複雑・ファジー小説
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- 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】
- 日時: 2019/04/03 16:38
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
どうも、いつもお世話になっております。マルキ・ド・サドです。
前々から創作を練っていたどうしても書きたかった新たな小説を書こうと思っています。
ローファンタジー小説『ジャンヌ・ダルクの晩餐』をご覧になって下さりありがとうございます!
皆様のご愛読により私の小説はとても大きな作品となりました。
この感謝を忘れずこれからも努力に励もうと思います(*^_^*)
コメントやアドバイスは大いに感謝です。
悪口、荒らし、嫌み、誹謗中傷、不正な工作などは絶対にやめて下さい。
今回のテーマは妖怪が蔓延る暗黒時代を舞台として描かれる戦国ダークファンタジーであり残酷でグロテスクな表現が含まれています。この小説を読んで気分を害した場合はすぐにページを閉じる事をお勧めします。
【ストーリー】
天正10年(1582年)。謀反を起こした明智光秀の軍が織田信長を襲撃、3万の兵が本能寺に攻めかかる。しかし、突如現れた妖怪の群れが明智軍に襲い掛かり兵達を惨殺、優勢だった軍勢は瞬く間に総崩れとなる。決死の抵抗も虚しく光秀は戦死、本能寺の変は失敗に終わるのだった・・・・・・
その後、信長は妖怪を操り数々の戦を勝利を収めついに天下を統一、戦乱の世に終止符が打たれ人々は太平の訪れを期待する。しかし、冷酷な魔王の手により治められた大和ノ国は第二の暗黒時代が幕を開ける。そして、とある日の逢魔時の空に響き始めた謎の聲、人々はこの異変を妖怪の巣の叫び、地獄の唸り、神々の呪いであるという噂が流布されるのであった・・・・・・
天正12年(1584年)。徳川家康の家臣にして『不知火』の一員である若武者『本多忠勝』は奈良の支部にて『柳生石舟斎』と共に武術の修行に明け暮れていた。ある日、そんな彼らの元に真田氏の武将『真田昌幸』が訪れる。妖怪が溢れた天下の事態を重く見た昌幸は不知火の復旧を訴え信長打倒を依頼する。要望を聞き入れ忠勝は日本各地へ出向き織田政権を陰から崩そうとするがその時は誰も知る由もなかった。妖怪に溢れた天下の闇の奥に更なる魔の手が潜んでいる事を・・・・・・
【主な登場人物】
本多忠勝
物語の主人公である若き武将。猛将に似合わず白い長髪でおっとりとした面持ちのため一見すると少女にも見えなくない。不知火の復旧、そして太平の世を取り戻すため妖怪を操る信長や七天狗を倒す旅に出る。桶狭間の合戦を戦い抜いた若き日に闇鵺の宝刀である『殉聖の太刀』に触れ呪縛の呪いにかかり手にした時点で当時の年齢が固定され成長が止まっている。髪が白く容姿が幼いのはそのため。
柳生宗厳(石舟斎)
柳生一族の長にして剣術『新陰流』の継承者。号は石舟斎。柳生家厳の子。新陰流第2世。妖の討伐の際に踏み入った妖魔の森で忠勝と出会い以後、弟子として彼を育て上げた。彼も不知火に所属する精鋭であり、真田昌幸の訴えにより勢力の復旧を決意、忠勝を日本各地に派遣する。
織田信長
第六天魔王と恐れられる尾張国の戦国大名。本能寺の包囲網を際には妖怪を使い明智光秀の軍勢を返り討ちにし、その後も幾度もの戦に勝利を収めついには天下人となる。妖怪による統治を始め人々を恐怖で支配、高等な妖の一族である七天狗を従え多くの配下を大和ノ国各地に配置させている。人ならざる者の力に魅了された彼は自身も魔の血を取り込み半人半魔と化した。
紅葉
信長の側近である妖。武器は妖刀。
