コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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帰宅部オーバーワーク!【まさかの番外編!!】
日時: 2016/07/29 21:54
名前: ガッキー (ID: 4IM7Z4vJ)

初投稿です。初心者ですが、よろしくお願いします。夜のテンションでバーッと書いているので、誤字があるかも分かりません。一応、チェックは入れてはいますが、見付けた際はご指摘いただけると嬉しいです。
ルールも、『参照』の意味も分からないですが、感想もしくはKAKIKOのルールを教えて下さる心優しい方がいらっしゃるのなら、どうか教えていただけると私が喜びます。部屋で小躍りします。
最後までお付き合い下さいな♪

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Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.28 )
日時: 2015/10/31 10:11
名前: ガッキー (ID: z2eVRrJA)

「ハッピーハロウィィィィィィィンッッッッ!!!!」
帰宅部の部室を乱暴に開けて、馬鹿声出しながら古泉が入ってくる。頭には何故かクリスマスの時に被るようなトンガリ帽子、更には鼻眼鏡。手には機関銃のような形状の何か。
「な、何ですかいきなり」
優雅に読書とティータイムを嗜んでいた青山も、流石に面食らった様子で古泉の方を見る。
「お前等!今日が何の日か分かるか!?」
「ハロウィーンですよね」
青山が答えた。
「そう、ハロウィーンだ!」
「だから休日なのに呼び出したんですね!?」
折角今日は昼まで寝ようと思ってたのに!と前野は憤慨した。しかし古泉は全然話を聞かない。
「ひゃっはー!ハロウィーンだぜ!!」
「何でこんなテンション高いんだこの人・・・」
「ハロウィーンとは!秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す為のお祭りッ!!」
「それは知っていますが・・・何故いきなりそのような格好を?」
青山が溜め息を吐いてから、平静を装って問う。
「多分ノリだよ」
「ノリだ!」
古泉が青山に返す。
「当たっちゃいましたよ!」
「流石、前野さんですね」
「こんな事で褒めないでよ恥ずかしい!・・・そもそも、帰宅部って別に収穫とか関係ありましたっけ?」
別に、帰宅部は米とか作ってる訳でもあるまいし・・・と前野は言った。
「ボク、ハロウィンってやった事無いなぁ」
ようやく眠りから目覚めたのか、ベネディクトが会話に加わる。
「え、ベネディクト先輩ハロウィーンやった事無いんですか?」
「うん、家の決まりでね」
少し哀しげにベネディクトが。
(そんな表情したら古泉先輩が・・・!)
「よぉし!そんなベネディクトの為にも、ハロウィーンを楽しもうぜ!」
案の定、張り切り始めた。
「ま、まぁ、別に僕は構いませんが」
「ボクもやりたいな!」
「前野さんは、どうでしょうか」
「えっ」
青山を始め、ベネディクトと古泉の視線が前野に集中する。
うーん。嫌では無いんだけど、何か嫌な予感がするんだよなぁ。
まぁ、気のせいだろう。前野はそう割り切り、こう言った。
「分かりました。一年に一度のお祭りな訳ですし、楽しみましょう!」
「そうこなくっちゃな!」「分かりました」「やったー!」
三人の、様々な返事が返ってくる。
たまには、こういうのも良いよね。前野その光景に微笑みながら思うのだった。


