コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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帰宅部オーバーワーク!【まさかの番外編!!】
日時: 2016/07/29 21:54
名前: ガッキー (ID: 4IM7Z4vJ)

初投稿です。初心者ですが、よろしくお願いします。夜のテンションでバーッと書いているので、誤字があるかも分かりません。一応、チェックは入れてはいますが、見付けた際はご指摘いただけると嬉しいです。
ルールも、『参照』の意味も分からないですが、感想もしくはKAKIKOのルールを教えて下さる心優しい方がいらっしゃるのなら、どうか教えていただけると私が喜びます。部屋で小躍りします。
最後までお付き合い下さいな♪

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Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.43 )
日時: 2015/12/15 23:31
名前: ガッキー (ID: MMm5P7cR)

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言。無言。無言。無言。
現在の帰宅部部室は、創部以来最高に(最低に?)静かだった。前野も古泉も青山もベネディクトも、誰も話さない。語らない。口を開かない。
(何でこんな静かなんだろう)
前野はボーッとしながら、そう思った。
前野が部室に入ったのは四人の内一番最後。その時にはもうこんな空気だった。
気まず・・・くはない。どんよりとした重たい雰囲気ではなく、普通に静か。たまに、窓を隔てた向こうの外から、テニス部の掛け声が聞こえてくる位。
それだけ。
古泉は『ジャン◯』を熱心に読んでいる。勿論無言で。
ベネディクトは瞳を閉じ、ソファの上でグッスリと寝ている。勿論無言で。
青山は『サザエ◯ん』を熱心に読んでいる。勿論無ごーー何で!?
(え、アレ『サ◯エさん』だよね!?漫画じゃん!ーーいやいや、古泉先輩も読んでるのは漫画だけどーー青山君漫画読むんだ!?)
驚きである。いつも難しい(前野と古泉がタイトルを見ただけで読む気を無くす程の)本を楽しそうに読んでいる青山が、まさか漫画を読む何て。良い傾向なのか悪い傾向なのかは分からないが、青山の中で何か変化が起きているのは確かだ。
前野は「あの・・・青山君」と、静寂をーー沈黙を切り裂いた。
「何でしょうか」
と、青山が本を閉じて顔を上げた。
「何で、『◯ザエさん』?」
「何で・・・とは?」
不思議そうに少し首を傾げる青山。
「いや、珍しいなって思って。いつもは難しい本読んでるのに」
・・・成る程、そういう事ですか。
合点がいったらしい。青山がそう言った。
青山が眼鏡のフレームをクイッと上げながら、
「『サザエ◯ん』は、昔から老若男女限らず親しまれてきた偉大な作品です」
「う、うん。そうだね」
「僕はこう考えました。その偉大な作品を読破する事で、老若男女の好みの傾向を理解出来るのではないか?と」
「凄い・・・」
何が凄いかって、『サザエさ◯』を読む動機がもう頭良さ気だし、思考の発展の仕方が常人のソレではない所がまた。
「前野さんも読みますか?」
青山が、読んでいる途中にも関わらず『サザエ◯ん』を前野に差し出す。余程オススメなのか、それともレディファーストだからなのか。
「いや、私は良いや・・・」
やんわりと拒否。青山が「そうですか・・・」と寂しそうにしていたのは少し可愛いと思った。
ベネディクトはいつも通りだから放っておくとして。
「そうだ。古泉先輩、何か面白い話して下さいよ」
「うわっ、いきなり大御所タレントばりの無茶振り止めろよな。考地パス」
「僕ですか・・・ちょっ、前野さん。まだやるとは言っていないのですが。どうしてそんなにワクワクしているのでしょうか」
「諦めな、考地」
お前は面白い話をする運命なんだよ、と古泉が格好良くキメた。全然格好良くないけど。
いつの日かのベネディクト家訪問の時とは違い、今日の青山は普通に古泉に従順な後輩。
やれと言われたらやるまで。
「・・・コレは、とある知人の話なのですが」
「うんうん!」
「あまり顔を近付けられても困るのですが」
「考地もお・と・こ・の・こーーだからな!かっかっか!」
「怒りますよ」
「あっハイ」
からかう古泉に、ガチの口調で宥める青山。そしてシュンとする古泉。描写しなくても非常によく分かる構図だった。
「話を戻しましょう。ーー知人は犬を飼っていました。顔も、身体も、前足も、後ろ足も白い犬を飼っていました。その犬の尻尾の色は何色でしょうか?」
「白だろ」
「古泉先輩、正解です」
「それでそれで?」
「・・・?終わりですが」
夢見がちな子供に残酷な現実を告げる大人のように青山は言った。因みに、この場合の子供とは勿論前野の事である。
「え?無いの?」
全然面白くなくない?と首を傾げる前野。
「滅茶苦茶面白いだろ。なぁ、考地」
「はい」
「????」
「コレを面白くないとかいってる奴って何なんだろうな!」
「流石に言い過ぎかと」
「????????」
ブシューッと前野の頭から煙が出た。どうやら考え過ぎて脳がオーバーヒートしたらしい。
「アホかコイツ」
「前野さん、コレはおもしろい話です」
「だから、どういう事ー?」
「『尾も白い話』です」
チク、タク、チク、タク。時計の秒針が半周程してから、前野が笑顔になった。どうやら意味が分かったらしい。それを見て、古泉と青山の顔を自然と綻ぶ。
笑顔は人を笑顔にするのだ。
そして、笑顔のまま前野がこう言った。