両親が第六天魔王に祈った結果で生まれた絶世の美女の鬼女。
源経基に寵愛され一子を宿していたが戸隠山に流された挙句、最後に降魔の剣を手にした平維茂に首を斬られ掛けるなどと痛い仕打ちを受けた為に人間が苦手になった。
信長が第六天魔王と名乗った事で信長の行く末を見届けようと信長の側にいる。息子の経若丸には結構甘いところがある。
七天狗
信長に忠を尽くす高等な妖の一族。妖怪である自分達を迫害した人間達を憎悪している。日本各地で暗躍しているがその存在を知る者はなく目的すらも不明。全員が天狗の仮面を身に着けており烏、狼、山猫、猿、狐、狸、熊の計7人で構成されいる。
【不知火の一員】
鈴音
不知火の一員である楽器の付喪神。武器は笛。
300年以上も大切に扱われた笛が付喪神として実体化した姿で名前は元々の持ち主につけてもらった。
人当たりの良い性格から小さい子供達からは慕われている。
争い事を激しく嫌悪するため自ら前線に赴くよりどちらかと言うとサポートに徹する為、戦闘能力はあまり高くない。
海李
不知火の一員である楽器の付喪神。武器は太鼓。
300歳以上も大切に扱われた太鼓が付喪神として実体化した姿で名前は元々の持ち主につけてもらった。
面倒見の良い性格から子供達からは慕われている。
また、鈴音とは元の持ち主が同じで同時期に実体化した為、鈴音とは幼馴染でお互いに好意を寄せている
杉谷 千夜
不知火の一員である人間の忍び。武器は銃器、短刀、焙烙玉。
甲賀で織田信長の支配に異を唱える勢力の所属であり魔王信長を討ち取るべく日々、命懸けの戦いを繰り広げている。
実は甲賀出身ではなく戦で村を追われ生き倒れていた所を甲賀の忍者に保護され杉谷家に養子になる形でくノ一になった。
杉谷善住坊とは兄の様に慕っていたが信長の暗殺未遂で酷い方法で処刑された事により信長に対して恨みを持っている。
滓雅 美智子(おりが みちこ)
不知火の一員である人間の忍び。武器は妖刀。
信長に反旗を翻す反乱軍の一員で甲賀の勢力と同盟を結んでいる。
その為、千夜とは面識があり彼女の事を『千夜ちゃん』と呼んでいるが本人からはあまり受け入れられていない。
忍者ではあるが無用な争いは好まない平和主義者であらゆる物事をスマートに済ませたがる。
ファゼラル・マーシャ
不知火の一員である西洋の魔術師。武器は属性を宿したタロットカード。
西洋から来た魔術師の青年で、常に敬語で話す。敬語を使わないのはカード達くらい。
自分のパートナーであり家族のような存在のカード達の事を非常に大切にしている。
鈴音達と仲が良く音のカードで伴奏を流して上げる事も。
ライゼル・マーシャ
不知火の一員である西洋の魔術師。武器は属性を宿したタロットカード。
西洋から来た魔術師の少女でファゼラルの双子の妹。常に敬語で話すファゼラルに対しライゼルはタメ口で話す。
自分のパートナーであり家族のような存在のカード達の事を大切に思っている。兄ぐるみで鈴音達とも仲が良い。
ゼイル・フリード
不知火の一員である人間の騎士。武器は剣と斧。
よく女の子と間違われやすく女と間違われたり子供だと馬鹿にされるのが極度に嫌う。
英雄のジーク・フリードの子孫にあたり体格に合わずかなりの食欲の持ち主。
蒼月 蒼真(そうつき そうま)
不知火の一員である半人半獣。武器は刀。
父親は人間、母親は妖狐の間に生まれた青年。
不正や悪を嫌う為、信長の政権に嫌悪感を抱いている。
人間妖怪関係なく平等に接しているため子供達からも慕われている。
箕六 夕日(みろく ゆうひ)
不知火の一員である人間。武器は大鎌。
物語を書く事が大好きな文系の青年。端麗な容姿から女性に間違えられる事が悩み。
幼い頃に霧隠の山奥に迷い込み狼の守護霊を拾い家族のように親しくなった。
以後、頼れるパートナーとして常に行動を共にしている。
