コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 帰宅部オーバーワーク!【まさかの番外編!!】
- 日時: 2016/07/29 21:54
- 名前: ガッキー (ID: 4IM7Z4vJ)
初投稿です。初心者ですが、よろしくお願いします。夜のテンションでバーッと書いているので、誤字があるかも分かりません。一応、チェックは入れてはいますが、見付けた際はご指摘いただけると嬉しいです。
ルールも、『参照』の意味も分からないですが、感想もしくはKAKIKOのルールを教えて下さる心優しい方がいらっしゃるのなら、どうか教えていただけると私が喜びます。部屋で小躍りします。
最後までお付き合い下さいな♪
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- Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.18 )
- 日時: 2015/09/30 23:29
- 名前: ガッキー (ID: J85uaMhP)
初夏の風が少し強めに吹き抜け、古泉の頬を掠めた。風に靡く茶髪の髪は、セットした髪型を滅茶苦茶にする。
携帯を操作し、電話のコール画面へ。電話はすぐに繋がった。
「もしもし?俺だ」
『古泉先輩!今どこへ!?』
「ワリィワリィ。本当は体育倉庫で待ってようと思ってたんだが、生徒会に見付かりそうになってな。メッセージだけ残して移動した」
『メッセージの意味は分かりましたが
・・・あの技を何に使うのですか?』
「・・・・・・屋上から目を離すなよ」
そう言って、電話を一方的に切る。別に、後輩に意地悪をしている訳ではない。流石の古泉も、場所と場合は弁えているつもりだ。
ならば、何故?
「見付けたわよ」
屋上に、生徒会長が入って来たからだ。
「遅かったじゃねぇかよ、生徒会長さん」
「アンタが大人しくお縄に掛かってたら、もっと早く会えたわよ」
「はっ、無理な話だ」
「その強気な態度、いつまで保つかしら?」
「それはこっちの台詞だ」
「・・・どういう事?」
「これ以上近付いたら、生徒会長が俺のブレザーをくんかくんかしていたと全校生徒にバラす」
勿論、そんな事をタレ込んでも相手になんかされないだろう。しかし、そこまで頭が至らなかった生徒会長は「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあーーーー!!」と頭を抱えて叫ぶ。効果は覿面だったようだ。
「はっはっはっは!分かったならそのブレザーをこちらに渡せ!!」
ズビシィッ!と生徒会長に指を指す。
「・・・・・・」
しかし生徒会長は、何のアクションも見せずに俯いている。
「どうした?いきなり黙っちゃってよ」
「・・・・・・・・・死ぬわ」
「あ?」
「そんな痴態を晒す位なら、死ぬわよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
言って、生徒会長は古泉のブレザーを抱えて走り出した。
だが、その行き先はドアではなく。
むしろ真逆、屋上を取り囲むフェンスに向かって。
「ーーな、ちょ、阿呆!」
慌てて生徒会長を追い掛ける。脚の速さは歴然。数秒と経たずにその距離は縮まるが、古泉が手を伸ばした頃には、生徒会長はフェンスの向こうに身を乗り出していた。
「ーーーーーーーー」
一瞬で頭が真っ白になる。言葉も出なかった。
俺が脅さなければこうはならなかったのではないか?そもそも、校則を俺が破らなければ、こんな結末にはならなかったのではないか?そんな後悔が頭を巡る。
フェンス一枚挟んだこの距離は、実際よりも何倍と長く思えた。
- Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.19 )
- 日時: 2015/09/30 23:32
- 名前: ガッキー (ID: J85uaMhP)
おかしい。
「・・・・・・あのー」
「何でしょうか」
「いつまで屋上見てるんですか?何も起こりませんけど・・・」
確かに、古泉が電話で青山に『屋上を見ていろ』と伝えてから、5分が経過した。しかし、見上げた屋上には何も無く、その背景の青空ばかりが目に映る。
「古泉先輩が見ていろと言ったのです。見ていましょう」
「恐ろしい程忠順ですね・・・」
「しかし、前野さんの言う事も一理あります。一度電話しましょうか」
先程通話をしたばかりの番号を選び、コールボタンを押した。
それから、一秒も満たない間に、青山は走り出した。
- Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.20 )
- 日時: 2015/09/30 23:39
- 名前: ガッキー (ID: J85uaMhP)
PLLLLL!!
