複雑・ファジー小説
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- アビスの流れ星
- 日時: 2013/05/22 20:35
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: 76WtbC5A)
- 参照: http://ameblo.jp/gureryu/
名前変えました。「緑川遺(ミドリカワユイ)」といいます。
これからもよろしくお願いします。
ちゃんと丁寧に最後まで完結させたいなと思います。
(登場人物)>>3
序章「記憶喪失の少女の追憶」
>>1
第一章「生きるという責任の在り処」
>>2 >>6 >>9 >>12 >>14 >>15 >>16 >>17
行間
>>22 >>25
第二章「生きる理由」
>>29 >>32 >>33 >>34 >>35 >>38 >>39 >>40
行間二
>>41
第三章「人は自分を騙し通すことは出来るか?」
>>44 >>47 >>48 >>49 >>51 >>52 >>53 >>56 >>57
最終章「シューティングスター・オブ・アビス」
>>58 >>59 >>60 >>61 >>63 >>64 >>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71(New!!)
行間三
>>72
登場人物 2
>>73(New!!)
- Re: アビスの流れ星 ( No.34 )
- 日時: 2013/01/10 17:57
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: u83gKCXU)
5
「あちちっ」
コーヒー缶が熱くて、思わず取り落としそうになる。
サンドイッチとコーヒー缶を両手に抱えて、近くの適当なベンチに腰掛ける。今日はツナサンドと卵サンドだ。幸い、誰も座っていなかった。昼の間、支部に居るライブラ隊員のほとんどは食堂に向かうので人気は少ない。
だけど私は、昼食は一人で摂ることにしていた。最近はアイカワさんたちと一緒にご飯を食べていたりもしたけれど、今はもう彼らはいない。
「ダメだなあ。私、まだ引きずってる」
声に出せば紛らわせるかもと思ったけれど、心にぽっかり居座った虚しさが余計大きく見えるだけだった。
アイカワ隊長たち、前の第一部隊のみんなは強かった。
確かにシドウ大佐は、凄い。スギサキさんも、あんな大きなレイダーをたった一人で討伐するほど強いなんて、今まで知らなかった。
でも彼らの強さを知る前までの私は、アイカワ隊長たちが最強だと、心のどこかで安心していた。
世界は、何が起こっても不思議じゃない。
シドウ大佐の言葉で立ち直れたと思っていたのに、臆病で後ろ向きな私の根本は何も変わらないままで。考えてはいけないと、必死に目を逸らそうとしても、また私の前で彼らは死んでしまうのではないかと、また私は彼らを見殺しにするのではないかと考えてしまう。
そのシーンが、ありありと浮かんでしまう。考えたくもないのに。
「……ダメだなあ、私……」
「……フミヤ?」
「ぎょばッ!?」
びっくりして肩が跳ね上がって、あわや卵サンドを落としそうになる。
「『ぎょば』?」
「おこ、ここここんにちはスギサキさん」
「おう」
前を向くと、スギサキさんがコーヒー缶を持って立っていた。
「い……いつからそこに?」
今来たとこだよ、とスギサキさんは言った。食堂で昼ごはんを食べ終えた後らしい。
「たまたまシドウ大佐とも会ったんだけどな?」
「え、あ、はい」
藪から棒に、スギサキさんは話し出す。
「あいつ化け物だわ……」
「え?」
「弁当四つ持ってるから、誰と食うんだって訊いたら、一人でペロッと全部たいらげやがった……」
「……あ、あはは」
いつもの仏頂面で『今日は作る時間が無かったからな』とか言いながらお米をほおばる彼の姿を容易に想像できた。あの人は、どうしてあれだけえ食べてあのボディラインを維持できるんだろう。ちょっと羨ましいかもしれない。
「そういえば、お前は食堂とか使わないのか?」
「……ええっと、私は……」
「……だってさ」
言いかけたところで、廊下の右側の向こうから声が聞こえてきた。
「今度はあのアイカワさんが殺されたんだぜ。異常だって」
「穴埋めに、本部から腕利きが来たって話だけどどうなのかね」
そこまで聞いて、顔を見られないように足元を向く。私の髪の色は目立つから、あまり意味はないと思うけれど。そして案の定、しばらく話し声が止んだ。ただ重い沈黙の中を、二人分の足音が私の前を通り過ぎていく。スギサキさんは何も言わず立っているようだった。
足音が少し遠くなり始めたところで、ようやく話し声が再び聴こえた。きっと他愛もない話だろう。
顔を上げると、スギサキさんは黙って私を見ていた。
