ポケモン二次創作  【虹色の天空】  豆電球 /作



第三十三章 ~銀の光~



今回は、今まで全く登場してこなかった彼の話です。
ジョウト地方、渦巻き列島。
ここに、一人の男が現れた。彼の名は、ワタル。前々回リーグチャンピオンだ。
そして、リオン(キオン)の正体を知っていて、力を貸した人物でもある。
何故、彼が渦巻き列島に現れたのか。
それは、ここを住処とするあるポケモンに会うためだった。
ワタル「カイリュー、何処にいるか分かるか?」
カイリュー「リュウ~・・・」
ワタル「リオンならば、一瞬で理解できるのだろうな・・・」
それでも、表情で大体分かる。どうやら、分からなかったらしい。
ワタル「手がかりゼロか・・・」
それでも、進まなければならない理由が、彼にはあった。
仕方ないので、片っ端から探す事にしたらしい。奥に進んでいった。

数時間後。
ワタル「ふう・・・やっと、最深部まで来れた・・・」
ボロボロで、疲労困憊のご様子。(原因は野生ポケモン共)
ワタル「ギンガ君も居ないから、どうしようかと思ったけど・・・」
ま、なんとかなるだろ!とんでもなく、切り替えの早さである。
カイリュウ「・・・」
ワタル「カイリュー?どうした?・・!もしかして、近いのか!?」
カイリュー「リュー!」
ワタル「そうか!ありがとう、戻ってくれ。」
ボールにカイリューを戻す。
ワタル「果たして、俺に反応して頂けるのか・・・やってみるしかない!」
最深部の更に奥、伝説と呼ばれしポケモンが潜んでいる滝へ。
全力疾走で駆ける。果たせられるか分からない、最重要の任務を果たすべく。

巨大な滝の前に立ち、思いっきり叫ぶ。用があるのは、ここの主。
ワタル「ルギア!俺・・・いえ、この私、ワタルとお話しして頂けませんか!?」
反応は無い。
ワタル「やはり――俺では力不足なのか?」
彼女達ならば、訪れればあちらから現れるだろうに。
ワタル「お願いします!貴方にどうしても、お伝えしたい事があるのです!」
いくら叫ぼうと、現れる気配は無い。
自分は、選ばれしものではない――この時程、悔やんだ事は無い。
ワタル「・・・この情報が、【伝エル者】達の情報でもですか?」
辺りの雑音が全て消える。巨大な滝の音も、水音も。己の呼吸音さえ消えた。
ワタル「・・・?」
ケースに入れた、モンスターボール達が揺れる。何かが起こっている。
すぐに確信に変わった。追い討ちをかけるように更に、話を続ける。
ワタル「現在、彼女らの置かれている現状をお伝えする為に、私は参りました!」
音の無い、静寂に包まれていた己の体が、急に持ち上がる感触を感じた。
ワタル「!?」
あまりに強い閃光。眩しくて、目を瞑る。
次に目を開けた時。滝も、水も、地も無い、無の空間に居た。
???「力の無いものが、私を呼び出したのはこれが初めてですね。」
神々しい。これだけでは足りない。それ程の美しさを放つ、ポケモン。
せんすいポケモン ルギア。別名、海の神。
神話にて登場する、ポセイドンよりも強大で壮大で、美しい。
ルギアが目の前に、現れたのだ。

ルギア「私を呼び出すなんて・・・一般人にしてはやりますね。」
ワタル「お休みになっている最中を失礼しました。しかし、事は一刻を争う事態なのです。」
ルギア「そうですか。彼女達に関わる事だと聞きましたが・・・」
ワタル「はい、金の少女が悪に攫われたのです。」
ルギア「ああ。我々の力を手に入れようとしていた輩ですか。」
ワタル「そうです。一度消失したのにまた、復活してしまって・・・」
ルギア「どうしてですか?彼女らは、我々が逃げ切る事を何より願い、己らの労力を限界まで使い、消し去った筈でしょう?それが何故ですか?」
ワタル「確かに、一度は潰したのですが。ゴキブリよりも生命力が強くて・・・」
ルギア「言い訳は聞きません。子どもに頼った事を恥ずかしいとは思わなかったのですか!?」
ワタル「それは・・・」
ルギア「全く。再び旅をさせるのも、無理矢理性別まで偽らs」
ワタル「私の指示でありません。彼女自身の意思です。正体がばれぬように性別を偽るのも、髪を短く切ったのも・・・」
ルギア「分かってますよ。あの子は本当に強情ですから。」
ワタル「では、用件をお伝えします。」
ルギア「ええ。ホウオウには、私から伝えましょう。それに、貴方もそろそろ限界でしょうし。」
ワタル「!?」
ルギア「力を持たぬものが、こんなに長い時間私と話したのです。これ以上は無理でしょう?」
ワタル「・・・ええ。それでは、お伝えします。」

全てを伝えきった直後、意識が途切れた。伝えるといっても、言葉で伝えたのではない。
頭の中の記憶と記録を、直接送り込んだのだ。並の人間では出来ぬ行為。
それを可能にしたのは、伝説の力。それに、大人としての責任感だろう。
子どもに頼ってばかりだったのだから、せめてもの罪滅ぼしだ。
気がついたら、ルギアの背に乗り渦巻き列島上空にいた事には、流石に驚いたが。
ルギア「おや、気がつきましたか。」
ワタル「え、ええ。あの、この状況は・・・?」
ルギア「貴方から頂いた記録が、思ったよりも深刻なので。今から、ホウオウの元に向かいます!」
ワタル「左様にございますか・・・って、ええ!?」
ルギア「事は、一刻を争うのでしょう?」
ワタル「・・・はい!」
ルギア「それでは向かいます。しっかりとつかまっていて下さいね!」
銀の光が、三年ぶりにジョウトの天空を翔る。あの時と違うのは、背に跨る人物だ。
音速に近い速度で、エンジュシティに向かう。