複雑・ファジー小説
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- CHAIN
- 日時: 2015/08/28 22:30
- 名前: えみりあ (ID: TeOl6ZPi)
この世で最も恐ろしいもの
それは獣の牙ではなく
不治の病でもなく
生ける人間の「憎悪」
* * *
はじめまして、えみりあです。
よし、頑張って書きます。
【はじめに】
・この小説は、暴力描写を含みます。
・死ネタも含みます。
・軽く性描写も含みます。
・更新速度は不規則です。
戦争がテーマの、近未来ファンタジー的なものを書けたらな……と思ってます。
テーマは重いですが、バトルに恋愛、笑いと涙も交えた小説にしたいです。
* * *
【目次】
第一話:WHY FIGHT >>01 >>02 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07 >>08
第二話:STRENGTH >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17
第三話:TRAUMA >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26
第四話:COMPATIBILITY >>28 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
第五話:THE NAME >>36 >>37 >>38 >>39 >>40 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
第六話:FOREVER >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54
第七話:PROMISE >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>64 >>65
キャラクタープロフィール >>09 >>18 >>27 >>35 >>46 >>55
* * *
【登場キャラ・国家】
①アルビオン連合王国
……WFU最強の海軍を持つ国家。王族、貴族がいまだに残っていて、貧富の差が激しい。イギリスを主体とした国。イメージカラーは青。
〈登場キャラ〉
リチャード・ローパー
マーガレット・チェンバレン
アマデウス
シドニー・マクドウォール
ジュリアン・モリス
クィンシー
パトリシア・トムソン
②ノルトマルク連邦共和国
……WFU最大の人口を抱える国。経済の中心地。ドイツを主体とした国。イメージカラーは緑。
〈登場キャラ〉
ユリアン・オストワルト
ジェラルド・バルマー
クリスティーネ・ヴィッリ
ヴィトルト・フォン・マイノーグ
ビアンカ・オストワルト
テレジア・オストワルト
バルド・グロスハイム
イザベル・ディートリッヒ
デニス・クルシュマン
③ルテティア民主共和国
……WFU最強の空軍を持つ国家。他地域との連携があるため、WFU内での結び付きは疎遠。フランスを主体とした国。イメージカラーは黄色。
〈登場キャラ〉
マクシム・ブラディ
グェンダル・ドゥパイエ
④神聖アウソニア法国
……宗教国家。北部に観光都市を数多く持ち、南部は軍事都市として栄えた。イタリアを主体とした国。イメージカラーは白。
〈登場キャラ〉
ルーカス・ドラゴ
エリカ・パツィエンツァ
ドロテア・ジョルダーノ
⑤ヒスパニア帝国
……WFU最強の陸軍を持つ国家。皇帝はいるが、政治的権限はない。スペインを主体とした国。イメージカラーは赤。
〈登場キャラ〉
シルビア・アントニオ・モリエンス
ラウル・アントニオ・モリエンス
セレドニオ・ドローレス
⑥アテナイ=ポリス同盟