【用語】
殉聖の太刀
忠勝が使用する聖の力が秘められた太刀。かつて室町時代の大和ノ国に訪れた異国の聖女の剣を刀へと打ち直した物。斬った人間や妖怪の霊気を吸収する事で刃の強化、『神力覚醒』が可能。異国の聖女だけが完璧に扱うことができそれ以外の者が触れると呪縛の呪いを受ける。不知火の秘宝でもあり神器の1つとして崇められている。
不知火
忠勝が所属している義の名のもとに戦う兵団。日本各地に支部を持ち人々の太平を尊重し民の平穏、調和の安定を目的とする。室町時代に『異国の聖女』、『陸奥重盛(むつ しげもり)』により結成され足利将軍家の影の軍隊として活躍していた。主に妖怪討伐や国の平穏と調和の安定を保たせる事を生業としており1世紀以上も前から大和ノ国の民を守ってきた。室町幕府が滅んだ本作では主君を失い衰退の一途を辿っている。
夜鴉
不知火同様、表では知られない秘密の組織。太古から存在しており人と妖怪の調和を目的とする。人が立ち入らない群馬の山奥に拠点を構え結界で身を固めている。戦いを好まず社交的な存在だが妖怪を不当に扱う不知火や織田政権の事はよく思っていない。
妖怪
日本の民を恐怖に陥れている人ならざぬ者。原住する者と魔瘴石で生まれた者の2つのタイプが存在する。また、下等、中等、高等の階級があり骸武者や鰐河童、妖蟷螂などの下等妖怪は知能が低く本能のまま人を襲う。鬼や大百足の中等妖怪は強力な力を持ち言葉を話す事も可能。高等妖怪は姿形は人間に酷似しており超人的な頭脳と戦闘能力を備えている。
大和ノ国
物語の舞台である妖怪に支配された列島大陸。日本、妖都島、ジパングとも呼ばれる。戦が絶えない戦国の世だったが信長の天下を手中に納めた事によりかつての面影を失い、政は一層に腐敗した。八百万の神々が住む神秘的な国でもあり、不思議な魔力を持つ霊石や宝玉が大量に眠っている。
・・・・・・オリキャラの提供者・・・・・・
桜木 霊歌様
妖様
siyaruden様
シャドー様
挿し絵(少し修正しました)は道化ウサギ様からの提供です。皆様のご協力に心から感謝いたします。
以上です。それでは物語の幕を開けようと思います。
- Re: 逢魔時の聲【募集は締め切りました】 ( No.19 )
- 日時: 2018/12/18 17:15
- 名前: 桜木 霊歌 (ID: f5Sjb9jT)
全然OKです。私も、後々見ると、かなりチートだなぁと思いました。
- Re: 逢魔時の聲【募集は締め切りました】 ( No.20 )
- 日時: 2018/12/18 19:43
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
問題が解決してよかったです。
桜木霊歌様、siyaruden様、妖様、シャドー様、オリキャラを募集して頂きありがとうございました。
どのキャラクターも個性的で設定や発想が面白いです。
全員を一気に出すのは難しいかも知れませんが1人1人を正当に扱い多彩な活躍をさせる事を約束しましょう。
これからもこの作品をよろしくお願いします<(_ _)>
- Re: 逢魔時の聲【募集は締め切りました】 ( No.21 )
- 日時: 2018/12/31 10:38
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
「敵は本能寺にあり!!」
馬にまたがる1人の武将が掲げた刀の刃先を正面の大本山に向け怒鳴った。その勢いに決して引けを取らない武士達の迫力のある雄叫び。静かだった京の都は怒号に包まれ戦場と化す。