「あと、ベネディクト。ハロウィンじゃなくてハロウィーンな」
「どっちでも良い!!」


閑話休題。

「そもそも、何でいきなりハロウィーンパーティを?」
いやぁ、と古泉は頭を掻いてから言う。
「思い出したらよ、俺もハロウィーンってやった事無いんだわ」
「古泉先輩も無いんですか?」
「俺の家は金持ちだからな。そんな事やる暇無いんだと」
「すっごい腹立ちました」
しかし、金持ちが嫌味な発言をするのは寧ろ常識とも言うべきか。
前野は気を取り直し、
「青山君はやった事ある?」
「え、えぇ」
「何、その煮え切ら無い返事」
青山が眼鏡のブリッジを上げて目を逸らしがちに言ったので、前野は問うた。
「七歳の頃、トリックオアトリートと言って、貰えたのがお菓子ではなく算数ドリルだった思い出がふと甦りまして・・・」
「な、何かゴメンね」
「それから、僕は二度と『トリックオアトリート』とは言いませんでした」
(うわぁ、ドン引きだよ。私が七歳の頃にそんなの貰ってたら引きこもってるよ)
しかし、その経験を経て今の秀才青山がいるのだと考えると、前野は複雑な顔をせずにはいられなかった。
「まぁまぁ、そんな事は忘れて今は楽しもうぜ!」
古泉が間違ったフル装備のままで盛り上げる。
「それには賛成ですけど、古泉先輩が持ってるその恐ろしい形状の物は何ですか?」
よく戦争映画に出てくる機関銃にしか見えない。アフガンで怒ってそうだ。
「答えによっては銃刀法違反ですからね」
青山も額を押さえながら言った。
「カッコイイと思うよ!」
舌出しサムズアップしながらベネディクトが言った。
「ありがとよ☆因みにこれはクラッカーだ」
「「「・・・・・・・・・え?」」」

「ハッピーハロウィィィィィィィンッッッッ!!!!」

パパパパパパパパッッッッ!!と、突如部室内に響き渡る爆音!火薬に反応して鳴り響く火災装置!作動するスプリンクラー!騒ぎを聞き付けて突入する生徒会!


こってり絞られたのは言うまでもない。




「全く、何で生徒会の奴等休日まで学校にいやがんだよ・・・ふざけんな」
生徒会長に鉄拳制裁された頬を押さえながら古泉が愚痴る。
「私達がこうしてやらかすからでしょうね。・・・あと、古泉先輩はもう少し反省して下さい!」
何とか、アル◯ックが来る事までは免れたが、反省文は確定だ。部室も制服もビショビショだし、火薬臭い。
「楽しかったなー!」
「まぁ、楽しくなかったと言えば嘘になりますが・・・」
青山も素直に「楽しかったですね」と言うのは憚られる位の悲惨な有様だった。
「来週もやるか!」
「それもうハロウィーン関係なくなっちゃいますから。ただの馬鹿騒ぎですから」
「来年に取っておきま・・・あ、」
青山が自ら気付いて押し黙る。
青山君にしては珍しい失言だな、と前野は思った。

何故ならば、来年には古泉とベネディクトは卒業しているからだ。

「・・・・・・軽率な発言、すいませんでした」
「大丈夫だよ!古泉クンは卒業出来るかも分かんないし!」
「そうだそうだ!来年もやろうぜ!ーーっておいコラベネディクト!」
古泉がベネディクトを追い掛け回す。
その光景を眺めながら、青山と前野は話し合う。
「もう、来年には居ないんだよね。あの馬鹿な先輩達」
「そうですね。古泉先輩も何だかんだやる時はやる人ですし」
「ふふふっ・・・」
前野の忍び笑いに、青山が「な、何か可笑しな事言いましたか?」と不安そうに問うた。
「いや、『馬鹿な先輩達』って否定しないんだなって」
「確かに馬鹿ですが、尊敬していますので。ベネディクト先輩も古泉先輩も」
「まぁ、尊敬せずにはいられませんよね」
恐らくーーこれは前野の勝手な推測なのだが。青山の失言の後のベネディクトのあの発言。もしかしてあれは、本心ではなく青山をフォローしての一言だったのではないだろうか?そして、それに怒った古泉も、フォローと分かっていて、敢えてノッたのではないだろうか。
根拠も何も無い推測だが、前野は不思議とこの答えにしっくり来ていた。

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.29 )
日時: 2015/11/07 23:42
名前: ガッキー (ID: apTS.Dj.)

本編に戻ります!

次回で最終話となりますので!

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.30 )
日時: 2015/11/07 23:46
名前: ガッキー (ID: apTS.Dj.)

