ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 旅人ノ街【ツドイマチ】
- 日時: 2011/01/25 23:17
- 名前: 狂乱 (ID: vehLH22f)
こんにちはー譲羽です。狂乱は元名ですw
暇なときでもダメ出し、感想などを聞かせてくれるとうれしいです。
やや放置気味でしたがまた更新再開します。
あんまり早くは更新できません。ご了承ください。
やっとカキコ(放置気味もあったけど)で一年がたちました。これからも駄文と作者をよろしくお願いしますw
>>106 番外編なお知らせ
>>113 修正なお知らせ
登場人物紹介
>>1
プロローグ
>>2 >>4【0】
ハジマリノハナシ 恋愛の鏡
>>5【1】>>6【2】 >>41【12】>>42【13】
>>9【3】>>17【4】 >>43【14】>>46【15】
>>20【5】>>25【6】 >>47【16】>>48【17】
>>26【7】>>31【8】 >>49【18】
>>32【9】>>35【10】
>>36【11】
傷と涙の幸せ巡り
>>59【19】>>60【20】
>>67【21】>>68【22】>>69【22,5?】
>>70【23】>>74【24】
>>75【25】>>76【26】>>78【26,5】
>>79【27】
記憶の歌声
>>82【28_1/2】>>83【28_2/2】
>>84【29】>>85【30】
>>86【31】>>87【32】
>>89【33】>>90【34】
>>95【35】>>96【36】
>>97【37】>>102【38】
>>103【39】>>104【40】
番外編:1_魔女と人形、時渡り
>>107 主な登場人物紹介
>>108【41】>>109【42】
>>110【43】>>117【44】
>>118【45】>>119【46】
思い出の歌声
>>120【47】>>121【48_1/2】>>122【48_2/2】
>>124【49】>>125【50】>>128【51】>>133【52】
>>135【52.5】>>136【53】>>137【54】>>143【55】
>>144【56】>>145【57】
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- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.31 )
- 日時: 2010/07/14 18:27
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【8】
ボクが感情の1つをなくしてから数日後。
蓬さんはまた違う世界へ出かけていった。かなりはりきっていた。
リコリスさんと柊さんは相変わらず喫茶店に毎日いる。喫茶店は1番高いところにあって来るのが不便なため、お客さんは滅多にこない。
ボクはといえば、街についても少し覚え、1人で歩き回れるようになった。
最近は紅茶のおいしいいれ方をマスターしようと奮闘中だ。カップを温めたり、お湯の温度に気を配らないといけなくて、結構難しい。
「詩句が熱心だから紅茶葉がなくなってしまいましたぁ。買ってきてもらえますね?」
ある日の午後。柊さんは、紅茶缶の中を覗いて言った。
「わかりました」
「今日は雨が降るそうですよ? 折り畳み傘を持っていくことをオススメします」
リコリスさんがふと思いついたようにいう。この時、ボクはリコリスさんの予言を甘くみていた。
「心配性ですよ。こんなにカラッカラの天気なのに」
窓から外を見れば、一目瞭然。太陽が眩しいくらいだ。
「いやいやいやいや。リコリス氏のいうとおりですよぉ? 最近発明された折り畳み傘をフルに使うチャンスだと思いますがねぇ」
柊さんが折り畳み傘を差し出しながらいった。
「柊さんまで心配性です! 大丈夫です! いってきますからね!!」
ボクは2人の助言を振り切って外にでた。
煉瓦の道からは熱気が靴を通して伝わってくる。よく水路の水がかれないなと思わず関心してしまう程だ。
こういうとき、小舟で商店街まで行くのは気持ちいい。水路が多い街で良かったとつくづく思う。
「今日も頼むよ」
薄っらとしか姿が見えない動力にボクは話しかけ、張り切って商店街へと向かった。
やっぱり雨が降った
紅茶葉を買った後、ボクは助言を聞かなかったことを後悔した。
けっこうどしゃ降り。夏におこりやすい夕立という現象だった。
こうなると水路はあふれて使えないので階段を上らなくてはならない……それもずぶ濡れになりながら。
3分の2程上った時に気づいた。紅茶葉は濡れてしまっては使い物にならなくなってしまうかもしれないことに……。
紅茶葉。缶で買うべきだったなぁ。
周りを見渡し、雨宿りできる場所を探す……。
民家は長方形の形をしているためできない……商店街で大人しくしてればできたのに……。いや、それよりも傘があれば……。
ボクが戸惑って、階段の真ん中で自問自答していると女がわきを通り抜けていった。その小柄な体型がもっと小柄に見えるほど大きな傘を持ち。大きな麻の袋を大事そうに持っていた。素足に革靴を履いているのか、歩くたびに水が入って音をたてていた。
