複雑・ファジー小説
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- 傘をさせない僕たちは
- 日時: 2019/10/30 13:29
- 名前: えびてん (ID: mkDNkcIb)
はじめまして!
えびてんと申します!
私の身近な人と身近な人は実は知り合いで、世間は狭いなあと感じることが多くてこのお話を書こうと思いました(*゜-゜)
主にそれぞれの恋のお話です( ´ ` )
ちょっとわかりづらいお話だと思うのですが、是非読んで頂けたら嬉しいです!
【 登場人物 】
@浅倉航平(あさくら こうへい) 25
→化学教師。
@水原茉里(みずはら まり) 24
→国語教師。
@武田夏樹(たけだ なつき) 17
→高校2年生。
@佐伯まな(さえき まな) 16
→高校2年生。
@瀬乃健人(せの けんと) 16
→高校2年生。
@西原恵(にしはら めぐみ) 17
→高校2年生。
@武田紗綾(たけだ さや) 24
→建築会社社員。
@井岡 瞬(いおか しゅん) 23
→建築会社社員。
@小宮山 剛(こみやま つよし) 42
→建築会社社員。
@小宮山綾子(こみやま あやこ) 39
→小宮山の妻。
@柳木 蓮(やなぎ れん) 22
→大学生。
@宇野美琴(うの みこと)25
→ピアノ科教師。
@浅倉結以(あさくら ゆい) 18
→航平の妹。
@相原直登(あいはら なおと) 19
→結以の友達(?)
@日向希穂(ひなた きほ) 19
→直登の大学のクラスメイト。
@藤井心春(ふじい こはる) 22
→カフェ店員。
@坂口椋(さかぐち りょう) 26
→画家。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.57 )
- 日時: 2020/01/22 12:55
- 名前: えびてん (ID: BcUtmJZZ)
#55 【 向き合う 】
「ごめん遅くなった〜」
駅で待ち合わせして10分ほど待った頃、目の前に結以が来た。
「大丈夫、俺も今来たところ。どこ行こうか」
直登は携帯をしまい、結以に微笑んだ。
結以は「うーん、焼肉!」と直登に楽しそうな笑顔を向けた。
「おっけー、じゃあ行くか」
直登もそう言って2人は歩き出す。
街には1人で歩いている人、2人で歩いている人、家族で笑い合っている人、カップルで身を寄せ合っている人、様々な人がいる。
俺と結以は一体、どう見えているのだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃあホルモン!」
メニューを見て、結以は楽しそうに微笑んだ。
「まーたホルモンかよ」と直登。
「ホルモン美味しいじゃん〜」
「美味しいけどさ。じゃあカルビもー」
「おっけー。あ、あたしメロンソーダにしよーっと」
俺たちはいつも、こんな風に楽しく会話しながら一緒にごはんを食べる。
時には俺の家で結以がごはんを作ってくれる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
直登が目を覚ますと、時刻は22時を過ぎていた。
暗い部屋で隣を見ると、結以は気持ちよさそうに寝息をたて、ぐっすりと眠っていた。
直登は結以の白い肌を撫で、頬にキスをした。
布団を出ると少し寒かった。
直登はベッドの下に放ってあったトランクスとジャージを履きTシャツを着ると立ち上がり、ベッドの反対側にある結以の下着を拾う。
結以の脇に腰を下ろし、「結以」と小さく呟いた。
「結以」
直登はそう言って結以の肩をゆする。
結以は「んん・・・」と呟きながら目を開け、直登を見上げた。
「・・・寒い。自分だけ服着てずるい・・・」
結以はそう言って直登のTシャツの裾を引っ張った。
直登は微笑み、結以の下着を渡し、更にベッドの脇に落ちているショートパンツとTシャツを拾い、結以の前に置く。
結以は「着せて」と微笑んだ。
「赤ちゃんかよ」
直登はそう言って微笑みながら結以の体を起こし、ブラジャーを付ける。
「ブラ着けるの早くなったね」
結以はそう言って微笑みながらパンツを履く。
「は?元から早いし」
言いながら直登はTシャツを着せる。
ショートパンツを履きながら、結以も笑う。
