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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『村雨』の『その後』 不生の戦い 7 叩けば埃が出てくる出てくる

「……いや、あのさぁ」
「ん? どうしたの不生?」
 不生が独りでに言うと、不萌が反応した、それもその筈、目の前には三人の青色の忍者が縄で縛られていた、一人は悔しがっている、もう一人は太った忍者だ、最後の一人は縛られて涎を垂らしている。
「何でこんな三人が自分の刀を奪う輩を知っている、と思うんだ? 流石に証拠が無いと思うんだけどなぁ」
 不生がそう言うと、悔しがっている忍者が言う。
「俺は『村雨』が欲しいって偉い人から依頼されただけ、だから殺さないでくれ!」
「……こう言う事」
 不萌が親指を立てて、不生に見せる、本当に見付かったのか、そう思いながら『村雨』を悔しがっている忍者の首筋に当てながら、不生は問う。
「それはいいんだけどさぁ、一体誰がアンタに依頼したんだ?」
「それは言えない、簡単には言えないね、だって言ったら信用無くすじゃないか」
 悔しがっている忍者がそう言うと、無言で『村雨』を引く不生、綺麗に切られていき、血が溢れ出る。
「わ、分かったから、その動きを止めろ、分かったから──えーと、大まかに言えば総理大臣、『不動律(ふどう りつ)』だよ、あの人が俺等に命令したんだ、『『村雨』を奪ってこい、もしも入手したら、欲しい分だけの金を渡そう』って……」
「総理、大臣? マジで?」
 不生がそう言うと、忍者は渋々頷く。
「成程ねぇ、それじゃあ、総理大臣を叩けば、『村雨』は奪われない、と言う事かな?」
 不生がそう言って、大きく深呼吸する、そして空を見上げる、見上げると綺麗な星が見えていた──

「よし、活動するか」
 不生はそう言って、動き出す、すると不萌が唐突に言う。
「ねぇ、あの忍者は放っておくの?」
「うん、全部解決する迄縛っておく、とりあえず、総理大臣を叩いて、奪われない様に征しておく、さぁ、一人で行くけど……不萌はどうするの? 自分についていくか、忍者の相手をするか?」
「そんなの決まっているわ、私はアンタの年上、保護者って訳じゃないけど、一応は年上としての役割を果たさせてもらうわ」
「そうか、つまり一緒に戦うって事だな!」
 不生はそう言って、ガッツポーズをする、そして不生達二人は総理大臣の居る場所迄向かった──
 不動邸──
「ふむ、後少しで戦争を起こす、そして我が国の最高峰、『村雨』の威力を見せ付ける! アハハハハハ! どうだ、外国よ、これが私の最終計画!」
「あら、あなた……とってもかっこいい計画ですねぇ、ですがちゃんと埃は掃わないといけませんわ」
「そんなもの知っている、どうせ『村雨』は手に入れられる、その時迄待つのみ……」
 そう言った瞬間、窓ガラスが割れる音がする、何だ? と思いながら向かうとそこには不生と不萌が居た、そして不動が叫ぶ。
「おおっ! 逆に持ち主が舞い込んできた! いいねぇ、私が手に入れるのが容易になった、と言う事は、この家がバレた、か……忍者は裏切りがあるからあまり信じられん」
 不動がそう言うと、不生は不動の目の前で『村雨』を地面に突き刺す、そして大声で怒鳴る。
「おい、総理大臣さんよぉ……アンタの権力だけでこの剣は手に入れられねぇ、分かってんのか? だからアンタには渡さないし、自分は自分の子孫以外に渡す気も無い、だからこの剣の件から離れてくれねぇか?」
「……でぇ?」
 いきなり素っ頓狂な声が聞こえて不生は驚く、すると床に刺さった『村雨』を奪って不動が持つ。
「これだよ、これ! これが欲しかったんだ! 無限の切れ味を持つ幻の刀、『村雨』!! 有難う、私の目の前で披露してくれて……」
 不動はそう言って、不生の体を切った、綺麗に切られて、大量に出血してしまう。
「あっ……っ、やられた、まさか奪うとか考えてねぇから……!」
「不生! アンタ、最低ね、総理大臣の癖に……!」
 不萌がそう言うと、不動は笑う。
「そうか? 私は目の前の人間を使用するのみ、目の前に刀があっただけだ、それを利用した所で何が悪い?」
 アハハハハハ! と笑う不動に対し、あまりの痛みで動けない不生──そんな不生に対し、不萌が近付く。
「大丈夫!?」
「だ、大丈夫、じゃないね……あぁ、案外短い人生だった、案外楽しかった、案外……案外生きたかったなぁ、もっともっと長く……」
 不生はそう言って目を閉じる、そんな不生に対し、不萌は泣いた、あっさり泣いてしまった、そして不動が不萌に近付いていく、不萌は不生の切られた部分を叩いて、不動に突進する、突進して、二人はぶつかって転んでしまう、だが不動は『村雨』を離さなかった。
「クソッ! 離さないだなんて……!」
「生憎私は掴んだら話さない性質なんでなぁ! お前も刀の錆となれ!」
 そう言って、不動は『村雨』で、不萌の体を斬った、だが手ごたえが無い、不思議だ、そう思っていると目の前に死んだ筈の不生がクナイを持って立っていた、不思議だ、何故生きている、ゼェゼェと息を切らしながらクナイで『村雨』の攻撃を防いだ不生、不生の持っているクナイには『不萌』と彫られている。
「お前、まさか……生き返った!?」
「んな訳無いだろ、斬られた部分に不萌のクナイがなかったら自分はもう不萌を守れなかっただろうな、有難うよ、傷口にバレない様にクナイを置いてくれて……!」
 不生はそう言って、不萌に感謝する、そして不生はネタバラしをする。
「忍者って死ぬ振りもしなきゃいけないんだよなぁ、だからお前が斬ったのは自分の血糊なんだよ、生憎自分は死なない!」
 そう言って不生は不萌のクナイを持ちながら『村雨』VSただのクナイの戦いを開始しようとする──クナイと『村雨』、勝つのは『村雨』に決まっているのに、不動はそう思いながら両手で『村雨』を握り、不生の出を伺う──

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