コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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魔法使いの青春理論
日時: 2014/07/10 21:03
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: 5PvEL/lW)

 青春謳歌系魔法ギルド、始めました。

 魔法使いだって、仕事も遊びも戦いも、
 それと恋に落ちたりもするのです。



  ++++  ++++  ++++



初めましての人は初めまして
瑞咲(みずさき)と申します(∩´∀`)∩

前回の小説は打ち切ってしまい申し訳ありません…
今回はそんなことがないように努力します

題名から分かるように、魔法使いたちのお話です
といっても世界観とかはあまり複雑にしないので
「ファンタジー苦手…」って方も是非読んでみてください

コンセプトは「魔法使いの日常」で、ギャグありバトルありです
短編もあり、長編もありという形式で書いていきます

ではでは、よろしくお願いします\(^o^)/


〜素敵なお客様〜
いろはうた様 ZEXAL様 あんず様
珠紀様 雨様 朔良様 夕衣様
にゃは様




世界観・用語説明>>1

登場人物>>2 >>37
プロフィール ツバキ>>26
       ユリ>>33
       クレハ>>38
       ナツメ>>47
       トウ>>51
       ヒイラギ>>120

キャラの声優を妄想してみた>>41

ツバキ先生のまほ論講座>>78



 【序章】
  >>4

 【第一章 結成─organization─】
  1.>>06  4.>>11  7.>>19
  2.>>07  5.>>15  8.>>20
  3.>>10  6.>>18  9.>>25

 【第二章 お花見—flower viewing—】
  10.>>27  12.>>44  14.>>50
  11.>>36  13.>>48  15.>>52

 【第三章 過去と今—past and present—】
  16.>>54  19.>>57  22.>>67
  17.>>55  20.>>58  23.>>72
  18.>>56  21.>>61

 【第四章 潜入—infiltrate—】
  24.>>79  28.>>85  32.>>95  36.>>105
  25.>>80  29.>>88  33.>>98  37.>>108
  26.>>83  30.>>89  34.>>99  38.>>109
  27.>>84  31.>>92  35.>>102  39.>>113

 【第五章 積乱雲—cumulonimbus—】
  40.>>124
  41.>>125



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Re: 魔法使いの青春理論 ( No.54 )
日時: 2014/03/19 22:18
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: LCLSAOTe)

   【第三章 過去と今—past and present—】



  16.椿色リコレクション


「癒しの光を捧ぐ——トリート」
 治癒魔法を詠唱すると、少女の膝の怪我は綺麗に完治された。

「わぁ…!もう痛くない!ありがと、お姉さん!」
 にこっと笑う少女の隣で、少女とよく似ているが彼女よりも大人びている
 もう一人の少女が頭を下げた。
「あ、あのっ、妹の怪我を治してくれて、ありがとうございますっ」

「いえいえ。今度は転ばないようにね」
 にっこりしながら言うと、怪我をしていた少女——妹は、「うんっ」と頷いた。

「では失礼します。ほ、本当にありがとうございましたっ!さ、行こう」
「うん、おねえちゃん!お姉さん、ありがとう!」
 互いに手を振り、姉妹は手を繋いで川原から去っていった。