「・・・・・・」
「ほ、ほら。あー・・・」
「・・・・・・」
「元気出そうぜ?」
「・・・・・・」
「きっとサボってるだろ。アイツら」
「・・・・・・半年も、ですか?」
「それは・・・」
帰宅部のメンバー。古泉、ベネディクト、青山が失踪して早くも半年。彼等は学校を休校している『事になっているらしい』。
あの件から仲良くなった副会長が、放課後時間を見付けてはこうして遊びにきて励ましてくれているが。
前野自身もう気付いていた。彼等にはもう会えないのだと。
こうして半年も顔を合わせないと、あの楽しかった日々が夢のように思えてくる。実は前野は一人で活動していて、彼等は前野が寂しさを紛らわす為に創り出された幻想・・・。
そんな事はないとは分かる。前野の中には確かに、彼等との思い出や教わった奥義がある。それを夢で片付けるのは彼等に失礼というモノだろう。
「もう良いんです。私はこれから一人で『帰宅部』をやります。来年の新入生を何とかして入れればまたやり直せます」
副会長の顔を一度も見ずに、前野は少し苛立ったような様子で立ち上がり、鞄を手に取り部屋を出た。




「はぁ・・・」
帰り道、溜め息を一つ。彼等が居なくなってから、何だか溜め息を吐く回数が多くなった気がする。
「もうそろそろ、ちゃんとしなくちゃいけないよね・・・」
いつまでも生徒会長に気を遣わせる訳にはいかない。
前野は考える。
(私は帰宅部何だから。帰宅部らしい事しなきゃ)
古泉のように、ベネディクトのように、青山のように。
それが、残った者の責任だ。帰宅部がしっかり帰宅しているという所をアピールしなければならない。
手始めに、古泉みたいな帰宅をしてみよう。善し悪しは兎も角として、周りが受けるインパクトは絶大の筈だ。
前野は財布を開き、紙幣が何枚か入っている事を確認してからタクシーを止めた。
語られてはいないが、古泉と言えば『タクシーで帰宅』だ。毎日毎日、校門周辺でタクシーを止めては前野達にドヤ顔して一人で帰っていたのが記憶に残っている。
タクシーのドアが開いた。
「お客様、他のお客様との相乗りとなってしまいますがよろしいですか?」
運転手が申し訳なさそうに聞いてきた。それもその筈。この通りにタクシーが来る事は珍しいのだ。これを逃せば、次はいつ通るか分からない。
「あ、私は大丈夫です」
前野以外の客は、助手席と後部座席に一人ずついる。前野が入れば四人になる。
「中河原公園までお願いします」
前野が運転手に告げる。その公園まで行けば、前野の自宅は目と鼻の先なのだ。
それにしても・・・と前野は思う。帽子を目深に被った助手席の人も、後部座席で新聞を読んでいる人も静かだ。一言も話さない。
「分かりました。前野様」
前野の言葉に、運転手はそう言った。
あれ、私はこの運転手に名乗っただろうか?前野は疑問に思ったが、名乗っていないのに運転手が自分の名前を呼ぶ筈もない。きっと知らない内に名乗っていたのだろう。
「お客様、今日は良い天気ですね」
車が動き始めてからそんなに経っていない頃、運転手が話し掛けてきた。他の二人が反応しない所を見ると、どうやら前野に話し掛けているらしい。
「・・・そうですね。良い天気です」
「こんな日は、壁を駆け上がりたくなります」
「・・・は?」
運転手の意味不明な発言に、前野は口をポカンと開けた。