「えっ、結局面白くなくない?」

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.44 )
日時: 2015/12/15 23:38
名前: ガッキー (ID: MMm5P7cR)

「どうやら、こういう話は前野には早かったみてェだな」
「いやいや、意味は分かりましたよ?けど、笑ったりはしませんよね」
「寧ろアホな三つ編み前野を見たオレ等が笑うわ」
「誰が三つ編みですか!」
「事実だろ。てか『アホ』に怒れよ。なぁ考地?」
「事ある毎(ごと)に僕に振るのを止めて下さい」
青山が、防御の代わりに『◯ザエさん』で自分の顔を隠してしまう。
「はぁ、そろそろ止め時か・・・」
溜め息を吐きながら古泉が。
「え、そんなの分かるんですか?」
「あぁ。あと三分しつこく考地をイジるとぶん殴られる」
「よっぽどじゃないですか」
「まァな。素人なら死んでた」
「自分は素人じゃないみたいな言い方ですね」
「間違ってねぇしな」
自信満々に古泉が胸を反らす。
前野は若干引いた顔をしつつも、
「そう言えば、古泉先輩と青山君って仲良くないですか?」
と言った。
「・・・そうかぁ?」「そうでしょうか?」
「うん。だって、私と青山君は同じ日に入部したのにーー古泉先輩と青山君の方が打ち解けてる!」
ズビシィッッ!!
前野が、犯人を特定した探偵のように古泉と青山に指を指す。
「ン?じゃあ、もっとお前とも仲良くしてやろうかぁ?」
「指をワキワキさせて近寄らないで下さい不快です」
「女子に真顔で拒絶されるって結構なダメージだよな」
「ですから僕に振らないで下さいと・・・!」
しょんぼりと項垂れた古泉の言葉に、青山が眼鏡のフレームを何度も上げ下げして苛々をアピール。
「・・・本当に素人じゃないんですか?」
そうには見えない。ただの部活の面倒臭い先輩にしか見えない。しかも出会い頭に首を絞めてくるタイプの。
「あったり前だろ!プロだプロ!」
(凄い馬鹿っぽい発言だな今の・・・)
プロとかアマチュアとかあんのかよ。前野が色々心の中で言いながら、問う。
「結局、何でなんですか?何か特別なエピソードとかあったり?」
冗談で、そう言った。ある訳無い。そんなの空想上の出来事だ。
例え、あったとしても、普通に出会って普通に仲良くなったーーそんな感じだ。
前野の予想をぶち壊す委員会会長でお馴染み(な訳ない)古泉は笑いながらサラッとこう言った。
「はっはっはっ、笑わせんなよ前野!あるに決まってんだろ!」
「あるんですか!?」
目を剥いて驚く前野を尻目に、古泉は続ける。
「おうよ。考地はーー・・・今苛々してるからオレが代わりに説明してやるか。・・・・・・アレは、帰宅部がまだ創られていなかった頃ーー」
「語り方が壮大!」