「はは、1番最初外すのも着けるのも遅かったくせに。感謝してよね」
「遅くねえし」
「遅かったよ」
「1人しか経験したことなかったんだからしゃーないだろ」
「あたしで2人目かあ。1人目が良かったな」
結以は俺に抱きつきながらこんなことを言う。
俺の気持ちを知っててどんな神経してんだよ。
「・・・俺も、1人目が良かったな、結以の」
直登が言うと、「だね〜」と結以は微笑んでいる。
「直登、背が大きくて肩がしっかりしてて男!って感じでぎゅーってしやすい」
結以はそう言いながら直登に抱きつく力を強める。
体に絡みつく結以の細くて白い手を見ると、なんだか悲しくなる。
この手も、小さな体も、可愛らしい顔も、全部俺のものなら良いのに。
「結以」
直登は呟いた。
結以は表情を変えることなく「んー?」と返事をする。
「好きだよ」
直登が言うと、結以は違和感を感じたのか直登から離れ、直登の顔を見上げた。
「・・・どうしたの?改まって」
結以は不思議そうに直登の顔を見ていた。
結以はいつだって"私も好き"とは返してくれない。
俺はこんなにも好きなのに。
「・・・俺、結以と向き合いたいんだ。このままなんて嫌だ」
「向き合いたいって・・・」
「結以からすれば面倒臭いこと言ってると思う。都合の良い関係なのに、それを壊そうとするなんて」
「そんなこと・・・」
結以は少し俯いた。
「結以はなんで、なんで彼氏がいるのに俺とこんなことするの?俺の事どう思ってるの?」
直登は結以に真剣な眼差し向けた。
結以は戸惑った表情で目を泳がせていた。
あ・・・結以が困ってる。
俺のせいだ。
俺が結以を困らせている。
話したくないことを、蒸し返してる。
「あの、ごめん、その困らせたくて言ってるんじゃ・・・」
いや違う。
だめなんだ、このままじゃ。
直登はもう一度、顔を上げて結以を見た。
「結以、答えて」
結以は口をつぐんている。
「・・・どうしたらいいのか、分からない」
結以はボソボソと呟いた。
直登は「・・・俺の質問に答えて」と結以を見る。
「俺のこと、どう思ってるの?」
「・・・分かんない」
好きじゃないんだ、結以は。
「分かんない、か・・・。ごめん、今日は帰ってもらっていい?送るから」
直登はそう言って立ち上がった。
結以は直登の袖を掴み、「嫌!」と直登の顔を見上げた。
「・・・どうして?」と直登。
「嫌なの。今は直登といたい」
言われ、直登はため息をついた。
「俺のこと好きじゃないのに?」
言うと、結以は言葉を詰まらせる。
少し冷たい顔をしすぎたな、なんて後悔をした。
結以に悲しい顔をさせたくないのに。
でも、俺が悲しいままも嫌だ。
「・・・ごめん」
結以は俯いた。
「なんで謝んの。俺が勝手に結以のこと好きなだけなのに・・・困らせてごめん」
直登もそう言って俯き、再びベッドに腰を下ろした。
すると、結以は直登を見て小さな声で言った。
「・・・助けて欲しかったの」
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.58 )
- 日時: 2020/01/28 11:35
- 名前: えびてん (ID: BcUtmJZZ)
#56 【 教えて 】
「助けて欲しかったって・・・どういうこと?」
直登は怪訝な表情で結以を見た。
結以は唇を噛み締めている。
直登は結以の方を向き直り、結以の顔を覗き込んだ。
「教えて」
直登が言うと、結以は直登の顔を見て話し始めた。
「・・・私、陽介にDVされてて・・・それで・・・」
「陽介?」
「・・・彼氏。陽介って言うの」
「DVって、具体的にどんな?」
「・・・例えば、向こうから来た連絡にすぐ返さないと会った時に怒られて・・・殴られて・・・。デートの時間に遅れると怒られるし、殴られる。向こうの気分が悪い時は何もしてなくても怒鳴られるし・・・」
知らなかった。
いつも明るい結以がこんなことを抱えていただなんて。
「そんな・・・どうして別れないの?!」
「別れられないの」
「どうして?」
「別れるって言うと・・・裸の写真とか・・・撮られてて・・・大学にばらまくぞって言われてて・・・」
「そんなドラマみたいなこと・・・」
「本当、ドラマみたいだよね。そんなやつに振り回されて私・・・バカみたい」
結以はそう言って俯いた。
どうしたらいいのか分からない。
どうすれば結以を助けられる?
