複雑・ファジー小説
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- 傘をさせない僕たちは
- 日時: 2019/10/30 13:29
- 名前: えびてん (ID: mkDNkcIb)
はじめまして!
えびてんと申します!
私の身近な人と身近な人は実は知り合いで、世間は狭いなあと感じることが多くてこのお話を書こうと思いました(*゜-゜)
主にそれぞれの恋のお話です( ´ ` )
ちょっとわかりづらいお話だと思うのですが、是非読んで頂けたら嬉しいです!
【 登場人物 】
@浅倉航平(あさくら こうへい) 25
→化学教師。
@水原茉里(みずはら まり) 24
→国語教師。
@武田夏樹(たけだ なつき) 17
→高校2年生。
@佐伯まな(さえき まな) 16
→高校2年生。
@瀬乃健人(せの けんと) 16
→高校2年生。
@西原恵(にしはら めぐみ) 17
→高校2年生。
@武田紗綾(たけだ さや) 24
→建築会社社員。
@井岡 瞬(いおか しゅん) 23
→建築会社社員。
@小宮山 剛(こみやま つよし) 42
→建築会社社員。
@小宮山綾子(こみやま あやこ) 39
→小宮山の妻。
@柳木 蓮(やなぎ れん) 22
→大学生。
@宇野美琴(うの みこと)25
→ピアノ科教師。
@浅倉結以(あさくら ゆい) 18
→航平の妹。
@相原直登(あいはら なおと) 19
→結以の友達(?)
@日向希穂(ひなた きほ) 19
→直登の大学のクラスメイト。
@藤井心春(ふじい こはる) 22
→カフェ店員。
@坂口椋(さかぐち りょう) 26
→画家。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.7 )
- 日時: 2018/06/17 14:19
- 名前: えびてん (ID: m9NLROFC)
#07 【 こんなの初めて 】
「うん!じゃあまたね!」
恵はそう言って笑顔で手を振った。
目の前で恵に手を振る女が角を曲がったのを確認すると、恵は手を下ろし振り返る。
瞬間。
「ねえ君、超可愛くね?!」
知らない男が3人。
恵は「ああ、ありがとうございます...」と言いながら微笑んだ。
「その制服、桜高でしょ?ねえ、俺たちと遊ぼーよー」
「いやあ〜わたしそのっ、えと、知らない人について行っちゃだめってパパに言われてるし…」
恵がそう言うと、「パパだって!超可愛いんですけど?!」と男3人が盛り上がる。
「ねえいいじゃん、遊ぼうよ〜」
男たちに言われ、恵は微笑みながらどうにかあしらう。
その時。
「遅くなってわりぃな〜」
男の声がした。
ふとそちらを見ると、同じ桜高の制服を着た男が1人。
恵は「えっ」と男を見る。
「えーっと、どちら様?なんか用?」
男はそう言って、男3人を見ると恵の肩を抱いた。
恵は驚いた表情で肩をすくめる。
「...んだよ、男持ちかよ。行こうぜ」と1人の男が言うと、3人組は渋々といった感じでその場を後にした。
3人組がいなくなると、恵の肩を抱いた男はすぐに離れ、恵を見て言った。
「大丈夫?」
言われ、恵は「えっと、その、はい!ありがとうございます!」と微笑んだ。
「俺は全然。たまたま同じ制服の子見かけたからさ。1人で帰れる?」
「大丈夫です!迎えが来るので!」
「そ?なら良いけど。気をつけろよ〜」
男はそう言うと歩き出し、恵に手を振るとそのまま去っていった。
恵は「まって!」と言って小走りで男の所まで行く。
「ん?」と男は振り返った。
「わたし、西原恵って言います!あ、2年生です!あ、あの、えっと、名前!名前教えてもらえませんか?」
恵がそう言うと、男はキョトンとした表情で恵を見ている。
「あ、いやだって!助けてもらったし、その、せっかく同じ学校なのにこれっきりってなんか...」
