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しりとりシリーズ 『帝都』の『その後』 11 帝都戦争 新たな天皇
二週間後、皇居──
「……何で、何で俺が此処に居るんだろう?」
俺こと、久比里色也は驚いている、そうだ、何故なら俺は皇居の中に居るからだ──何で俺が皇居の中に居るのかを説明すると──あれは二週間前だ、あの後前天皇様が倒れたんだ──
「大丈夫ですか、天皇様!?」
俺はそう言いながら自分の服を小刀で切って、止血しようとした、だが天皇様が止める。
「いえ、もう良いんです、だから……志摩を次の天皇にして下さい、今の願いはそれだけです──」
天皇様はそう言いながら志摩を指差しながら、フッ、と志摩を指差していた指を落とす、俺は急いで天皇様の心臓を触る、脈は──動いていなかった、心肺停止、そう、死んだ、天皇様は崩御されたのだ、自分の養子の銃弾によって──
「あぁ……あぁっ! 私の所為だ、私の所為で父が……血の繋がっていない父が死んでしまった! 私は……私は、天皇になれないのか……!?」
頭を抱えながら皇太子様が唸る、俺は皇太子様に言う。
「だから何なんだよ、一応は『父親』だったんだぞ!? 皇太子様は『父親』である天皇様の分も生きろ! まぁ、次の天皇は志摩なんだけど──それでも皇太子様は生きていて下さい! それが『親』としての希望だ!」
俺がそう言うと、涙を流しながら皇太子様は黙る──そして後ろに居た志摩が起きる。
「んー? どうしたんですか? 先輩──って、天皇様が血だらけ!? 何やってんですか先輩!? 早く治療しないと──」
志摩も俺と同じ行動をする、だが俺はそれを止める事は出来ない──
「早くして下さい、先輩! 天皇様が死んでしまいます!」
志摩も上着を脱いで、俺の小刀で患部を縛る紐を作るが、皇太子様が言う。
「もう……もう良いんだ、次期天皇よ──」
皇太子様がそう言うと志摩は不思議がる。
「はぁ? 何言ってんですか皇太子様、貴方が次の天皇でしょう? ねぇ、せんぱ──」
志摩が俺の事を言おうとするのを遮って言う。
「いや、お前の父親はこの天皇様の子だったんだよ、そしてその子も死んで、残るはその子孫であるお前だけなんだよ、志摩」
俺がそう言うと志摩は天皇様の懐から財布を取りだす、そして俺に言う。
「もしもですよ? もしも私が天皇の子孫だったとしましょう、だったら『苗字が一緒』ですよねぇ? そうですよね、皇太子様?」
志摩がそう言うと、皇太子様が唸る。
「うむ、確かにそうだ──」
皇太子様はそう言いながら顎に手をやる。
「だが、苗字が一緒だった場合、どうするんだ? お前が、ただの警邏が天皇になるんだぞ? それでも良いのか?」
皇太子様がそう言うと志摩は俺の事を見て言う。
「良いですよ、先輩の事を信じます、で、先輩、言いたい事があるんですけど?」
急に俺に振られて俺は驚く、一体何なんだろう?
「おう、一体何なんだ? 凄く簡単な事か?」
俺がそう言うと、志摩が『はい、そうです』と呟いてから俺に続けて言う。
「もしも私が天皇の子孫だった場合、私は天皇になります、だから──」
志摩はそう言いながら笑顔で俺に言う。
「それの見返りとして私と結婚して下さい、まぁ、私が天皇の子孫と分かった場合ですが」
……えっ? いや、はい? どういう事なんでしょう? えっ? 俺が天皇の志摩と結婚? いやいや、何でだよ? 可笑しいだろ、何で俺が結婚しなくちゃいけないんだ?
そう思っていると志摩が言う。
「えーと、簡単に言えば、先輩の事が好きなんです、凄く唐突ですみません、だから結婚してくれますか?」
「いや、唐突過ぎて可笑しいわ、うーん……分かったよ。結婚してやる! だから早くしてくれ! 俺がこの気持ちを変える前に!」
俺がそう言うと凄く可愛い顔で志摩は頷く。
「はいっ! 分かりました!」
志摩はそう言って、天皇様の財布から自分の証明書を見つけ、名前を読み上げる──
「えーと──各務、ですね、私の苗字と一緒──」
「だから言ったんだ、さて、その前に私は新婚の警邏夫婦を見ているのだが?」
皇太子様が咳払いをしながら俺と志摩を見る──そうか、俺と志摩は結婚する事になったのか──何だろう、凄く不安な気がしてならないのだが──っと、此処迄が二週間前の事、そして志摩は自分の血と天皇様の血を調べて『血が繋がっている』事を証明して、天皇様となった、当の皇太子様は天皇を拒否して、志摩に継がせたのだ──そしてそんな俺は志摩の隣に座っている──
「どうしたんです、先輩?」
志摩がそう言うと、俺は溜息を吐きながら言う。
「おいおい、天皇様、俺の事は警邏の時みたいに言わず、『色也』と言えば良いのに──」
俺がそう言うと志摩は笑いながら言う。
「フフッ、それを言うなら先輩もですよ、『天皇様』って──フフッ!」
「お前、また言ったぞ、先輩って──ってツボに入ったのかよ!? 止めろ! 何か恥ずかしくなってきた!」
俺はそう言いながら腕を両手で擦る、全く、コイツは警邏の時でもあまり変わらない──俺はそう思いながら深呼吸をする、そして志摩に向かって言う。
「あのさ、結婚してくれて有難うな? あまり人を愛すって事は分からねぇけれど、今後とも宜しく、志摩」
俺がそう言うと志摩も言い返す。
「あまりにも突然で、唐突で、それでも結婚してくれた貴方には感謝します、色也──」
そう言いながら俺と志摩は近付く、そして唇を近付ける──だが俺と志摩の居る部屋を開ける者が居た、それは本羅だった。
「うぃーっす、天皇様ぁ……って、何かすまないな、デリカシー無くて、この部屋は若い夫婦の部屋だったか」
そう言いながら本羅は部屋の戸を閉める、うっ、何だか恥ずかしい場面を見られた気がするのだが──そう思っていると、志摩は顔を赤らめながら言う。
「あの……続きをしません?」
志摩がそう言うと、確かにそうだな、と感じる、そして俺はもう一度唇を近付ける──だが閉めた扉は何時の間にか少し開いており、本羅、そして何故か皇太子様が俺達の事を見ていた──そして俺が一言言う。
「もう、何なんだよぉ!?」
そう言いながら俺は思う、まだまだ夫婦としての生活は長いのかもな……
しりとりシリーズ 『帝都』の『その後』 11 帝都戦争 新たな天皇 完
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