せっかく話してくれたのに俺は無力過ぎた。
「・・・ごめんやっぱ帰るね」
結以は立ち上がり、パーカーを羽織り始めた。
「・・・結以」
直登も立ち上がり、結以の元へ。
「嘘だと思ってる?」
結以は悲しげな表情を浮かべ、直登を見上げた。
直登は「そんな訳ないだろ」と言いながら結以を優しく抱きしめた。
「・・・座ろ、帰したくない」
直登が言うと、結以は「・・・直登はどうして私のこと好きなの?」と言って直登から離れた。
「いい子だから」と直登。
「いい子?どこが?浮気して直登のこと弄んでるんだよ」
「それはそうだけど、俺に話す全てが、してくれる全てが嘘だとは思えない。結以は俺の欲しい言葉はくれない。でも、優しい子だってことは分かる」
「騙されてるかも知れないじゃん」
「疑うくらいなら騙されてた方がいい」
「・・・バカじゃないの」
「バカだよ、バカでもいい」
直登が言うと、結以は「・・・やっぱり今日は帰る」と言って荷物をまとめ始めた。
「どうして・・・怒った?」
「ううん違う。1人で考えたいの」
「・・・そっか。分かった。送るよ」
「ありがと」
それから駅まで結以を送った。
駅に着くまでの10分、ほぼ無言だった。
結以との関係は終わったかも知れない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帰り道、携帯を見るとメッセージが溜まっていた。
『なおと!明日は暇?!』
希穂からのメッセージだった。
『暇だよ。どうしたの?』
メッセージを返すと、すぐに返事が来た。
『遊ぼ!買い物したいの!』
明日は土曜で暇だし、まあいいか。
『いいよ』
『やった!何時がいい?』
『じゃ13時くらい』
『分かった!駅集合ね!』
『了解』
希穂は結以のことをかなり心配してくれている。
どうせ明日根掘り葉掘り聞かれるんだろうな。
正直少し面倒臭いと思ってしまう。
家に着き、玄関を開けると結以のクロックスが目に入った。
部屋を見渡せば、まるで同棲してるかのように結以の化粧水や服なんかもたくさんある。
DVなんかする彼氏放ったらかしで俺と会っててそのことがバレて怒られたりしてないのかな。
そんなことを思ったりした。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.59 )
- 日時: 2020/01/31 15:06
- 名前: えびてん (ID: tO5N9Mr.)
#57 【 幼馴染 】
「なおとっ!」
希穂は嬉しそうな表情を浮かべてこちらに手を振った。
そういえば希穂と出掛けるの久しぶりだな。
結以と出会ってから3ヶ月くらい、希穂のこと放ったらかしにしてた。
「もうーようやく遊んでくれた!」
希穂は少しムッとした表情で直登を見た。
「ごめんごめん。最近忙しくてさ」
直登は苦笑する。
「嘘つき!あんな女に騙されてるからだよ!」
初っ端からその話題かよ。
「ごめんって。全然希穂に構ってなかったな」
「希穂、昔から直登とベッタリだったから友達いないの。要らないけどさ」
「はは、女友達も?」
「・・・友達作るの、難しくて。直登はどうやってみんなと仲良くなってるの?」
2人は歩きながら話す。
「うーん、別に何も難しいことはしてないよ。強いて言うなら壁を作らないことかな」
「壁かあ、希穂、直登しか要らないオーラ出てるよね」
「出てる出てる。あ、瑛二とも仲良くして欲しいし今度遊ぼうよ」
「エイジ?ああ、この間直登といた人」
「そうそう。あいつ良い奴だし」
「・・・直登がそう言うなら」
昔から希穂は俺にベッタリだった。
何をするにもついてきては、よく一緒に遊んだ。
高校も大学も、俺が決めると希穂は必死で勉強をして一緒についてきた。
俺もそれだけ慕われて嫌な気はしないし、本当に妹のようで可愛らしさを感じる。