(壁を駆け上がりたくなるって・・・青山君や古泉先輩じゃあるまいし)
帰宅部と同じような思想を持った人が他にもいたんだな、と前野は納得して返す。
「そうですね」
「・・・・・・ブフッ」
運転手がハンドルを握っていない方の手で口元を押さえている。
「あの、会話の途中で笑うなんて失礼だと思うんですけど」
少しイラっときた前野は、運転手に指摘する。前野は嫌な事は嫌と言える人だ。
「あァ?悪かったよ」
突然口調が可笑しくなった運転手がおもむろに帽子を取る。
「・・・・・・ーーって、古泉先輩!?」
そこには、明らかに染めたと思われる茶髪を生やした古泉がいた。
「馬鹿だろ。全然気付かねぇんだもん」
「気付きませんよ!え、ちょっ、こんな所で何やってるんですか!?」
「さあ?何やってんだっけか?」
古泉が誰かに問い、すぐに答えは帰ってくる。
「知らなーい」
「そ、その声って!」
「じゃーん、ボクでした〜!」
助手席の男が帽子を取ると、サラサラの金髪が顔を出した。
「ベネディクト君まで!・・・待って下さい、頭が混乱しているんですが」
「そういう時は、チョコレートをどうぞ」
「あぁ、うん。ありがとう」
私は横から手渡されたチョコレートの包装紙を開けて口に放り込む。舌の上でチョコレートのちょっぴり苦いビターが広がる。
「・・・・・・だ、か、ら!青山君も普通に会話に入ってこないでよ!!」
新聞を読んでいたのは、ジェントルメンこと青山だった。
何だ。何事なんだ。前野の混乱は収まる所を知らない。
驚き過ぎて、感動の再会にはならなかった。それよりも理由も聞かずに三人を一発ずつぶん殴りたい気分だった。
「失踪した筈じゃ!?」
「生徒会長が常識人で助かったぜ。後ろを向いた瞬間に木に上ったら、それだけで見失ってやがんの。まさか上にいるとは思わなかったんだろうな」
ハンドルを切りながら、ペラペラと捲し立てるように古泉が答えた。
「それは・・・もう良いです。そういう事にしましょう。でも!ベネディクト君は何で同じタイミングで逃げ出せたんですか!?ベネディクト君は携帯持ってないじゃないですか!」
「本っ当馬鹿だなお前。オレがベネディクトに出した命令は『前野と考地を頼んだぞ』だけじゃなく、『もし捕まった時は、指定した時間になったら逃げ出せ』という命令もあったって事だろ」
「な、なら!何で半年も学校に来なかったんですか!?」
「その日の内に解決は不可能だと思ったんだよ。だから、半年の月日を挟んで時効にさせるつもりだったんだ」
「あ、阿呆ですか・・・」
前野は明かされた真相の数々に肩を落とす。古泉は、真相を話している間もずっと運転を続けている。どうやら、本当に中河原公園に向かうつもりらしい。
「いやー、大変だったよね!」
「何がですか?」
「だって前野ちゃんがいつ帰るか分からないから、古泉クン、三時間位前からずっとここら辺ウロチョロしてたんだよ。休憩しよう?って声掛けても『うっせェバーカ。オレの予想だともうちょっとで来るんだよ』って聞かなくてさ〜」
「何バラしてんだよベネディクト!」
パァーーーーッ!!
「恥ずかしいからってクラクション鳴らさないで下さい!前の車の人がビックリしてるじゃないですか!」
ここが住宅街で、車の通りが比較的少なかったのがせめてもの救いだろうか。大通りで今のをやったら他の人と揉めて警察のお世話になる。