武士達の兵力は数万にも及んでいた。土岐梗紋の軍旗を掲げ刀を抜き槍を突き立て敵陣に猛攻を仕掛ける。放たれた無数の火矢が曇った夜空を照らし雨のように降り注ぐ。その勢いは治まる事を知らず一刻の猶予も与えないまま大本山を包囲した。夜間の奇襲に不意を突かれ本能寺は燃え盛る。当然の如く、内側は大混乱に陥った。塔頭は焼かれ火だるまになった寝間着の武士達がのたうち回り死んでいく。焼け死なずに済んだ者達の運も束の間、次に放たれた矢の犠牲となった。
「全く、血が騒がぬ戦じゃのう。この程度の奇襲に3万もの兵力を動かそうとは光秀殿も容赦を知らぬ男じゃ。5千もあれば十分だったのではないのか?」
為す術もない敵陣を腕を組み呆れたように眺めながら堂々たる猛将が言った。
「政孝殿、相手は天性の才能と冷酷さを秘め数々の天下人を恐怖に陥れた魔王、織田信長。油断は大敵、奴はどんな手段を用いて来るか分かりません」
声がしたかと思うとどこからやって来たのか1人のくノ一が隣に立っていた。彼女は信長がいるであろう本能寺を睨みその手には燃えた火縄から白煙が上る大筒を大事に抱えている。
「だとしてもえげつないやり方じゃ。活躍する機会が少ない戦場にわしの刀も泣いておるわ」
「あの『うつけ』がそう簡単に自分の首を差し出すとは思えませんが・・・・・・この戦、何か嫌な予感がします・・・・・・」
すると後ろからもう1人若武者が歩み寄って来た。赤い鎧に身を包み腰に差した打刀を握りしめながら2人の左端に並ぶ。
「秀満殿、今までどこにいらしたので?」
「ちょっと近く峠に上って本能寺がどうなっているのか見物していた。向こうは派手にやられてるようだな。」
「なんじゃ、そんな所におったのか?怖気づいて逃げたのかと心配したぞ。」
「『千夜』、本能寺内部へ攻め込む前に今の戦況とこちらの戦術を教えてくれないか?なるべく手短に頼む」
嫌みに近い政孝の台詞を無視し秀満は真面目になって戦況を聞き出す。千夜と呼ばれた忍は肯定の仕草を見せ
「現在、第一陣の部隊が火矢を放ち本能寺全体を包囲しています。我々の軍勢に囲まれ逃げ場はないでしょう。唯一の入り口である門を私の大筒で破壊した後、政孝殿と秀満殿が部隊を率い突撃するのが得策かと。その後、第二陣である光忠殿、行政殿、『マーシャ兄妹』、『蒼真』、『夕日』達が加勢に向かいます。そして、第三陣は光秀殿が指揮を取り利三殿、『海李』、『鈴音』が援護に回る、と言ったところでしょうか」
「矢はもう十分に浴びせたのだろう!?早く門をぶち破ろうではないか!?こんなつまらん戦、さっさと終わらせ酒が飲みたいわ!」
「政孝殿の言う通りそろそろ打って出る頃合いかもな。千夜、入り口の爆破を頼む」
「御意」
千夜は膝を曲げ低い姿勢を取ると持っていた大筒を構える。拳ほどの大きさのある銃口の狙いを門に定め引き金を引いた。鉄の弾は目にも止まらぬ弾速で閉ざされた門の中心に直撃する。計り知れない威力に分厚い扉は粉々に破壊され内側を押さえていた武士達の守りも空しくあっけなく吹き飛ばされた。
「第一陣突撃じゃああ!抗う者どもには容赦はいらん!全て斬り捨てよ!」
刀を抜いた正孝が号令をかけ我先にと本能寺へ単身突入し千夜も秀満も後に続き内部へと侵入した。更にそれを追うように第一陣の軍勢が一気に流れ込む。
本能寺内部は悲惨な光景が広がっていた。敷地は炎と矢の犠牲になったいくつもの死体が横たわる。塔頭はほとんど焼け落ち本堂にも火の手が回っている。生き残った織田勢は主君を守ろうと立ちはだかるもその数が200にも満たない小勢、犬死の末路も目に見えていた。
「上様をお守りしろ!何としてでもここを通すなっ!」
部隊長らしき鎧で身を固めた武士が刀を振りかざし正孝に斬りかかる。渾身の力で刃を振り下ろすもその一撃はいとも容易く受け止められた。相手の攻撃をものともしない正孝は軽々と競り合いを打ち負かした。斜めに振り上げられた刀身は硬い鎧をも斬り裂き脇腹を深く抉る。
「あ・・・・・・がああ・・・・・・」