……元は都市間同盟により政治を行っていたが、150年ほど前に一国家として統一された。国名はその名残。また『アダーラ』との最前線に置かれていて、WFU最貧国。ギリシャを主体とした国。イメージカラーは紫。
〈登場キャラ〉
ソティル・メルクーリ
リディア・ティトレスク
ゼノン・デュカキス
⑦ユトランド連邦
……豊富な資源に恵まれ、WFUで№1の生活水準を誇る。難民に対して非常に寛容。デンマークを主体とした国。イメージカラーは黒。
〈登場キャラ〉
リスト・ハグマン
アーノルド・フォルクアーツ
ティノ・イングヴァル
サク・バーナ
ヴィルヘルム・ファゲルート
⑧アダーラ
……世界最大級の犯罪組織。北アフリカ、中東、一部の東南アジアにかけてを、支配している。領土内諸国の政府は、ほぼ壊滅状態。
〈登場キャラ〉
ハサン・ムシャラフ
エセン・キヴァンジュ
ドルキ・レヴェント
新キャラ・国家が登場したら、その都度まとめます(*^^*)
【設定】
あーちゃんさんのアイディアで、階級紹介を追加いたしました( ´ ▽ ` )
〈階級〉
・将軍
・将官
→大将
→中将
→少将
→准将
・佐官
→大佐
→中佐
→少佐
→准佐
・尉官
→大尉
→中尉
→少尉
→准尉
・准士官
・一般兵士
上に行くほど高官です。どこの国も、将軍がトップ。たまに変な設定があり、この中に当てはまらない役職もありますが…まあ、それは後ほど…
尚、この階級は、この小説内におけるものです。実際の軍隊とは関係ありません。
【お知らせ】
3/24 各話、段落開けを入れました。
内容に変化はありませんが、第一話・第二話の文章を大きく修正しました。
4/3 【設定】欄を追加いたしました。
8/28 今まで気がつかなかった……アルティメットって、ultimateなんですね。AS→USに変更します。いやはやお恥ずかしい。すみません。
【用語】
〈WFU〉
……ウェスタン・フロント・ユニオン。『アダーラ』に対抗して造られた軍事同盟。所属国家は、アルビオン、ノルトマルク、ルテティア、アウソニア、ヒスパニア、アテナイ、ユトランドの7つ。
〈円卓会議〉
……7将軍による、代表軍事議会。最初のシーンで、みんながやってたあれです。
- Re: CHAIN ( No.16 )
- 日時: 2015/03/24 00:11
- 名前: えみりあ (ID: 1SUNyTaV)
+ + +
その少年は、すべてを持っていた。
容姿端麗、博学多才、勇壮活発、さらには家柄にまで恵まれ、何一つ不自由のない生活を送っていた。そのため、皮肉も込めて周りから呼ばれる肩書きは『アルビオンの寵児』。
少年は、他の貴族と同様に学校に通い、他の貴族と同様に剣の稽古に励む毎日だった。余った時間は友人と遊び、一人のときはテレビゲームをして楽しむ、普通の貴族の少年だった。
8歳の時、少年は祖父にプレゼントをもらった。
ついこの間、発売されたばかりの最新ゲームカセット『レジェンディア 01』。
舞台は遥か東の国、ヤマト皇国。主人公は『ウシワカ』という、小柄な少年だった。ストーリーは、長年虐げられた一族に生まれた主人公が、宿敵の一族を滅ぼすべく、反乱をおこすというもの。
少年は、この物語にのめりこんだ。特に少年が気に入ったのは、主人公を支える大柄な部下『ムサシ』。彼の扱う武器は強力で、ことごとく敵をなぎ倒してゆく。クライマックスでは、君主である主人公が自害できるだけの時間を稼ぎ、命を賭して君主の名誉を護るのだった。
少年は彼に心酔し、その戦い方にあこがれ、衝動に駆られるまま父のもとに走った。
「父上、僕を、ヤマト皇国に修行に出させてください!」
ただ、その武術を会得したいがために……
+ + +
ユリアンは、敵の位置を確認する。目の前には、爆撃を受けて半壊した礼拝堂。崩れた囲壁の陰に隠れているようだ。
ユリアンは前傾姿勢になる。そして、強く地面を蹴った。
ユリアンの第一の武器、それは俊足。