「……ほら。私って、人混みとか苦手ですから」
笑って言い繕って誤魔化そうとしても、無駄なのはわかっていた。きっともう、スギサキさんは理解してしまっただろう。
この支部には、私と同じ隊になった人間は近いうちに死ぬ、というジンクスが蔓延しているのだ。
私が一番最初に所属した隊、その次の隊、そして今回は、アイカワ隊長たち。たった数ヶ月の間で、三つもの部隊が壊滅している。そして、その全てに私が所属していた。
作戦自体に落ち度があったわけではない。いずれの場合も、不慮のアクシデントが招いた結果である。たとえばアイカワ隊長たちの時は、新種のレイダーが二体、いや三体いたことによるものだ。
しかし、事実はどうあがいたって変わらない。
「……ふん、なるほどね」
何も言わない私に問うことはせず、スギサキさんはただそれだけ言った。
それから、また廊下の左側から足音が聞こえてくる。思わず全身が強張るが、どうやらその乾いた音は私が近頃聞きなれたものであるらしかった。
「シドウ大佐」
「フミヤ少尉、スギサキ少佐。いきなりだが任務の通達だ」
彼は書類を片手に持ち、淡々と告げ始める。急を要する任務なのだろうか。
「先程、この支部の近辺でコードネーム持ちのレイダーが確認された。コードネームは『カトブレパス』だ」
「カトブレパス……」
「……一日に二体も名前持ちが出るなんて珍しいな」
「レイダーについては解っている事の方が少ない。何が起こっても不思議では無かろう」
きっとシドウさんは何気なく放っただろうその一言が、私の心の奥の不穏を揺らした。
スギサキさんはそんな私の様子を見やったのか、一瞬だけ目があった。しかし彼はすぐに目を逸らすと、にやりと笑って言った。
「でもまあ、タイミングは悪くねえな」
- Re: アビスの流れ星 ( No.35 )
- 日時: 2013/01/11 19:51
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: u83gKCXU)
6
カトブレパス。
山のような巨体に、長い首。昔この地球上に生息していた、水牛という動物に似た形状。バハムートのような翼こそ持たないものの、巨大かつ屈強なレイダーである。もっとも、コードネーム持ちはどれも凶悪であるけれど、その巨大な化け物は中でも異彩を放つ。
顔面に大きな一つ目があり、そこから光線を射出するのだ。
ただ、その光線が何によるものなのかまではまだ解明されていない。虫眼鏡で太陽光を集中させる原理、つまり偏光の応用ではないかとも言われているが、確証にはいたっていない。
更に厄介なのは、その頑強な皮膚。これまでも幾つかの部隊が挑んだが、サーベルがろくに通らないほど堅いらしい。
アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリア。海を渡り、全てで六つもの部隊を壊滅させた弩級レイダー。
その討伐の感想を敢えて述べるとすれば、思ったほどでもない、の一言に尽きる。
カトブレパスは俺たちの姿を見ると、まず尻尾を振りぬいて数多の瓦礫を降らせてきた。
撃ち落とす。
撃ち落とす。
撃ち落とす撃ち落とす撃ち落とす撃ち落とす撃ち落とす撃ち落とす。
瓦礫が止む瞬間を見計らって本体の頭部に一発叩き込む。ジャックポット。怯んだ隙を逃しはしない。手早く両手の銃を剣に持ち替えて一直線に駆け出して。
剣を眼球に突き立てた。
サーベルから手を離す。空気の振動が肌を通して伝わる。目を潰されたカトブレパスの絶叫によるものだ。どうやら眼球は刃を通す予想は当たったらしい。
激昂したカトブレパスが巨体を勢いよく振り回す。巨大な尻尾で俺たちを叩き潰すつもりなのか。
しかし尻尾は奇妙な弧を描いて明後日の方向へ飛んでゆく。その極めて堅い皮膚ごと、横合いから斬り込んだ『真紅の流星』が尻尾を輪切りにしたからである。
噂は伊達ではなかったらしい。そんなことを考えながら激痛のあまりすっ転ぶカトブレパスの、目玉のほうに回り込む。
その目玉にはまだ、先程のサーベルが突き刺さっている。
サーベルの柄に銃口を当てて一言。
「——死ね」
引き金を引くと、凄音と反動。
そしてサーベルは見えなくなる。クラスター砲よろしくサーベルの砲弾が、カトブレパスの眼球の奥まで入り込んだからだ。
きっとその中ではサーベルがカトブレパスの脳味噌をぐちゃぐちゃに貫通しているに違いない。
山のようなカトブレパスの巨体が、ビルの倒壊を連想させる音を立てて崩れていく。実際、幾つかの廃墟がそれに巻き込まれて崩れていくのが見えた。
巨体が沈む様を少し離れた廃墟から眺めて、それから振り返る。少し離れた場所で、フミヤは口をぽかんと開けて言葉も発せずに居た。その顔が面白かったので、少し笑いそうになる。
「何面白い顔してんだよ」
「なっ……し、してませんよ!?」
