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しりとりシリーズ 『メモ』の『その後』 蘭万屋録 CASE 6 安国芸術学園
蘭万屋から少し進んで、タクシーに乗って二十分の所に安芸学園がある、正式名称は安国芸術学園(やすくにげいじゅつがくえん)だ、『安』国『芸』術『学園』を略して、『安芸学園』と呼ばれる事が多い学校だが、そんな学校で事件が起きたのだ、自分こと蘭はその現場へと向かっていた──
「本当に大丈夫なんですか? 安芸学園は女子高ですよ?」
「大丈夫だよ、安芸学園には知り合いが幾らか居るんだ、話はつけてくれるだろう」
「ほ、本当ですか……?」
女子高と言って少し焦る浅井さん、それもその筈、自分は男だからだ、だが安心して欲しい、そんな情欲、起きないから、と心の中で呟く自分に対し、梨花ちゃんは久し振りの来るまでおおはしゃぎしていた。
まぁ、仕方無いよな、車での移動は珍しいから、と考える自分、安芸学園迄後少しだった──
「やぁ、蘭、元気だったか?」
そう言って、安芸学園の人間である、稲田悟(いなだ さとる)が出迎える、自分は差し出された手を掴んで握手する、自分と稲田の姿を見て、浅井さんは驚いている。
「まさかそんな大物とお友達だったとは……!?」
「友達では無いですよ、腐れ縁ですよ」
浅井さんの言葉に対し、稲田が返答する、まぁ、腐れ縁とは言っても、切っても切れない関係だからなぁ、と考える自分、自分は入場許可証を発行してもらい、安芸学園の内部へと侵入する──
安芸学園はとても広い学校で、たまに迷子の人が現れると言う噂も存在している、そんな学校で何で殺人事件が起きるのだろうか? と考えてしまうが、人の考えは他人には知れないからなぁ、とばっさり切っておく。
自分は稲田に案内されて、体育館へと侵入する、そして近くの女子更衣室に立ち止まった。
「此処だよ、蘭」
「ふむ、女子高にしては小さい更衣室だなぁ、精々十五人集まって満杯って所かな?」
「まぁ、他にも女子更衣室はあるけど、御手洗君の部活の更衣室はたまたま小さいのなんだよね」
「へぇ、それは可哀想に、少しは改造して大きくしろよ」
「アハハ、そんな金は無いからなぁ……」
自分は稲田と少し会話して、更衣室をノックする、まぁ、誰もいないよね、そう思いながら更衣室のドアを開ける、すると目の前に遺体が見付かった、確か御手洗さんの話によると尾長先生だっけ? 可哀想に……自分はそう思いながら尾長先生に触れる、冷たい、まぁ、死んでいるから、そりゃそうなんだけど……自分は緒形先生の首を見て少し不思議に思う。
「あれっ? 何か可笑しくないか?」
「可笑しい? 何がだよ、蘭?」
「いやさ、普通首を締め付けられた痕って『締め付けた物の形になる』よな? この痕はどうだ? 明らかに『首に巻かれてある縄より細い痕』なんだよ、だって縄で首を絞めたら首に縄の痕が付くよな? なのに首にはついていないんだよ、可笑しいよなぁ」
「ふむ、そう言われると可笑しい……一体どういう事なんだろうなぁ、さぁ答えろ蘭」
「答えられる訳ねぇだろ、バカかお前は、自分はそこ迄頭が良い訳じゃないんだから……」
稲田の言葉に対し、自分はツッコむ、コイツは何を考えているのか……? そう思いながら、周りを確認する、そして稲田に自分は声を掛ける。
「なぁ、稲田、何か最近起きた事件って無いか? 例えば学校の備品が無くなった、とか、備品が壊れた、とかさぁ?」
自分がそう言うと、稲田は少し考えて、ぽんっと手を打って自分に言う。
「そういえばこの更衣室の鍵が無くなったんだよ、今使用しているのはマスターキーとサブキーなんだけどさ、一週間かなぁ? 一ヶ月だったか忘れたが、相当前から無いんだよね、それ位かな?」
鍵が無い? それはどうでもいいと思うけどな、だってサブの鍵があるならその鍵を使用すれば良いし、サブのサブキーを作ってしまえばそれで済むのだから──そう思い、自分は尾長先生から離れて考える。
まず、特筆すべき点はただ一つ、『縄で首を絞めたのではなく、先に何か細い物で首を絞めて、絶命させた可能性が高い、その後に縄で首を絞めた』、と言う事だ、この点がどういう点なのか、自分にはまだ思い付かない──そう思っていると浅井さんが急に喋り出した。
「すいません、蘭さん、お嬢様が目を擦ってます、なので、寝かせたいのですが……保健室のベッドとか貸してくれませんかねぇ?」
「保健室のベッドかぁ、貸してくれるか? 稲田?」
自分がそう言うと稲田は『あぁ、良いよ、自由に使ってくれ』と言う、自分は浅井さんに言う。
「それじゃあ、保健室で少し梨花ちゃんを寝かしておいて下さい、次に起きる前にこの密室事件は解決させるから」
「そうですか、分かりました、それでは頑張って下さい」
浅井さんはそう言って梨花ちゃんをお嬢様抱っこして運んでいく、まぁ、浅井さんなら案内役が無くても無意識に着いてそうだなぁ、と思い、案内役をつけなかった。
自分は大きく深呼吸して考える、さぁ、一体どんな密室事件なんだろう? そう思いながら女子更衣室で大きな溜息を吐く──一体誰が犯人なんだろう? 内部犯? もしくは外部犯? それは自分には分からない──
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