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しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 4 殺人事件と万屋 後編
そして自分は領主様こと、ご主人様の部屋の前に立っていた、流石に領主様の部屋を知らなかったから、他のメイドさんに案内してもらったが……何と言うか、豪華なドアだった、自分でも数万円で補っているというのにこっちのドアは軽く百万円はしそうだった、自分は大きく息を吸って、三回ノックする。
「すいません、蘭ですけど、犯人が分かったんで、いち早く貴方にお知らせしたくて……」
自分がそう言うと、領主様は『そうか!? 早く入ってくれ、入ってくれ!』と言って、自分を部屋の中へ入れる為にドアを開ける、そして自分は領主様の部屋の中へ入る。
「うっわぁ……何ていう豪華な部屋なんですか、軽くこの宝石も二百万はしそうだ……」
自分はそう言って、部屋の中を探る、すると領主様は自分に対し、犯人開示を言う。
「お、おい! 蘭さん、早く犯人を言って下さい!」
「えぇ……犯人ですかぁ? 本当に言って良いんですかぁ?」
自分はそう言って、念には念を押して、領主様に言う、すると領主様は『いいから早く言え! こっちは困っているんだ!』と叫ぶ、自分は溜息を吐いて、領主様を指差す。
「犯人は貴方です、領主様?」
「はっ? 何を言って──」
自分は領主様の言葉を遮って、ストレートに言う。
「簡単ですよ、貴方が殺害したんですよ、メイドを!」
自分がそう言うと、後退りする領主様、そして自分に反論する領主様。
「ふっ、巫山戯るな! 私は『犯人を捜せ』と言ったのだ、私を指せ、とは言っていない!」
「うん、そうだねぇ、『犯人を捜せ』、と言った、つまり私は『領主様本人を犯人と判断した』だけに過ぎないのです、では、自白して下さい、もう犯人は分かっています、そしてメイドにも聞きましたよ、『私達はちゃんと領主様に『あのメイドを辞めさせて下さい』と言いました』とね? そして私は『領主様は知らなかった』、と聞きました、これはどういう事ですか? 口裏合わせにももう少し努力して欲しかったですねぇ、で早く自白して下さい、今なら罪は軽くなるんです、だから急いで下さい……!」
自分がそう言うと、言い逃れが出来ない領主様はその場で膝をついて言葉を発した。
「うぅっ……! 仕方なかったんだ、皆には『とろい、とろい』と蔑まされ、自分は『とろくても大丈夫』と言い続けたのに……! 彼女は自殺だったんだ! だから仕方なく、他人が殺した様に、自分で遺体を弄って……!」
そう自白する領主様、それでも遺体を弄る事は犯罪だ、少し冷たい地面で反省するんだな、そう思いながら自分は携帯で警察を呼んだ──
「何とか終わったな、ていうか今回はあっさりした事件だった」
そう呟きながら館を出る、するとあの時の幼女──梨花ちゃんだ──がウサギのぬいぐるみを持ちながら泣いている、それは仕方無い、君の父親は犯罪を犯したのだ、刑務所で刑を償わないといけない、だが、母親が居ない、それはどうしてだろう?
「それはもう死去されているからですよ」
そう言って、自分は振り向いた、そこには浅井さんが存在していた、えっ? どうやって自分の心の声を……? いや、何で分かったんだ? そう思いながら話を聞く。
「死去した? それって領主様の妻が……?」
「はい、そうです、そして私達メイドとご主人様で育てていましたが、まずご主人様が居なくなるので、この家に居れません、つまり解雇ですね、なので、私はお嬢様を見る事が出来ません、なので、失礼は承知です、梨花お嬢様を引き取ってはくれませんか? この家のお金を全て梨花様が手に入れます、ですがお嬢様はまだ幼いのです、なので管理人になって欲しいのです蘭様には……どうか引き取ってはくれませんか?」
「…………」
自分は溜息を吐いて、梨花ちゃんに近付いて、声を掛ける。
「梨花ちゃん……」
「あっ……おじさん……私のお父さんがぁ……」
「うん、そうだよね、お父さんでも悪い事をしたら刑務所に行かなきゃだよね……それでさ、梨花ちゃん、おじさんと一緒に住まないかい? おじさんの家は少し小さいかもしれない、だけど楽しい事は一杯だぜ?」
自分がそう言うと、泣いていた顔が急に笑顔になり、自分に抱き付いてきた。
「うん! 楽しいのなら着いていく! お父さんは悪い事をしたから、それを償う迄おじさんと一緒に遊んであげる!」
「アハハ……それは嬉しいなぁ」
自分がそう言うと、自分は浅井さんの方を向き、浅井さんに言う。
「浅井さん、彼女は私が引き取ります、貴方のして欲しい事はしました、だから私のして欲しい事もして下さい、出来ればですが」
「? どういう事ですか蘭さん……?」
「そんなの簡単ですよ、私の店の雑務や家事をして下さい、単純に言っちゃえば、自分のお店で働いて下さいって事ですね、自分だけじゃあ梨花ちゃんのお世話は難しいですし、梨花ちゃんは女の子です、男の自分には分からない事もあるかもしれません、他にも給料はあまり出ないかもしれないけれど……出来るなら自分の所で働きませんか?」
自分は頭を下げて浅井さんに言った、そして浅井さんはこう言った。
「お嬢様のそばに居れる事なら何処でもついて行きますよ、貴方はお嬢様の恩人ですので……給料は無くても大丈夫です、此処の仕事は給料が良いんです、軽く自分が生きる位にはお金はあります」
「そ、そうなんですか……それは凄いですね」
自分はそう言って、驚く、本当に金持ちだったんだ、この領主様、すると一つの疑問が現れる。
「えっ? と言う事は自分のお店で働いてくれるんですか?」
自分がそう言うと、浅井さんはコクリ、と頷く。
「そう言っているではないですか?」
「えっ? あぁ、そうですよね……」
自分は失敗したと思っていたが、成功していたのか、これでお母さん役を手に入れたな、そう思いながら自分は綺麗な青空を見ながら呟いた。
「さぁ、自分のお店に戻るかぁ!」
自分がそう言うと、浅井さんが『はいそうですね』、梨花ちゃんは『うん!』と言う、これから三人であの店で過ごすのか、そう思うと少し楽しくなるのでは無いかな? と思う、明日から、賑やかになるなぁ、そう思いながら青空を見続ける──
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