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.45 )
日時: 2015/12/20 23:34
名前: ガッキー (ID: hVaFVRO5)

「さっみィな畜生・・・」
これは、古泉が二年の頃の物語。
新部活設立申請の紙を生徒会にーーこの前生徒会長に当選した、前野達がよく知る生徒会長に申請した頃。
まだこの頃の古泉は帰宅部であって帰宅部ではなかった頃。
十二月。雪の日。
手袋をしていても指先が悴(かじか)む程の寒さに震え、ブレザーのポケットに両手を突っ込んで首を縮めながら帰宅していた古泉。
公園の前を通りすがった所で、公園内にいる不審な人影に気が付いた。雪が降っているので古泉がいる場所からは、シルエットしか分からない。
目を凝らして見る。それでもコートを着ているという事しか分からず、男女の区別は付かない。
不審な人影。
行動が不審であった。
こんな寒い雪の日に、公園の池の淵(ふち)に佇んでいるのだ。
まるで、そこから先に行こうとするのを躊躇しているかのように。
人影の意図に気付いた時には、古泉は雪が積もる地面を蹴って走り始めていた。
頬に冷たい風が突き刺さる。目を細めながら、走る。
あと少しーーもっと手を伸ばしてーー届いた!
「ーーオラァァァぁぁあ!!」
首根っこを掴み、力の限り引っ張る。池から遠避ける。
コートを着た人は、背中から地面に倒れ込んだ。雪が積もっていたのが幸いし、痛みを無い。
筈だ。
途切れた緊張と、後から襲ってきた息切れを整えてから人ーー仮にAとしようーーに詰め寄った。
「テメェ!あんな所で何してやがッた!!」
雪の上に座ったままのAは、眼鏡のフレームを震える手で(寒さによるモノか、それとも古泉に対する恐怖からか)上げてから言った。
「し、死のうとしてました・・・」
「はァ!?」
古泉の、端から見れば恫喝にも見える言葉にビクッと身体を震わせてから、恐る恐るといった風にAが続ける。
「僕の父親は医者ですーー」
苛々している古泉からすれば長ったらしく聞こえたAの言葉を纏めると、こうだ。

Aの父親は、Aが小さい頃から将来は医者に成れと言った。頭の出来は良い方だったAは勉学に励み、遂に迎えた中学三年生。つまりは受験シーズン。
「専門学校に行かなくても良い。だが、せめてこの県一番の高校に入りなさい」
父親は言った。父親からすれば精一杯の譲渡だったかもしれないが、Aからすればあまり変わらない。
そして十二月の雪の日。この前の模試の結果が出たーー


「僕は、駄目でした・・・!大事な時期に、過去最低点数を取る何て!死ぬしかないでしょう・・・・・・!」
俯き、涙を流しながらAが言う。心に溜まっていた感情を吐き出す。寒い風が吹き抜ける中、液体が凍て付きそうな寒さの中、泣く。
「ーーくッだらねぇな」
ペッと雪が積もっている地面に唾を吐いて古泉が言った。
「バカじゃねぇのか?模試で良い結果出せねぇから死ぬとか、バカの極みじゃねぇのか!?」
「貴方に、何が分かるんですか!」
「分かる訳ねぇだろボケッ!!」
古泉が、眉を立てて怒鳴る。Aが怯んだ。
「お前が何をそんなにウジウジしてんのか分からねぇけどよ」
古泉はしゃがんでAに目線を合わせ、顔を近付けた。
「まだ二ヶ月もあンだろうか」
「・・・二ヶ月『しか』の間違いです」
「どう思うかはお前自身だ」
それよりも、と言ってから。
「何でお前は親父の指示に従ってんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「お前は何歳だ」
「十五です」
「なら、反抗期が来ても可笑しくない訳だ」
「・・・いやいや、可笑しいのは貴方の思考回路ではーー」
「ア?」
「続けて下さい」
完全に古泉を不良の類だと思い込んでいるAは、威嚇に屈して目を逸らした。
「・・・親父に従って進む人生にどんな意味があるんだよ」
「意味の無い事何てこの世にありません」
「どんな達成感があるんだよ」
「努力が報われる時の嬉しさを僕は知っています」
「どんな事があるんだよ」
「・・・進んでみないと分かりませんね」