「ツバキ、治癒魔法も使えるんだな!」
 隣で事の成り行きを見守っていたクレハが感心したように言った。
 その横にはトウもいる。

「でも、治癒魔法って難易度マックスだから成功するほうが稀なんだよね」
 成功してよかった、と息をついた。

 私たち三人は依頼をこなしてきた帰りなのだが、
 その途中にさっきの姉妹に会ったのだ。
 そして、妹が膝に負った怪我を私が治した、ということだ。

「それにしても懐かしいなぁ…」
 思わずそんな言葉をもらす。

「何が懐かしいんだ?」
「妹のこと」

 そう答えると、クレハははっとした表情になった。
「そっか、ツバキの家族は…」
「うん、もういない。でも今はクレハたちがいるから寂しくなんかないよ」

 そう言ってから、私はその場に腰を下ろした。
「ねぇ二人とも、私の思い出話、聞いてくれない?」
 二人は少し驚いたが、「おう」「…ああ」と頷いて並んで座った。


「私にはリンゴ—林檎—って名前の妹がいたの。

 私たちは友人が羨むほど仲が良かった。
 リンゴは私を慕ってくれたし、私もリンゴを深く愛していた。

 やがて、母が第三児を授かったの。

 リンゴもついにお姉ちゃんになるね、って喜んでいたところで
 あの富豪襲撃事件が起こり、亡き人となった。

 あんなにも可愛かったリンゴは、もうこの世にいない。
 でもね、私はこう思っているの。

 リンゴは私の記憶の中で、今も生きているってね」


 日光を反射させてきらきらと輝いている川を眺めながら、私は郷愁に浸った。

「…ツバキはいい姉ちゃんなんだな」
 クレハが穏やかにそう言った。

 トウは思い詰めた表情をして呟いている。
「深く…愛していた…」

「ん?それがどうかした?」
 私が尋ねると、トウは顔を赤くして首を振った。
「な、なんでもない。…その…そう思えるの、羨ましくて…」

 ごにょごにょと口ごもるトウの隣で、クレハが懐かしむように言った。
「オレには兄弟はいなかったけど、
 小さいときからナツメとトウと一緒にいたよなー」

 私は小さいとき、という言葉に食らいついた。
「ねぇねぇ、クレハたちがどうやって出会ったのか教えてよ!」
「おう、もちろんだぜ!」

 ニカッと笑って、クレハは話し始めた。



      *リコレクション(recollection):思い出、回想

Re: 魔法使いの青春理論 ( No.55 )
日時: 2014/03/20 20:59
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: Z6SnwTyI)

  17.紅葉色チャイルドフッド


 田舎の小さい村に生まれたオレは、いたって普通だが恵まれた家庭で育った。

 ただ一つ寂しかったのは兄弟がいないことだった。
 そのため、オレはよく外へ出て近所の子どもと遊んでいた。

 どんなことをして遊んでいたか?
 えーっと、ヒーローとか強い魔法使いに憧れていたから
 その"ごっこ遊び"だったな。

 そんなある日——五歳の頃、いつものように遊びに行こうと外へ出た直後、
 隣の家の玄関に見かけたことのない子どもがいるのに気付いた。

 年齢もオレと同じくらいだろう、そう思うと自然と親近感が湧いてきて、
 オレはその少年に話しかけていた。

「なぁ、いっしょに遊ぼーぜ!」
 しかし、少年は首を振った。
 無表情だったが、その動作から、なんとなく悲しさが伝わってきた。

 その様子を見て、オレはこう考えた。
 ——この子には何か悲しいことがあったんだ。
 悲しみは遊んで忘れるのが一番だろ、ってな。

 だから、オレは少年の手を握って言った。

「オレが絶対に楽しませてやるから!」

 お構い無しに手を引っ張って公園へ行き、友達の中に少年を交えて
 日が暮れるまではしゃいでいた。

 少年は、最初は戸惑っていたが、オレらと接しているうちに
 だんだんと笑顔を浮かべてきた。

「そういえば、おまえ何て名前なんだ?聞くのわすれてた」
「えっ…ト、トウだけど」
「トウっていうのかぁ。オレはクレハ!なぁ、また明日も遊ぼうぜ!」
「…!う、うん…!」

 これが、トウとの付き合いの始まりであり、
 トウが初めて他人に心を開いた瞬間だった。


  + + +


「なるほど、クレハのフレンドリーさは昔から変わらないんだね」
 私がそう言うと、クレハは「まあな!あははは」と笑った。

 それにしても、一つ気になることがある。

「トウが初めて心を開いた…ってどういうこと?」
 尋ねると、トウは顔を赤くして頬を掻いた。
「その…色々あったんだ」
 その横で、いつもより穏やかに微笑みながらクレハが言った。
「トウ、話してやってくれよ。ツバキはオレたちの仲間なんだから」

 トウは「…クレハがそう言うなら…」と呟いて、少し照れながら話し始めた。



      *チャイルドフッド(childhood):子供時代

Re: 魔法使いの青春理論 ( No.56 )
日時: 2014/03/29 14:07
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: oq1piOCI)