だが俺にベッタリなせいで希穂は他者を避け、昔から友達という友達がいない。
可愛らしい顔をしているのに色恋沙汰を聞いたことはないし、男と関わっているのもあまり見たことがない。
希穂はそれで楽しいのかなーなんてたまに考えたりもする。
「今日はどこ行きたいの?」
歩きながら直登が聞いた。
希穂は目を輝かせながら「可愛いお洋服屋さんができて、希穂絶対直登と行きたい!って思ってたの!」と言いながら足を進める。
「おっけー、じゃ行こうか」
「うん!」
希穂は楽しそうに微笑んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時刻は19時。
直登は希穂とベンチに座り、休憩していた。
「疲れた〜そろそろ帰るか」
直登が言うと、希穂は「えー、もう?」と拗ねた表情を浮べる。
「もう7時だし、希穂も帰んないとおばさん心配するだろ?」
「希穂もう大学生だもん!直登と遊ぶって言ってきたし!」
「そ、そっか」
希穂も同い年だと言うことをたまに忘れる。
妹感ありすぎて。
その時だった。
「あ」
声が聞こえた。
直登と希穂が声の方向を見ると、そこには結以がいた。
「・・・直登」と結以。
昨日の今日で、正直気まずい。
しかも希穂といる所を見られた。
別に付き合ってるわけじゃないから結以からしたらどうでもいいかも知れないけど。
「結以・・・偶然だね」
直登はそう言って微笑み、立ち上がる。
「ユイって・・・まさか!直登、この女?」
希穂も立ち上がり、結以を指さした。
「・・・ああ、その・・・うん」と直登。
結以は不思議そうに「彼女?」と希穂を見て言った。
直登は「違う違う」と微笑む。
希穂はムッとした表情を浮べる。
「ねえあんた!」
希穂は結以の前まで行き、威勢よく言った。
やばいやばい何を言うつもりだよ希穂・・・!
「あんたなんなの?直登のこと弄ぶのやめてよね!」
希穂が言うと、結以は「えっと・・・」と言葉を詰まらせる。
「あなたは?彼女じゃないんでしょ?」
結以に言われ、希穂は「だったら何よ!」と少しキレ気味。
「別に。あなたに話す義務はないから」
結以はそう言って少し微笑んだ。
「何なのよそれ!」
「結以も希穂も落ち着いて・・・ごめん」
直登が言うと、2人は直登を見てから俯いた。
「じゃあ、行くね。直登、またね」
結以はそう言って歩き出す。
「うん、また。ごめんね」と直登。
「大丈夫、それじゃ」
結以はそう言うと2人に背を向け歩いていった。
結以がいなくなると、希穂は直登の方を見て怒ったように言った。
「直登!なんで謝るの?!直登は悪くないじゃん!」
「色々あるんだよ・・・頼むから変なこと言わないで」
直登はそう言ってため息をついた。
「変なこと?!希穂が言ってたこと本当のことでしょ!?」
「本当のことだよ!・・・でも、結以だってそんなこと・・・もういい。帰ろう」
直登はそう言って歩き出した。
希穂は「まって!行かないで!」と直登の腕を掴む。
「希穂!いい加減にしてくれよ!結以のことは希穂には関係ないだろ!」
直登は希穂の手を振り払い怒鳴るように言った。
希穂は今にも泣きそうな表情を浮かべている。
「・・・関係あるよ」
「は?」
直登はイライラしたように言う。
希穂は顔を上げる。
「関係あるよ!だって希穂は・・・希穂はずっと・・・直登のことが好きなんだから!」
「えっ」
直登は驚いた表情で希穂を見た。
「あんな女に弄ばれてるのが許せないの!何で?何で希穂よりあの女がいいの?何でよ!」
「希穂、落ち着いて!」
「意味わかんない!セックスしたいから?直登はセックスしたいからあの女といるの?!だったら希穂が相手になってあげるから希穂のこと見てよ!」
「違う、そんなわけないだろ」と直登。
「嘘だ!直登だって男の子だもんね!絶対そうだよ!なら希穂でもいいじゃん!何が違うの?!」
