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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 2 デートでデッド!?

「……まさか」
 不生はそう言って溜息を吐いた。
「まさか、買い物の手伝いをする羽目になるとは……」
 そう呟きながら不生は両手に買い物袋を持つ、不生の言葉に対し、不萌は言う。
「あーら? 買い物と聞いていない貴方が悪いのよ、不生」
「いや、まぁね、正論なんだけどさぁ……」
 頭を掻きながら不生は不萌に着いていく、今の場所は渋谷のスクランブル交差点だ、だが何か可笑しい、それもその筈、昼の一時だと言うのに、『誰も交差点を使用していない』からだ、使用しているのは不生と不萌の二人のみだ。
「っていうか、人が居ないなぁ、東京だよねぇ?」
「確かに何か可笑しいわねぇ……まさか、『此処は『幻術』なのかしら』?」
「流石にそれは無い、『幻術』だとしても何か可笑しい、こんなに広い『幻術』は聞いた事がない──」
 不生はそう呟いてから、周りを見渡す、周りは無音、車も喫茶店の店員も、ファーストフード店の店員も誰も彼も『このスクランブル交差点から消えた』、と感じれる、すると不萌が不生に言う。
「まさかな話をしていい? 不生?」
「ん? 何だい?」
 不生がそう言うと、不萌が笑いながら言う。
「もしかして、『幻術』じゃなくて、『私達が孤立空間に飛ばされた』って可能性も無い……?」
「……おいおい、それなら簡単だね、自分達二人を現実世界から隔離するなんて──」
 不生がそう呟いた瞬間だった、目の前に煙が舞う、煙からくの一と忍者が一人現れた。
「ふむ、我が忍法、『神隠しの術』を見破るとはこれ如何に?」
「知っているんだろう? 自分が忍者って事もねぇ?」
 そう言って、不生は忍者の格好に変装する、不萌もくの一の格好に変装する。
「さっさと『村雨』を頂こうか? 我等はそれを手に入れるだけで良いのだ」
「生憎その刀は渡せないなぁ、何しろ、『村雨』は『自分の得物』なんで……」
 不生はそう言って、背中から『村雨』と呼ばれた刀を取り出した、『村雨』その刀の刀身は長さ1m程度の少し小振りな刀だ、そんな刀を相手が狙っている、それはどうしてだろうか? それは不生が持っている『村雨』が『伝説級の刀』だからだ。
『村雨』、斬っても斬っても切れ味が落ちない不思議な刀、そんな刀を目の前の忍者は追っているのだ、刀としても異常であり、異端である、そんな刀は誰だって手に入れたいだろう、だから目の前の忍者は『村雨』を奪おうとした、と言う事だ。
「生憎この刀は先祖代々のモノ、簡単に渡せない!」
 不生がそう言うと、目の前の忍者が言う。
「そうか……だったら、死んで奪うのみ!!」
 忍者がそう言って、不生の目の前に移動する、そして忍者は小刀を使用して、剣戟が開始された。

「はぁ、男って皆血気盛ん、血が盛っているわ──それに対し、女はどう? 『頭脳戦』よねぇ?」
 そう呟いて不萌が言う、それに対し、相手のくの一が言う。
「あら? 何が言いたいのかしら? もしかして頭脳戦で私を負かそうっての? 何それ面白い」
「そう? 面白くは無いわよ、だってアンタは『私の術にもう嵌っている』から──あぁ、その場から動かない方が良いわよ、『死にたくなければ』、の話だけど」
 そう言って、背中を向ける不萌、すると相手のくの一が言う。
「は、はぁ……? 何を言っているの? 私が死ぬ? 何を言っている!? 私が死ぬ訳無いだろう!!」
 相手のくの一は叫んで体を動かす、すると自分の右手が『肘から先が無い』のだ、えっ? 綺麗さっぱりに無くなっている……? どういう事? あの小娘は何をした? いや、『何もしていない』筈だ! どうやって私の手を斬ったの!? いや、消したの!?
 そう思いながら自分の髪留めのシュシュを取って、自分の左手で自分の右手を止血する、一体どんな術を使った!? そう考えて周りを確認する、上、斜め上、斜め下、下、右、左、一体どんな術なんだ? 目に見えない術? 何もしていないのに!? 考えに考えて周りを確認する、すると不萌の前に一体の動物が現れた。
「あら、出来たの角さん?」
 そう言って手の平サイズのムササビを撫でる、ムササビ? 角さん? 何を言っている? そんなムササビ一体で何が出来──判断する、と言うより理解した、あの『ムササビの手の中にある『モノ』』を! そう、それは『糸』だ、あのムササビがバレないように必死に私の周りを糸で身動き取れない様にしただと……!? そんな芸当どうやって行った!? というより、彼女、相当隠し芸をしたな……そう思いながらくの一は言う。
「……まだ、まだ私は負けていないわ、私はまだ術を使用していないわぁ!」
「あっそう、だったらもう『術は私用しなくて良いわ』」
 えっ? 何を言っているの、あのガキ? そう思いながら残った左手で術を使用しようとした、だが出来ない、意味が分からない、そう思いながら自分の左手を見た、血が糸で滴っている、どういう事だ? くの一は判断する事に対し、恐怖した、何でそんな事が出来る? 何でそんな『隠れて行動する事が出来る!?』、と思いながら自分の左手に戦慄する、くの一の左手は『右手同様無くなっていた、しかも肘ごと』──そして左手に痛覚が走る。
「うっ! ど、どうして……!? そのムササビは一体だけな筈! どうして私の左手が!?」
 くの一がそう言って倒れる、くの一の言葉に対し、不萌は少し笑いながら言う。
「ウフフ、ウフフフフ……何を勘違いしているんですか? ムササビの角さん、『何時、何処で、『一体だけ』と申しました』? 角さんの名前の意味は『拡散』と言う意味です、そして『拡散』と言う言葉の意味は『散らばる事』──そう、角さんは『何体も居るんですよ、因みにこの手の中に居るのはただのリーダーです』、分かりましたか? 愚かなくの一さん?」
 そう言って、不萌は冷たい笑顔で笑う、まさか……まさか私がこんな小娘にやられるなんて……そして不萌は左手の指で音を鳴らす、すると相手のくの一の首が糸で絞まっていく──そして相手のくの一の首は宙に吹っ飛んでいった──
「どれだけ非力なムササビでも、歯車と同じ様に噛み合わせていったら、ムササビでも貴方を倒すことは出来るんですよっ」
 不萌はそう呟いてから、不生を見つめる──不生は相手に勝てるか、それは分からない──

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