  18.藤色フィーリング


 俺の両親は、俺が幼い頃から常に言い争いをしていた。

 母親は俺の愛情を過剰に求め、滅多に外出させようとしなかった。
 そして、いつもこう言っていた。
「お母さんはあの男と恋をしてこんな不幸になったのよ」と。

 俺はそんな母親の歪んだ愛情が嫌で嫌で堪らなかった。

 ただ、母親の言っていることは紛れもない真実だと思った。
 だから、俺はこう考えてふさぎこんでいた。

「父と母が恋に落ちたから俺はこんな目に遭ってるんだ。
 恋というくだらないことをしたせいで。
 ああ、恋とはくだらないものなんだ」


 やがて両親は離婚した。
 俺は当然の如く母親に引き取られた。

 ようやく離れて清々したのか、母親は執拗に俺を求めることはなくなり、
 俺は自由に外出ができるようになった。

 しかし、家に籠っていたがために友達などおらず、
 ただ玄関の前で立ち尽くすことくらいしか出来なかった。

 まずは近所の散歩などをすべきだが、俺には好奇心の欠片もなかったため
 外の世界へ一歩踏み出す勇気が出なかった。

 そんなある日、隣の家の子どもであるクレハに誘われて初めて外へ遊びに行った。

 その解放感とクレハの明るさから、俺は初めて心を開いた。
 閉じ籠っていた殻を破ることが出来たんだ。


  + + +


「今も恋はくだらないって思ってるの?」

 開口一番に尋ねると、トウは首を横に振った。
「いや、今はそれほどでもない。…つい最近までは思っていたが」
 トウは答えながら私の顔をちらちらと見ていた。

「そっかぁ。…あと、さっきから私を見ているみたいだけど、どうかした?」

 すると、トウは照れた顔をさらに赤く染めてそっぽを向いた。
「な、何でもない」

 何でもなくなさそうだけど、私はとりあえず気になることを尋ねた。
「で、ナツメとはどうやって出会ったの?」

 クレハが答える。
「ああ、ナツメとはオレが六歳のとき…」
 そこで言いとどまると、クレハは少しだけ切なそうな表情をした。

「実はある事件があってから、ナツメは一人でいることが多くなったんだ。
 そこにオレたちが来て、いつも誘っているうちに仲良くなっていった」

「ある事件…?」
 私は、今ユリと依頼をこなしているであろうナツメを想うのだった。



      *フィーリング(feeling):感覚、感情

Re: 魔法使いの青春理論 ( No.57 )
日時: 2014/03/22 11:01
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: Z6SnwTyI)

  19.棗色トラジェディー 上


 ナツメさんと私——ユリは、数人の魔法使いと戦っていた。

「悪徳商人の確保」という依頼を引き受けた私たちは、
 その商人の屋敷に侵入し、彼を追い詰めたのだが、
 商人は最後の切り札として仕え魔法使いたちに自分を守らせるよう命じた。

 仕え魔法使いがいるという情報は掴んでなかったため最初は苦戦したが
 六人いた魔法使いを、今は四人にまで減らしていた。

 私は仕えの中で一番強い魔力を持つ魔法使いに
 とどめの一撃を喰らわせた。

「ぐはぁっ」
 魔法使いが倒れる。

(…よし!)
 このまま二人で倒せるかもしれない。


 ——そう考えた私は、一瞬油断してしまった。


「闇を散らすは銀色の衝撃——メタルインパクト!」

 横から呪文が聞こえた直後、私は脇腹に重たい衝撃を感じた。
 それは鋼の巨塊だった。
 今さっき呪文を唱えた鋼の魔法使いが生み出したものだろう。

 次の瞬間には、私の身体は軽く吹っ飛び、屋敷の壁に激突していた。

「ユリ!」
 ナツメさんの声が、少し霞んで聞こえる。

「っぐ…!!」
 かなり強力な魔法だった。
 駄目だ、脇腹が痛くて立ち上がれない…!

