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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 5 新技と『ゾーン』

 新技、『八咲』を開花させた不生は森の中で目隠しをしながら深呼吸をしていた、座禅をしながらの深呼吸、とても落ち着いてはいるが、心の中では色々な考えが張り巡らされていた。
 何処から攻撃が来るか、もしくは来ないのか? 果たして今回は来るか、来ないか? そんな事を考えていた。
「…………」
 不萌は静かな呼吸をしながら紐で縛った丸太を投げた、風を切る音、その音に気付いて、不生は膝の上に置いた『村雨』を使用して、『八咲』を放った、だが、『八咲』は八回斬って、一つの物を八つにする技、斬った回数は精々七回程度だった。
 不生は目を開けて、斬った丸太を見た、すると七回程度斬っていて、落胆する。
「あーもう! 何で七回なんだよ! 普通、そこは八回、もしくは六回だろ!? 何で中途半端な完成の七回なんだよ! くっそう……!」
 不生がそう言うと、物陰から隠れていた不萌が言う。
「何言ってんのよ、アンタ……何気に七回も出来ているんじゃない、まだまだ進化出来るって訳よ」
 不萌がそう言うと、口を尖らせて、不生が言う。
「だってぇ、あの時の『八咲』は『ゾーン』に入ってから出来た物であって、『ゾーン』に入らないと出来ないんだよ……」
「だから目に頼らず、感覚と心眼で見極める特訓なんでしょうが! アンタは完全に楽して手に入れようとしてるでしょ!?」
「んな訳ねぇ! 自分だって相当苦労しているんだ! なのに丸太投げてそうやってお説教かよ! お前は自分のおかんか!」
「おかんな訳無いでしょう! 私はアンタの為を思って……」
 不萌がそう言うと、不生が大声で言う。
「それがおかんだわ!」
 不生がそう言った後、物陰からボロボロの不消が現れる、突然の出来事に驚く不生と不萌。
「どうしたんですかおじさん!?」
「父上!?」
 二人がそう言うと、か細い声で言う。
「お、お前達に、逃げろ……『村雨』を狙う輩が……相手は相当強い、だから逃げ……」
「逃げない! 父上をこんな痛手にしたんだ、許せねぇ!」
「私も! 不生のおじさんをこんなに痛めて……許せない!」
「そうかいそうかい?」
 そう言って、蝙蝠の様に木にぶら下がる忍者が居た、謎の登場に不生と不萌は驚いてしまう。
「俺がこのおっさんを狙った張本人だよ、んで、何処に有るのかなぁ? 『村雨』ちゃんはよぉ!?」
 そう言って、謎の忍者は不消の頭を踏む、すると不生が『村雨』で斬りつけた、だが、謎の忍者は小刀で攻撃を防ぐ。
「おっと、それが『村雨』ね、うーん、綺麗だ……これが俺の手に行くのか、うーん、最高だねぇ!」
 謎の忍者は突進してきた、そして急に剣戟が始まった、一方的に攻撃する謎の忍者、不生は防ぐので精一杯だ。
「私も手伝わないと……!」
 不萌はそう言うと、口笛で角さんを呼ぶ、そして命令する。
「皆はフォーメーション『F』を展開!」
「甘いね、もしかして糸で攻撃するとか? 甘いねぇ、糸なんか、ナイフで切ればいい」
「うっ、確かに……」
 謎の忍者に弱点が気付かれてしまう、確かに超極細の糸であれど、切られてしまっては意味が無い。
「さぁ、最終決戦と行こうか!」
 謎の忍者はそう言って、何本ものクナイを投げた、その数、合計八本。
「あ、避けられない、終わった」
 不生はそう言って、目の前の状況に絶望した、死ぬのかぁ、案外短い人生だったなぁ、そう思いながら溜息を心の中でしてしまう、すると不萌が不生に向かって叫ぶ。
「諦めんな! 今迄修行してきたじゃない! もう諦めるつもり!?」
 …………確かに、まだ自分は『八咲』も『ゾーン』も完成していない、流石に完成してから、の方がいい、そう思うと、手に力が篭る。
「ああああああああああ!!」
 大声で叫びながらクナイを見る、そして一気に叩き落す為に集中する、大丈夫、イケる、自分なら! そう思いながら息を飲み込んだ、その瞬間、不思議な事が起きた、少しだけだがクナイの移動が遅くなっているのだ、この不思議な事は分かっている、『ゾーン』だ、今正に『ゾーン』を使用している!! 不生は右から、クナイを『村雨』で叩き落していき、全てのクナイを落とす、すると通常の感覚に戻る。
「おいおい、おいおいおいおい、聞いてないぞ、そんな力!」
「煩い、お前は自分の父を傷つけた! だからお前には拷問をする!!」
 不生はそう言って、もう一度集中する、すると『ゾーン』の様な感覚を覚えた、最初に丸太を斬って、『八咲』を発動した時と同じ感覚、まさか『ゾーン』にも、強い感覚と弱い感覚があるのだろうか? そう思いながら不生は『村雨』を上に上げて、謎の忍者に当てようとした──すると目の前に謎の忍者では無い小刀が現れて、急に『ゾーン』を解除する。
「うわっと!? 誰だ!? って父上……?」
 何故か傷だらけの不消が動いている事に不思議さを感じる不生、すると不消が言う。
「すまん、すまん、これにて演技は終了」
 不消はそう言って、不生に対し、クナイを投げつけた、だが不生はクナイを見続けながら集中し、『ゾーン』に入って、『村雨』でクナイを叩き落した。
「これにて、『ゾーン』の特訓は終了、どうじゃ? 中々の演技じゃろう?」
 不消はそう言って、大声で笑う、不生と不萌は不思議そうに二人を見続ける。
「これはお前の『ゾーン』を引き出す為の訓練じゃ、後、この忍者は私の友達の不倫(ふりん)さんじゃ」
「初めまして、不倫です、悪者役です、何気に悪役って疲れるんですよぉ?」
 あまりにもテンションが違う悪役に対し、不生は『ゾーン』に入って、不消、不倫を攻撃する。
「ふっざけんなぁ!!」
『八咲』、『八咲』と、二回繰り返す、すると二人の服が八裂きになる、すると不消が言う。
「何だ、何気に『ゾーン』を使用出来ているじゃないか……これにて、『ゾーン』、取得完了だな」
「……遂に『ゾーン』が出来たか、やったぁ!」
 不生はジャンプして喜んだ、不萌は呆れながら不消と不倫を見る……何気に仕組まれた演技って訳か、そう思うと、一気に力が抜ける、何か気を張り巡らせて損した気分……そう思いながら不萌は大きな溜息を吐いた──

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