「ーーッ!!」
突如、古泉のポケットから鳴り出した携帯の着信音。それが、古泉を正気に戻した。
着信音はすぐに止み、静寂と風の音が古泉の目を覚まさせる。
そうだ。
こんな事をしている場合じゃないだろう。
まだ結末じゃない。まだ、起承転結の起にもなっていない。
物語は始まったばかりだ。
「ぉぉぉぉオオオオラァァアアア!!」
脚のバネを存分に活用し、一度もフェンスに脚を掛けずにフェンスを乗り越える。怖くないと言えば嘘になる。だが、今の古泉にはそんなの関係無かった。
眼下には、小さく見える木々と、制服をはためかせて頭から落下している生徒会長。
「帰宅部奥義その十!ーー『空翔ける帰宅部〜another case』!!」
『空翔ける帰宅部』とは、本来ならば地上から壁を駆けて空を翔ける奥義。
しかし、今回は上から下へ。重力に従う分、その脚に掛かる負担と生じる速度は並みのソレではない。
速くーー生徒会長の落下速度よりも遥かに速く下へ。
「生徒会長!掴まれ!!」
「ーーーーーーーー」
「くそッ!」
応答無し。生徒会長は、飛び降りた時に恐怖で気絶したらしい。
古泉は、必死に動かしていた脚を更に速く動かす。校舎の壁を、蹴り砕かんとばかりに強く、強く蹴る。
手を伸ばす。
伸ばす。
伸ばす。
ようやく古泉は掴む事に成功した。
生徒会長が、恐怖を少しでも和らげる為か強く抱き締めていた、ブレザーを。
生徒会長から剥ぎ取った自分のブレザーを着て、落下に備える。
生徒会長はどうするのかって?
「無茶が過ぎますよ、全く・・・」
古泉がブレザーを着たのとほぼ同時に、『空翔ける帰宅部』で壁を走ってきた青山が生徒会長をお姫様抱っこする。ジャストタイミング。ベネディクトがこの場にいたなら、そう言っただろう。
「じゃあ、あとは頼んだぞ」
古泉は青山にそう言ってから、壁から脚を離し、重力に身を委ねる。下には緑色の木々。古泉は今背中から落ちている為、運が悪ければ背中から枝に突き刺さるが。
お忘れだろうか?
古泉のブレザーには、鋼が入っている事を。
バキバキバキバキッ!!と全方位から枝の折れる音が。背中は守れても、剥き出しの顔や、布何枚かしか纏っていない四肢は、枝の猛威に曝される。
地面に背中から着地。鋼で守っているとはいえ、重い衝撃が体内を駆け巡り内臓を揺さぶる。危うく嘔吐しそうになるが、流石にそれは絵面的にまずいので必死に我慢。
「・・・・・・ぷはー」
身体が落ち着いたのを確認して、大きく息を吐く。久々にこんなアクロバットを決めたなぁ、と古泉は思った。
近くに、生徒会長を腕に乗せた青山が着地する。着地の際に膝を充分に使ったからか、その着地は古泉と違ってスマートだった。
青山に抱かれている生徒会長を見て、古泉は思う。
(本当なら、ブレザーを返してもらったら屋上から飛び降りて青山によいしょされる予定だったんだけどなぁ)
だって、自分で着地するの痛ぇし。
「ありがとな、青山」
「いえ、いつもの事です」
思えば、青山は有償無償関係無しに、俺の言う事を聞いてくれる奴だ。前野は言う事聞かないし、ベネディクトは気紛れだしなぁ・・・。