希穂は声を荒らげて言う。
直登は頭を掻きむしりイライラした表情で希穂を見る。
「だったらいいよ、来いよ」
直登はそう言って希穂の腕を乱暴に引っ張り、そのまま歩き出した。
「ちょっ!痛いよ!どこ行くのっ!」
希穂はよろけながら直登に連れられる。
直登はイライラしたまま無言でしばらく足を進め、アパートの玄関を開けた。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.60 )
- 日時: 2020/02/05 16:22
- 名前: えびてん (ID: BcUtmJZZ)
#58 【 躍起 】
ドアを開け、直登は靴を脱ぐと希穂を靴を履いたまま直登の部屋へ。
直登は希穂をベッドまで連れていき、希穂をベッドに乱暴に投げつけた。
「な、おと・・・?」
希穂は今にも泣きそうな表情で直登を見つめる。
直登は希穂のヒールを脱がせ、その場に置いた。
「相手になってくれんだろ?」
直登はそう言うと希穂に馬乗りになり、希穂のシャツのボタンを開け始めた。
「直登!やだ!こんなの・・・違うよ!やだ!」
希穂はそう言って暴れるも、直登は片手で希穂の腕を掴み、ボタンを開ける。
「直登・・・!」
「相手になりたいんじゃねえのかよ」
直登は手を止め、希穂の顔を見て言った。
希穂は少し泣きながら「・・・そしたら、希穂のこと見てくれるの・・・?」と直登を見上げた。
「・・・いいよ、希穂だけ見てあげる」
直登は少し落ち着いた様子で言った。
希穂は唇を噛み締め、呼吸を整えると再び直登を見上げた。
「・・・分かった。じゃあ、しよ・・・?」
希穂はそう言って目を瞑った。
直登は少し希穂を見てから首を横に振り、目を開けるとそのまま希穂の唇にキスをした。
それから何度も何度もキスをした。
唇を離すと、直登はゆっくりと希穂のシャツを脱がせた。
直登は希穂のブラジャーを外すと右手を添え、そのまま希穂の胸を舐めた。
希穂の胸は形がよく、大きくて雪のように白い。
綺麗なピンク色の乳首も、妹のように思っていた希穂のものだとは思えなかった。
変な感覚が頭をよぎる。
このおかしな状況は、想像もしていなかった。
希穂は恥ずかしそうに両腕で顔を隠している。
直登は右手で胸を触りながら、左手で希穂の腕をどかすと優しくキスをした。
「なおと・・・」
希穂は顔を真っ赤にしながら言う。
直登は「ん?」と言ってキスをやめ、希穂を見つめる。
「すき・・・」
希穂は泣いていた。
直登は手を止めると希穂の体から手を離し、馬乗りをやめた。
希穂の隣に腰を下ろし、頭をかいた。
希穂はキョトンとした表情で起き上がり、直登の方を向いた。
「・・・直登?なんでやめるの?希穂、何がいけなかったの?」
希穂に言われ、直登は「・・・違う」と呟く。
「・・・違うって・・・何?」
「やっぱりできない・・・希穂とヤるなんて・・・できない」
「なんで?希穂、もう嫌じゃないよ!直登となら・・・直登とっ・・・キスできて幸せだしっ・・・夢みたいでっ・・・」
希穂はそう言って泣き始めた。
直登は希穂の方を向き直り、希穂のシャツを羽織らせた。
「・・・ごめん、希穂。俺は希穂のこと、やっぱりそんな風には見れない。でも大事な存在なんだ、だからこんな形で傷つけたくない・・・ごめん」
直登はそう言って俯いた。
希穂は泣きながら俯いている。
「・・・希穂じゃっ・・・だめっ・・・なのっ・・・?」
そう言う希穂の頭を、直登は優しく撫でる。
「・・・俺はやっぱり諦められない。ごめん、希穂・・・」
「希穂頑張るから!・・・それでもだめ・・・?」
希穂はそう言って直登の腕を掴む。
「・・・ごめん」
何をやってるんだろう、俺は。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なーおーとー、今日飲みに行こうぜ〜」
