複雑・ファジー小説
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- タビドリ
- 日時: 2017/07/20 01:34
- 名前: 月白鳥 ◆8LxakMYDtc (ID: NStpvJ0B)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=141.jpg
次は此処へ行こう。
次は其処へ行こう。
逢いたくなれば逢いに行こう。
別れを聞いたら花を捧げよう。
森に、海。光の先や、闇の彼方へ。
時の許す限り、何処までも行こう。
この身に刻む全てが、貴方の未知と願いつつ。
***
【挨拶】
初めまして、月白鳥と申します。
人外主人公の話が書きたくなって立ち上げた次第です。
主人公と同じく、行き当たりばったりのスローペース、マイペースで進めております。
粗の目立つ文章ですが、良ければ冷やかしついでにどうぞ。
尚、この物語を書くにあたり、様々な方からキャラを御譲りいただきました。キャラの投稿者さんにこの場を借りて御礼申し上げます。
***
【注意】
・ この小説は「全年齢」「洋風ファンタジー」「一人称」「人外もの」「投稿オリキャラ登場」「ごく軽微な流血・死亡描写」の要素を含みます。この時点で無理! と言う方はUターンを推奨します。
・ 作者は非常に神経が細いので、刺激の強い描写はぼかしてあります。首狩り万歳のグロテスクもの、読後感最低な胸糞話、SAN値暴落必至の狂気乱舞等、刺激的な文章を見たい方はUターン下さい。
・ 小難しい設定や用語が沢山出てくるので、キャラと用語の簡単な設定一覧を挟む予定です。文章の中だけで全部読み解いてみせる、と言う方は、目次よりそのページを避けて閲覧下さい。
・ 誤字・脱字・文章と設定の齟齬・その他不自然な文章については発見次第修正していますが、たまに修正し忘れていることがあります。そのような場合はご一報くださると嬉しいです。
・ 一般に言う『荒らし行為』に準ずる投稿はお止めください。本文に対する言及のない/極端に少ない宣伝、本文に関係のない雑談や相談もこれに該当するものとさせていただきます。
・ 更新は不定期です。あらかじめご了承ください。
・ コメントは毎回しっかりと読ませて頂いていますが、時に作者の返信能力が追い付かず、スルーさせていただく場合がございます。あらかじめご了承いただくか、中身のない文章の羅列は御控え頂くようお願い申し上げます。
***
【目次】
キャラクタープロフィール
→Book-1 >>38 >>64
用語集
→Book-1 >>39 >>65
地名一覧
→Book-1 >>40 >>66
Book-1 『鍛冶と細工の守神(The Lord of all of smith)』
Page-1 『翠龍線上の機銃(The strafer on the battlefield)』
>>1 >>2 >>3 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>12
>>13 >>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>21 >>22 >>23
>>26 >>27 >>28 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
>>35 >>36 >>37
Page-2 『彷徨い森のファンダンゴ(Fandango in the forest maze)』
>>41 >>42 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49
>>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58
>>59 >>60 >>61 >>62 >>63
***
【御知らせ】
・ >>16に挿絵を掲載しました。(H.27.12/10)
・ 狐さんがラミーのイラストを描いてくださいました! URLからどうぞ。(H.28.2/13)
・ >>17に挿絵を掲載しました。(H.28.5/2)