ノルトマルク軍は、15年前、軍人の家の子供たちを集め、ある手術を執り行った。それは、拡心手術と呼ばれるもの。心臓の体積を広げ、それを支える筋力も増強し、一回の鼓動で多くの血液を体中に巡らせるようにする手術だ。これにより、ユリアンは超人的な身体能力を手に入れる。
そして、ユリアンが特に鍛えた体の部位は、足。円卓会議が認識している軍人の中で、ユリアンを上回る俊足の持ち主は、いない。
ユリアンは、目に留まらぬ速さで囲壁の後ろに回り込む。敵兵は、あまりの速技に、武器を構える暇すら与えられない。
ユリアンは手のひらで着地し、逆立ちの体勢をとる。そして
「フッ!」
掛け声とともに体を旋回させ、両足を振り回し、その場にいた敵兵を一掃する。陣地を得たユリアンは、足を地面に下ろし、正立した。その隙に、かろうじて巻き込まれなかった戦闘員が、ユリアンの背後から襲いかかる。
「うおぉぉぉぉぉっ!」
ユリアンは身をかがめてそれをかわし
「っ!」
奇怪なステップで、敵の足をすくい取った。倒れこんだ敵に、かかとを落とす。
ユリアンの身体能力、加えて足の筋力を最大限に活かす武術……
その名はカポエラ。
ブラジル発祥、格闘技とダンスの中間に位置する腿法。ユリアンの第二の武器である。
「ほんじゃ、こっちもやりますか……」
ユリアンの攻撃に反応し、シドニーの方でも動きがあった。タルワールを持った戦闘員が、次々にシドニーに襲いかかる。
「君たちさぁ……」
シドニーは担いでいた武器をとり、一振りする。瞬間、大きな風圧が生じた。気がつけば、『アダーラ』の戦闘員たちは、シドニーに剣が届く前に、ことごとく倒されていた。
「そんなリーチで、コレに勝てるわけないでしょ?」
シドニーは呆れたように笑い、敵にその切っ先を向けた。
その武器は、極東ヤマト皇国発祥、定かではないが、9世紀ごろに姿を現した。寺院の守護のため、僧兵の武器として世に出回ったそれは、現代では女性のたしなむ武道とされている。しかし、ヤマト皇国の武道家たちは言う。
「薙刀は、最強の武器」
シドニーは、笑う。いつもの緩んだ笑みではなく、不敵な笑みを浮かべた。
「そいやぁっ!」
再度、シドニーは薙刀を振った。風が巻きあがり、あっという間に敵兵を切り倒す。正面から立ち向かう者、横から攻める者、薙刀は一振りでそれを薙ぐ。
「くっそ……っ!」
一人の敵兵が、シドニーの背後から忍び寄った。
「ちょっとちょっと……」
シドニーは、すぐさまそれに気がつき
「男なら、卑怯な真似しちゃイカンよ」
体を軸に薙刀を回し、峰で相手の向こうずねを叩く。
「っぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」
敵兵は、あまりの痛みに絶叫した。
「はははっ、痛いだろ」
そして、もう一振りで完全に止めを刺す。
「『弁慶の泣き所』って言うんだぜ。一個勉強になったな?」
- Re: CHAIN ( No.17 )
- 日時: 2015/03/24 00:14
- 名前: えみりあ (ID: 1SUNyTaV)
+ + +
「はい……はい……そうですか。分かりました。では、失礼します」
ある研究機関の事務室。職員の男は、深刻な面持ちで電話を切った。
「リリーさんの搬送された病院からですか?それで、彼女の容体は……?」
隣から、女性職員が慎重に尋ねる。男性職員は、深いため息をつき、首を振った。
「……このこと、マーガレットちゃんには……」
「言えるわけないだろ!唯一の肉親である、母親が死んだなんて……」
男性職員の声は、偶然事務室の横を通りかかった、その少女の耳に届いてしまった。
+ + +
上陸前の談話室。シドニーは重大なことを口走った。
「アイツには……奪われるものがない……だと?」
ユリアンが聞き返す。シドニーは、困ったような顔をして、続けた。
