完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 100~

*66*

 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 6 強敵と不生

「さぁ、今日も任務を終わったし、帰るか」
 不生はそう言って、任務から自宅の『不の里』に帰ろうとした時だった、急に殺気を感じ、振り向いた、すると頬に一線の痛みを感じる、左目で確認すると、頬は切れていた、まるで鋭利な刃物で切られた様に──これは知っている、何度怪我した事か……この切り傷はクナイだった。
「……何者だ!?」
 暗闇に不生は叫ぶ、すると月明かりに照らされて、黒い格好の忍者が現れる、そして口に巻いている布を取り外し、言葉を発す。
「私は貴様の持つ『村雨』を奪いにきた、たったそれだけ、お前が『村雨』を渡せばお前は死なない」
「渡す訳無いだろ、『村雨』は自分の相棒! だから渡す理由も渡す意味も無い!」
 不生がそう言うと、黒い格好の忍者はゆらぁり、と体を揺らしながら近付いていく、そして不生の前に来て、顔と顔を近付かせて叫ぶ。
「黙れ! ガキには分からんだけだ! その刀の真の威力をな!」
「し、真の威力……? 何なんだよ、それは!?」
 黒い格好の忍者に対し、大声で叫んで不思議がる不生、すると黒い格好の忍者が自分の刀を抜いて、説明する。
「なぁに簡単だ……普通の刀は物や人を斬ったら、切っ先や刃の部分、及び刀身が血で錆びたり、骨を切ってしまい、切れ味が悪くなる、それは分かるな、ガキ?」
「あぁ、そりゃ分かるよ、自分だってクナイやナイフを扱うんだ、修行で使ったら毎回毎回研いで、切れ味をよくしている」
 不生がそう言うと、黒い格好の忍者はコクリ、と頷いてから、剣を見ながら言う。
「そう、『大体の刃物は研がないと切れ味が落ちる』のだ、ではガキに質問しよう、お前は『『村雨』を一度でも研いだ事はある』か?」
 確かに言われてみればそうだ、『そもそも『村雨』は研いだ事が無いのだ』、研ごうとすると、父が『自分でやっておく、若いもんは良く寝ないといけない』と言って、先に自分を寝かせている──そしてもしも『父も研いでいなかったら、どうやって切れ味を維持しているのか』? と不思議に思ってしまう。
「研いだ事は、確かに無いな……だがそれがどうした? 研がなくても切れ味が落ちないのは良い事──」
 不生がそう言うと、黒い格好の忍者は首を横に振って、不生に言う。
「間違っている、間違っているんだよ、ガキが……『村雨』はなぁ、『切れ味が落ちず、逆に切れ味が増す』不思議な刀なんだよ……」
「!? それは本当か!?」
「本当も本当、お前が修行と言って、物を斬ったりするだけで、少しずつ切れ味が良くなっているんだよ! 知らなかったのか!」
「……」
 唖然、というより、驚き、驚愕の方が感情的には勝っていた、どういう事だ? どういう原理で切れ味が良くなっているんだよ!? そう思いながら黒い格好の忍者に叫ぶ。
「おい、何でそんな事を知っているんだよ! 可笑しいじゃないか、自分より何でそんな事を知っている!? 『村雨』は家宝なんだよ……なのに何でそんな事を知っているんだ! 答えろ!」
「何故知っているか? って? 簡単だよ、その刀は相当昔からあるんだ、そう──江戸時代からな──今時の忍者は大体が伝説である、と信じているな……他にも世界を手に入れたい年寄り共が欲しがったりな……と言う事だ、俺はそんな年寄り共から任務を受けてお前の『村雨』を奪いにきた、たったそれだけだ、さぁ、早く『村雨』を渡すんだな!」
「いや、渡さないよ!? 何で渡さないといけないんだよ! これは家宝なんだから渡せないって!」
「煩い! いいから渡せ!」
 そう言って、黒い格好の忍者は近付いていく、不生は大きな溜息をして、黒い格好の忍者を見ながら集中する、そして『ゾーン』に突入する、段々と『ゾーン』が使えてきているなぁ、と肌で感じながら『村雨』を鞘から抜き取り、一気に斬っていく、不生は斬った後、『村雨』を鞘に直して、鍔を鳴らす、そして呟いた。
「……『八咲』!」
 鍔で鳴らした後、『ゾーン』は終了した、そして黒い格好の忍者の服は八裂きになった、すると黒い格好の忍者は悲鳴を上げながら走って消えた……
「……奪いに来たのに逃げちゃったよ」

「……と言う事が起きましてぇ」
「成程な、どこからかお前に渡した事がバレて、ガキだから簡単に倒せる、と思っている輩が増えたって事か……中々大変だな」
「成程ねぇ、アンタも不幸ねぇ」
 不消と不萌にその出来事を話すと、不生は渋々言った。
「そうなんです……だから自分は『村雨』を手放そうと思いますが……だけど、『村雨』は自分の相棒、相棒を簡単に手放すなんて出来ない……」
「まぁ、そりゃそうだろな」
 不消がそう言うと、不生は渋々頷く、すると不萌が言った。
「ねぇ、それって逆に『『村雨』を欲しがる奴全員を叩けば良い』じゃない、全員を先に……そして不生、次に戦う奴を捕まえて、ちゃんと話を聞きなさい、『村雨』を欲しがる年寄り共も全て、全部先に叩けば良いじゃない!」
「……どれだけの労力だと思って──」
 不生はそう言いながら大きく溜息を吐く、結構大掛かりになってしまう戦いだな、と不生は思いながら頭を垂れる。
 だが不生はもう一つ思ってしまう、本当に全員の名前を言うのか? と──

 NEXT  しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 7

65 < 66 > 67