武士は刀を落とし悲痛の唸りを漏らし血が溢れ出る傷口を押さえる。やがて情けなく数歩後退りをし吐血と共に仰向けに倒れ絶命した。味方のあっけない死に様を目の当たりにし敵の武士達は恐怖に身が固まった。
「我こそは明智家家臣、四王天政孝(しおうてんまさたか)!!命がいらぬ者はかかってまいれええ!!」
正孝の怒号と共に明智軍の軍勢が攻めかかる。追い詰められた織田勢は抵抗もままならないまま総崩れとなった。逃げようとするも背中を斬られる者、我を失いそのまま首を刎ねられる者、複数に囲まれ八つ裂きにされる者。優勢が劣勢を圧倒するその戦は最早、虐殺と呼んでも過言ではなかった。
- Re: 逢魔時の聲【募集は締め切りました】 ( No.22 )
- 日時: 2018/12/18 23:40
- 名前: siyaruden (ID: jKtRhKej)
- 参照: h
千夜、美智子の設定を加筆しました
- Re: 逢魔時の聲【募集は締め切りました】 ( No.23 )
- 日時: 2018/12/26 19:21
- 名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
秀満も先人に斬り込み負けずと奮戦する。額に目掛けて槍の先端を難なくかわし口金を掴んで引き寄せる。釣られて体勢を崩した雑兵は胸部に刀が刺さり背中を貫通した。刀を持った2人がこちらに攻めて来るのが見え絶命寸前の槍兵から刀身を抜き後ろへ投げ捨てる。次に斜めに振り下ろされた刀を秀満は受け止める。その隙をついてもう1人が外法にも横から襲い掛かるがとっさに足をぶつけ蹴り倒す。すぐさま自身の刀身を下にずらし背後に回り込むとバランスを崩した敵の背を一刀両断。そして、起き上がって再び襲って来た残りの斬撃を視界に入れずとも回避し同時に刀身を直線に突き刺す。
「がっ・・・・・・!?」
敵は刀を振り下ろす事叶わず目と口をカッと開いた。神業と言える戦技に驚愕の眼差しを浮かべながら討ち死にした。
「光秀殿もやりおるのう。これぞ戦の醍醐味じゃ。どれ、雑兵の相手は雑兵に任せて信長の怯える顔を拝みに行こうかの・・・・・・ん?」
その時、正孝は何かに気づいた。目の前にいた2人の明智の兵が叫びを上げ倒れたのだ。1人は首から血を流し死に絶え、悶え苦しむもう1人に追い打ちの刃が振り下ろされる。大勢の兵に囲まれても尚、恐れる事なく逆らう者は華やかに切り捨てる。
現れたのは1人の武将だった。背が低く腰まで垂れた長い黒髪を後ろに結ってなびかせている。男とは思えないほど美しく精悍な顔を持つ美少年だった。
「ほう、このわしを目にしても震え上がらないとはなかなか肝が据わった小僧よ。名は確か・・・・・・」
「織田家近習頭、森蘭丸・・・・・・」
少年は正孝の台詞を遮り静かに名を名乗ると太刀に付着した血を掃い再び刀身を構えた。汚れのない純粋な目で相手を睨みつける。
「殿は天下を取るに相応しくこの国を統治すべきお方、ここで朽ち果てさせる訳にはいきませぬ!」
「随分と威勢がいいな。だが、小僧よ貴様はまだ若い。その年で命を粗末にする必要はあるまい。ここは大人しく刀を捨て投降せぬか?」
降参を持ちかけられた蘭丸はばかばかしそうに鼻で笑うと
「いくら年の差があると言えども、この蘭丸を見くびってもらっては困りますな。"老兵"に遅れを取るほど、私の剣術の腕は甘くはありませんよ?それはそうと正孝殿、そちらこそ降伏なさっては如何ですか?光秀殿の謀反は既にこちらの耳に筒抜け、あなた方の軍勢は直に壊滅するでしょう。殿の軍勢の恐ろしさはあなたもよくご存じのはず」
「小童が・・・・・・わしを老兵呼ばわりするとはいい度胸だ!」
挑発に頭に血が上った正孝は理性を捨て同じく中段の構えを取る。怒りに満ちた様子を蘭丸は見下したようににやけていた。