「マーガレットの母親は、彼女を生んだ時、経済的に厳しい状況だった。そこでマーガレットは、アルビオンのある軍事施設に預けられた。莫大な資金と引き換えにね」
ユリアンは悲痛そうに顔を歪めた。金でやり取りされる、命。
「その施設には、マーガレットと似たような境遇の子が何人もいた。そこの子たちは、みんな、ある希望を頼りに生きていた。それは、いつか自分が立派な海兵になった時、本当の母親が迎えに来てくれること」
シドニーはそこでいったん話を切り、さんざん迷った挙句、やはり、意を決して続けた。
「ユリアン、グラスゴー事件って知ってる?」
「ああ」
グラスゴー事件は、アルビオンの造船所が『アダーラ』の構成員によって爆破された事件だ。職員も民間人も巻き込まれ、多くの命が奪われた。ユリアンはその時12歳だったので、そのニュースをよく覚えている。
「……マーガレットの母親はね、その当時、その造船所で働いていたんだよ」
ユリアンは、あまりの衝撃に言葉が出なかった。
結末を言うまでもない。マーガレットの母親は、あの『アダーラ』に殺されたのだ。
唯一の家族を失った悲しみ。そんなものが、あの笑顔の裏に隠されていたなんて……
『親を奪われても』
それでも彼女は言っていた。許す、と。
「……加えて言うとね、彼女の育っていた施設は、危険度の高い任務遂行のために子供を育てる施設だった」
シドニーはさらに続けた。ユリアンは、これ以上聞きたくない心地がした。
「あの子の仲間はね……みんな死んだよ。たくさんの困難を乗り越えて、彼女だけが生き残った」
とうとう、一筋の涙が、ユリアンの頬を伝った。
『友達を奪われても』
それでも彼女は……
リストとユリアンの言い争いで、核心に近かったのは、ユリアンの方だった。マーガレットの信念は、弱い妥協心から来るのではない。失った者だからわかる、相手に同じ思いをさせまいとする、強い愛情。
「……ひとつ、聞いてもいいか?」
シドニーは鼻をすすり、呼吸を整えてから返した。
「なんだい?」
ユリアンは、涙をぬぐい、喉から声を絞り出す。
「なぜ……お前は、そんな重要機密を、俺に教えたんだ」
シドニーは、いつものように、ふにゃりと顔を緩めて、しかしその目は物悲しく、答えた。
「ひとつは、さっきも言った通り、君がマーガレットのことを理解してくれているようだったから」
「……もうひとつは?」
ユリアンにせかされ、シドニーは考え込む素振りを見せる。そして、ユリアンの顔を覗き込んでから、うなずき、口を開いた。
「こっちは俺のカンだけど……君の表情が、一人の女性を愛する、男の顔だったから」
ユリアンの脳裏に、ヴィトルトの顔がよぎる。しかし今度は……
「そう……か」
不思議とその言葉が呑み込めた。
+ + +
マーガレットは、降りしきる雨の中を、傘もささず、行くあてもなく、ただ走っていた。
———ウソだ……ウソだ……ウソだっ!
ついさっき聞いてしまった、職員の会話。その事実を、この世とすべての関わりが絶たれたという事実を、認めたくなくてただ走る。
アスファルトは濡れていて、滑りやすくなっていた。
「あ……っ!」
足が滑り、水しぶきを上げて転んだ。膝が擦れて、血が雨ににじむ。
「ふ……うぇ……っ」
それが、痛みから来るものなのか、それとも別のどこかから来るものなのか、マーガレットにそれは分からなかったが、嗚咽を漏らした。雨が、彼女の涙をかき消してゆく。
「こんなところで、どうしたの?」
突然、雨がやんだ。正確には、マーガレットの周りだけだが。
青年は傘をさしだし、瑠璃色の美しい瞳で、マーガレットの顔を覗き込んだ。どうやら政府の高官のようで、上等そうなスーツを着ている。
マーガレットは、一瞬言葉を失う。そして、思い出したように泣き出した。
「お母さん……お母さんが……」
青年は、悲痛そうに表情を歪め、押し黙る。考え込んだ挙句、紳士らしく少女の手をとり、そっと立たせる。
そして、少女の冷たい体を抱きしめた。