フミヤは慌てて反応する。面白い奴になったな、と思う。
「ああそうか、変な顔はいつもだもんな」
「え……しっ、失っ、礼なっ!!」
それから、からかい甲斐があって、少し楽しい。
やっぱり、作り笑いより本当に笑っている顔のほうが、見ていて気分が良いと思う。
「……俺はな」
ふえ?と、突然振られた話題にフミヤは間抜けに返事する。
「五年前に、両足と左腕、それから左目を失った」
言いながら、左目を隠すために巻いた包帯を外していく。
「そしてそれ以降、俺の両脚右腕左目は、レイダーを討伐するための装備と同じ素材で作られたものだ」
きっと今、目を丸くしているフミヤの瞳には、晴れ渡った空のように青い俺の左目が映っていることだろう。左目の、本来白目であるはずの部分は闇のように暗い。
いわば俺の身体の半分がレイダーに対する装備のそれであり、だからこそ俺はこの年齢にして、あれだけの数のレイダーを討伐してこれたのだ。
だからこそ。
「だから俺は殺されない。絶対に」
——あれ。
一体俺は、何を話し始めているのか。
「真紅の流星も、あいつは何の細工もないらしいくせにあんだけ強いんだ。簡単にくたばりやしねえよ」
言っていて、変に胸の奥が熱くなる。顔が熱くなる。自分で恥ずかしいことを言っている自覚がやっと芽生えてくる。
しかし、喋っているのは自分の口であるはずなのに、紡ぐ言葉を止めることは出来ない。
「だからもう安心しろ。俺たちは死なない、絶対に」
フミヤは呆然と聞いていた。そして、その頬に涙が落ち始める。
それを見て、俺も胸の奥が痺れて熱を帯びた。
自分でも臭い台詞だと思う。しかし理解し始める。これは本心だ、と。
それから、ふと、自分は何の為に生きるのかと、自問自答していたことを思い出す。その答えはあまりにもあっさりと、くだらないカタチで見つかった。
何だったのだろうか、と言いたくなってしまうほどに。
だが、頭の中に風が吹き抜けたように、気分は清々としていた。
きっと生きる理由なんて、こんなもんで良いんだと、勝手に納得しながら。
- Re: アビスの流れ星 ( No.36 )
- 日時: 2013/01/11 23:52
- 名前: 一坂玄太郎 ◆SP1RWrm9VI (ID: 49KdC02.)
はじめまして。
以前から貴方様をストーキげふんげふん追いかけていた者です。
勇気を出して初こめさせていただきます。
まず感想を書かせていただきますが、口調のせいでやや上からの物言いに聞こえますが、どうかご容赦を。
疾走感のあふれる文体がとても心地よく感じました。
私なんかは戦闘シーンを飛ばしてしまう癖があるのですが、とてもすんなりと読めました。
あとは、背景の描写ですね。
主観なのに、周りの景色まで描けていてとても驚きました。羨ましいです。
それから、確認したいのですが、『シドウ大佐』はオリジナルのキャラクターでしょうか?
以前他のネット小説で、似通ったキャラクターを見たような気がしたのですが。
もし、私の気のせいでしたら、申し訳ありません。
それから、ブログにお書きになっていた訪ね人の方、私の知り合いかもしれないです。
ああっ、と、すいません。
関係のない話はするべきじゃないですね。
では、更新がんばってください。
- Re: アビスの流れ星 ( No.37 )
- 日時: 2013/01/12 13:08
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: u83gKCXU)
一坂玄太郎 さん⇒
はじめまして。黒田奏です。
コメントありがとうございます。
わかりやすくて、読みやすい描写を目指しています。しかし油断すると描写がスカスカになることがあります。だから気をつけて書いてます。
逆に戦闘シーンは力を入れすぎるととてもくどくなります。加減が難しいです。だからそう言っていただけると嬉しいです。
背景が曖昧なままだと、全てがあいまいになってしまうように感じるので出来るだけ思い浮かべるよう心がけています。だからかもしれません。ちゃんと風景が伝わっていればと思います。
おそらく『小説家になろう』様のあの小説でしょう。
厳密にはシドウ大佐は私のオリジナルであり、フミヤ少尉とスギサキ少佐は私のオリジナルではありません。
アレンジと改変を加えていますが、あるオンラインゲームでの知人のアバターをモデルにしています。
なのできっとそれは、その知人の片方の小説ですね。
ちなみにそのオンラインゲームで、この小説に当たるシドウ大佐のアバターを使用していたのが私です。
それは、是非詳しく話を伺いたいものですね。
ありがとうございます。
これからも更新頑張らせていただきます。
必要であれば、アメーバブログを通して連絡をくだされば、私の個人的な連絡先をお教えします。
- Re: アビスの流れ星 ( No.38 )
- 日時: 2013/01/12 16:31