恵が必死に言い訳していると、男は微笑みながら恵を見て言った。
「武田夏樹。2年ですよ、俺も」
夏樹は腰を落とし、恵の視線に合わせて言った。
恵は「...武田、夏樹...くん」と呟く。
夏樹は「うん」と微笑んだ。
「じゃあな、西原恵さん」
夏樹はそう言うと腰を上げ、手を振って行った。
恵は夏樹の後ろ姿を見て、目を輝かせた。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.8 )
- 日時: 2018/07/01 15:23
- 名前: えびてん (ID: Df3oxmf4)
#08 【 もうすぐ夏だね 】
「けんちゃん!なっちゃん!花火大会!行こ!」
6月の終わり、まなは慌ただしくそう言った。
「おまえな、花火大会は8月だぞ。はしゃぐなはしゃぐな」
夏樹はそう言ってだるそうに棒アメを口に入れた。
まなは口を尖らせながら言う。
「まだまだだけどー!こういうイベントは予定立てるのが楽しいんでしょ〜」
「はいはい、予定立てるかー」と健人は微笑んだ。
「ほら!けんちゃんは優しい〜!なっちゃんとは大違い!」
「はー?おまえなー」
夏樹はそう言ってポニーテールをしているまなの髪の毛を触る。
「ちょっ、崩れる〜〜」
まなはそう言って夏樹の手を振り払う。
健人は笑いながらそんな2人を見ていた。
すると、「瀬乃ー!女子が呼んでるぜ」と声が聞こえた。
ふと見ると、廊下には恥ずかしそうにモジモジしてる女子生徒が1人。
健人が行き、廊下で何かを話している。
そんな健人の姿を心配そうに見つめるまなは眉が下がっている。
「まな」
夏樹がそう言うと、まなは「...ん?」とこちらを向いた。
夏樹は「ぼけーっとして、ブッサイクになるぞー」と微笑んだ。
「ひっどーい!女の子にそういうこと言わないの〜」
とまなも微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わり、俺今日委員会だから先帰ってて〜」
健人が言った。
「はいよーじゃあなー」と夏樹。
「あっ、なっちゃん!置いてかないでよ〜」
と言いながらまなも後から小走りでついてきた。
「おっせーなー短足ー」
夏樹は振り返って微笑んだ。
「もーうるさいなあ。自分が背高いからってさ」
隣を歩きながら、まなはそう言って夏樹を見上げた。
「わりーな、足長くて」
「はー、私も身長欲しかった〜」
「はいはい無理無理〜。さっさと帰ろうぜー」
夏樹はそう言って靴を履き替え、2人は学校を後にした。
「ねえたい焼き食べたい」
帰り道、まなが言い出す。
「いいけどどうした?」と夏樹。
「別に〜。家帰ってもやることないし、なっちゃんで暇潰そうかなーって」
「んだよそれっ。まーいいけど」
2人はそう言ってたい焼き屋へ。
2つ購入して、おまけで1つついてきた。
「まーた奇数。いつも思うけどこれ、3人で来た時2つだけ買えばいいんじゃね?」
公園のベンチでたい焼きを頬張りながら夏樹が言った。
「そうだね」とまな。
そんなまなを見て、夏樹はため息をついた。
「お前わかりやすすぎ。傷つくわ」
夏樹が言うと、まなは「へっ?」と夏樹を見上げた。
「何が?!別に普通だよ!てか何でなっちゃんが傷つくの?」
まなは明らかに焦って答える。
夏樹はもう一度ため息。
「お前、今日健人と知らない女の子が話してたの見て気にしてんだろ」
「えっ、なんで、そんなことないよ!」
「わかりやすいんだよお前は。しかも結構可愛かったもんな〜あの子」
夏樹はそう言って馬鹿にするように笑った。
するとまなは俯いて言う。
「...告白、だよね。あれ」
「...だろーな」
「けんちゃんあの子と付き合うのかな...」
「さあーな。健人に聞きゃいいじゃねーか」
「聞けないよ!そんなの...私けんちゃんの彼女でもないし...」
「お前俺の恋愛はズカズカ聞いてくるくせによ」
