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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『揶揄』の『その後』

「ふむ……」
 自分はそう呟いて溜息を吐こうとする、そんな自分に対し目の前に居る裕香はナース服のまま巨大な注射器を持ちながら呟く。
「何か意見は? もう少しスカートの裾を短く、とかガーターベルトをつけるとか」
「いや……別に自分はそういうフェチズムは無いし、別にどうでもいい、ていうか早く服をキャリーケースに直せよ、早く自分は帰りたいんだ」
「何よそれ? 面倒な目で私を見ないでよ?」
「面倒なのは事実なんだけど──明日は早いんだ、だから早く帰って寝たいんだけどなぁ」
「成程、確かに明日はコミケ当日だもんね」
 そう、自分と裕香は明日、コミケ会場に行ってコスプレイヤーとなるのだ、まぁ、自分は制御役、として登場するのだが──明日になって平穏な日常を手に入れたいな、そう思いながら自分はその場から離れて自宅へと帰る──

 翌日──

「何も起きずに一日目終了か……」
 自分はそう言って両手に大量の紙袋──中身は同人誌で大量だ──を持ちながら帰宅する、ていうかコスプレって凄いな、普通に冬なのに水着レベルの格好をしているだなんて……寒くないのかなぁ? 自分はそう思いながら溜息を吐く、案外両手が重い。
「お帰り」
「あぁ」
「そうだな、ただいまなのだよ」
 自分はそう言って裕香の家に荷物を置く、全て裕香が買った荷物を自分が持っていたのだ。
「今日は大変だったよ、まぁ、君のお陰で助かったけどね」
「そうかいそうかい、んで? 少しは外に出てどうだった?」
「……楽しかった」
「そうだ、外は楽しいんだ、だから学校に来てくれよ? もうすぐ受験シーズンを迎えちまう、だから少しでも先生と会話するなり何とかしてくれよ? そりゃスカート捲った自分も悪いけどさぁ? 少しは開き直れよ、相当昔なんだ、皆忘れてるって、自分と裕香ぐらいだよ、覚えているのは」
「……うぅー」
「唸っても無駄だよ、自分は受験で忙しい中頑張って此処に来ているんだ、毎日三時間は勉強しているのに睡眠時間も削って此処に来ているんだ、今日だってそうさ、寝る時間は深夜の一時だったし」
「それは私だってそうだよ、気付いたら深夜一時、二時で、何時の間にか寝ていて君に起こされたんだし──」
「自分の場合は勉強でだよ、君と違って夢も希望もあるんだ」
「えっ? それは初めて知った」
「そりゃそうだ、君に初めて言うんだから、親にも言っていないし」
「…………」
 無言のまま裕香は黙る、自分は静かに言った。
「自分と同じ様に進路を決めてほしいんだよ、だから学校に行ってくれ、頼む」
 自分はそう言って裕香に土下座する、何分が経っただろうか? 自分は土下座から起き上がって部屋を出ようとする。
「ま、待って!」
 そう言って裕香が自分を止める、一体なんだろう?
「……進路、もう決めているの?」
「まぁね、一年前にはもう決めていたかな? その場所に行くからずっと勉強してた」
「そうなんだ」
「そうなんだよ、だから自分はもう帰──」
「私も、私も同じ所に行きたいなぁ、君と同じ場所に──」
「分かった、だったら明日から学校へ行けよ、それだけだよ、自分から言えるのは」
 自分はそう言って裕香の部屋を出る、裕香は翌日から制服を着て学校を来た、何と言うか、珍しいなぁ、と思った、そして裕香は自分と同じ進路にする、と言って他の先生の言う事を聞かないのだ、自分は溜息を吐いて心の中で呟く。
 全く、自分の苦労は彼女が九割の原因なのに自分はそんな彼女に関わっている、何で関わっているのか分からないけど、自分が『彼女と居るのが楽しい』から関わっているかもしれない、自分は心の中でそう呟いて、溜息を吐いた──

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