「どんな未来があるんだよ」

「・・・・・・」
「ペラペラペラペラと理論理由を並べねェでよ、自分で選べよ。お前がやりたい事は何なのか。お前が進みたい道はどこにあるのか」
「僕は・・・」
Aの双眸からは、もう涙は流れていない。代わりに、瞳がユラユラと揺れているのが、Aの心情をよく表していた。

まぁ、

「それが分かったら、良いんじゃねェの?兎に角オレが言いたかったのは、『従うだけが人生じゃねぇ』って事だ」
だってよォ。そうじゃないと後悔が出来ないじゃねぇか。
従った結果、その道は間違っていたーーそんな場合、悔やむべきは何か。
その答えに辿り着いた時、Aはきっと二重の意味で後悔する。
だから、古泉は言う。見ず知らずの他人に、見ず知らずの受験生に。
Aは、何も言わない。俯いたきり、立ち上がりもしない。
「じゃあな。勉強頑張れよ」

「ーー待って下さい」

俯いているAの横を歩いて、公園から立ち去ろうとした古泉を、Aが呼び止めた。
振り向くと、Aが凛とした眼差しでこちらを見ていた。
「お名前を、教えていただけませんか?」
名乗る程の者じゃないーーそんな台詞は、古泉には言えない。
「名乗る程の者、古泉だ。あそこの高校に通ってる」
「古泉、さん」
噛み締めるように、Aが古泉の名を小さく呟いた。
「気になるんだったら、オレの所(高校)に来いよ」
ヘラッと口の端を吊り上げて、今度こそ古泉は公園から立ち去ったのだった。

その後、Aはどうなったのか。受験に失敗したのだろうか?父親に従って人生を生きているのだろうか?

それともーー

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.46 )
日時: 2015/12/28 23:44
名前: ガッキー (ID: JbG8aaI6)

「・・・という感じだな。どうした?ぼけっとアホ面晒して」
「失礼ですね。余韻に浸ってたんですぅ〜」
舌を出して前野が嫌味ったらしく言った。
「どうだ、良い話だったろ?深イイだろ?」
「そういうのは言わない方が・・・」
青山が古泉を窘める。自分の話を自分で褒める程滑稽な事は無い。しかしまぁ、この場合、青山的には多少の照れ臭さも混じっているのかも知れないが。
「アレからもう二年か。早ぇモンだな」
「えぇ、本当に」
古泉と青山の二人が遠い目をして呟いた。
帰宅部は、良くも悪くも『毎日が色濃い』から、尚更時が進む速度を早く感じるのだろう。
「と言うか、こんなに長く話してたのに身動(みじろ)ぎ一つせず寝ているベネディクト君って何者なんですか?」
「大物だろうな」
「上手い事言ったみたいな顔しないで下さい・・・」
ベネディクトは、授業態度が心配になる生徒学年No.1である。主に、授業中の居眠りで。
その話は置いておいて。
「・・・・・・青山君。模試の結果ってどの位だったの?」
小声で、前野が青山の耳元で言った。青山も、前野の耳元で囁く。
「ーーーー」
古泉には聞こえない位の声量で。
「何話してんだ?内緒話か?」
古泉が前野に問うた。しかし、当の前野は顔を青褪めている。
どうした?と聞くと、
「それで過去最低点数!?そこらの高校なら余裕で受かるからね!?」
「それ程でも・・・」
「まあまあ、オレの話を聞けよ」
と、古泉がパンパンッと手を鳴らして注意を引いた。
ズレにズレた話を戻そう。
「さっき話したのが、言うならばオレと考地の仲が良い原因ーー切っ掛けになった出来事だ」
「うーん・・・、まぁ納得はしましたけど」
「ンだよ。まだ何があんのか」
「『帰宅部』って、何で創られたんですか?」
「おいおい、そこ聞いちゃうか?」
「聞きたいです。こんな意味分かんない部活を創るに至った理由と、古泉の思考回路を」
「意味分かんないとか言うなよ・・・」
「確かに、気になる所ではありますよね」
青山も前野に乗った。
二対一。
肩を落として溜め息を吐きながら、渋々といった雰囲気を醸し出しながら古泉がこう言った。