「しっかしまぁ・・・折角半年ぶりにこうして会えたんだしよ、半年越しのあの日の続きだ。ーー帰ろうぜ。四人で」

突然真面目な顔をしたかと思ったら、古泉がそうな事を言った。
ベネディクト、青山、前野もすぐに返した。
「そうだね!」「古泉先輩も存外ロマンチストなのですね」「喜んで!」
返しはバラバラだったが、皆表情は同じ笑顔だった。
夕陽がコンクリートをオレンジ色に染め上げる時間帯。帰宅部を乗せたタクシーがゆっくりと、帰宅部にしては半年も掛けて遠回りをし、まるでオーバーワークーー仕事のし過ぎな感じのするーー帰宅をするのであった。




「そういえば、このタクシーってどうしたんですか?」
「あ?オレの金をちょいと使ってな。案外高かったぜ」
「・・・免許は?」
「いやー、この制服見ろよ。ちゃんと発注したヤツだ。お前一人を驚かせる為にどれだけの諭吉さんが飛んだ事か」
「免許は?」
「『既存の帰宅方法に囚われるな』。たまにはこういうのも良いもんだぜ」
「免許は!?」




完。

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.31 )
日時: 2015/11/09 00:01
名前: ガッキー (ID: 0llm6aBT)

・・・はい、という事で『帰宅部オーバーワーク!』。これにて完結となりました。書き溜めが出来ないので、不定期かつモグラが土を掘る速度に匹敵する程の更新速度ではありましたが・・・無事完結出来て良かってです。これもひとえに、読んで下さった皆様がいたからです。本当にありがとうございました。

突然ですが、
この物語が完結して、嬉しいですか?
そうですか・・・。しかし、こうして最後まで読んでいただけただけでも、私は幸せです。

それとも、寂しいですか?
そうですか!そんな方がもしいらっしゃるのでしたら、
御安心下さい。
私も少々この作品には思い入れがありまして・・・
何と、本編では綴られなかった番外編や、もう一つ私が考えていた、このエンディングとは全く違うーー言うならばアナザーエンディングを書く!!とか何とか・・・。

だって、私書いてる時に思いましたもん。「あれ、ベネディクトの出番少なくね?」って。
私にはまだやり残した事が色々あるのです!
またダラダラと不定期的な更新にはなりますが、私の帰宅本能が心に燃ゆる限り、頑張りたいと思います。

コメントとか、気軽に送ってくれて構わないんだからねっ!
嘘ですすいません。送っていただけたら嬉しいです。

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.32 )
日時: 2015/11/12 23:47
名前: ガッキー (ID: GbhM/jTP)

「そういえば」
放課後の帰宅部の部室にて、前野が徐(おもむろ)に口を開いた。
「何だよ」
それに応えたのは、何故か部室に置いてあるソファに寝っ転がりながら、何故かある今週発売されたばかりの少年誌を読んでいた古泉だった。しかし、視線は少年誌からは離れない。
「ベネディクト君って、結構謎ですよね」
「謎?」
ここに来て古泉が、ようやく視線を前野に移した。
「はい。だって、ベネディクト君が帰宅部の部員以外と一緒にいるの見た事ありますか?」
「ただ友達が少ないだけじゃねぇの?」
古泉はベネディクトと同じクラスだ。そして、古泉が前野の言葉を否定しない事から分かるように、どうやら見た事は無いらしい。
「この学校内に限った話じゃないです。両親や兄弟を見た事ありますか?」
「あー、無ぇな」
「それに、私達みんなお互いに家に遊びに行った事あるのに、ベネディクト君の家だけありませんよね」
「確かに・・・」
古泉が、ソファから起き上がり顎をさする。どうやら、前野の質問攻めに一理あると考えたらしい。
皆にフレンドリーで、いつも笑顔で格好良い。活発で寝るのが大好きなベネディクト。しかし、彼の本性ーー本質を知る者は一人としていない。帰宅部の彼等でも知らないのだ。他の生徒が知っているとは到底思えなかった。
因みに、青山は一切口を挟まない。恐らく読書に集中しているのだろう。
「てかよ、本人の前でこんな話をして良いのかよ」
古泉が放った久しぶりの正論に、前野は真顔で返す。
「良いですよ、寝てますし」
ベネディクトは現在椅子の上で体育座りをし、膝に顔を埋めて寝ている。
この前、寝ている途中に椅子から転げ落ちたのを前野が見てしまった事から、そこまで安定している寝方ではないのだろう。
しかしその割には、グッスリと熟睡している。
「幾ら同じ部活の仲間であれど、プライベートを詮索するのはどうなのでしょうか」
青山が、読んでいた(小難しそうなタイトルのハードカバーの)本を閉じてからそう言って会話に入ってきた。
「とか言いつつ、考地も気になるんだろ?」
「な、何を根拠にそんな事を」
「オレと前野が話始めてから本のページが進んでねぇんだよ」
「よくそんな所見てましたね・・・」
無駄な洞察力に呆れる前野。しかし古泉へ「へへっ」と照れて鼻を擦っていた。
「・・・分かりました。気になっていたのは認めます」
「よし、そうと決まったらやるぞ」
古泉が立ち上がり、拳を握り締めた。
「何をですか?」
前野が問う。

「家庭訪問だ!」


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