「正孝殿!こいつの相手は俺達に任せてあんたは本堂へ!」
そこへ秀満がと千夜が駆けつける。蘭丸の相手は自信に任せ信長を討ちに行くよう促すが
「邪魔立てするな!この小僧だけはわしがやらねば気が済まぬ!信長の首は貴様が取って参れ!安心せい!こやつを斬ったらすぐに駆けつける!早う行け!」
正孝は冷静さを失い聞く耳すら持たなかった。
「ここは彼に任せて行きましょう。信長はすぐそこです」
「・・・・・・そうだな。この機を逃せば全てが無駄になる。正孝殿、死ぬんじゃないぞ」
千夜と秀満は一戦交えようとする2人を背に本能寺へと走った。
本能寺内部は日ノ本の文化とはかけ離れた異様な造りが施されていた。壁、床、天井など至る所が赤く塗装されまるで生血が塗り込まれているかのようで左右にはこの世のものとは思えぬ獣の像が並び互いを対峙している。何十万もの命をことごとく奪った魔王には相応しい威圧感のある空間だった。部屋の奥に信長はいた。命が危うい状況に恐れを抱かず側近らしき2人の従者を傍に従えてただ、悍ましい祭壇の前で崇拝の姿勢を保つ。
扉が開き千夜と秀満が本堂に足を踏み入れた。2人はそれぞれの武器を構え行き場のない狭所に信長を追い詰める。
「信長・・・・・・!」
秀満が殺意を込め口調を尖らせる。
「浅井長政・・・・・・松永久秀・・・・・・そして、光秀までもが我に刀を向けるか・・・・・・」
信長は平静さを乱す事なく静かに口を開いた。"くくっ"と気味の悪い薄笑いを零しゆっくりと振り返る。彼の面持ちを見た瞬間、2人はとてつもない威圧感を感じ無意識にやや後ろへ遠ざかる。目は血に飢えた獣のように赤く眼差しは鬼のように強張っていた。それは慈悲を知らぬ冷酷な魔王そのもの、人の面影はない。
「光秀、用心に用心を重ねるあ奴だけに遥かに多くの刺客を差し向けるかと思っていたが・・・・・・やって来たのは武士が1人と忍が1人・・・・・・この信長も見くびられたものよ・・・・・・」
「黙れ!天下泰平のため、この世の調和のため・・・・・・信長、お前を斬る!覚悟!」
「お前は私の兄を生きたまま鋸でゆっくりと首を切り落とし殺した・・・・・・この恨み、倍にして返してやる!」
殺害を宣告されてもやはり信長は動揺すらせず余裕に嘲笑う。一歩、また一歩と前へ出ると悪意に満ちたその顔を横に傾け小指をへし折るようなぎこちない骨の音が鳴らした。
「"たかが人間如き"が大口を叩く出ないわ。ふっ、まあよい。少しは退屈しのぎにはなるだろう。貴様らの命を代償にこの信長を見事愉しませてみせよ」
最後の台詞と共に信長の笑みが消える。黒いマントをなびかせ腰に差した刀に手を伸ばした時だった。
「待って信長」
側近の1人が信長の抜刀を遮り彼と秀光達の間に立ちはだかった。長い茶髪を左右に結い紅い金の刺繍を入れた着物を着た絶世の美女。瞳孔が細く猫のような瞳を持ち一見すると人の容姿を象っているが人ならざる妖気を放つ。
「『紅葉』、楽しみの邪魔をするでない」
機嫌を損ねた信長が身勝手な行為に一層に表情を厳しくする。その脅しを気にも留めず、妖の女は一戦の機会を譲ろうとはしなかった。
「信長、貴方自らがこんなくだらない勝負に挑むまでもないよ。あなたを守り、人間を狩るのはあたしの役目・・・・・・ここはあたしに任せて?」
紅葉は振り返った視線を元に戻し広げた右手を前にかざした。妖々しい紫の妖気が手元に集まり渦巻いては何かの形を作り上げていく。それは長く鋭い刀身を築き一振りの太刀が具現化された。
「母上・・・・・・」
幼い子供の側近が怯えた様子で紅葉を後ろ姿を不安そうに見つめる。
「経若丸、大人しく信長の元にいなさい。あたしが人間を狩る様をよく見届けるのよ」
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