・ >>37に挿絵を掲載しました。(H.28.5/22)
- Re: タビドリ ( No.62 )
- 日時: 2017/02/01 03:06
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: TqOsU1rC)
『方位珠の扱い方
一:使用範囲
原則として彷徨いの森のみとなる。彷徨いの森の外では単なるペンデュラムに過ぎない。此処はきちんと弁えた上で使うこと。
年季が入ってくると彷徨いの森以外の森でも使えるようになると思う。そこは方位珠の手入れの仕方と、妖精夫妻の気まぐれ次第だ。すぐには使えるようにならないだろう。一年を目処に永く使ってやってほしい。
二:使い方
鎖の部分を手にもって自然に垂らし、静止させた状態で五秒ほど待つ。魔燈鉱が光ったら準備が整った合図だ。目的地を言えば、方位珠が最も安全な道を光で指示してくれる。妖精は物知りだ。少々曖昧でも、かなり精度よく使えるだろう。少なくとも遭難はしない。
森から出るまで案内は続く。目的地を変えたいときは一旦魔燈鉱を手に持ち、もう一度最初から同じ手順をやり直せば良い。オベロン達は面白がって付いてきてくれるさ。
三:手入れ
方位珠自体は頑健に作ってある。週に一回程度、綺麗な布で魔燈鉱の部分を拭けばそれで事足りるだろう。見栄えを重視したいなら、月に一度くらい鎖と菊座(きくざ)を磨けばいい。だが妖精はそうも行かない。我々と同じで、休みもなしに使われると滅入ってしまう。
彼等は光、とりわけ月の光に活力を求めるものだ。満月の夜は使用せず、月の出から月の入りまで月の光を当てておいて欲しい。月が見えそうにないのなら、晴れた日の何処か一日を取り、南中から日の入りまで陽の光を当てると丁度いい休息になる。
四:その他
方位珠は今のところ私以外に作っていない。万一壊れた時は、面倒でも私の所へ来てほしい。
遠方に居て来られないときは、“バルカンの宝具”の印を掲げた郵便局から書留で送り、一か月後に同局まで取りに来てくれ。自分の名前を忘れるなよ。
では、良い旅を。
ペンタフォイル山麓駅 ラヴァンドラ町八丁目一二番地八号
『ヴェルンド魔法具店』 コラーレリト』
ヴェルンド魔法具店からの帰り際、コラーレリトは俺に、方位珠とこの説明書を渡してくれた。
今までに出会ってきた職人からこうした説明書を貰ったことはない。大体が刃物だの装飾品だのと言った、直感で扱い方の分かるものだったから、まあ当然と言えばそうだが、やっぱり丁寧に解説してくれるとちょっと感動する。
ペトロの宿屋に向かうときも、着いてからも。飽きもせず説明書を眺める俺に、どうやらペトロが興味を引かれたらしい。トコトコと軽快な足音を響かせて近寄ってきたかと思うと、俺の差し向かいからぬっと頭を伸ばして、藁半紙の上に綴られた字を覗き込んだ。
「へぇ、細かい説明書さな。妖精夫妻の加護を受けた魔法道具らしい」
「関係あるのか?」
「勿論。森の妖精ってのは長生きでね、守神の中でも随分古参だ。だから、新しい守神の中ではもう意味を失ったこと……そう、旧いしきたりや習慣を大事にして、その中に意味を見出すんだよ。例えば南中の太陽や満月の光に力を求めたり、ヤドリギを眷属に見立ててみたり」
そう言えば、ペンタフォイルでは時折、冬至の日にヤドリギで作った飾輪(リース)を玄関口に下げているのを見かける。冬至から年明けにかけてリースを飾ること自体は何処でも同じようにやっているが、わざわざ手に入りにくいヤドリギで作ったものを掛けているのは此処だけだ。
彷徨いの森——妖精たちが住む森が近いからか。
尋ねると、ペトロは小さく点頭した。
「森精は悪戯好きでね、たまに生まれたばっかりの子供を攫っていってフェッチと取り替えたりしちまうんだ」
「“取り替え子(チェンジリング)”か」
「そ。だから眷属に見立てたヤドリギのリースを家に掛けて、悪戯に遭わないように祈る習慣が残ってるのさ。……逆に、こう言う習慣を破る家にバチが当たったから残ったって言うのが本当のとこなんだろうけどね」
——たかが習慣、されど習慣。ある訳がない、いるわけがないとおざなりにしようとする家や人に、妖精は障りを起こす。旧い習慣の中に意味を見出すのだから、向こうとしちゃ必死だろね。