『帰宅部』で一番人間が出来ているんだろう。
古泉は自分が出した結論に内心笑いながら、「それもそうだな」と言った。
良さ気な雰囲気に包まれているが、まだ問題は解決していない。
青山の腕の中で、眠っている生徒会長。そして、生徒会に捕まったベネディクト。
生徒会長が目を覚ませば、また先程のように追い駆けっこが始まる。
ベネディクトの安否も分からないので、その確認もしないといけない。
文庫本で言えば、全体の半分を少し過ぎたばかりだ。残り100ページ余り、物語は続く。
まだ、帰宅は出来ない。
- Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.21 )
- 日時: 2015/10/17 13:40
- 名前: ガッキー (ID: vpptpcF/)
「あ、」
古泉の隣にいた青山が、間の抜けた声を出す。
「どうした?」
「生徒会長、起きます」
「マジで・・・?」
視線を青山から生徒会長に移すと、もう身じろぎを始め、瞼を擦っている。
古泉が、どうやって生徒会長に今の状況を説明するかと悩んでいると、生徒会長がムクリと身体を起こした。それを確認した青山が、自立を促す。
ゆらゆらと少し揺れたが、数秒経ってから身体の軸が安定したらしい。瞬きを何度かしてから、
「キャアアアアアアアアーー!?!?」
「うっせぇぇぇぇぇぇぇ!!」
いきなり叫び出した。
「青山!」
このままじゃ堪らない。青山に合図をする。
「了解しました」
生徒会長の後ろに立っていた青山が、すぐに口を塞ぐ。もがっという声を最後に、生徒会長は言葉を発さなくなった。「うー、うー!」と青山の掌越しに音だけが聞こえる。口をーー正確には、顎を押さえ込んで強引に喋れなくさせたのだ。生徒会長は女性だから、簡単に出来る。
「良いか、話を聞け」
「うー!」
「落ち着け。別にバラしたりはしねぇからよ」
「うー、・・・・・・」
音を出さなくなったのを確認し、青山が手をゆっくり離した。
「本当なのね?」
「当たり前だろうが」
「・・・、分かったわ」
理解も得られたので、説明を始めようとした矢先、青山が「少し良いですか?」と口を挟んだ。
「何だよ」
自分の説明を邪魔されたからか、ほんの少し不満気に古泉が言った。
「バラすって、一体どういう意味ですか?」
青山は問うた。
(バラす。バラす、・・・バラす?)
青山は脳内でその単語を反芻していると、一つの結論に辿り着く。
(殺す?)
しかし、すぐに否定。
(いやいや、古泉先輩に限って、生徒会長に「殺す」何て言う筈ないですよね。僕の思い違いに違いありません)
「あぁ、考地は知らないんだったな」
物騒な仮説を作った青山の事など知る筈もない古泉は『うっかりボロを出さないように』言葉を選び、
「屋上で生徒会長に、『ブレザーを返さなきゃバラすぞ』って言ったんだよ」
(か、かかかーー完全に銀行強盗の手口・・・!やはり、古泉先輩、貴方ーーやってしまいましたね!?)