「あの! 傘にいれてもらえないでしょうか?」
ボクは迷わずその子に声をかけた。
「………………」
無視されたが、ボクはそれを肯定と“無理矢理”解釈し、いれてもらった。その子は気にしていないようだ。ボクの方を見向きもしない。それとも怒っているのだろうか。
「あの、それお持ちしますよ? 傘も持ってるのに大変でしょう?」
ボクはお礼がしたくてそういった。
「………………」
何の反応もかえってこない……。仕方がなくボクは手を伸ばし、麻の袋を受け取ろうとした。
「……触らないで」
いきなりその子はこちらを向きしゃべった。
「え?」
「そんな濡れた手で“この子”に触らないで。」
透き通った緑の目で軽くにらまれた。
「すいません」
「わかったならいいの……傘を持ってくれる?」
「は、はい」
少々驚いてしまったがそっと傘を受け取る。
「……あ、あの。“この子”って?」
ボクは恐る恐る質問した。
「……みれば分かる。」
「そうですか…」
会話が続かず、やや気まずい……。
“この子”ってことは中に人でも入ってるんだろうか? そう思うとぞっとした。
少し行くと、いきなり路地裏へ曲がった。ボクは自分のより彼女と袋が濡れないよう注意していたので少し焦った。
狭い道を通っていくと、忘れられたようにこぢんまりと店が建っていた。
ガラスの奥には古っぽい服を着た人形が並んでいる……看板を読むと、どうやらここは骨董品屋のようだ。
「……ありがとう」
そういうとボクから傘を受け取り中へ入っていこうとする。
「ちょっとまってよ! ボクに袋の中身をみせてくれるんじゃなかったの!?」
「……………」
また無視される……。っていうか何ていったらいいか迷ってるみたいだ……。いちかばちか。ボクはとっさに紅茶葉を彼女に渡す。
「君、おいしい紅茶のいれかた知らない? 教えて欲しいんだけど……」
「貴方も紅茶が好きなの?」
やっとまともな会話ができた。ボクは微笑んでいった。
「ボクは詩句。君は?」
「私は一二三(ヒフミ)。窓付一二三(マドツキ ヒフミ)」
窓付さんはぎこちなく微笑み返した。
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.32 )
- 日時: 2010/07/14 18:29
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【9】
店の中は骨董品屋らしく何年も忘れられたようなホコリの香りがした。人形がたくさん置いてあり、その隙間に骨董品らしいカップや鏡。時計が置かれている。どうやら主にアンティークドールを売っているようだ。
店の真ん中に立つと、四方八方位から見つめられている気がして、少し背筋が寒くなった。
そうやって店内をみていると奥からいきなりタオルが投げられた。
「……ふいて。それから奥にきてくれる?」
窓付さんの声が聞こえる。ボクは指示通り、一滴も雫が垂れないくらい念入りにふいた。
タオルをたたみ、奥へ行く……。
奥では窓付さんが紅茶をいれて待っていた。ボクのタオルを受け取り、代わりに紅茶の入ったカップを渡してくれる。
「紅茶の葉が開く温度は95℃以上。紅茶葉はスプーンに3杯が普通」
窓付さんが説明してくれる。まさか紅茶で話しがはずむとは予想外だったけど……。
「緑茶とはまた違うんですね」
「……………」
……どうやら緑茶に興味はないらしい。ボクも黙っていると、窓付さんは例の袋を開けて、人形をとりだした。店に並んでいるのより綺麗な服を着ている……やっぱり古いけど。
「人形のことだったんですね!」
「今日はこの子に似合う服を探しにいったの。……この子は特別だから」
どうやら紅茶よりも話ができそうだ。窓付さんは大切そうに人形の頭を撫でる。
「私がここに来る前からずっと一緒にいてくれてる」
「“来る前”? あなたも違う世界から来たんですか!?」
ボクがびっくりして尋ねると窓付さんは目を見開いた。
「あなたも? 私は………えーと……」
窓付さんはなんだか悩んでいる。これをみると、さっきから無視してるわけではないようだ……。きっと話すのがあまり得意ではないのだろう……。
そう思ってるといきなり人形をボクに渡した。
「人形の声を聞いて……」
窓付さんがそういうと、急激に眠気に誘われた。
夢を見た。
どこかわからない見知らぬ土地……旅人ノ街のように少し古い街並み……とんがり帽子をかぶった人達がたくさん……窓付さんが炉キングチェアに座り、人形を直したりつくったり。まわりでは人形が踊っている——
いきなりテレビのようなノイズがかかり、場面が変わる
高い建物。空飛ぶ車……歩行者など1人もいない。とんがり帽子をかぶっている人もいない……夢がない世界……。
そこで夢は終わった。目を開けると、テーブルをはさんで窓付さんの姿がみえた。うつむいている。
「ゆ、夢を見てました。あの……人形をありがとうございました」
そういって人形を返す。窓付さんはぎゅっと人形をだきしめる
「夢じゃありません。人形の記憶……私の祖国の……」
「え!?」
あんなにガラリと街並みが変わるなんて……どれだけの科学技術を使ったのだろう?