——そしておいさん達も、妖精の加護が受けられなきゃ暮らしていけない。だから、此処には旧いしきたりが残ったし、そうしたしきたりを伝えてゆく人が沢山残ったのさ。
右耳に付けた石の耳飾りの表面をちょいちょいと撫で回しながら、ペトロの声は呟くように。何処か遠くを眺める飴色の眼には、郷愁めいた色が宿る。
思えば、俺が旅を始めた頃にはまだ、ペトロの宿は此処に無かったはずだ。勘違いなら俺が恥を掻くだけなら、もし本当なら、彼の故郷は此処じゃないのだろうか。
横顔を眺めながら物思う俺をちらと眇めて、彼は眼を細めた。
「おいさん元々はトラシア大陸の出だよ。戦争が始まった頃くらいにこっちに来たのさ」
「トラシア大陸って、南半球じゃねぇか。何でまたこんな豪雪地帯に」
「そりゃ、魔法使いの数がトラシアと全然違うからねぇ。魔法使いの素質があるって分かった時点でプレシャ大陸の方が暮らしやすくなるし、何よりトラシアの気候は羊にゃ向かないよ」
考えてもみなよ、とペトロは苦笑い。それもそうだと首肯した。
どの辺りに居たかにもよるが、トラシア大陸は大体の国が赤道直下か、あるはそれに程近い。雨も多いし、ざっくり言って何処も彼処も暑い国だ。その道二十年のキャラバンさえ音を上げるほど蒸し暑い気候の中で、羊が平然としていられるとはちょっと思えない。
かと言ってペンタフォイルが気候的に暮らしやすいとは口が裂けても言えないが、天秤にかけるとしたら暑さよりも寒さなのだろう。魔法使いにとって暮らしやすい土地なら、それは尚更だ。
「だけど、南半球だぜ? どうやってこんなとこまで来るんだ」
「今ならリブラベッサーだろうけど……おいさんが来た時はユグドラシルが丁度トラシアに居たからね」
ユグドラシル。
何気なく出てきたその単語を、ふんふんと聞き流しかけて。
「……はァ?」
気付いた時には、素っ頓狂な声が口から零れていた。
- Re: タビドリ ( No.63 )
- 日時: 2017/02/23 10:13
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: 0L8qbQbH)
『終わりなく旅する者(ユグドラシル)』。
あらゆる生命の物理的な進化を司り、同時に人間——知能の面で言えば、恐らくは進化の極限を見た種族——の庇護者でもある、生命(いのち)の守神。何を隠そう、俺がそれとの邂逅を目標にしている最高神の一柱だ。
その名の通り、それは星の彼方此方を当て所なく放浪し、行く先々で“調整”なるものを行っているのだとは聞いたことがある。それが正しいなら、ユグドラシルが人の多いプレシャ大陸を何度か訪れていたとしても、とりたてておかしな話じゃないだろう。
それに、ペトロが嘘を吐くとも思いがたい。理由もなければ、メリットは尚更にない。最高神に出会ったことを見栄の材料にするほど幼稚でもなさそうだ。
——なんて、あれこれ考えて黙り込む俺を前に、ペトロはぱたりと耳を横に倒した。
「ユグドラシルに会うこと自体はそんなに難しくないよ。どんなに遅くても、二十年に一度は同じ大陸に降りるように旅をするそうだから」
「二十年に一度か。それだったら、今年は当たり年じゃねぇの? 丁度四十年目だ」
「いやぁ、そりゃ厳しかろ。おいさん戦時中に少なくとも五回は見てるし、十五年前にも一度見てるからねぇ。戦争が止まってひと死にが少なくなったなら、もうしばらくは来るまいて」
それでもユグドラシルがすぐに死ぬわけでもなし、急ぐ必要は何処にもないだろうと、羊はからから笑い。彼の答えを聞き、俺は頭の中で崩そうとしていた旅程を、今一度元の通りに組み直した。
一方のペトロはと言えば、自分の言葉を自分で受けて何か思い出したらしい。そうだ思い出した、と手を打ち、トコトコ蹄の音を響かせて自分の部屋まで引っ込んでいったかと思うと、白いストールを抱えて戻ってきた。見覚えのある橙色の格子柄。ラミーのものだ。
ロレンゾの寝相でぼろ切れ同然になっていたと言っていたが、もう修理が終わったのだろうか。布の修理なんて見たことがないから良く分からないが、いくらなんでも早すぎる気がする。
