イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第77話 決意、そして貴方達に伝えたい…
円「入るぞ。」
翌朝9時の事。
病室のドアを開けて現れたのは、円堂たちイナズマジャパン、ティアラとラティア。
テ「連れて来たよ。」
瑠「ありがと、ティアラ。」
瑠璃花が昨日ティアラ達に頼んだのは、イナズマジャパンの人達を、明日連れて来て欲しいという事だった。
話があるから、と。
病室の窓に腰掛けた格好で、瑠璃花は彼等を迎えた。
鬼「話、とは。」
瑠「…覚えてますか。濃い緑の匂いがする場所で、キャプテンと私達は出会いました。」
円「…?」
目を伏せて、彼女は話しだす。
瑠「サッカーバトル…無茶な条件だったって今は思います。でも…あの時の感想は、楽しかった、ただそれだけ。」
鬼「2-11で戦った時か。」
テ「瑠璃花と魁渡相手に当時の雷門中かぁ…」
ラ「勝負は見えてるわね。」
瑠璃花が微笑みを浮かべた。あの時の事を、思い出したのだろうか。
瑠「私達は、星の使徒研究所に行ければ良かった。でも方向音痴の私のせいで道に迷って…交通手段としてキャラバンを利用しただけなんです。ただ乗せて下さいと言っただけなのに、雷門中の皆さんは私達を仲間として迎えてくれて。更にその後の試合では、チームでサッカーをする事の喜びも教えてくれました。」
今までは4人以上でサッカーをした事が無かった姉弟にとって、それは大きな衝撃でもあった。
瑠「ファイナル・ザ・カオスでの戦いも、私達が巻き込んでしまった事なのにすんなり受け入れてくれて…本当に、皆さんに感謝しています。」
円「感謝っていうか…あれにはガゼル達が関わっても居たんだ。」
瑠「でも風介君達がいたのは、晴矢君に魁渡が挑発したからです。」
鬼(挑発…)
ラ(魁渡らしいわね。)
鬼(テレパシー??!)
テ(そうだよ~☆)
瑠(…あの~…)
瑠璃花がティアラ達の様子を苦笑しながら見ていた。円堂達は鬼道が驚いている意味が分からず、不思議そうに見ている。
瑠「FFIでも本当に…最後まで迷惑をかけてばかりで…。更に、また巻き込むなんてしたくないんです。これ以上、私の事に巻き込みたくは…」
声に必死さがこもる。
風「私の事?」
円「…どういう意味だ?」
瑠「旅行もパーティーも、楽しかったです。皆さん、今までありがとうございました。ティアラとラティアも、ありがとう。」
全員が目を見開く。
少女は窓の淵を、ぐっと強く握りしめた。
瑠「鬼道さん……魁渡の事、よろしくお願いします。」
鬼道が、瑠璃花が何をしようとしているのか悟った。
鬼「瑠璃花、お前…!」
入口から部屋の奥、彼女の居る窓まで走る。
瑠「もう、迎えは来てるんです…。」
テ「…!瑠璃花っ…!?」
最後の言葉。
――――――――みんな、さようなら
自分の体を後ろに押して、瑠璃花は……落ちて行った。
鬼道が手を精いっぱい伸ばす。彼女の右手を掴もうと、体を前のめりにして必死に。
右手の指と触れた。
でも掴めなかった。
彼女がほんの少しだけ微笑んで、目を閉じた。
鬼「瑠璃花ぁぁぁぁっ!!!!!」
落ちて行く。
瑠璃花が道に落ちたと思った、その瞬間。
彼女は消えた。そう、視界に映らなくなった。
落ちて、道路の上にあるはずの彼女の体が、無い。
選択肢は、2つ。
1.死を選ぶ。
2.消える。
皆さんを、魁渡を、死なせたくない。
だから、だから私は…………。
――私は、2を選んだ。
ごめんなさい、何度謝ってもきっと許してくれない。
ありがとうって何回言ってもきっと伝わりきらない。
私と皆さんは、そんな関係になれたでしょうか。
落ちて行く、周りの空間が歪む。
―お迎え、ありがとうございます…。
*エピローグ.2*
忘れられそうに無い日だった。
右手の指と触れた、あの感触が今も残っている。
新聞一面に載っている魁渡の事件と瑠璃花の投身自殺。あれは、自殺では無いと思いたいが。
庭のラズベリーが実った。
鬼道の家に帰って来てから直ぐに見つけた物だ。…妙にタイミングが良いな…。
自分の手。あの時、瑠璃花を掴めなかった、自分の手。
こんなに屋敷は広かったか?あの2人が居ないだけで、こんなに広く感じるのか?
募る寂しさ。
心の穴。
そこを埋められる物など無く。
…会いたい。
また夜がやって来る。月は見えるだろうか。
月を見るたび、俺は思い出すだろう。1人の少女の事を。
ラズベリーの花言葉は、深い後悔。
*おわり*

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