっとりしているんじゃないか、と。
「なぁ……俺のこと“好き”って言ってよ……」
「は? う、うん……。おれのこと……すき……(——げ!しまった!!)」
隠れナルシストな松浦くんを気持ち悪いと思っていたら“ドラマ・バスで愛し合う2人”の台本のセリフを思いっ切り間違えてしまった。
せっかくここまでうまく(?)いっていたのに、全てオジャンに……。
(————ごめんなさい!!)
あたしが目をつむったその瞬間————
「 !! 」
松浦くんに……キスをされた。————またしても予告無しで。
けれどもこれは“あたしを助けるため”の演技。“ドラマ・バスで愛し合う2人”の演技。
————演技だから!!
そう自分に言い聞かせ、あたしは目をつむったまま彼の背中に手を回した。
「可愛い……。可愛いよ、なみこ……」
松浦くんはあたしの髪を優しく撫で、強く抱きしめた。
あたしは鳥肌を立たせながら……我慢した。
(……ガリバーは?)
松浦くんの背中に回した手を離し、あたしは彼の胸を押して体を離した。ぐるりとバスの中を見回してみたけれど、あたしが松浦くんとキスをした姿を見て、やっと“あたしをコイビトにする事”を諦めたのだろうか、ガリバーの姿は見えなかった。
「あの人、居なくなったよ。————良かった。
えっと……ありがとう……松浦くん」
松浦くんは何も言わずにあたしを見ている。きっと今、彼は“さっきの事は何も無かった”とか思っているのかもしれないけれど、あたしは違う————
いくら演技だとはいえ、松浦くんがあんなに甘いセリフを(しかもあたしに)言うなんて正直今でも信じられない。
「可愛いよ、なみこ……」
キスをされたくちびるの感触と一緒に彼の言葉が耳に残って離れない。
「————そんなに俺に見せたいのか……」
「?」
松浦くんはあたしのショートパンツに視線を落として言った。
「……赤のギンガムチェック」
「!」(うひゃあ!!)
あたしは慌ててファスナーを上げた。
- Re: たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜(恋愛バトル!) ( No.38 )
- 日時: 2012/11/12 07:27
- 名前: ゆかむらさき (ID: ocKOq3Od)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
何度も新スレッドを立てても、何故か理由は解りませんが、修正・編集不能になってしまいます……。
再びスレッドを立てようと思います。
パスワード不一致なので、消去もできず、紛らわしくてすみません。
管理人さんにも毎度の事で、迷惑ばっかりかけているし……。
お気に入り登録させて頂いてる人には、本当に手間を掛けさせてしまって申し訳ないです。
これからも応援よろしくお願いします
- Re: たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜(恋愛バトル!) ( No.39 )
- 日時: 2012/11/14 20:06
- 名前: 悠 (ID: hmaUISmg)
応援、し続けます!
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