講義が終わると同時に、瑛二が来た。
直登は「急だな」と微笑む。
「いいじゃんいいじゃん!聞いて欲しいことがあってさ!」
「聞いて欲しいこと?」
「花苗ちゃんだよ!」
「えっ進展あったの?」
「ふふん、まあな」
瑛二は得意気に言った。
「うおっいいなあ〜!とうとうキスした?」
直登も嬉しそうに食いつく。
瑛二は「いやそれはまだ」と右手の手のひらを直登に見せる。
「ああそう」と直登。
「手だよ」
「え?」
「手!繋げたんだよ!ついに!」
瑛二は嬉しそうに言った。
直登は期待外れかのような表情を浮かべた。
「それは・・・おめでとう」
「おい!思ってねーだろ!」
「思ってる思ってる!ただその・・・ピュアだなって」
直登はそう言って苦笑した。
「バカにしてんだろ!」
「してないって!良かったじゃん進展して!」
「まあなっ、お、希穂ちゃんだ」
瑛二はそう言って教室の入り口にいる希穂を見た。
希穂は微笑み、直登たちとは反対側にいた女子のグループに入っていくのが見えた。
瑛二は不思議そうに言う。
「最近希穂ちゃん、直登のとこ来なくなったよな」
「希穂も友達ができて良かったよ」
瑛二はそう言って楽しそうに笑う希穂を見た。
あれから2ヶ月が経った。
希穂とはあれ以来口を利いていない。
結以からの連絡も、まだなかった。
- Re: 傘をさせない僕たちは ( No.61 )
- 日時: 2020/02/13 18:57
- 名前: えびてん (ID: BcUtmJZZ)
#59 【 不思議な組み合わせ 】
彼女はいつもどこを見ているか分からない。
「美琴さん」
蓮はそう言って彼女を見た。
「なあに?蓮くん」
美琴さんは笑顔で蓮を見上げた。
「あー、ていうか美琴先生、でしょ?」
美琴はそう言って蓮の頭を軽く叩いた。
蓮は微笑み、「美琴さん」と美琴を見た。
「もう〜蓮くんったら。どうしたの?」
「こないだの課題、提出しようと思って」
蓮はそう言ってプリントを差し出した。
美琴はプリントを受け取り、「ありがとう〜」と微笑んだ。
「美琴さん・・・」
蓮が何か言いかけた時、「先生〜」と他の生徒の声が聞こえた。
美琴は「あ、ごめんね。なあに?」と言って生徒の方へ行ってしまった。
蓮はため息をつき、その場を後にした。
廊下を歩いていると、「あ」と声が聞こえた。
蓮が足を止めると、目の前にはどこかで見たような女が。
「ええっと・・・」
蓮は頭を掻きむしる。
「あ、DV彼氏と別れられない人」
蓮がそう言うと、目の前の女はムッとした表情を浮かべた。
「失礼な人。会いたくなかった」
彼女はそう言って蓮の脇をスタスタと通り過ぎて行った。
蓮は少しキョトンとしてから振り返る。
「待って」
蓮が言うと、彼女は「なにか」と振り返る。
「あーえっと・・・飲みに行かない?」
「は?」
彼女はポカンとした表情を浮かべた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
周りは騒がしかった。
目の前にはレモンサワーとビールと唐揚げと枝豆。
空気は最悪。重すぎる。
「あのーーーー」
彼女の言葉を遮り、蓮が言う。
「名前」
「は?」
「名前、教えて」
蓮が言うと、彼女は「ああ」と言ってから蓮を見て言った。
「浅倉結以です。あなたは?」
「柳木蓮」
「あーえっと、何て呼べばいい?」
「適当で。浅倉さんの好きなようにどうぞ」
「・・・じゃあ柳木くんで」
「了解」
そこまで話すと、2人は無言になる。
「・・・飲もうか」
蓮はそう言ってレモンサワーを手に取った。
結以も「そうだね」と言ってビールを手に取る。
「じゃあ、乾杯」と結以。
2人は小さくグラスをカチンと鳴らすと無言でそれぞれ飲む。
グラスを置き、蓮が言った。
「・・・てか浅倉さんさ、何歳?」
「18」と結以は小声で答える。