「・・・それは、本当ですか?」
念の為の確認。
「本当だよ、なぁ?生徒会長」
僅かな間も無く、古泉は肯定した。
「え、えぇ」
そして、少し狼狽しつつも生徒会長は平常を装って返した。
「まぁ、話を戻すぞ?・・・、結局俺の言葉を聞かなかった生徒会長は、フェンスを乗り越えて自殺を図ろうとしたんだ」
「他でもない古泉先輩のせいで、ですか」
「た、確かにそうだけどよ・・・言い方キツイなお前」
げんなりしながら古泉がぼやいた。
キツくもなりますよ、尊敬していた先輩が罪を犯そうとしていたなんて。と、青山は間違った方向に考えを進める。
「んで、青山が生徒会長を助けてーー今に至るって訳だ」
「つまり、僕が生徒会長を助けなければ古泉先輩は罰則や謹慎を受ける所か、刑務所に入れられていたという事ですね」
「その通りだけどよぉ!俺への当たり強過ぎねぇか!?俺は崖に追い詰められた犯人じゃねぇんだぞ!!」
「もう、さっきから話が脱線してるわよ!しっかりしなさい!」
歯車が噛み合わないまま強引に回っているような、そんな感じに会話をしていた青山と古泉をみかねてか、生徒会長が介入して古泉の背中を叩く。握られた拳は筋肉ーーではなく背中の方に吸い込まれ、メキャッと気味の悪い音が鳴った。
「痛ってぇぇぇぇ!!」
「そういえば、生徒会長は空手を嗜んでいたらしいですね」
青山が、思い出したように補足した。
「破門されちまえ!」
閑話休題。
「・・・とまぁ、こんな感じだ。俺は生徒会長に危害を加えようとかは全然思ってねぇから」
「僕の勘違いでしたか・・・申し訳有りませんでした」
「なあに、気にすんな」
頭を下げる青山を笑って許す古泉。こういう器の大きい所も、青山に敬われる所以だろうか。
「それよりも、今は前野とベネディクトと合流して帰る事が先決だ」
「はい、分かりました」
「それを生徒会長である私の前で話す訳・・・?」
「副会長が一緒じゃない今、お前は暴君からハバネロに格下げされてんだよ。何も怖くねぇわ」
「それ同じですよね」
閑話休題。
「私には空手があるけど?」
「それはまぁ・・・アレだよな。うん。な?青山」
(考えてなかったのですね)(考えてなかったのね)
「仮に、生徒会長が古泉先輩に暴力を振るうなら、こちらも生徒会長を風紀委員会に告発します」
暴力事件として、と青山は最後に付け加える。
「そう、それが言いたかったんだよ。分かってんなぁ」
もう何も言わない二人。
まぁ、
告発したとしても、相手にはされない。屋上の時と同じだ。
皆ーー全校生徒、教師、PTAも含めた皆は、生徒会長に幻想を抱いている。彼女は正しいという幻想を抱いている。まさか、他人のブレザーの匂いを嗅いだり、他人に暴力を振るう人だとは夢にも思わないだろう。
だから、告発自体に意味は無い。
しかし、言う事が大切なのだ。
「ぬぬぬぬ・・・」
僅かにも青山の言葉を疑わない生徒会長。馬鹿だからではない。真面目なのだ。
「どうだ、暴力振るっちまうか?」
「ふふ、ふふふふふ・・・」と不気味に笑ってから「分かったわよ。大人しくしてるわ」
と、言った。
「よし、生徒会長の言質も取れた訳だし、取り敢えずベネディクトを救出するか」
「そうですね。ですが、前野さんはーー」
「アイツは大丈夫だ。意外にしぶといし、一人でも大丈夫だろう」
「はぁ・・・」
納得しているようなしていないような声を出す青山。やはりジェントルメンとしては心配なのだろう。
- Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.22 )
- 日時: 2015/10/17 13:43
- 名前: ガッキー (ID: vpptpcF/)
「・・・あれ?」
時に草を掻き分け、時にしゃがんで移動していたのだが。
目の前に広がるのは、夕日の光を浴びてオレンジ色に輝く校舎。
どうやら、反対側に出てしまったらしい。
「古泉先輩と青山君は?」
一人で呟く。ここに来るまで、人にも動物にも会わなかった。この森は、幾ら木々が多くても所詮は学校の敷地内だ。会わなかったという可能性は限りなく低い。
「・・・・・・まさか」
前野は理解した。そして、その答えに思わず身体が震えた。
あの野郎共、私を置いていきやがったな!?
ぷりぷり怒りながら歩く。古泉達は一体どこに行ったのだろうか?青山のように、古泉の考えている事が分からない前野は、居場所の見当も付けずにあても無く歩いていた。
あと1時間もすれば夜になりそうな時間帯。そろそろ決着ーーというか、結末へと向かわないといけない頃合いだ。
溜め息を一つ。
そして、何と無く上を見上げようとして。
突如視界が真っ黒に染まった。
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