その温もりに、少女はまた言葉を失う。
どうして彼は、自分に傘を差し出してくれるのか。どうして彼は、自分を抱きしめてくれるのか。どうして彼は、自分を慰めてくれるのか。いや、それよりもお礼を言わなくてはならないか。しかし……
「……お召し物が……汚れてしまいます」
さんざん頭の中で語彙を絞り出し、やっとのことで出た言葉が、それだった。これにはその青年も苦笑を隠せず
「いいんだよ、気にしなくて。今は泣きたいだけ、お泣きなさい」
といって、マーガレットの頭を優しくなでた。
せきを切ったように、マーガレットは声をあげて泣いた。そんな彼女をしっかりと抱きしめ、青年は耳元で言う。
「強く、おなりなさい。今度こそ、その手で大切な人を守れるように」
- Re: CHAIN ( No.18 )
- 日時: 2015/03/15 00:06
- 名前: えみりあ (ID: 1SUNyTaV)
はい、すみません。これで第二話終了です。次々終わらせちゃって、本当に申し訳ないです……
ここからはちょっと時間が遡って、過去編に入ります。
ではその前に、第二話からの登場キャラのプロフィールをまとめます。
〈ソティル・メルクーリ〉
国籍:アテナイ
血液型:O型
地位:中佐
誕生日:9月10日
年齢:20歳
容姿:髪は青みがかった黒で、ぺたっとした髪質。瞳の色は紫。中性的な顔立ち。細身で長身。両手に包帯を巻いている。身長179㎝。
性格:謙虚。誰に対しても敬語を使う。思考は自虐的。
〈リスト・ハグマン〉
国籍:ユトランド
血液型:A型
地位:大佐
誕生日:1月23日
年齢:24歳
容姿:茶色の髪に、黒い瞳。頭髪と左目を残して、黒い包帯で顔を隠している。胸元や首も同様に包帯を巻き、手は手袋で隠している。身長169㎝。
性格:血気盛ん。『アダーラ』を根絶やしにしたいほど憎んでいる。言葉遣いが悪い。
〈クリスティーネ・ヴィッリ〉
国籍:ノルトマルク
血液型:O型
地位:中佐
誕生日:1月17日
年齢:21歳
容姿:ブロンドの髪を、内まきカールにしている。目は釣り目で藍色。身長167㎝。
性格:恋愛は、一途だが、素直になれないタイプ。しっかり者なのだが、神経を張りすぎてたまにぼろが出る。
〈アマデウス〉
国籍:アルビオン
血液型:B型
地位:大将 ヨーク公爵 第二王子
誕生日:6月3日
年齢:31歳
容姿:ブロンドの癖っ毛、碧眼。かなり童顔。あごひげで頑張って釣り合いを取らせている。身長163㎝。
性格:厳しそうにしているが、実は子供好き。その上、心配性。本心を突かれるとすぐ怒る。根はいい人なんだよ……
〈シドニー・マクドウォール〉
国籍:アルビオン
血液型:A型
地位:中将 オールバニ公子 ウォリック伯爵
誕生日:3月9日
年齢:28歳
使用武器:薙刀
容姿:髪は亜麻色。いつもワックスで、簡単に流している。前髪は自然な形で額から浮いている。碧眼。身長192㎝。
性格:ちょっとオタッキー。明るく、冗談をよく言う。アマデウスに殴られてもめげない。日本語が話せる。
〈ヴィトルト・フォン・マイノーグ〉
国籍:ノルトマルク
血液型:B型
地位:大佐
誕生日:6月11日
年齢:26歳
容姿:髪は赤毛。アイベルトで両目を隠している。両手が義手。身長174㎝。
性格:ちょっと頼りない。たびたびふざけて、ユリアンを怒らせる。愛妻家。
〈ジェラルド・バルマー〉
国籍:ノルトマルク
血液型:A型
地位:将軍
誕生日:9月28日
年齢:47歳
容姿:髪は栗色。七三分け。右目に黒い眼帯をしている。残った隻眼は金色で、眼光が怖い。かなり大柄な中年。身長189㎝。
性格:真面目な性格で、軍務中に笑うのは、自分の中では御法度。ユリアンが最も尊敬する人で、ところどころユリアンと似通っている。
遅くなりましたが、参照数もとうとう100を超え、嬉しい限りです。ありがとうございます!