「教えねぇ」





「えっ?今の雰囲気何だったんですか?」
「お前に意地悪してる訳じゃねぇよ」
「ほぼ毎日意地悪してきてる古泉先輩がそれを言いますかね!?」
「アレは趣味だ」
「ぶっ飛んでる!!」
「まあまあ、落ち着けって」
「ぐぬぬ・・・!」
前野の頭を押さえ付けて俯かせ、無理矢理黙らせる古泉。
「正確には、『教えられねぇ』だ」
「は?」
「ほら、アッチ見てみろよ」
古泉が指指すは、帰宅部部室が有る棟とは反対の棟。更に言うならその二階。
生徒会フルメンバーが、歩いていた。
「・・・えーっと、念の為に聞きますけど、
何もやってませんよね?」
何もやらかしてませんよね?
前野は恐る恐る古泉に確認をする。
大丈夫だ。古泉が何もやってなければ、生徒会がこちらに来る事も無い。生徒会は帰宅部部室の上にある生徒会室に戻るだけなのだ。
「・・・・・・」
問題は、問われた本人が、汗をダラダラ流しながら目を逸らしている事だろうか。
「古泉先輩、やっぱり何かやったんですね!?」
背伸びして古泉の胸倉を掴み、グイグイやる前野と、その後ろで額を押さえている青山。
「・・・・・・遅刻十三回と、サボり四回。あとは副会長にカラーボール投げ付けた」
「遅刻とサボりは予想してましたけど!最後の何ですか!?」
「いやさ、本当に色付くのかな〜って」
「付くに決まってるでしょう!!」
そんな理由で投げ付けられた副会長が不憫過ぎる。
「よく見れば副会長だけジャージですし!さてはついさっきやりましたね!?」
「当たり前だ!」
「喧しい!」
「よし、逃げるぞ」
未だ憤慨する前野を押し退け、言い放つ古泉。
青山は眠っていたベネディクトを起こし、準備を始めた。

「じゃあ、ちょっと早ぇけど、帰ろうぜ」

生徒会から逃げる為、古泉は楽しそうに言った。

Re: 帰宅部オーバーワーク! ( No.47 )
日時: 2015/12/28 23:50
名前: ガッキー (ID: JbG8aaI6)

はぁ・・・。
住み慣れた自宅の五階、一般的な部屋の大きさの7倍程もある大きさの自室に備え付けられた風呂から上がった帰宅部部長ーー古泉は、息を吐いた。勿論それは唯の呼吸ではなく、疲弊による溜め息だ。
生徒会から逃げた時のアクロバット行為が、響いていた。
怒りに震え、猛威と化していた生徒会(主に副会長)からどうやって逃げたのかと言うと。

テニスコートを挟んで向こう側の木に縄を投げて括り付け、部室のカーテンレール(外れないように改造済み)と繋げて、滑車を使って宙を滑るーー説明だけすれば冗談のようなやり方であの場から戦略的撤退を果たしたのだった。