夏樹はそう言って目を細める。
まなは至って真面目な顔で答える。
「だってなっちゃんはチャラいもん」
「チャラくねーよ......花火大会、健人と2人で行けよ」
夏樹に言われ、まなは「えっ」と驚いた表情で夏樹を見た。
「なんで?!その話関係ある?!」
「あるよ。好きなんだろ?健人のこと」
「なっ、そんなこと!ないよ...」
まなはそう言って俯く。
顔が真っ赤だ。
夏樹はため息をつくと、顔を上げる。
「お前見てたらわかるよ」
「で、でも!私は...けんちゃんとなっちゃんと行きたいんだもん...」
まなはそう言って俯いた。
「なんで」と夏樹。
「何でって!高校入った時からずっと3人仲良くしてたじゃん。だから......」
「あのな、俺も夏くらい女と遊ばせろ」
「へ?」
「花火大会なんて、絶好のチャンスじゃねえか。まなに邪魔されてたまるかよ〜。俺は俺で行くから、俺に気を遣わずに健人と楽しんでこいよ」
夏樹はそう言って微笑んだ。
まなはどこか浮かない顔だ。
「...何か、やだよそんなの」
「なにがっ!」
「だって、なっちゃんは彼女いる時も私に構ってくれてたけど、でもやっぱりそれって彼女さんからしたら嫌だったと思うし。だからなっちゃん振られてるし...」
「振られたことほじくり返すな」
「でも私このままでいたいの。なっちゃんともけんちゃんとも仲良くしていたい」
「健人とお前が付き合ったって、俺は変わんねえよ。だから気を遣うなって」
「そそ、そんなこと!付き合うだなんて!」
まなはあからさまに照れた態度。
「...けどやっぱりそれって、今まで通りにはいられないってことだよね」とまな。
「まあ、俺だって彼女くらい欲しいしな」
「やだよそんなの〜〜。なっちゃん2年になってからようやく彼女作らなくなったのに」
「ようやくってなんだよ、やめろよ。て、違うだろ!俺の話はどうでもいいんだよ。まな、お前は花火大会で健人に告白しろ!わかったな!」
夏樹はそう言ってまなを見た。
まなは「そそ、そんなの無理だよっ!」と両手を振る。
「うるせえなもう!モヤモヤされてる方が俺が嫌だ!だから気持ち伝えろ、ちゃんと」
夏樹がそう言うと、まなは「...けんちゃん、どう思うかな」と呟いた。
「...わたしが、けんちゃんのことそういう風に見てるなんて知ったら...嫌われないかな」
「...んなの、言ってみなきゃわかんねえだろ」
「私、自信ない。けんちゃんモテるから。きっと私なんか選ばない」
「んま!そん時は俺が慰めてやんよ〜」
夏樹はそう言ってまなの頭を2回、優しく撫でた。
まなは「ほんと?笑わない?」と微笑んだ。
「んー、笑うかも」と夏樹。
「えっ、ひっどーい」
もしかしたら、健人がまなを振るんじゃないかなんて僅かに思ってしまう俺は、親友とは呼べないよな。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.9 )
- 日時: 2018/07/07 17:28
- 名前: 浅葱 游 ◆jRIrZoOLik (ID: rtfmBKef)
初めまして浅葱といいます。
スレ立ての時からタイトルが気になっていたので、感想失礼します。
全部追えたところで、ああ切ないなって思いました。それぞれの登場人物が考えていることが、滲んでくるような感じがしました。
まだ話は序盤だろうなと思いますので、今後も楽しみに読ませていただこうと思います(ω)
浅葱
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.10 )
- 日時: 2018/07/07 23:35
- 名前: えびてん (ID: KBFVK1Mo)
>>9 浅葱 さま
コメントありがとうございます。
そんな風に言って頂けてすっごくすっごく嬉しいです!
今後も投稿させて頂きますので、是非読んでください!
