ポケモン二次創作 【金ノ瞳、銀ノ翼】  豆電球 /作



第二十八章 ~小さな想い~



ワカバタウン
リオン「チコ!マジカルリーフ!」
ヒスイ「もっとしっかり的を狙って!」
サトル「オーダイル、波乗り!」
ギンガ「バクフーン、かわしてきあいだま!」
四人の特訓は、三日前の事件からずっと続いていた。「自分達は、あの場に居たのに止められなかった」
「もっと強ければ、止められたかもしれない」、思いが四人を突き動かす。
「次こそは必ず止める」この思いが。
ヒスイ「よし!少し休憩しよう。」
リオン「はーい、チコ~少し休もうね~」
チコ「メガ!」
サトル「オーダイル、お前どんどん強くなってるなぁ。お前の力を引き出しきれてるのか?俺は。」
ヒスイ「大丈夫だ、サトルは強くなってきている。」
ギンガ「ああ。出会った頃とは比べ物にならないくらいな。」
サトル「喧嘩売ってんのか。」
リオン「三人共!お母さんがお昼作ってくれたよ!行こー!」
サトル「はーい!」
ヒスイ「幸せそうだな、サトル君。」
ギンガ「そうですね・・・」
リオン母「四人共、しっかり食べてね!沢山あるから!」
ヒスイ「リオンちゃんのお母さん、パワフルだね。しかも、リオンちゃんそっくり。」
ギンガ「実にそう思います。本当そっくりだ。二十年後のリオンを見てるみたいだよ。」
サトル「二十年後・・・」
リオン「お母さん、おかわり!」
リオン母「沢山おかわりするのよー!」
サトル「俺も!」
ギンガ「あっこら!俺も!」
ヒスイ「じゃあ、俺も下さい。」

リオン「花びらの舞!」
ヒスイ「うーん、もう少し的に向かって放てたらいいんだが・・・」
サトル「行っけぇ!アクアテール!」
ギンガ「うわ!バクフーン!」
リオン「サトルすごいじゃん!ギンガ君に勝った!」
ヒスイ「この三日で急成長じゃないか。」
ギンガ「あー!もう一回だ!今度は負けねえ!」
サトル「ああ、今度も倒してやるよ!」
さて、特訓といえば成果が出ればいいが、出なければ焦ってしまうのが人間の性である。
この中で一人、焦る者がいた。
ヒスイ「もう一回だ!」
リオン「チコ!花びらの舞!」
ヒスイ「おしいんだ。何か迷いがあるのか?迷いがあれば、ポケモンにも無意識の内に伝わってしまう。」
リオン「そんなことは・・・」
ヒスイ「何かあるのなら、どうすれば解決できるかを考えろ。まずはそこからだ。」
リオン「迷い・・・?」
【私は、あんな考えをする人が許せない。私はポケモン達と、仲良く暮らせる未来を創る】
リオン「心は固まっているはずなのに・・・」
サトル「どうした?迷いがあるってヒスイさんが言ってたけど。」
リオン「うわ!急に話しかけないでよ!驚いちゃったじゃない。」
ギンガ「さっきからずっと話しかけてたんだが。」
サトル「そんなに俺って影薄い?ショック・・・」
リオン「ごめん。そういう意味じゃなくて・・・」
ヒスイ「混乱しているな。リオンちゃん、今日は休みな。自分の部屋でよく考えるんだ。」
リオン「でも・・・」
サトル「リオン、ヒスイさんの言う事聴いたほうが言い。」
リオン「っ!サトルは黙ってて!」
《リオンはアッパーカットを放った!サトルは戦闘不能になった!》
ギンガ「サトルー!死ぬなー!」
リオン「もう知らない!」
ヒスイ&ギンガ「リオン!」
サトル「・・・」

リオンの部屋
リオン「私の迷いって何?こっちが聞きたいわよっ!」
はやて「くぅん?」
リオン「はやて、私何を迷ってるのかな?わかんないよ。」
はやて「・・・」
リオン「え?何?モンスターボール?」
ふと思い出す。彼の事、出会った日の事。今では想像もつかない程、冷たい目をしていた彼を。
リオン「もしかして・・・」
出会った頃は敵だった。しかし今は・・・
リオン「大切な友達。」
そこで、ウツギ博士との約束を思い出す。
《ルギアを助けるまでは、三人で行動する事を許可する》
リオン「ルギアは助け出したけど、まだ組織を潰してないから、博士は許してくれてるわ。」
しかし、組織を完全に制圧したら?きっと彼は約束通り、自らの罪を償う為に自分達の元から離れていくだろう。
リオン「・・・もしかして、これ?」
はやてがいつの間にか、自分に寄り添って眠っている。不安な心が溶かされていく気がした。
リオン「スイクン達を、私とはやてが助けたって意味、少し分かった気がする。」
この暖かい大きな鬣に、顔をうずめれば心まで温かくなる。
リオン「もう少しだけ、このままで・・・」

サトル「寝ているな。ぐっすりと。」
ヒスイ「答えを見つけたみたいだね。この笑顔を見ると。」
ギンガ「しっかし、気持ちよさそうだな。少し羨ましいぞ。」
ヒスイ「どっちが?」
ギンガ「!?もちろんリオンがですよ!」
サトル「へえ、俺はてっきり・・・」
ギンガ「そういうお前もじゃねぇか?」
サトル「俺はそんな事考えてない!」
ヒスイ「しっ!リオンちゃん起きちゃう!そっとしておこうな。」
サトル&ギンガ「・・・はい。」
むさ苦しい男達が出て行った後、満足そうな笑みを浮かべ、リオンは寝返りを打った。