しかし、当のペトロは涼しい顔だ。
「杖の修理がちょいと長引きそうでね、先に修理終わらせといたよ」
「あぁ、ありがとさん。杖の方は何かあったのかい」
「うん。技術的なことは特にないんだけど、膠(にかわ)の良いのが中々見つからなくってね。商人に聞いたら、次に膠が来るのに後三日掛かるって話ときた。——待てるかい?」
飴色の眼がこちらに向けられて、俺は思わず目を明後日の方に向けた。
その体勢のまま少し考えて、選んだ言葉を投げ返す。
「丁度いいや。修理してる間に『隠れ園』まで行って戻ってくるよ」
「隠れ園?」
「三年前に龍の峠で偶然見つけた。昔ちょっとした縁があったトコなんだけど、何だかんだ言って見つけたっきりになっててさ」
実際のところ、隠れ園の主はもう居ないわけだが……それは伏せておいた。彼に言ったところで、消えた守神が戻ってくるわけじゃない。
一方のペトロは、俺の抱えた事情は勿論知らない。いつもと同じように、人懐っこく笑うだけだ。
「ん、そうかい。それならストールの修理を急ぐ必要はなかったかもしれないね」
「ラミーも連れてくから丁度良いよ。ありがとな」
「嗚呼、お待ち。おいさんだって技工士だ、ちょっとだけ布の使い方について説明してあげるよ」
これから役に立つかもしれないから。そうにんまり目を細めて笑いながら、ちょいちょいと手招きするペトロ。一体どんだけ長い説明を聞かせるつもりなのだろうか。内心覚悟しながら、俺は呼び寄せられるまま彼の傍に近寄る。
そうして、少し後ろくらいまで俺が近寄ったのを横目で確認したかと思うと、彼は勢いよくストールをはためかせた。ばさっ、と羊毛のくせに歯切れのいい音を一つ立てた布を両手に広げて、彼はやおら話し出す。
「貰った時はあんまり気付かなかったと思うけど、この布は元々悪夢除けの魔法が籠った布でね。悪夢を見そうな時に掛けて寝ると、嫌な夢を見ないほど深く眠れる代物なのさ」
「昨日俺が掛けてた布団みたいなものか?」
「似たようなものかな。でも、今は違う魔法を籠めてる」
再び、ばさりと音。
よくよく目を凝らせば、確かに以前と布の雰囲気が違う。しかしながら、何処がどう違うのかは説明できない。
思わず目を細めて糸目を追っていた俺に、ペトロはお構いなしに続けた。
「もし見つけられないほどお嬢とはぐれた時、お嬢の名前をお呼び。兄サンの傍までこいつが連れ戻してくれるから」
「……はぇ?」
何かとんでもないことを聞いた気がして、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。そして、どうやら珍妙さが変なツボに入ったらしい、技工士はぐつぐつと喉の奥で笑いを噛み殺している。恥ずかしいからあんまり笑わないで欲しいんだが、言えば言うほどドツボにはまりそうな感じだ。
軽くかぶりを振り、真面目に聞き返せば、彼はちょちょ切れた涙を指で拭いながら首を縦に振った。
「兄サン、移氈(いせん)ってのを聞いたことはあるかい」
「移氈? 名前だけはちょっと前に聞いたな」
バジャンダンが何やらそんなことを言っていたが、結局のところ移氈とやらの詳細が何かは良く分かっちゃいない。そんな旨のことを適当に告げると、ペトロはストールを畳みながら、視線だけをこちらに向けてくる。
キミはもう移氈を使われたことがある、と。続く羊の声はにんまりとして低い。
「カズが持ってたろう、紅葉柄の布」
「……あの布が、ここまで俺を?」
「そう言うこと。尤も、お嬢のに籠めてるのはもう少し複雑な魔法だけどね」
やけにさらっと言ってくれたものだが、彷徨いの森からここまですっ飛んでくるだけでも十分得体の知れない事態なのだ。それが、名前を呼ぶ声に反応して、しかもその傍にわざわざ戻ってくるなんて。理解の範疇を超えている。魔法使いでも気が遠くなるんじゃなかろうか、これ。
全く、何と答えたらいいやら。頭を抱える俺に、ペトロはけらけらと高らかに笑ってみせた。
「兄サンの払いたがってた修繕代、払ってもらおうかな」
「いくらだ?」
「金貨十枚。結構良い糸を沢山使ったからね」
ペトロ自身は大分吹っ掛けたつもりなのだろう。
だが、安いものだ。
To be continued...