「アウトじゃん」
「うるさい。今時普通でしょ」
「てか年下かよ」
「え、歳上なの」
「俺22。4年。18ってことは1年だろ。てか18でビールかよ」
「うわ、先輩にタメ口利いちゃった」
「失礼なやつだな」
「てか、何で飲みに誘ったわけ?」
「無視かよ。・・・ちょっと聞いてみたくてさ」
蓮に言われ、結以は首を傾げた。
「聞いてみたいって、何を?」
「あの男の話」
蓮が言うと、結以は不貞腐れたような表情を浮べた。
「あ、ごめん。話したくないなら良いけど」
「ううん。逆にいいかも。あたしも聞いてみたいし」
「ん?何を?」
蓮も不思議そうに首を傾げた。
結以は枝豆を食べながら言う。
「あなたもあたしも、お互いのこと何も知らないし、普段は陽介のこと話したくないけどあなたになら話せそう、愚痴として。あなたも先生のこと、聞かせてよ」
「ああ・・・俺もか」
「当たり前でしょ。で、何を聞きたいの?」
結以が言うと、蓮はレモンサワーのジョッキを置いてから聞いた。
「何で別れないの?」
「別れたいの」
「じゃ別れればいいじゃん」
「別れられない事情があるの」
「なに?」
「"別れるなら結以の裸の写真ばらまく"って言われて」
「そんなドラマみたいなこと本当にあるんだね」
蓮は表情を変えずに言った。
結以はため息をつく。
「もっとこう・・・リアクションとってよっ。でも本当ドラマみたいだよね。だから別れられないの」
「俺がその写真取り返してやろうか」と蓮。
「どうやって?」
「普通に。携帯とって」
「そんなのバックアップとってるよ、きっと」
「んー、じゃその男殴る」
「普通に犯罪じゃん」
結以は少し微笑んだ。
「でも別れたいんでしょ」
「別れたい・・・あたし最近、好きな人出来て」
結以はそう言ってビールを1口。
「好きな人?」
「うん。別の大学の人で・・・結構よく会うんだけど・・・」
「その人とはいい感じなの?」
「向こうはあたしのこと好きって言ってくれてる。セフレ状態なの」
「わーお、セフレね。だったらいいじゃん、その男と付き合いなよ」
「簡単にはいかないじゃん。陽介とちゃんと別れなきゃ・・・」
「ああ、彼氏?」
「そ、陽介」
「ならその男に話してみたらいいじゃん、陽介のこと」
蓮はそう言いながら唐揚げを食べた。
結以は「うーん、こないだちょっと話したんだけどね」と言って枝豆を食べる。
「そしたら?」と蓮。
「うーん、びっくりしてた、かな?」
「だろうね」
「うん、それでどうしたらいいかわかんなくなっちゃって1人で帰ってきて、そしたら次の日に彼が違う女の子といる所見かけちゃって。彼女じゃないって言ってたけど口ぶりからしてその子は彼のこと好きそうだった。それでムキになっちゃってその子にキツいこと言い放ってそのまま2ヶ月連絡してない」
「ええ、それやばいんじゃないの。冷められるよ」
「・・・冷めてくれた方がいいのかも。巻き込みたくないし」
「巻き込むも何も別にそんな危ない話じゃないっしょ」
「ううん、陽介・・・ちょっと変な人たちと絡んでるから」
「変な人たち?」
「あたしもよく分かんないんだけど、暴走族?みたいな人たち」
「うーわ、だっさ」
「本当ね、やめて欲しいんだけどさ」
「てか、浅倉さんのこと好きなら何でDVするわけ?別れたくないってことは浅倉さんのこと相当好きだよね」
「・・・違うと思う。ただの執着だよ。浮気しまくってるし。誰かに取られるのが悔しいだけ」
「なるほど、そんな複雑な感情もあるんだね」
蓮は表情1つ変えない。
不思議な人。
てかミステリアス。
結以はそんなことを思いながら蓮を見る。
結以の視線に気づいた蓮は「ん?」と言って結以を見た。
「ねえ、柳木くんは美琴先生のこと好きなの?」
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