またコメントお待ちしてます!!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
#09【 美しい 】
「みこっちゃん!おはよー!」
3人組の男子。
「みこっちゃん〜」
今日もあの人は美しかった。
周りにはいつも人がいて、俺が入る隙なんてないほどに。
ただ見ているだけでも良い、なんてストーカーみたいなことまで思ってしまう。
さらさらで艶のある茶色の髪の毛からはいつもいい匂いがする。
香水じゃなくて、もっと自然な何か。
そんな彼女に微笑みかけられるとついにやけてしまう。
「あら、蓮くん。おはよう」
ほら。
この人はいつもこうだ。
俺の視線を悟ったかのようにこうして微笑みかけてくる。
俺は思わず微笑んでしまう。
「...おはよう」
「おはようございます、でしょ?あたし先生なんだから〜」
彼女、宇野美琴はそう言って微笑んだ。
「ああ、すいません。美琴さん、今日ちゃんと課題持ってきましたよ」
「ほんとに?蓮くん偉い〜!あとで見るからね」
美琴はそう言いながら蓮の頭を撫でた。
はあ、こういうところ。
「あ、ありがとうございます。美琴さんの授業楽しみにしてますね、じゃ」
蓮はそう言って美琴に手を振った。
美琴は「うん、今日も1日がんばろうね〜」と微笑んで手を振っている。
はー危ない。
顔から火が出そうになった。
あの人に微笑みかけられるといつもこうだ。
いつの間にか心臓がうるさくなって、いつの間にか顔が火照っている。
他の人ではこんなこと、ないのにな。
その時、LINEの通知が鳴った。
『今日は来れそう?』
ほんとにこの人はタイミングが悪い。
俺が美琴さんのことを考えいることを知っているかのようにこうして連絡してくる。
そんなの、君には会いたくならないよ。
『今日は無理かな』
蓮はそう返すとすぐに携帯をしまった。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.11 )
- 日時: 2018/07/13 15:57
- 名前: えびてん (ID: nnuqNgn3)
#10 【 変な子 】
「夏樹〜今日どっか行こうぜ」
健人が言った。
「うわっ珍し!健人から誘うなんてどういう風の吹き回し?」
夏樹は驚いた表情で健人を見た。
健人は「別に大した理由ねえよ。暇なだけ」と答える。
「んだよっ、可愛くねーのー」
「俺に可愛さ求めるなよ」
健人が呆れた顔で夏樹を見る。
すると、近くにいたクラスメイト高橋が「おい!」と声をかけてきた。
夏樹と健人が彼の方を見ると、高橋はかなりのテンションの高さで廊下を指さしていう。
「西原さんが5組に来てるんだけど!めっちゃ可愛いんだけど!!」
彼の指の先にはどこかで見覚えのある女子生徒。
夏樹は「あ、あの子...」と呟く。
「えっなに夏樹お前!西原さんと知り合い?!」
「なに、あの子そんな有名なの?」と健人。
「有名ってか、学年で1番可愛い〜!って言われてる子だろ!知らねえのかよお前ら!」
「知らねえよ確かに可愛いけど」と夏樹。
「ってちげーよ!夏樹、西原さんと話したことあんの?!あの天使みたいな子と夏樹が?!」
「失礼だなお前!いや、知り合いってかこないだ...」
夏樹が話している最中、「あっ夏樹くん!」と西原恵が笑顔で近づいてきた。
「え、え、なになに!なにどういうこと?!なんで西原さんが夏樹なんかを?!」
高橋は大袈裟なくらい驚きの表情。
「夏樹なんかってなんだよてめえ高橋!」と夏樹。
「えっだってこんな美少女が夏樹に用があるなんて...」
高橋がそう言ったところで、恵が話し出した。
「わたし、夏樹くんを探してたの!」
「俺を?」
夏樹はとぼけた顔をする。
「ええ、覚えてない、かな?わたしのこと」
恵は不安そうに首を傾げながら聞いてきた。
「いや、覚えてるけど…なんで探してたの?」
「え、だってあれだけで終わりなんて嫌だもん!せっかく夏樹くんと出会えたのに」
そこまで話したところでまた高橋が入ってきた。
「なに、なんかあったの?」
「わたしが街でガラの悪い人達に絡まれてたところ夏樹くんが助けてくれたの」と恵。
「えっなにそのベタベタなエピソード!俺が夏樹の立場なら良かったのに!ってか西原さんが俺と話してくれた...!」
いちいちうるさいやつだな、と思いながら夏樹は高橋を見る。
「あ、あのさ西原さん」
夏樹がそう言うと、恵は「恵でいいよ!」と微笑んだ。
「え、いや、その...」
夏樹は困惑した表情。
「それでね!わたしその、夏樹くんと連絡先交換したいなあなんて...」
恵は恥ずかしそうに言う。
なんだこの子。
確かに可愛いけど変な子。
「あ、いや、うん、いいけど」
夏樹がそう言うと、恵はぱあっと表情を明るくした。
「ほんとに?!やったあ、嬉しい!」
やーっぱ変な子。
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