「私は祖国で魔法が使えなくなって……存在が消えそうに……気づいたらこの街に来てた」
「戻る方法とかはあるんですか!?」
ボクはいつもより積極的だった。自分と重なったからなのかもしれない……。
「私は覚えてないけど……この子が記憶してるから……。でも……」
窓付さんの目が曇る……。
「もう祖国では必要とされていないみたいなんだ」
ボクは窓付さんに何の言葉もかけられなかった……。
「すーいませーん。詩句いますかぁ?」
いきなり柊さんの声が外からした。ボクと窓付さんは慌ててそっちに行く。
扉の前には折り畳み傘をさし、くすんだ紫色のローブを羽織った柊さんがいた。
「おぉ! いましたかぁ。リコリス氏が心配してましたよぉ? 柊にローブまで貸してくださいましたぁ。おやおやぁ? そちらはここの女主人様ですかぁ?」
「……………」
「はい。窓付一二三さんです。」
窓付さんが黙っているので、ボクが代わりに答える。
「ほうほう。一二三嬢(ヒフミジョウ)ですかぁ。詩句がお世話になりましたぁ」
「……………」
初対面でも相手が黙っていても、柊さんは変わらない……。マイペース?
「では行きますか詩句」
「あ! はい。窓付さんありがとうございました。また来ても良いですか?」
「……………」
窓付さんは黙っていたけど少し頬がゆるんでいたのをボクは見逃さなかった。
ボクも微笑んで、柊さんの傘に入り、骨董品屋を後にする
「いけませんねぇ詩句。何度も女性の家に行ってはいけないのですよぉ? あははははは」
「じゃあ! 今度は喫茶店に来てもらいます! ……あ! 帰りに紅茶葉を買って行かなきゃ!」
窓付さんに紅茶葉をあげてしまったのを思い出す。
「あははははははは。リコリスが言っていたのでもう買ってありますよぉ?」
どうやらリコリスさんは何でもお見通しのようだ。
雨はやまない。まるで窓付さんの悲しみのように……
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.33 )
- 日時: 2010/04/21 21:00
- 名前: 譲羽 (ID: M2SneLVI)
窓付s
登場です!人形とちょっと紅茶好きにさせていただきました。
またサンボイがよかったのでそのまま使わせていただきました。
いかがでしょうか?
最近部活が大変なので更新は休日までお待ちください…!すいません!!
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.34 )
- 日時: 2010/04/21 21:54
- 名前: さくら子 (ID: O9GTNW/u)
>>33
更新お疲れ様です。
凄いです!感激です!
まさにこんな窓付をイメージしていましたから!!
