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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『帝都』の『その後』 9 帝都戦争 十秒程度の希望

「おらぁ!」
 志摩はそう言いながら皇太子様が乗っている戦車を蹴る、すると少しへっこんだ、そしてもう一発蹴りを入れようとした所で、戦車の扉から、皇太子様が出てくる、何事か? そう言いながら皇太子様は戦車の周りを確認する、すると志摩、本羅、色也の三人を確認する、そしてその三人に対して、言葉を言う。
「……お前らは何をしている? 私は皇太子だぞ? 私に歯向かうつもりか? 歯向かうつもりなら我が父に反抗すると言っても過言では──」
 皇太子様がそう言うと、色也が皇太子様の言葉を切る。
「あぁ? 違うぜ、皇太子様ぁ……俺達は、『皇太子様を叱りに来た』だけだからなぁ……お前の匙だけで父親を殺そうとするなよ?」
 色也がそう言うと、皇太子様は鼻で笑う。
「フッ、何だ、そんな事か……父親を殺すのは仕方無い、何故なら、それが『天啓』だからだ、私が新たな天皇になって、日本を変える、そして、帝都日本、ではなく、皇都日本に進化させるのだ、その邪魔をお前らはする、と言う事だが?」
「だから何なんですか? それでも天寿を全うする迄貴方は待てないんですか!」
 志摩がそう言うと、皇太子様は冷めた目で言う。
「そうだが? 何故待たなければならない、今の日本は崩壊しかけているのだ、我等、新日本人が日本を変えないと、誰が日本を変えるのだ? 日本を変えられるのは、幕府が無い、私達天皇の一族しかないんだ! お前らに何が分かる!? 何もかも剥奪された存在の事を……!」
 皇太子様はそう言いながら涙を流す──その涙に偽りは無い。
「それでも……それでも今の天皇様が変えてくれる様に言えば良いじゃないか! 皇太子様は次の天皇候補なんですよ!? 今の天皇様が少しは話を聞いてくれると……」
「巫山戯るな! 愚民がぁ! お前らに何が分かる!?」
 そう言いながら自分の拳を強く握り締める皇太子様、そして戦車の中に入って、志摩、本羅、色也に攻撃をしようとする。
「先輩!」
 志摩はそう言いながら色也、本羅に声を掛ける。
「分かってる!」
「志摩ちゃん!」
 二人はそう言いながら右端、左端へと移動する、志摩は、そのまま戦車のキャタピラを紙を千切る様にして縦から裂いていく、もう片方も裂いていく、これであまり動く事が出来ないだろう。
「はぁぁぁぁぁぁ……」
 志摩は一気に力を溜めた拳を戦車にぶつけた、少しだけへっこんだ、まだまだ装甲は硬い、この装甲を壊さないと、先には進めない──仕方無い、『あれ』を使うか……? だが『あれ』を使用すると体力が一気に減ってしまう──今はまだまだ先輩も動けている、だから──使用出来るか? 志摩はそう思いながら周りを確認する、よし、周りには何も無い、安心して、使用出来る!
 志摩は周りを確認し、安心して使用出来る、と判断した瞬間、志摩は目を閉じ、一気に息を吸って、息を止める、息を止めて、数秒が立った、よし、『黄金時間(ゴールデンタイム)』、発動──志摩はそう心の中で呟きながら、一気に目を開ける──

『黄金時間』──それは数十秒だけ使える人間の能力だ──サバイバルの時に使えば相当使えるだろう──そしてこの『黄金時間』、使用時間は、『息を止めて数十秒』しか使えない、のが難点だが──だが人間の身体能力を上げてくれるので、とても使える──

「はぁぁっぁぁぁ!」
 志摩はそう言いながら戦車に対し、拳をぶつけた、すると戦車が少し揺らいだ、よし、『黄金時間』は使えている! 志摩はそう思いながら戦車の扉を握って、取り外そうとする──
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
 硬い、こんなに硬い物を自分は触った事も握った事も無いだろう──だが、壊さなければ意味が無い!
「はっ!」
 一気に力を入れて、戦車の扉が少し外れる、よし、後少しだ! 志摩はそう思いながら外れた部分から指を入れて、一気に戦車から剥がそうとする、すると変な音を立てながら扉は開く、そして一気に呼吸をする。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
 何とか、開けた、そう思いながら志摩は戦車の中に入って、周りを確認する、すると戦車に乗っている人達は志摩に対し、恐怖をしている。
「おいおい……日本屈指の硬度の戦車だぞ……? どうやって開けたんだよ?」
「バカ! 違うだろ! その前に侵入者を排除しろ!」
 二人の乗組員が話し合う、だが志摩の体力はほぼ無かった、あれだけ体を動かしたのだ、疲れた、体力が無い、とは言えない──
 一人の乗組員が志摩に向かって拳銃で発砲する、その銃弾は志摩の腹部に当たり、志摩は腹部から出血する──侵入者の呆気ない敗北に乗組員は無言のまま驚く……そしてゆっくりと志摩は倒れる、それに対し、皇太子様は言う。
「放って置け、どうせ死ぬ命、この戦車の中で死なせてやれ──」
 皇太子はそう言いながら志摩の首根っこを掴んで、戦車から出る。
「おい、お前らに告ぐ、こうなりたくなければ、今からこの戦いから降りろ、そうしないとお前らも死ぬ、死んでも良いのなら話は別だが──」
 皇太子様が言うと、外に居た色也が驚く。
「えっ? 志摩? 何で腹から血が……!?」
 驚いて声も出ない、いや、恐怖しか現れない、足が竦んでいく──だがそれなのに体が勝手に動いてしまう。
「ああああああああああああああああああああ!!」
 無意識、自分でも理解が出来ない行動に不思議に思いながら戦車に向かって走っている色也、そして戦車の前に辿り着く色也、そのまま皇太子様を睨みながら志摩を遠目で確認する、志摩の腹部からは血が出ている、早く治療しないと──そう思いながら色也は志摩を奪還する為に大きく深呼吸をする──そして色也は叫ぶ。
「志摩を離せぇぇぇぇぇぇ!!」

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