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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『皮膚』の『その後』

 たった数年、そのたった数年が自分にとっては幾重にも感じられた、そんな秋だ、自分は大学で自分の皮を剥いでいた所、一人の女性に声を掛けられた、この人も面白半分で、自分の皮が欲しいのか……と思って、顔を上げるとそこには大きく成長した先輩がいた──うわぁ、顔も可愛くなって……後胸も……って何を思っているんだ、自分は! と顔が赤いのを悟られまいとして、顔をブンブンと横に振る。
「お久し振りね、昔の事を覚えてる?」
「昔の事ですか……? 内容によっては覚えていない物もありますけど……」
 自分がそう言うと、先輩は笑う。
「だよねぇ、これは覚えてる? 私が外国に行く時に交わした約束?」
「……唇より、その先、ですかね?」
 するとクフフッと先輩は笑う、笑った先輩も可愛い。
「うーん……面白いなぁ、うん、正解」
「良かった、一時も忘れませんよ、先輩の事……」
 そう言った瞬間、先輩は自分に唇でキスをした、えっ……? いきなり!?
「会いたかった……心細かった、寂しかった、悲しかった、怖かった、だけど、君の事を思うと、頑張れたんだよ? だから、もっと……もっと肌と肌を触れ合わせてくれるかな?」
 そう言う事だったのか……自分は皮を剥ぐ事を止めて、自宅に連れて行った──

「先輩……!」
 自室で、ベッドに先輩を押し倒す、流石にこんな可愛い人を目の前に置いていたら、気が狂ってしまいそうだ、すると先輩は自分の頭を撫でながら言う。
「君もやっぱり男なんだね……良かった、私を押し倒す、という事はそれ程私を愛しているって事だね──」
 そう言って、先輩は自分に二回目のキスをする、濃厚な、舌が入るキスだ。
「先っ輩……!」
 そのまま自分は先輩を野獣の様に襲う──そして先輩と自分は思う存分スッキリする。
「初めてだったのに、激しいね──」
「自分もですよ……先輩、話があるんです……もう行った事だけど──」
 そう言って自分は決心して言う。
「結婚して下さい! 自分と!」
 自分がそう言うと、先輩は喜んで言った。
「うん、いいよ、君がいいならね──」

 そして、自分は大学を卒業してから、先輩と同居を始めた、何とも暖かいカップルになってしまった、冬の寒さなんか、へっちゃらだった。
 そして先輩と自分は結婚した、すると先輩のお腹には新たな命が……と、ここで自分は恐怖した、『自分と同じ遺伝子を受け継ぐ』と言う事は、『皮膚の遺伝』もしてしまうのでは無いか……? と考えてしまう、怖い、同じ皮膚を持つ息子娘が出来しまったらどうだ? 自分みたいにいじめられるのでは無いのか? と思った、だが先輩は『私と君の子だよ? そんな事ないよ、だから安心して?』と言う……本当に大丈夫だろうか? と思いながら時間は出産時期になり、妻は元気な赤ちゃんを産んだ。
 そして自分は性別よりも、皮膚の事を心配する──すると皮膚の遺伝は無かった、良かった、自分はそう思いながら膝から崩れた──
 元気な赤ちゃん、元気な男の子で良かった──と自分はそう思いながら毎日仕事の帰りに迎えてくれる息子と先輩にキスをして、毎日を過ごしている──結婚して良かったなぁ、と自分は思いながら息子と遊ぶ──これからも、自分の子に皮膚が遺伝しませんように、と願いながら──

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