これからもCHAINをお楽しみいただけると、幸いです(*^^*)
- Re: CHAIN ( No.19 )
- 日時: 2015/03/24 00:16
- 名前: えみりあ (ID: 1SUNyTaV)
第三話:TRAUMA
「うあぁぁぁぁぁっ!」
少年は、何度も拳を振りおろす。素手とはいえ、18歳男子の腕力、加えて強化手術の怪力である。少年が殴るたびに、鮮血がとびちり、辺りを赤く染める。
「やめろ、ユリアン!」
とうとう、別の男が制止に入った。ユリアンと呼ばれた少年よりも少し年上の、盲目の青年。
「その人……もう、死んでるよ」
死体から引きはがされると、ユリアンは殴ることをやめ、だんだんと正気に戻っていった。そして、さんざん暴れ回った彼に残されたのは
喪失感。
ユリアンの目から、涙がこぼれた。
何をしても、あの幸せな日々は、二度と戻らぬことを思い出して。
+ + +
カルタゴ上陸作戦直後、ユリアンは怪我の療養のため、ノルトマルク ザクセン地方の、故郷ドレスデンへ帰省することになった。正直、休暇を取ったころには、怪我はほとんど治っていたのだが。ユリアンが強化手術で得た血流は、驚異の治癒スピードももたらしていた。
ルテティアから国境を超える列車の中、ユリアンが思い出していたのは、任務でバディを組んでいた少女の言葉。
「『誰かが、敵を許さなきゃいけない』……か」
ユリアンは当初、今回の休暇を、かなり渋った上でとらされた。かれこれ2年も帰省していない彼に、絶好の機会だと、ジェラルドは判断したようだ。
ユリアンが帰省したがらない理由、それは単に、悪い思い出があるからだ。
ユリアンは、ふっと12年前の悪夢を思い出した。そして次に、マーガレットの顔を思い出す。
———悪いが俺は、相いれねぇよ……
+ + +
「ユーレ、今日こそ、お前に勝つからな……!」
「何度やっても、同じだよ」
二人の少年は、グラウンドに立ち、クラウチングスタートの体勢をとる。
勝負を挑んだ方の少年は、短髪のブルネットで、顔や体のところどころに絆創膏を貼り、日焼けをした元気いっぱいの男の子。
一方、挑まれた方の少年は、栗色のさらっとした髪に、白い肌、目は凛としていて、隣の少年よりも、ずいぶんと大人びて見える。
「まったくもう……じゃあ、いくよ。位置について」
隣からスタートの合図を出すのは、短い天然パーマの少女。大きくてつぶらな瞳といい、その姿は聖堂の壁画に描かれた、小さな天使のようである。
「よーい……どん!」
直後、少年たちは、猛スピードで駆け抜ける。少年たちは10歳にも満たぬ年だが、おそらく、その速さは成人男性でも太刀打ちできない。
競走する距離はグラウンド一周。しかし、二つ目のコーナーを曲がるころには、勝負はほとんどついていた。
「おかえり〜。やっぱり、ユーレは速いね」
「くっそう……また負けた……」
少女に褒められ、少年に悔しがられ、ユリアンは照れたようにはにかんだ。
「思うに、バルドは力みすぎなんだよ。もっと練習すれば速くなるよ」
「うるせぇっ!」
助言をしたつもりのユリアンに逆ギレしたのは、バルド・グロスハイム。子供らしく怒りを全面に出し、ユリアンに掴みかかろうとする。
「もう、バルドったら、なんでそんなに怒りっぽいの。ユーレはただ、アドバイスしただけじゃないの」
仲裁に入った少女は、イザベル・ディートリッヒ。あまりにバルドがエスカレートしてきたため、とうとう羽交い締めに入っている。
ここは、ドレスデン研究所。3年前に8人の軍人の子供たちを集め、心臓の強化手術を行った。現在は、その子供たちの養成施設になっている。
研究所内にチャイムが鳴り響いた。
「あ、集合の時間だ」
ユリアンは、すぐさま走り出す。
「ちょっとぐらい遅れたっていいのに……」
「仕方ないでしょ、ユーレは真面目なんだもん」
二人もそのあとを追う。
このときのユリアンは、まだ信じていた。
こんな当たり前の毎日が、ずっと続くことを。
- Re: CHAIN ( No.20 )
- 日時: 2015/03/24 00:17
- 名前: えみりあ (ID: 1SUNyTaV)
+ + +
早朝にルテティアを出発したが、家に着いたころにはティータイムを過ぎていた。
実家の玄関先に立ち、ユリアンは深いため息をつく。
———ここに帰ってくるのも、二年ぶりか……
要塞都市ドレスデン。大昔の宮殿、伝統ある町並み。それを覆う星型の要塞。この地がかつて、ザクセン王国と呼ばれていたころの都。文化と近代科学の共存された街。
