完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~
*37*
『しりとりシリーズ』 『帝都』の『その後』 帝都戦争 1
俺は殺さないといけない、尊敬する天皇様の為に──
「さぁ、今日も出勤するか」
そう呟きながら俺は布団から起き上がる、そして歯磨きをして食事を取る、俺の名前は久比里色也(くびり しきや)だ──ただの警邏である、よくいる警邏の一人である、そして天皇様を守る仕事をしている、俺は欠伸をしながら、味付け海苔と玉子掛けご飯をさっさと作り、それを食す、ふむ、産み立ての卵は美味いなぁ、そう思いながら飼っている鶏にご飯をあげて、俺は外に出る。
俺の仕事場は皇居である、皇居で俺は天皇様を守っている、忙しい時もあるが天皇様を守る事が出来て俺は嬉しい仕事に就いたなぁ、と思う。
そして急な坂道をゆっくりと登り、懐中時計を確認する、よし、勤務時間の10分前だ、よしよし、今日も遅れずに皇居に着いた、最近は此処の坂を登るのも慣れてきたなぁ、そう思いながら俺は夜番の知り合いと交代する。
「大丈夫か? 最近は目の下が酷いぞ?」
俺がそう言うと、知り合いの日下部本羅(くさかべ もとら)はハハハ、と乾いた笑いをする。
「まぁ、な──深夜作業は大変だなぁ、と感じているだけさ、まぁ、妻も息子も居るから家であまり寝れてないだけだしな、休日は」
「そうか、妻子持ちは大変だ──」
「そうですねぇ、それでも警邏の方々は肉体が基本なので、あまり無理はして欲しくは無いのですがねぇ──」
ん? こんな朝早くから誰だろう? そう思いながら振り向いた、するとそこには我等の天皇様が居た、のんびりとニコニコ笑いながら言う。
「てっ天皇様!? お早う御座います!!」
「天皇様、お早う御座います!」
俺と本羅は頭を下げる、天皇には頭を下げなければならない、それは生まれた時から身に染みている。
「いやいや、頭を上げて下さいよ、警邏の方々──分かりますよ、妻と息子の話は──20年前とかは本当に大変でしたよ、重労働の後、息子娘と遊んであげなくてはならない──その時は天皇だった事を強く後悔しましたよ、流石私の父は小さな時、良く遊んでくれたなぁ、と──」
しみじみ、となる天皇様、天皇様も大変だ、二人が思った事実である。
「ではでは、お仕事頑張って下さい、警邏の方々……」
そう言いながら天皇様は皇居内の自分の仕事場へと入って行った──俺と本羅は右手で敬礼をしながら天皇様が皇居の中に入って消えるのを待った──そして消えた、俺と本羅は敬礼を解いた。
「それにしても天皇様も大変だ事……やっぱりそう言う所は男なんだなぁ、何処ぞの日曜日のお父さんかよ……って、毎日が日曜日のお父さんみたいだな──これからも天皇頑張って欲しいね」
そう言いながら荷物を纏める本羅、本格的に寮に帰る様だ──そして本羅が言った。
「さて、俺は帰るかね──朝番、宜しくな、久比里」
「おう、代わってやるよ、遅番さん?」
「何だと? お前も夜番やってみやがれ、大変で、俺に縋り付いて泣くなよ?」
「俺は日本男児、そんなんで甘えて泣いて入られないぜ?」
「うっせぇ! お前はこの苦労が分からないから言えるんだよ! 結構大変なんだぞ、この深夜作業は!」
「はいはい、さよならさよなら」
そう言いながら俺は手を振って、本羅を帰らせる、全く、騒がしい奴だが面白いな、そう思いながら薬缶に水を入れて、火を点けて、温める、そして急須にお茶っ葉を入れて足を組みながら待機する、そして薬缶から沸騰をした、と思わせる音が鳴る、するとプレハブの部屋の戸を開ける者が居た、来てしまったか、今日はコイツと一緒なのか──不運だ、そう思いながらその者を見る。
「お前、遅れるんじゃないぞ……」
「いや、遅れて無いです、丁度一分前に着く様に考えておりますので……」
「普通は五分前行動だ」
「私の中では、『一分でも楽しめ』という家訓なので、残りの四分は遊びます!」
キリッ! と目を輝かせる、俺は少し溜息を吐いてから言う。
「全く──もう絡みたくない──」
そう思いながらその者の顔を見る、コイツは俺の後輩、厭な後輩である、名前は各務死魔(かがみ しま)──という異名の後輩の女、各務志摩(かがみ しま)だ──
「全く、先輩も酷いですねぇ、まるで鬼婆の様だ」
「鬼爺なら分かるけれどな」
「言葉の綾ですよ」
「分かっている」
「それは良かった」
「俺には良くないが?」
「そんなの、先輩の問題です」
「元はと言えばお前が言い出した言葉だがな」
「まぁまぁ、良いじゃないですか」
「何処が『良いじゃないですか』、だ、よかねぇよ」
「人間、良いじゃないか、の言葉で済むんですから諦めて下さいよ」
「俺は諦めたくないのだがね?」
「それじゃ、私は諦めます」
「おい、俺の話聞いているのか?」
「聞く気はありません」
「少しは先輩の話でも聞けよ……」
そう言いながら俺は溜息を吐く、だからコイツと絡むのは厭なんだ──そう思いながら急須に薬缶の沸騰したお湯を入れる、そして湯飲みに急須のお茶を注ぐ──ふぅ、少しは落ち着けるな──そう思いながら俺は湯飲みのお茶を飲む、矢張り緑茶は飲むと落ち着ける、そう思いながら今日の作業を行う──さぁ、今日はどんな作業になるのか、少しだけ面倒だ──
NEXT しりとりシリーズ 『帝都』の『その後』 2