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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『戸棚』の『その後』

 あれから数年が経った、時間の経過とはとても残酷で、自分の祖母は死んでしまった──まだ若い自分は祖母に親孝行ならぬ、祖父母孝行が出来なかった、そんなある日の事を話そう、祖母が倒れた時、自分は学校の夏期講習のプリントを見ている時だった、突然教頭先生が自分の事を呼んだので、職員室に向かう事にした、そして電話が来ている、と話をされて、自分は受話器を取った、耳に流れる音、それは母の声だった、その時母の声は未だに覚えている、すすり泣く様な、悲しい声だった、『どうしたの、母さん?』、と自分が言うと母は言う、『お婆ちゃんが死んだ』、と一言だけ言って、電話を切った、祖母は先月から病院に通院していた、だが数日前に医者から、『貴女の体はもうだめです、入院して下さい』と一言言われ、祖母は入院する事にした、そして昨日入院する事にした、何故その日に入院しなかったのかは、祖母の準備、そして病院側のベッドが足らなかったからだ、だが入院して一日で死去だなんて、可笑しい、いや可笑しくは無い、祖母の体は病魔に蝕まれていて、相当無理をしてきた体だった、なので、何時死んでも可笑しくはなかった、だがあまりにも早過ぎるのだ、祖母の死に顔でさえ見れなかった自分はスッ、と一筋の涙を流した──

 自分は急いで学校から帰ってきた後、自転車で祖母の病院迄走った、病院は母、自分、祖母の三人で行ったから、道はある程度覚えている、確かコンビニの近くを曲がれば、近い筈だ、自分はそう思いながらコンビニ近くの道を曲がる、そしてものの数分で病院に着いた、自分は走りたい衝動に駆られながらも、理性で制した、自分はそのまま祖母の病室迄早歩きで進んだ、階段を駆け上り、五階に到着、確かトイレが近くにあったな、と思いながら少し首を回して周りを確認する、トイレを見つけて、ネームプレートを確認する、祖母の名前を確認し、僕はノックして病室に入る、僕が最初に目に入ったのが、祖母の顔に白い布を置かれているシーンだった、そして母が自分に気付く、すると母は自分にビデオカメラを渡す、一体何なんだろう? 自分はそう思いながら『今日は早く帰りなさい』、と母に言われたので、仕方なく、帰る事にした、白い布の下の祖母を見る事無く──

 自分はテレビにビデオカメラのコードを繋いで見れる様にする、そしてカメラ内のメモリーに入っている一つの動画を見つける、サムネイルには祖母の顔が映っていた、祖母が撮った動画か、自分はそう思いながら再生する、すると祖母がテレビの画面の中で喋り出す。
「あー、あー、映ってますか、映ってますか? うん、映っているね、えーと、この動画を遺したのは一つの連絡をしたいからです、それは『戸棚の中におやつを入れているから食べてね?』です、後、もう一つ、言う事があります」
 何だ、戸棚におやつが入っている事か、もう自分はガキじゃないのに……そう思って見ていると、他に言う事があったので、電源を消さずにそれを見る事にする。
「それは、『この動画を見ていると言う事はお婆ちゃんは死んでいる事でしょう、だけどね、お前の心の中では生きているんだよ? だからその事を忘れずに行きなさい? 天国でも地獄でも見守ってるからね? お婆ちゃんより』」
 …………、涙、涙しか出ない、確かに今は死んでしまったかもしれないけれど、自分の心の中では生きているかもしれない、だから最後のおやつを食べよう、そう思いながら自分は立ち上がって戸棚へ向かった──

 一頻(ひとしき)り、泣いて、ティッシュで涙を拭いた後、自分は戸棚に向かって戸を横にスライドさせる、すると自分の大好きなショートケーキの下に手紙があった、これは何だろう? そう思いながら手紙を開ける、中身は薄い、一枚だけか? そう思いながら中身を抜き取る、一枚だけで白い部分が多かった、あまり内容は書いていなさそうだなぁ、自分はそう考えながら手紙の中身を読む──『ごめんね、成人式が見れなくて、お婆ちゃんはお前の立派な姿が見たかった、見れなくて死ぬのは悲しい、それだけが心名残だよ』、その言葉を読んだ後、また目から涙が現れる、あれっ? ちゃんと拭いたのになぁ、目にゴミでも入ったのかなぁ? 自分はそう思いながらもう一度ティッシュを用意する──自分はティッシュが無くなっても泣き続けた──

 これがある日のお話、その後自分は塩味のショートケーキを食べたんだが──未だにその味が忘れられないんだ、まぁ、自分の無駄話に付き合せてゴメン、それじゃあ、自分は前へ進むよ、自分は祖母が死んだ時に決めたんだ、『後悔しても良いから急ぐ』、と言う事を、ね? それじゃあ、また何れ会えたらね? また今度会えたらもっと面白い話でも用意しておくよ、えっ? もう会いたくない? アハハ、面白い冗談だなぁ、まぁ、厭でも何れ出会うかもしれないしさ?

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