ユリアンは、このドレスデンを忌み嫌っていて帰らないわけではない。むしろ、家族のことは愛していたし、近所の人たちの優しさも十分に感じていた。
愛着があるこそ、つらくなる……そんなところだ。
ユリアンの家は、代々軍人の家系で、割と上流階級の家だった。邸宅もそれなりに大きく、上品な外装をしている。
意を決して、ドアノブを回す。
「ただい……おごっ!」
「お帰りなさい!お兄ちゃん!」
扉をあけるなり、盛大に迎えてくれたのは、ユリアンの6歳下の妹 ビアンカ。ユリアンの肋骨に正確に頭突きを……いや、顔をうずめている。
ユリアンと同じ、さらっとした栗色の長い髪はツインテールに結い上げ、それは兄に頬ずりをするたびにゆらゆらと揺れた。そして、ぱっと顔を輝かせて兄を見上げる双眸は、ユリアンとは違って丸みを帯びていた。
「ゴホッ……ゴホッ……」
「ビアンカ。お兄ちゃんはお疲れのようだから、休ませてあげましょう?」
駄々をこねる妹から、せき込む兄に助け船を出したのは、母テレジア。短い栗色の髪を内側に巻き、前髪は大きく分けている。ビアンカの丸みを帯びた目は、この母に似たようだ。
「えー、ムッティ。私はまだ、お兄ちゃんと一緒がいいよ……」
「ゴホッ……ごめんビアンカ。また後で、ちゃんと顔を出すから……」
その返事に満足したように、ビアンカは家の奥に走り去っていく。母はやれやれという顔で、ユリアンの上着と、キャリーバッグを預かる。
「ただいま、母さん」
「お帰りなさい」
母は、また大人びて帰ってきた息子の顔を見て微笑む。すっかり目じりにしわが寄るような歳になってしまったか、と、ユリアンはその笑顔を見て思った。同時に、そんなにも長い間、顔を見せなかったことが申し訳なくなる。
しんみりとした感情を隠すように、ユリアンは、もう痛みの引いた腹部をさすった。
「ごめんなさいね、あの子ったら。あなたが帰ってくるって聞くなり、大はしゃぎだったのよ」
「そうか……」
ユリアンは、先ほどの妹の姿を頭に思い浮かべる。二年前と比べると、内面はさほど変わらないが、ずいぶんと大人びた外見になった。
そして何よりの違いは、飛びついたとき、みぞおちに頭突きが入らなくなったことだ。背が伸びたのだなと、実感する。
「そうそう、あの子ね『お兄ちゃんのために晩御飯を作るんだ』って、はりきってたのよ」
「え……」
瞬間、ユリアンに戦慄が走る。
ユリアンは昔、バレンタインデーに妹からもらった黒色物質が原因で、病院に搬送されたことがあった。そしてユリアンの性格上、年の離れたかわい妹の手料理を、断ることなどできはしない。
「…………」
ユリアンは男らしく、腹をくくった。
———夕飯前に、胃薬だけは飲んでおこう……
+ + +
ユリアンたちが集まっていたのは、研究所の対人訓練室。ユリアンを含め5人の男の子と、3人の女の子、それからムラートの男性インストラクターがいた。全員動きやすい服装で、柔軟を行っている。
ユリアンはイザベルとペアを組み、足を広げて背中を押してもらっていた。男女とも奇数なので、ひと組だけこうなるのだ。
他の女子二人は、こちらを見て、くすくす笑っている。
「やっぱり、イザベルって、男の子みたいだもんね」
「あはは、言えてる」
背中越しに、イザベルが落ち込んでいるのが伝わる。何か言い返そうと思って、ユリアンが口を開こうとした時……
「おい。お前ら、そうやってイザベルに嫌味言うのやめろよっ!」
先にかばいに出た者がいた。バルドだった。
「バルド……」
イザベルの背中を押す力が弱まり、ユリアンはそっと顔を上げる。イザベルの頬が赤らんでいるように見えた。このときのユリアンに、その理由はまだ分かっていなかったが……
「まーた出てきたよ、バルド。やっぱ、お前、イザベルのこと、好きなんじゃん」
冷やかしを入れるのは、デニス・クルシュマン。赤毛の髪に、くりっとした悪戯っ子そうな眼、そして鼻の頭のそばかすが特徴的な少年だ。
「ち……ちげーしっ!」
「ははは、照れてやんの」
柔軟そっちのけで、喧嘩が始まる。男子はつぎつぎそれに加わり、どんどんエスカレートしていく。後ろにイザベルがいたせいで出遅れたユリアンは、女子と一緒にその様子を見物していた。
「コラッ、真剣二ヤラナイト、怪我シマスヨッ!」
ムラートの教官が、片言のノルトマルク語で仲裁に入ろうとする。と、その時……
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