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しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 5 新たな物語
「…………」
「…………」
「…………」
無言のまま、自分の家である、蘭万屋の室内に居る自分達三人は個人個人で手を動かしていた、一人の青年である自分こと蘭は手元の資料を確認して、紙の音だけを鳴らす、一人の女性である浅井さんは自分の周りの花瓶や床を掃除している、そんな中、自分の目の前に存在しているお金持ちの幼女である梨花ちゃんは呑気に白紙の紙に落書きをしている──いや、この年代の少年少女の落書き等、落書きなのではなく、『お絵描き』だ、しかも真剣な『お絵描き』なのだ、しかもこの年代の『お絵描き』は本気なので『落書き頑張ったねぇ〜』とか気軽に言えないのである。
「…………」
いや、可笑しいだろ、可笑し過ぎるぞこの状況、そう思いながら自分は梨花ちゃんに声を掛ける。
「あのさぁ、梨花ちゃん?」
「何? おじさん?」
「いや、君からの年齢として、学校とか、幼稚園に行っていないといけないよね? どうして行っていないんだい?」
自分がそう言うと、浅井さんが簡単に答える。
「蘭さん、実は『ちゃんとした家に住んでいない人は幼稚園にも小学校にも行けないんです』、なので、この万屋の部屋はちゃんとした家では無い、と……」
「その現実を叩くのは辞めてもらえます……?」
自分はそう言って、大きな溜息を吐く、そうだ、こんな所で自由にお絵描きなんてさせているべきではないのだ、そう思いながら手元にあったコーヒーを飲もうとする、すると急に万屋の扉を開ける者が居た、あまりの大きな衝撃の開閉音に自分はコーヒーを零してしまう。
「蘭万屋さん、私を助けて下さい!」
そう言って女子高生の見た目の女性は浅井さんに向かって頭を下げていた──いや、こっちこっち、そっちは家事手伝いのメイドさんなんだけど。
「失礼しました、私の名前は御手洗尊(みたらい みこと)と申します、高校二年生です、実は蘭さんに話があるんです」
「まぁ、仕方無いよ、失礼なのは毎回承知しているからね……で、どうしたんだい? 高校生がこんな胡散臭い場所に立ち寄って? 自分が君の事を食べるかもしれないのに……」
「その発言はどうかと思いますよ?近くに小さい子が居るのに……」
そう言って、御手洗さんは自分の後ろに縮こまっている梨花ちゃんを見つめる、自分は少し溜息を吐いてから、用件を聞く事にした。
「ま、まぁ、それは置いといて……で、何で万屋に来たのかなぁ? 何か学校で問題でも?」
そう言うと御手洗さんは少し驚いていた、それもその筈だろう、『図星』なのだから。
「なっ、何で分かるんですか?」
「そんなのは簡単だよ、実際この万屋に来た時、汗を掻いていた、更に息も切らしていた、何だか焦りながら此処に着たみたいに感じれてさぁ? さぁ、何が用件何だい?」
自分がそう言うと、彼女は急に泣き出してしまった、えっ? 自分が泣かせる様な真似をしたかなぁ? いや、していない筈だけど……
「す、すいません、図星過ぎて驚いてしまいました、流石万屋、見る目だけはありますね」
「それは前からだけどね、軽く数百年も生きていたらそうなるよ」
「えっ? 数百年?」
「違うよ、数十年の聞き間違いだよ」
「は、はぁ、そうですか……そうじゃなくて、話は続いているんです」
「そうなのかい? 一体何なの、話って? いや、用件か」
自分はそう言って、少し考える、すると御手洗さんが静かな声でゆっくりと語る──
「実は……密室殺人事件なんですが……」
「!?」
自分は驚いてしまった、まさか二件連続で殺害系か、と思うと少し身震いがする、まぁ、仕方無いよね、うん……そう思いながら彼女の話を聞く事にする。
「それは数時間前の事です……私が女子更衣室に入った時です、顧問の尾長先生が首を縄で絞められて死んでいたんです、おまけに先生の口からは一筋の涎が……だから相当苦しんだと思います、私は更衣室で叫びました、すると部活メンバーが集まって皆で叫びました、尾長先生は何時も部活に熱心な先生でした、妻も居て、最近息子が生まれた、と言っていましたし……」
「成程ねぇ、つまり自分が更衣室のドアを開けた時にはもう死んでいた、と?」
「はい、そうです、そして実は更衣室のドアは鍵が掛かっていまして、私が部活メンバーから鍵を借りて開けたんです、ですがもうその時には先生が……!」
自分でそう言って泣き出してしまう御手洗さん、うーむ、この事件、案外難解だなぁ、と思いながら自分は溜息を吐く。
「はぁーあ……仕方無い、それじゃあ行きますか、二人はどうする? お留守番?」
自分がそう言うと、梨花ちゃんは『伯父さんについていく!』と言う、浅井さんは『蘭さんに着いて行きます』と発言する、それじゃあこの万屋、今日は閉店だ、今から御手洗さんの学校に向かおう、そう思い、彼女に発言する。
「それじゃあ君の学校へ向かおうか、とりあえず、迅速に行動してみるね、何処の学校だろう?」
「……えん、……くえん」
そう言って、自分は不思議がる、くえん? 一体何処だろう? そう思っていると、彼女は聞こえる声で学校名を言った。
「安芸学園です」
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