イナイレ*最強姉弟参上?!*

作者/ 伊莉寿



第12話 紅白戦前夜から―(後半)



『敵を…』

―あれ、どうしてこんなに赤い景色になってるの…?

パパ、パパ…何処?


赤い景色、それは惨劇の跡。少女は父親を探し走りまわる。やがて見つけた父親は、深い傷を負っていた。


『敵…討ってくれな。』

パパ、パパ…私、そんなの出来ないよ…片足分しかパパの血が無い私には…

『そう…か…』

パパ!!???逝かないで…パパ!!!!




鬼「決勝で世宇子を倒し影山は逮捕された。でも、奴はこれで終わらなかった。」

鬼道の言葉に瑠璃花ははっとした。今のは、一体なんだったのだろう…

瑠(敵を討ちたいという鬼道さんの言葉に賛同したのは、この時の少女…?)

鬼「エイリア学園を倒すために日本を廻っていた時、響木監督から、というメールが瞳子監督に届いた。そのメールがあり愛媛県に向かったのだが…不動からだったんだ。」

真帝国学園…不動がキャプテンを務め佐久間と源田というFF決勝で一番深い傷を負った選手が引き抜かれ、体にダメージがある技を使わせられ、酷い試合をした。

鬼「俺はあの時の不動が、影山が許せない…だから、選考試合で不動と同じだと、どうしても影山を思い出してしまう…」

瑠「そのサッカーは影山から受け継いだもの…という事ですか。」

鬼「……。分かってる。影山が裏で汚い事をしていた、だから悪い奴だと。だが、…」

俯き諦めたように笑って彼が言う。

鬼「あいつがいなければ、俺は此処に居ない。」

瑠「!」

瑠璃花は、ようやく理解できた。

鬼道は円堂達と出会えてよかったと思っている。それは誰から見ても分かる。彼等は親友だ。

だが、出会えたのはサッカーの舞台。その舞台まで鬼道を連れて行ったのは影山だ。

影山が鬼道を強くして、影山が彼等の絆を深める結果となった事件を起こした。

だからこそ、今、彼は円堂やFFIのサッカーに、真正面から向う事が出来ない。

瑠「……悩んで、良いと思います。ですが、その気持ちで選考試合をしても、良い結果は出ないですし、キャプテン達は悲しい思いをします。」

鬼「!」

反応が返って来た。瑠璃花は彼の目を見て話す。

瑠「沈んだ気持ちでサッカーをしても、シュートは入りません。ドリブルは続きません。カットも上手くいきません。ゴールを守ることもできません。調子が悪かったと言っても、一度きりの舞台です。その時の力が自分の力と評価されてしまいます。鬼道さんが明日、沈んだ気持ちでゲームメイクは出来るでしょうか。不動さんを見るたび足が止まっていては、ボールは奪われてしまいます。」

鬼「…」

悔しそうにする鬼道を見て、瑠璃花はきつ過ぎたか、と反省する。でも、話はまだ終わっていない。

瑠「プレイが上手く出来なければ代表にはなれません。ですが、キャプテン達は鬼道さんと一緒に世界を戦いたいはずです!!」

鬼「…そうだな…だが…」

瑠「不動さんはチームメイトでありライバルです。深く見なくても良いんです。選考試合は個々の能力を見ます。その為のチームですから。つまり、自分の力を出し切れればそれで大丈夫です。不動さんの事は、今は気にしていなくてもいずれ分かります。」

鬼「まるで分かっている様な口調だな。」

鬼道がいつもの顔で言う。瑠璃花は目をぱちくりさせて、それから微笑んで言った。

瑠「絶対分かります。きっと良いチームメイトになれますよ。」

まだ彼の中で不動に対する気持ちは良いものではない。

だが、確かに選考試合に落ちてしまえばそこで終わりなのだ。世界の強い奴等と戦いたい。だからここで終わりには出来ない。

鬼「明日、見に来てくれるか。」

瑠「魁渡もつれて行きます☆」

話していたら、突然部屋の中が明るくなった。

鬼父「もう寝なさい。明日は早く起きるんだろう。」

明るい照明に目を手のひらで守りながら、瑠璃花は立ちあがった。

瑠「おやすみなさい、有人さん。」

鬼「ああ。」

部屋を出ると魁渡がいた。親指を立ててどうだった、と魁渡が聞く。瑠璃花は親指を立てて微笑んだ。

魁「ナイスだぜ瑠璃姉!」

瑠「はいはい、おやすみなさい魁渡。」

魁「待てって、その前にカードゲームを…」

瑠「やらないから!」

…夜は長い。


こうして瑠璃花は雷門中に来た訳だが、居心地が悪くなり逃げだそうとした所を緑川に捕まった。

鬼「…約束破りか?」

瑠「ごめんなさい!!代わりに審判やります!!!!」

その様子を少し遠くから見守る少女。金髪のショートに水色の瞳。その瞳が見つめる先には…

テ「瑠璃花、何であんなに謝ってるんだろ?」

瑠璃花。すごく謝っている。テンションがハイである証。

瑠「え!ヒロトさんって、グランだったんですか??!あの時居なかったので分かりませんでした…」

全(顔見ればわかるだろ!!!!)※一部除く

テ「くすくす…」

瑠璃花が振り向く。

瑠「え、ティアラ??!」

テ(瑠璃花、今日声大きくない?!)

*続く*