イナイレ*最強姉弟参上?!*
作者/ 伊莉寿

第11話 紅白戦前夜から―(前編)
鬼道は不動とチームになった。この事が彼を沈んだ気持ちにさせている。
夕食の席でも。
瑠璃花達は世界中で決まる代表選手達を調べていた。秋たちと雷門中で会話をしながら、不動や飛鷹の話も出た。
瑠璃花達は不動が鬼道にサッカーを教えた影山の選手である事、性格等を知りショックを受けた。
そんな選手が自分の味方だと…そう考えると沈むのも当然だと瑠璃花は思うと同時に、支えたいとも思った。
鬼「…ごちそうさまでした。」
静かに席を立つ鬼道を見て魁渡は思う。
少し前の瑠璃花のようだと。
魁「瑠璃姉、今度は瑠璃姉が鬼道を支えてやれよ!」
瑠「!……そっか。」
彼等が総理に呼ばれ雷門中に行った帰りから、鬼道は明るい表情を見せていない。
家の中の重い空気に嫌気がさしていた。
瑠「…がんばってみます。ごちそうさまでした!」
鬼道を追い階段を上がる姉に、魁渡は心の中でエールを送る。鬼道には日本代表でいてほしい、そう思っていたから。
彼の、兄の様な優しい先輩だから。
瑠(がんばるって…どうしよう(-_-;))
瑠璃花は鬼道の部屋の前でウロウロしていた。
彼と自分は似ている、でも瑠璃花は自分がしてもらった事など出来ない。するような状況でもない。
そして、ウロウロしていてもダメだ、と思い、ドアをノックする。
返事が無い。
瑠「…入ります…」
ドアノブを回す。部屋の暗さに驚きつつも一歩を踏み入れる。
鬼道はベッドの下で雑誌を読んでいた。正確にいえばめくっていた。
文字を呼んでいる速さでは無いし見えるはずがない。
瑠「…明り、付けますね。」
返事はまたも帰って来ない。スイッチを手探りで探しおそうとした。
鬼「…何の用だ。」
瑠「!!」
突然発せられた言葉。このまま用件を伝えろ、と命令されている気分だった。瑠璃花はスイッチの辺りにあった手を下し、鬼道を見る。
暗闇に目は慣れてきていた。
瑠「…元気が無かったので、その…」
鬼「そんな事で来るのか。」
瑠「ですが、周りの方も心配してますし、練習風景を見ても視線が不動さんに行った時の違和感は、皆さんが知っています。スムーズに練習が行かなくともレベルが高いので気にはしませんがやはり…」
鬼「…。」
鬼道は反応しない。返事が返って来なかったのが心配なのか、瑠璃花がその場に正座して鬼道と目線を同じにする。
鬼「…影山は、生きていると思うか。」
瑠「!」
鬼道の言葉は、答えを求めているというよりこれから話す事のプロローグのようだった。
鬼「あの人は俺にサッカーが上達する様教えた人だ。そしてこの家に養子として入る事を薦めた人でもある。」
瑠璃花は家の事までは知らなかったので、驚いて彼を見た。この家は本当の家では無い…彼の両親の事も後で聞いておこうと思った。
鬼「影山についていれば強くなれる。実際帝国学園は強かった。敗者は醜い。その考えが出来たのも帝国に入ってからだ。俺等は負けた学校を破壊していた。強さを見せつけるために…」
瑠「エイリア学園と同じじゃないですか…」
帝国のラフプレー、彼女は知っている。帝国が怪我をさせてエースが出れないようにしていた事も。
鬼「俺は知らなかった。自分が強いんだと信じて疑わなかった。でも違った。影山は裏で小細工をしていた。自分が信じてきた物が崩れた…」
瑠「でも、キャプテンの雷門に入ったんですよね。」
鬼「世宇子中に惨敗してな…俺が出ようとした時には試合が出来る状況じゃなかった。」
瑠「影山が、何もしなかったんですか?」
鬼「…影山は世宇子中の監督になっていた。警察から逃げてな。俺は敵を打ちたくて雷門に入った…」
敵を打ちたい。
……どうしてだろう。
心の中で賛同する声が聞こえた。

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