語彙が少なくてこんな感想しか残せませんが、本当に嬉しいです。
部活が大変なのですか、頑張って下さい。
これからも時々、コメントさせて頂きますね。
- Re: 旅人ノ街【ツドイマチ】 ( No.35 )
- 日時: 2010/07/14 18:17
- 名前: 譲羽 (ID: fgNCgvNG)
【10】
窓付さんに会って数日。洪水のため喫茶店から1歩もでれず退屈な毎日を過ごしていた。
水路が多いこの街は雨と相性が悪いようだ。
「今は梅雨の時期。じめじめしていてイヤですねぇ」
柊さんがため息をつく。夕立じゃなくて梅雨だったようだ。
「そうですね。いつも柊さんとリコリスさんと一緒じゃあ面白味がないです……」
カウンターに頬をつけて口を尖らせながらいった。
「酷いこと言いますね詩句さん。まあ、少し待ってればお客さんが来ますよ」
リコリスさんはすましていう。
「こんなに雨降ってるのに!?」
リコリスさんの予言にいちおう反論しておくがまだこの前のが教訓になっていた。“半信半疑でも信のほうが多め”といったところ……。
そんなことを思っているといきなり壁にチャックを発見した。
「詩句さん。それ開けてくれますか?」
リコリスさんがそういうのでボクは静かにチャックを開けた。
…………中から出てきたのは例の人形を持った窓付さんだった。
「おやおやぁ? 一二三嬢ではありませんかぁ。いらっしゃーい」
「窓付さん!! どうやって?」
「……空間を跳ぶ程の魔力はないの……でもそこの人が力を貸してくれて」
窓付さんはリコリスさんの方を見る。
「ただの鏡屋の気まぐれです。空間移動は得意ですから」
リコリスさんの金色の眼がフードの奥からみえた気がした。
「お礼なんかいい。一二三さん。あ。そんなびっくりしないで……。心を読むことができる魔法使いにはたくさん会っているはず……」
どうやら窓付さんの心を読んでいるようだ。
「気にしないでください。」
ボクはそういって近くのテーブルに案内する。
「へぇぇ。リコリス氏も魔法使いだったんですかぁ。柊のお友達のなかで、魔法使いは歌静嬢だけだと思ってましたよぉ。」
柊さんが関心した眼差しを向けながら言った。
「いやいやぁ。リコリスはただの魂の集まりなんですよぉ? まぁ今は鏡屋ですがねぇ」
「……歌静さんを知ってるの?」
2人の話にいきなり窓付さんがとびこんだ。
「一二三嬢も知ってますかぁ? 歌静嬢のこと?」
「歌静さんといえば大魔法使い。知らない魔法使いはいないの」
話がみえない……。歌静さんってだれ!?
「歌静さんは柊さんのお友達で異世界で遊びまくってる人です」
リコリスさんが説明してくれた。
「んん……言い方が悪いですねぇ。まぁ、なかなか姿を見せませんが……。反乱が起きたときほとんど歌静嬢が勝利を勝ち取ったもんなんですよぉ?」
さすが大魔法使いといったところか。反乱ってどんな規模だったのかなぁ……。
「どうしたの貴方。すごい思い詰めた表情してる。」
リコリスさんが窓付さんにいう。確かになんだか凄く苦しい顔だ。
「大丈夫ですか?」
「歌静さんぐらい魔力があれば、祖国を元に戻せるのに」
「……窓付さんは昔の祖国に帰りたいんですね。」
窓付さんはコクッとうなずく。
祖国なのに居場所がないのは、1番苦しいことかもしれない……。帰りたいのに帰れない。ボクにもし記憶が戻って元の世界がわかっても、居場所がなかったらどうすればいいのだろう……。
そう思うと窓付さんの気持ちが凄くわかる。悲しみがリアルに伝わってくる……。ボクの頬を雫がつたう。なんだか無償に涙がでてきた。
窓付さんがびっくりしている。
「す、すいません……男なのに……格好悪いです……ボク……」
そう言いながらも涙を拭うがいっこうに停まらない。そっと窓付さんがボクの手をつかみ、拭うのをやめさせる。
「拭っても悲しみは停まらない。こうした方がいい」
そういうと窓付さんはボクの頬につたう一粒の涙を、そっと指ですくい取り口に運んだ。
“こくん”と静かに飲み込んだ。
「人形は私が泣いてるときこうしてくれる。そして笑ってくれるの」
「ありがとうございます……窓付さんは昔に返りたいんですよね……」
ボクが涙をもう一回拭うと涙はとまった。
窓付さんは微笑んでボクの質問に答える。
「“帰りたい。”でも時は前にしか進まないの」
沈黙する。
「世界が変わった」
リコリスさんは突然いった。雨はやんでいた。
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