「あのやり方も嫌いじゃねえけどな」
嫌いではないが、疲れるし、如何せん後片付けが面倒だ。カーテンレールに縛られたままの縄は、もう生徒会に発見されている事だろう。
あの生徒会長の事だ。もう対策は練られているだろうし、二度は使えない。
「また新しい帰宅方法を思い付かなきゃいけねェな」
柔らかいベッドに身を投げ、携帯に触れた。
たまには、部員とアイディアを出し合うのも良いだろうと考えたのだ。
電話帳を開き、ベネディクトの名前をタップする。
因みに、青山や前野にはアイディアを聞かない。
後輩にアイディアを貰うなんて格好悪いだろうが。と、いうのが古泉の考え。
三コール程した後、繋がった。
『もしもし?古泉クン?』
「あぁ、夜遅くに悪いな 。何かやってたか?」
時刻は十一時。模範的な生徒会長はもう寝ている時間だろう。
古泉による勝手な予想だが。
『お姉ちゃんとDVD見てるよ〜』
「へぇ〜・・・。仲良いのな」
『ま、まぁね・・・』
含みのある言い方をしたのはこの際置いておいて、古泉は本題に入ろうと
『うわっ!ピンク色の出てきた!!』
した時、電話のスピーカーから怪しい台詞が聞こえた。
「・・・・・・お前何見てんだ?」
まさかとは思うが。
エッチなヤツじゃあるまいな!?お姉ちゃんと一緒にエッチなDVDを見るというアレなシチュエーションの真っ最中ではあるまいな!?ピンク色ってーー先端的なアレではあるまいな!?!?
急に目が冴えてきた古泉は、しかしまだ決め付けるのは早いと、恐る恐る問う。
「お前が見てるのはアレか?・・・十八歳以上が対象のアレか?」
(頼む・・・!オレの勘違いであってくれ!十八歳以上のアレでもオレは構わないが、クラブメイトがそんなシチュエーションで楽しんでいると思うと流石に気不味いんだぜ!!)
『そうだけど?』
「そうなのかよ!」
『あっ、古泉クンも今から来る?』
「行かねェよ!三人で何する気だテメェは!」
『そっかぁ。来ないの?』
「あ、あぁ。興味はあるけどな」
『じゃあボクが解説してあげるよ!』
「実姉の前でDVDの内容の説明とかどんな羞恥プレイだよ!止めとけ!」
『あっ、女の人が泣き出した!「死にたくない!」だって』
「どんだけハードな内容のヤツ見てんだよ!見た目に反してえげつ無ぇ趣味してやがんなお前!」
『良いね〜!キタキター!』
「ちょっと待て!今のマリアさんの声だろ!?何喜んでんだ!」
『お姉ちゃん、こういうの大好き何だよね』
(変態じゃねぇか!!)
流石に、弟に向かって姉の悪口を言うのは憚られたので、心の中で全力で突っ込んでおいた。
『うわっ、くぱぁって開いちゃった!』
「止めろ止めろ!そろそろコメディ物じゃなくなっちまうぞ!」
消されるぞ!
額から流れ始めた汗をバスタオルで拭き取り、上体を起こしてベッドの縁に腰掛けた。
「良いか?そういうのを見るなとは言わねぇけどよ、そういうのは1人で見るモンだと思うぜ?」
『あー、確かにその方がムード出るよね〜』
「・・・・・・そういう事だ。マリアさんには帰ってもらったらどうだ?」
『聞いてみるね!』
ハラハラした気持ちが渦巻くなか、今か今かと待ち続けて、ベネディクトから応答があった。
『ダメだって』
「はぁ?何でだよ」
『見た内容が自分に起こるかも知れないって思ったら怖くなっちゃったって』
「な訳ねぇだろ!」
『確かに、コレばっかりは分かれる所だよね〜』
「分かれねぇよ!家の中だぞ!」
家の中でエロい展開が起こってたまるか!
頭をガシガシと掻きつつ、どうやって止めさせよう掻き悩んでいると、ベネディクトがポツリと呟いた。

『やっぱ、夜に観るならグロ映画だよね〜』


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