 と、踞ったままの私の後ろ襟を、さっきの鋼の魔法使いが掴んで持ち上げた。
 首筋にナイフが突きつけられる。

「こいつを刺されたくなかったら降参しろ…それで見逃してやるよ」
 鋼の魔法使いがナツメさんに言った。

 蹴飛ばしてやりたいところだが、酷くダメージを受けていたため
 何も出来ず、されるがままでいるしかなかった。

 ——ふと、ナツメさんの様子がおかしいことに気付いた。

 無言のまま、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくるのだ。
 俯いているため、その表情は伺えない。

「…んだよ」
 鋼の魔法使いが怪訝そうにぼやく。

 するとナツメさんは顔を上げ、彼を睨みつけた。

「…ユリを放せ」
 いつもより低い、怒りを含んだような声で言った。
 普段は見せたことのない雰囲気に、私は目を見開いた。

 その威圧感に少しだけたじろぐも、鋼の魔法使いは気を取り直し、
 ナイフを更に押し当てようとした——その時だった。

 突如、ナツメさんは彼の首筋に空気砲を放った。

「うわっ!?」
 彼は後ろに倒れながら、私とナイフから手を放した。

 そのまま倒れこむ私を、ナツメさんが左腕で抱きとめた。
 そして、空いているほうの右手を掲げた。

「エンゲージドシルフ!」

 シルフ…風の精霊の名。
 神や精霊の名を唱えると、より強力な魔法が仕える。
 つまり、ナツメさんは強い魔法を放とうとしているのだ。

「天つ風、地に降りて我を助けよ!」

 暴風が吹き荒れた。
 それはこの場にいるすべての敵を巻き上げた。



 商人と仕え魔法使いたちの身柄を預けた私たちは帰路についていた。
 私は、もう普通に歩けるほど回復している。

 他愛ない会話をしながら歩いていた私とナツメさんだったが、
 ふとナツメさんが立ち止まった。

「ユリ、その…さっきは取り乱してごめん」
「いえ、ナツメさんのおかげで助かりました。
 …ナツメさんは仲間想いなのですね」

 私がそう言うと、ナツメさんはそっと微笑んだ。
 その微笑に少しの悲しさが含まれているのに気付くと、
 ナツメさんはその表情のままこう言った。

「聞いてほしいんだ。僕がこんなにも仲間を守りたいわけを」

Re: 魔法使いの青春理論 ( No.58 )
日時: 2014/03/23 23:11
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: FMSqraAH)

  20.棗色トラジェディー 下


 僕は、贅沢ではないものの幸せな家庭で育った。
 両親は子ども想いだったし、友達もたくさんいた。

 そんなある日、僕は友達の一人であるレン—蓮—と、
 遊び半分で廃墟の地下室に忍び込んだ。

 そこが犯罪ギルドの隠れ家だと、部屋のドアを開けてから気付いた。

 そのギルドは子ども相手でも容赦せず、僕らはメンバーに迫られた。
 覚えたての魔法で対抗しようとしたけど、大人に敵うわけもなく、
 僕が怪我を負って捕らわれてしまった。

 一人になったことで狼狽するレンを、ギルドメンバーは笑い飛ばし馬鹿にした。
 傷付くレンを、僕はただ見ていることしかできなかった。

 ギルドリーダーがレンを捕らえようとした直後、
 彼らを追っていた魔法使いが駆けつけ、僕らは無事に保護された。

 しかしその後、レンは僕の前から姿を消した…否、村からいなくなった。

 レンの友達によると、僕を助けられなかった罪悪感と、
 僕を見ることであの時の恐怖と悔やみを思い出してしまう、
 この二点が姿を消した理由らしい。

 ——あの時、レンはとても怖い思いをしていたんだ。
 そして、対抗できない悔しさを感じていたんだ。

 レンの当時の心境を痛いほど理解した僕は、
 それ以来仲間の大切さを強く意識するようになった。

 それと同時に、僕はふとこう考えついた。


 レンがいなくなってしまったのは僕のせいじゃないか。


 弱い僕が捕まったせいで、レンはあんな思いをさせられた。
 そうだよ、僕のせいでレンは…!

 そう思った僕は、再び友達を失うことを恐れ、一人でいることを望んだ。
 友達はひっきりなしに誘ってくれたが、僕は全て拒んだ。

 だけど、しばらく経ったある日、二人の子どもが僕に話しかけてきた。
 僕は「一人でいたい」と言ったが、彼らはお構い無しに僕の手を引っ張り
 一緒に遊んでくれた。

 それから、クレハ、トウと名乗った二人は、いつも僕を誘ってくれた。
 クレハとトウとつるんでいるうちに、僕は真の答えを見出だした。

 弱いなら強くなればいいんだ。怖いことから逃げては駄目だ、と。

 このことが、今の僕に繋がっているんだ。



      *トラジェディー(tragedy):悲しい事件


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