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: u83gKCXU)
7
10月11日
今日はシドウ大佐に、旧日本支部の中を案内して欲しいと頼まれた。
旧日本支部は広いので、結局だいたいを案内し終える頃には日が沈んでしまっていた。
シドウ大佐の装備はやっぱり特注、というか試作品だったらしい。でも、私たちの装備と性能自体は変わらないという話だ。……やっぱりあの人は何かの基準がおかしい。
おかしいといえば、お菓子だ。案内を終える頃にはいつの間にか彼が左手に持っていた大きなお菓子の袋が消えていたのだ。どうしたのかと訊くと「歩きながら全部食べてしまった」と返された。ひょっとしてあの人は、レイダーの一種なのではなかろうかと思ってしまう。
あれだけ食べてスリムなのはずるいと思う。別に羨ましいわけじゃない。絶対に。……たぶん。
実のところ、屋上には初めて行った。よく見える星空が綺麗だと思った。ちょっとだけ、また行ってみたいかもしれない。
それからアルベルトさんの私物、どうしたらいいんだろう。シドウ大佐は「捨てておけ」と言ってたけど。
10月12日
また、シドウ大佐との任務だった。相手は、この間の奴と同じタコ頭……に見せかけた、四足歩行のレイダーととタコ型のレイダーだった。
シドウ大佐がまず先に四足歩行の奴の、両方の前脚を斬りおとしてから本体を仕留めて、逃げるように飛んだタコ型のレイダーを私が仕留める、という作戦だった。作戦はばっちり成功。
終わった後、シドウ大佐に褒められた。彼から見て私は、基本的な体力がとても高いのだという。剣術も、入隊して半年にしては上出来だと言われた。
別に嬉しくなんかないけど。全然嬉しくなんかないけど。
だってお世辞に決まってる。あんな強い人が、まだ新人だって言い張れる私を褒めるとか。
……私を褒めて何のメリットがあるのかはわからないけど。
でも、お世辞でも、嬉しいかもしれない。
10月13日
今日は、この近辺に多い蛇みたいなレイダーが相手だった。
任務が終わった後で、また言われてた。本人に聞こえるところで話しているんじゃ、陰口の意味がないと思う。
だって仕方ないじゃん、だって全部、いきなり新種のレイダーが現れたりとか、いきなり装備が壊れたりだとか、全部事故みたいなものだもん。なんで私のせいにするんだ。
本当に、私がいるからみんな死んじゃうのかと思っちゃうじゃないか。
シドウ大佐に「何かあったのか?」と訊かれたけど、適当なことを言ってごまかした。やっぱり、あの人は鋭い。
でも、それ以上何も訊いてこないのはちょっとありがたかった。
10月14日
今日は色々とびっくりした一日だった。
スギサキさんの乗ったヘリが墜落した、なんていきなりシドウ大佐が言ったかと思えば、現場に向かってみたら、バハムート……って呼ばれてる、凄く大きいレイダーの死体。人間ってあんなの一人で倒せるんだ。
シドウ大佐が言うには、とても強いレイダーの個体は、コードネームを付けられてその名で呼ばれるのだそうだ。
ひとまず、三人とも無事で本当に良かった。いきなり驚かさないでほしい、ほんとに。
それと、新しく第一部隊に来るもう一人というのはやっぱりスギサキさんだった。あんなに強いなんて知らなかった。久しぶりに会っても彼は何も変わってなくて、ちょっと嬉しかった。
彼が倒したレイダーの数は八千体を超えていて、全ての支部で一番らしい。どんな数字だ。確かアイカワ隊長でも千に届くか届かないかくらいだったはずなのに。
シドウ大佐とどっちが強いんだろう。
考えちゃダメだって思っても、やっぱり不安になってしまう。
また同じことが繰り返されませんように。
10月15日
最近泣くことが多くて困る。
別に悲しいわけじゃないのに、どうして涙が出るんだろう。恥ずかしいからやめてほしい。スギサキさんもスギサキさんだ、不意打ちすぎる。
そういえば、彼の両脚と左腕と左目は、レイダーと戦う装備と一緒なのだそうだ。だからあんなに強いらしい。ちょっとかっこいいかもと思った。本人からしてみれば、そんなこと思われるのは嫌だと思うけど。代わりに自分の身体を半分なくしたようなものだろうから。
でも、じゃあ生身でカトブレパスの尻尾を叩き斬ったシドウさんって一体……。
やっと、なんで彼らの背中を見たとき、妙に安心したのか分かった気がする。
シドウさんもスギサキさんも、確かに強かった。私の想像が及ばないくらいに。そして、それは一人の人間としても、とても。
誰かを守ろうとするから強いのか、ただひたすら必死に生きようとするから強いのか、今の私にはまだわからない。
けれど、私もあんな風に強くなれるだろうか。
私も、二人の力になりたい。
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