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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 4 『ゾーン』

「…………」
 不生は座禅をしながら考える、もしも数日前に来た忍者が自分の刀を奪おうとしてきたら……自分の力、不萌の糸の力じゃなくて、自分の、己の力で解決しなきゃいけない、だから、もっと、もっと強くならなきゃ! 不生は座禅の場所を滝の下に移動して、座禅を組み直す、こんなのはただの精神力を手に入れる為の修行に過ぎない、もっと、もっと他の修行を手に入れないと──

「えっと……これは?」
 不生はそう言うと、不萌が少し笑いながら言う。
「んーとねぇ、簡単に言えば、避ける修行かな? 単純に言えば、『滝の上から落ちてくる障害物を避ける』修行ね、ただ避けるだけじゃない、横から私やアンタの親父さんの攻撃もあるから、その攻撃も避ける事、まぁ、動体視力の修行にもなるわね」
「成程、って父上も修行の手伝いを!?」
 不生がそう言うと、不生の父、不消(きえず)が不生の前に現れる。
「ふむ、新たな修行か、不生」
「あっ、父上……そうです、新しい修行です」
「ふむ、不萌から聞いている、お前も不運だったな……父親として、手助け出来なかった事が恥ずかしい、末代迄の恥になりそうだ……」
「末代って……今の自分が末代なんですけど……」
「まぁ、そうだよな」
「はい」
「あのさぁ、早く修行しない? 私だって課題をしなきゃいけないし……」
 不生と不消との会話に割って入る不萌、不萌に対し、父子は謝る。
「う、うむ、すまんな、我が息子の力になってくれて」
「ご、ゴメン、自分勝手な修行に付き合わせて……」
「全く、何気にそこの所だけ、親子なんだから……さぁ、始めましょうか、少しでも強くならないとね!」
 不萌がそう言うと、不生は大きく唸る。
「おう! 絶対強くなって、『村雨』を自分で守れる様になる!」
「その調子だ、不生!」
 不生親子の会話を聞いて、不萌は呆れる。
「はぁ……熱血な親子ね──案外面倒なタイプよね──」

 そして修行が開始された、不生は『村雨』を持ちながらの修行となった、滝から落ちてくる障害物を『村雨』で斬っていき、横から来た不萌の攻撃、父の攻撃を上手い事斬って、体に当てない様にする。
 そして一気に滝の流れるスピードが上がる、不生は『一気に早さに慣れれる!』と思い、一回斬って、そのまま流した障害物を、一つに対し、二回、三回と斬っていき、不萌、父を驚かせる。
「ほう、中々重い『村雨』をあぁも器用に操れるとは……流石自分の息子だな!」
「自画自賛せず、丸太を不生に投げて下さい! 褒めるのはその後!」
「すっ、すまん不萌君……」
 不消は不萌に謝って、丸太を不生に投げ続ける、だが、不生に対して、投げ過ぎてしまい、少し焦る。
「おっ、おい、不生、丸太を投げ過ぎた! 何とか避けろ! もしくは斬れ!」
「はっ!?」
 その時にはもう遅い、目の前には、丸太が三本、不消の丸太が三本、不萌の丸太が二本、不生に向かって来ていた──不消、不萌、目の前の滝、二本ずつ、合計六本ならまだ対処出来るが、八本なんて対処した事が無い、それに『村雨』は『鞘に納まっている!』 、これでは抜く時間もあるので、もっと対処出来ない──えっ? 死ぬの、自分?
「不生! くっ、角さんでは間に合わない!」
「うぅっ! 自分の失敗で息子を死なせてしまうとは! すまん!」
 二人の声が鮮明に聞こえる、すると目の前がゆっくりと移動し始めた──水の流れが遅くなった……? そんな筈は無い、何故なら相当早い動きな筈だ、水の流れは、 ではこれは何だ? 周りの丸太の移動もまるでスローモーションがかかっている感じだ、一体何なんだ、この感覚は……待てよ? 今の自分はどう動いている? スローモーションではない、完全に『周りの時が遅くなって、自分だけ、何時もの動きが出来る』!! これなら『村雨』を抜いて、丸太を全て斬る事が出来る!
 不生は急いで、『村雨』を鞘から抜き取って、八本の丸太に対して、二回、三回、と斬っていく、そして『村雨』を鞘に直した、鍔と鞘がぶつかった、その瞬間、何時もの世界に戻った、水の流れも丸太の動きも元の早さに戻っている、一体……何だったんだ、今の動きと、時間は──? そう思った時、不消と不萌が不生に近付いてきた。
「ちょっと! 大丈夫!?」
「だっ、大丈夫か!? 不生!?」
 二人が何を言っているのかが分からない、まるで、『自分が死にそうだった』みたいな言い方だったからだ。
「……な、何を言っているんだ? 自分は丸太を斬れたけど……?」
 不生がそう言うと不消が驚いていた、そして不生に伝える。
「お前、まさか……『ゾーン』に入っていた、と言うのか? まるで周りの動きが遅かった、とか何か視野が開けた、とか、何か無かったか?」
「それかどうかは分からないけど、周りの動きは遅かったかな? そして『村雨』抜いて、サッサッと斬ったけど……?」
 不生がそう言うと、不消は驚いていた。
「まさか……そのステージに立つとは──いいか、よく聞け、今お前が起こしたのは『ゾーン』と言う物、この『ゾーン』を器用に操って、『村雨』で技を放つ、それが出来たら真の『村雨』所有者になれる──お前が起こした技、八本の丸太を斬った、と言う事から、『八咲(やつざき)』と名付けよう、頑張って『ゾーン』を手に入れて、『八咲』を使用出来る様に修行しろ!」
「は、はぁ……」
 今何が起こったか分からないが、単純に聞けば、相当強い『何か』を身につけた、と言うのが分かった、つまり特訓して、その『何か』を掴めって言っているのか……自分は『村雨』を見つめて言う。
「案外凄い事が起こった気がするんだよなぁ? まさかお前が見せてくれた力なのかな?」
 不生はそう言って、フッと意識が途絶えて、その場で倒れてしまう、不萌は不生に驚いて、叩き起こそうとしたが、起きなかった、不萌は仕方なく、不生を運ぶ事にした──
 不生が手に入れた『ゾーン』と『八咲』、その二つがとても強力な技とは不生はまだ知らない──

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