- Re: タビドリ ( No.64 )
- 日時: 2017/02/24 23:23
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: 0L8qbQbH)
【キャラクタープロフィール No.2】
※本編中で名前が出たキャラの簡易プロフィール。
※物語が進むと少しずつ更新されます。ネタバレに注意。
<Book-1/Page-2>
・ ラソル (Lasol)
『彷徨いの森』及び『銀嶺の城』を管理する守神、もとい『大樹の彷徨(ドリュアス)』。三千歳。女の子に見えるが実は無性別。
呑気で気まぐれのめんどくさがり。言動にいまいち掴み所がなく、何となくミステリアスな雰囲気が漂う。聡明なことは聡明だし、守神としてやるべきことはちゃんとやっているが、能力を自発的に発揮する機会も無ければやる気はもっとない。好奇心だけはいっちょまえに旺盛。
小さい子供のような姿で勘違いされやすいが、能力は相当高い。ペタルと容姿がよく似ているものの、全くの別人。
・ レグルス(Regulus)
九代目の『猫の王』にして銀嶺の城の管理者。九十歳超。
礼節を弁えた好々爺。温厚で多少の失礼も笑って受け流す人格者。老齢ゆえか自己犠牲的な面を持ち、規律を重んじるあまり自分の身を厭わない節が若干見受けられる。中々に怜悧な頭脳の持ち主で、何やらあれこれと策を巡らすのが得意な模様。
銀嶺の城を一人で守り抜けると豪語する程度には凄そうだ。
・ バジャンダン (Bajandan)
八代目の『犬の王』。アエローに辛酸を舐めさせられたことがあるらしい軍関係者。六十五歳。
寡黙で冷徹で冷静沈着な現実主義者。目的以外の物事に対しては隙も容赦も興味もない。ともすればベルダンより感情の振れ幅が狭く見える。王様らしく才能のある者を見抜き、それを活かそうとする才能と気概はあり、ルディカについて一定以上の評価を与えて静観している。
剣士でありながら『逆巻き嗤う娘(アエロー)』の加護を受けた風使いとしての側面も持つ万能戦士。しかし、アエローとは睨み合いばかりしていてウマが合っている感じではない。
・ カズ (Kaz)
本名カッヅェ。ペトロの息子。十二歳。本名が言い辛い。
父親譲りの温厚なのんびり屋。だがどんぶり勘定で趣味人の父親よりは幾分かしっかり者で、とりわけ金銭面に関しては彼の方がよほどちゃんとしている。また、誰に対しても物怖じせずに話しかけられる積極的な子。要領がよく、ぼけっとしているように見えて何でもてきぱきやる。
『技工士』として非常に高い才能を持ち、『移氈』なる長距離移動用の布を自力で織ることが出来る。他にも何か才能を持ってそうだ。
・ ケイティ (Katy)
ルディカの妹。『還俗の天医(ラファエル)』の力を借りる癒し手。十歳。
まだまだ未熟で甘えたさん、でもそんな自分をどうにかして大人に見せたいお年頃。傍から見るとふわふわしていて何を考えているのか分かりにくいが、寂しがり屋っぽいことは何となく察せられる。兄のルディカに対する評価がさり気なくひどい。自由人。
癒し手としての才能は今の時点でも師匠のペトロに勝るとも劣らず、潜在的な成長幅を含めれば彼をもしのぐ。すごい。
・ ゴードン (Gordon)
魔燈鉱入り貴石専門の採掘屋集団を率いている犬。二十八歳。
陽気で磊落。陰に籠らずさばさばした兄貴分。「身体は薄汚れているが心まで薄汚れる気はない」がモットーで、自他の仕事に一定の理念と節度を持って臨んでいる。基本的には良い奴だが、良い鉱脈の情報を聞きつけると結構しつこい。
暗い坑道で生活していることが多いためか散瞳気味。明るい場所ではサングラスが欠かせない。
本編中では割と珍しい喫煙者。葉巻を愛飲している。
・ コラーレリト (Collalerit)
ペンタフォイル山麓駅で『ヴェルンド魔法具店』を営むユキヒョウの技工士。『小さき者の王(オベロン)』と『妖精王の妻(ティターニア)』をはじめ、様々な守神と通じ合う多才な魔法使い。二十七歳。
派手好きで見栄っ張り。プライドが高く、人に隙を見せたがらないあまりに変な方向へ突っ走ってしまったちょっと残念な男。ビジネスライクな性格をしており、客に対しての応対は淡白である。仕事は丁寧。
『方位珠』と名付けられた、オベロン達の力を借りて動く魔法道具を創造・実用化した天才タイプの技工士。「努力が実る前の天才」と称される腕は伊達ではない。宝石細工と彫金を専門としている。
・ エリス (Elis)
セントヘレナ大学に籍を置く大学生。『古き栄華の遺児(テナニック)』と呼称され、何やら人間との関係性を匂わせる、アルビノのように色素の薄い女の子。外見は十六歳程度。
見た目の割に結構子供っぽく、しょうもないことで笑ったり怒ったりする。ラミーと似た者同士のようで、彼女とかなり気が合う模様。実直で無邪気、人の為になるなら割と何でもやれそうなタイプ。
