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しりとりシリーズの『その後』
作者: 彩都  (総ページ数: 108ページ)
関連タグ: しりとり 短編集 長編 ミステリ 推理 多ジャンル 
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 しりとりシリーズ 『了する』の『その後』

 姉が居なくなって初めての夏、自分は実家で大人の関係になった幼馴染みと共に棒アイスを食べながら縁側で涼しんでいた、すると急に幼馴染みが言う。
「なぁ、少し川に行かない? そっちの方が涼しいと思うよ?」
「えっ? あぁ、それもそうだな……だけど夏でしょ? 少し川の温度がぬるくなっているかもしれないね?」
 自分がそう言うと幼馴染みは笑って自分に言う。
「アハハ! それはないよ、だってその川の近辺は森林で生い茂っているんだから、影で涼しくなっているよ」
「それもそうか、それなら川に行って遊ぼうか」
 自分がそう言うと幼馴染みは『うん!』と可愛い笑顔を作る、本当、あの夜乱れた顔とは大違いだな、と思いながら自分は棒アイスを食べ終わり、移動する準備を始める──

「うっひゃあ、冷たくて涼しー!」
 幼馴染みはそう言って、ワンピースの裾を持ち上げる、自分は足湯の様に脛(すね)から下を川に入れて涼しんでいた。
 何だろう? この光景はとても美しい、と思った、幼馴染みは可愛いし、水飛沫でもっと綺麗に感じた、すると後ろから変な声が聞こえた
「ねぇねぇ、お兄さんお兄さん、聞こえてる?」
 自分はその音の方へと振り向く、すると自分の背後に背が小さい幼女を見つける、次に幼馴染みが叫ぶ。
「えー!? 誰ぇ!? 隠し子ぉ!?」
 幼馴染みがそう言うと自分は噴出してしまった、自分はまだシングルファザーでは無いのだが……自分がそう思っていると幼女が川に飛び込んだ、彼女の姿を良く見ると緑の髪色にポニーテールの様な髪型、更に体の色は褐色だった、こんな子、この近辺に居るのかな? と思う。
「なぁ、お前は知っているか、この子の事?」
 自分が幼馴染みにそう言うと幼馴染みは首を横に振って返答する。
「流石に私でも知らないかな? と言う事は君の隠し子じゃないんだね?」
「いや、そりゃそうだろ……」
 幼馴染みの言葉を聞いて自分は呆れてしまう、何でそんな考えが起きてしまうのか……? すると褐色の幼女が自分に言う。
「ねぇねぇ、二人共、私と一緒に遊ぼうよ?」
「……自分は良いけど? 幼馴染みがどういうかは……」
 自分がそう言った時だ、元気に幼馴染みが言う。
「うん! いいよ!」
「……だってさ、それじゃあ川から上がって遊ぼうか?」
 自分がそう言うと褐色の幼女は『うん!』と大きな声で言って喜んでいた──

 何か引っ掛かっていた、自分はそう思いながら褐色の幼女を見つめる、何だろう? どっかで見た事があるんだよなぁ? どっかで。
 自分はそう思いながら木の木陰で少し涼しんでいた、熱くて少し頭がぼぅっとしてしまったから休憩をしている、その間に褐色の幼女の事を見つめる、何処かで見た事がある、はて何処でだろう? 自分はそう考えながら自販機で買った冷たいスポーツドリンクを飲む。
「アハハハハハ!」
「アッハッハッハッ!」
 幼馴染みと褐色の幼女は走り回りながら笑っている、何と言うか元気だな、と感じる、そして急に冷たい風が吹いたと思ったら、空は夕焼を作り出していた、もうすぐ帰らなくては。
 自分はそう思いながら右手を動かす、ある程度は動かせるから歩けるだろう、と判断する、次に自分は幼馴染みと褐色の幼女に言う。
「おぅい、もう帰るぞー! この地域は一気に真っ暗になる、今の間に帰るぞー!」
 自分がそう言うと幼馴染みは『うん、分かったー!』と言う、褐色の幼女は『うん……』と元気が無い声を出して頭を垂れる。
「一体どうしたんだよ?」
 自分がそう言うと褐色の幼女は静かに言う。
「うん……君達と一緒に遊べなくなるのが悲しくて……」
 一緒に遊べなくなる? まぁ、自分は数日後に自宅へ帰るが、幼馴染みはこの地域で永住するらしいし、明日も少しは遊べると思うが……
「そうなんだぁ、でも私はずっと遊べるよ?」
 幼馴染みがそう言うと褐色の幼女は首を横に振る、どういう事だろうか?
「違うんだよ、二人共……私は一日だけ許された存在……二人にしか見えない存在なんだよ……」
 そう言って褐色の幼女が宙に浮く、おいおい、まさか自分と幼馴染みを騙すのかよ? 何処でどんなトリックが使用されているんだ? と勘ぐる。
「ごめん……こんな姿で二人を騙して……」
 そう言って幼馴染みの頭を撫でる、次に自分の頭も撫でられる、その時だった、急に懐かしい感覚を感じる──何だこの感覚? まるで安心する様な撫で方だな──すると、脳裏にふと、数日前に死んだ姉の事を思い出した、何で姉の事を思い出したんだ? そう思い、褐色の幼女を見る、自分はやっと褐色の幼女の事を思い出した。
 褐色の幼女、それは『自分の姉の小さい時の姿』だったのだ、そりゃあ何か引っ掛かる筈だ、と自分はそう思いながら宙に浮く褐色の幼女──基自分の姉──を見つめる──
「有難うね、最後の最後迄遊んでくれて……神様にお願いしたんだよ、『幼女の姿で一日だけ生き返らせてくれ』って──最後に二人と遊びたくて──」
 幼女の姉がそう言うと自分は静かに言う。
「ふぅん? それで復活したのかぁ、まぁ、姉さんが一日だけ生き返ったなんて話、親族は信じないもんね」
「確かにね、だからお前達の前に現れたんだよ」
 姉さんはそう言って段々体が薄くなる、あぁ、もうすぐ天に召されるのか、自分はそう思いながら、涙を我慢する、だが当の本人である姉さんと幼馴染みは涙を流していた。
「それじゃあ、もうお別れの時間だね……さようなら──」
「さようなら、お姉さん!」
 大声で泣きながら幼馴染みは姉さんに手を振る、自分は静かに頭を垂れながら涙を我慢出来ずに流していた──さようなら姉さん、元気で天国を過ごせよ──そう思いながら──

「よし、もう帰るか」
 自分はそう言って靴を履き、玄関で荷物を持つ、すると自分の目の前に幼馴染みが現れる。
「もう帰るの? もう少しゆっくりすれば……」
「それは無理だ、仕事が溜まってそうだからなぁ……あぁ、そうそう」
 自分はそう言って玄関を出ようとする、だが玄関の前で振り向いて自分は幼馴染みに言う。
「もしも、次こっちに帰ってきたら、自分と結婚してくれるか?」
 少し恥ずかしく顔を赤らめながら自分が幼馴染みに言う、すると幼馴染みは『私でよければ……』という、何とかプロポーズは成功したようだ。
 自分は少しにやけながら玄関を出る、次に帰ってくるのは何時になるか分からないが、早めに帰りたいな、と思った──さようなら故郷、さようなら幼馴染み、さようなら、姉さん──

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