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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『帝都』の『その後』 10 帝都戦争 死

「志摩を離せぇぇぇぇぇぇ!!」
 俺こと、久比里色也はそう言いながら志摩の腕を掴む皇太子様に向かって、走っていた、何でこの行動をしたのか、俺にも分からないが、何時の間にか体が動いていたのだ、無意識に、非意識に、俺の体は勝手に動いていた──
「おいっ! 色也!」
 後ろに同僚の本羅の叫ぶ声がするが、自分にとってはただの雑音にしか聞こえない。
 そしてその雑音と共に謎の轟音が聞こえた、目の前に轟音が鳴る、そして無意識下の中で勝手に判断する、これは『発砲音』だと──それに気付いた瞬間、自分は刀で銃弾を斬っていた、そしてその破片が自分の頬を掠る、ブシュリッ! と自分には聞こえないが、血が出る、あまり大きな傷でもないから、無視する事にする。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
 早く動け、そして志摩を救え、体の奥底から警報の様に何度も何度も繰り返す、分かってる、分かってるから黙っててくれないか? そんな事を思いながら警報を聞き流す。
 そして戦車の上に乗って、自分の足だけで登っていく、段々と皇太子様に近付いていく──そして皇太子様の目の前に辿り着いて言う。
「志摩を離して下さい、今すぐに」
 俺がそう言うと皇太子様は冷酷な声で言う。
「だったら今、この皇居から離れろ、離れたらこの警邏の女を離してやる」
 皇太子様がそう言うと、俺は普通に言い返す。
「厭です、だって私は天皇様をお守りする警邏なんですから──こんな戦車を使って皇居に攻撃した皇太子様を俺は……俺は叱らなきゃいけないんです、『我侭言うな』って」
 俺がそう言うと皇太子様は笑う、そして笑い終わって俺に向かって言う。
「アッハッハッハ! そうかそうか! アッハッハッハ! ……とでも言うと思ったか? お前は身分を弁えてから言え、お前の身分はただの皇居をお守りする警邏なだけ、だから私に指図するな、私は天皇の直属の子孫なのだぞ? お前なんかに『我侭言うな』って言われる筋合いは無い」
「筋合いは無くても、言う権利はあると思いますけどね?」
 俺がそう言うと少しプルプルと震えている、そして俺は志摩を引き取った後、皇太子様が言葉を発するのを待つ。
「早く言って下さいよ、何が言いたいんですかね?」
 すると皇太子様は拳銃を俺の額に当てながら言う。
「黙れ、黙れ、黙れ、黙れぇぇ!! 私に命令するなぁ! 命令して良いのは我が父、天皇だけだぁ!」
「だったら私が指図しても良いんですね?」
 皇太子様の後ろから聞き慣れた声が聞こえる、皇太子様の後ろには、今の天皇様が立っていた、戦車の上に──
「やぁ、我が息子、よくこんな戦車を使って私の住処である皇居を攻撃しましたねぇ……?」
 そう言いながら天皇様は皇太子様の頭蓋骨を掴んで、ドスを利かせた声で言う。
「ガキが黙って聞いてりゃあ、ただの我侭じゃねぇか、あの警邏の青年の言う通りじゃねぇか、『我侭言うな』、正しいじゃねぇか、お前の何処が間違っている? 答えろ、我が息子よ?」
 ゾクソクゥッ!! 天皇様の声を聞いた瞬間、足がガクガクと震える、こんなに迫力があるとは思わなかった! 失禁しそうになるが、我慢して話を聞く。
「全く──この息子はダメですねぇ、次の天皇候補は誰にしようかな──」
「煩い、煩い煩い煩い煩い煩い煩い!! アンタに何が分かる!? 今迄『天皇の息子』ってだけで、蔑まされた人生を! 我が父に何が分かるんですか!?」
 そう言いながら皇太子様は自分の手に持った拳銃で天皇様を撃った──銃弾はそのまま天皇様の心臓を貫く──
「えっ?」
 俺の声に反応した天皇様が言う。
「ほう……やれば出来るじゃないですか? どうです? 我が父を討ち取った気分は?」
「えっ? あれっ? 私は何を……?」
 皇太子様が困惑している、困惑している中、俺が言う。
「いや、皇太子様が天皇様を撃ったんですよ……?」
 俺がそう言うと、自分の手に持った拳銃の煙を見ながら皇太子様は叫ぶ。
「えっ? えっ? あれっ? 何で拳銃から煙が……? 何で黒煙が……?」
 驚いている、何時の間にかやった、と言う事だろうか? すると天皇様が虫の息になっていた。
「大丈夫ですか!? 天皇様!?」
 俺が近付いて天皇様の体に触れる、少しずつだが冷たくなっている、は、早く救急車を呼ばないと……
「その心配は要りません、私の命はもう少しで終わります──二人共、よく聞いていて下さい、私の息子、あの皇太子は私の養子です、だから本当の息子は何処か遠くに居ます──昔、私の妻と私は結婚をしても赤ちゃんが出来ませんでした、だから赤ちゃんを養子として迎え入れました──ですが数年後、我が妻が妊娠しましてねぇ……そんなの、養子の彼に言う事は出来ませんでした、だから妻を隔離して出産させました、そしてその子を普通の子、として育てました──そしてそんな子に結婚相手が出来ました、そして結婚した事を知った私は嬉しかった、ですが、表に出せない子なので、私が自分の息子に会って、話をしました、流石に怒りましたよ、天皇様の子が自分で、結婚する迄蔑ろにされていたんですからね──そして月日が経ちました、息子夫婦に双子の男女が生まれました、ですが片割れの男子は死んでしまい、私の血を継いでいるのは、その女の子だけです──息子はもう失踪してしまい、何処にいるかも分かりません──ですが、その双子の片割れが──」
 天皇様はそう言いながらゆっくりと指を指す。
「双子の片割れが──各務志摩、養子の皇太子が手を握っていた彼女です、つまり、彼女は我が天皇一族の正統後継者の一人なのです……」
 えっ? どういう事? 志摩が天皇様の子孫って事? マジで? そう思いながら天皇様を見つめる。
「あのー、天皇様? 貴方様の子孫が志摩って事ですか?」
 俺が呑気そうに言うと、天皇様は言う。
「はい、そうですが?」
 えっ? マジかよ……初めて知った、そう思いながら俺は頭を抱える──抱えている内に段々と天皇様の血が減っていく──

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