魔法使いのようだが、まだ詳細は不明。
- Re: タビドリ ( No.65 )
- 日時: 2017/05/04 20:58
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: p6e1/yUG)
【用語集 No.2】
<Book-1/Page-2>
・ 猫の王(ねこ-おう/Lord of fantasia)
文字通り猫族を束ねる王。同時に『銀嶺の城』の管理とペンタフォイル山麓駅の名目上の長。魔法によって世を治める幻想(ファンタジア)の王。
森を管理しているドリュアスと協定を結んでおり、王になった者はドリュアスの眼と感覚を共有する。また、猫の王になる者は基本その後森から出ることを許されておらず、過去には森に縛られ続けることに耐えきれず精神を病んで自殺した者さえいるとのこと。強い覚悟の求められる称号である。
現在は九代目。時期『猫の王』としてルディカが推挙されている。
・ 犬の王(いぬ-おう/Lord of force)
犬族を束ねる長。猫の王と対を成す者。その武力と武勇によって人を引きつけ、統率する軍事(フォース)の王。
当代最も優れた武力を持つ犬族がその名を継ぎ、その多くが名君として名高い。猫の王よりも王らしいことをしているとよく言われる。
現在は八代目。史上最も力のある王として専ら有名。
・ 魔素(まそ/Mana)
魔力の最小単位。魔力を形作る原子の一種。表記する際は周期律表の欄外に無番の原子として表記される。
元素としての挙動は酸素によく似ており、酸素と同じように周囲と相互作用する。しかし、これを単体で遊離したり観測しようとしたりすると、観測者の確率を改変してすり抜けてしまい、単体での存在が実証できない。
高濃度に魔素を含む物体から酸素を引き出そうとしたとき、想定される量よりも酸素量が明らかに少ないことから存在は示唆され、数々の状況証拠から存在すると結論付けられはしたものの、単体での性質が実証できないため周期律表には並べられていない。
この世界の大気や地面、生物はある一定の比率で酸素が魔素に置換されており、この置換の割合と置換された場所によって魔法使い体質の有無が変わる。また、一部の植物は魔素と酸素の置換が起こりやすく、これが「魔力を溜めやすい/周囲から魔力を吸い取って溜める」性質として反映されている模様。
*増えるかも*
- Re: タビドリ ( No.66 )
- 日時: 2017/05/04 21:11
- 名前: 月白鳥 ◆/Y5KFzQjcs (ID: p6e1/yUG)
【地名一覧-2】
地名-2
・ 彷徨いの森(さまよ-もり/Forest maze)
翠龍線の東側の山麓に広がる、トウヒを主とした針葉樹林。少なくとも三千年前から存在する古い森。
地下に存在する大量の魔燈鉱とトウヒの性質により、莫大な量の魔力を保有している場所。溜め込まれた魔力は様々な要素と絡み合って力場を形成し、あらゆる智獣を森に迷わせる。その強さは時として『龍の峠』の山頂よりも高い場所を飛ぶ渡り鳥のコンパスさえも狂わせるほどで、化学的・機械的な計測手段もほとんど使えない。この森を抜ける手段は、魔法使いや縁故のある遣いに案内してもらうか、『妖精王オベロン』の力を籠めた方位珠(ほういしゅを)使うのみ。ただし、エディのように天性の勘だけで抜けてしまう猛者も中には居る。
最奥(中央)に銀嶺の城が建っている。
・ 銀嶺の城(ぎんれい-しろ/Fortress of White birch)
彷徨いの森の中央に存在する、樹齢約2500年の白樺の内部に築かれた白亜の城。五十年以上もの長きに亘り、犬族や他の種族を寄せ付けることなく在り続けた、猫族の最大にして最後の砦。現在は彷徨いの森の主たるラソルと、九代目“猫の王”レグルスが管理者を務める。
その巨大さ故に絶大な量の魔力を内部に溜め込んでおり、その魔力は森を覆うトウヒが蓄積した魔力と絡み合って、森全体に複雑な力場を形成している。この砦が陥落し崩壊した場合、力場は中核を失って暴走し、最悪の場合森全体が死の土地と化す可能性もあるらしい。
猫族の最重要戦略拠点であり、森そのものにとっても重要な存在。
・ 萬殊沙華町(ミリアルブちょう/Myriarub city)
ペンタフォイルから戦場を挟んだ東側に位置する犬の街。人口約6500人。本来の首都ではないが、実質犬の治める国の首都を担う発展した町。
ペンタフォイル以上に軍需で栄えている非常に物騒な場所。街に入った途端火薬の臭いがするほどだが、停戦後は軍需で培った鍛冶や精錬の技術を元手に何やら儲けているようだ。
デルフィーナとエリスが籍を置くセントヘレナ大学の所在地。
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