ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- とうめいセカイ。 完結
- 日時: 2010/07/14 17:09
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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だんだんココで書くのも、ちょっと慣れてきました。
◇お客様◇
風水様 白柊様 時雨様 空様
白兎様
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- Re: とうめいセカイ。 ( No.73 )
- 日時: 2010/07/14 16:59
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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「芸術品……?」
涼香の言葉に、蓮華もサクも首を傾げる。
彼は微笑みながら、ポケットに飾っていた薔薇を抜き取った。
「私はどうやら、美しいものが傍にないと歌えないらしくてね。 彼女を傍に置いてるんだよ。 ホントに素晴らしいよ、彼女は! 私をじっと見つめてねっ」
言いながら、涼香がセイに駆け寄って抱きしめる。
あまりの勢いと強さに、二人の間でプチッという音がした。
みると、猫が潰れていた。
「ひっ」 「……ッ!! 」
温かな血がセイと涼香の服に付着する。
蓮華が口元を押さえ、真っ青な顔をした。
「汚れちゃったね、セイ。 でもセイ、キミは綺麗だよ。 美しい芸術品だ。 私の大事な、大事な、芸術品だよ」
何を言ってるんだ、この男は。
「さあ、その猫チャンを抱いてみなさい。 じっとしていて。 キミは芸術品だろう?」
そう言った涼香の頬を、サクが力いっぱい殴っていた。
「ぶぼえ!」
奇声を発しながら涼香が尻餅をつく。
サクは彼に目もくれず、セイの肩を掴んだ。
「おい! しっかりしろ! 名前を言ってみろっ」
外傷はないが、精神が危うい。
よほど強く芸術品だと言う事を教えられているのか、瞬きもしない。
廃人同然と化しているセイに声をかけ続けると、ふと、焦点が合わさった。
「セイ、」
「ボクはセイじゃないよ。 何言ってるんだ、お兄さん。 あれ? ボクはセイだっけ。 私……? オレ? ボク? 私は私? んー、分からない。 キミとどこかで会ったっけ。 思い出せないなー。 でもそれはきっと、セイの記憶だから、オレには関係ねーよ」
長々と。 今までなりきっていた 『芸術品』 としての人格が暴走を始める。
「私は私? なんでここにいるの?」
ワカラナイ。
「どうして、ボクはセイじゃないんだ?」
ワカラナイ。
「もう動いていいのかしら。 分からないのだけど」
ワカラナイ。
「あっははー、猫潰れてるねー♪」
ワカラナイ。
何もかもがハリボテで、どこに自分が在ったのかさえ、思い出せない。
メチャクチャになった人格像が出てきて、本当のセイが見つからない。
「嘘……セイっ!」
「………………蓮華?」
ハッとする。
やっと見つけた。 本当のキミ。
「な、な、美しい私の顔を殴ったな貴様ぁぁッ!」
涼香がサクの胸倉を掴む。 サクは鬱陶しそうに涼香を蹴り飛ばす。
「お前はコイツを芸術品としか見てねーンだよッ! オレはコイツと会って、まだ1日も経ってねーけど分かる! コイツはお前の道具じゃねないッ」
蓮華がセイを肩で支えながら立ち上がり、じーっとサクを見て。
「サクって、セイの事好きですよね」
「……………は?」
「さっき、そう思ったの。 見ず知らずの子の為にここまでしてくれるなんて、思わなかったもの」
そう仕向けたのは誰だ。
それは言わず、サクは涼香を抑え込む。
「やめろー! 連れていくなぁッ! 私の芸術品をーッ!」
「黙れ、この外道!」
サクは扉をしゃくって、早く行けと合図する。
蓮華も頷き、茫然とするセイを連れて逃げようとした。
だけど。
発砲音。
「………………え?」
焦点が合わなくなり、足がもつれ、二人が倒れる。
一瞬何が起こったのか分からず、サクが蓮華を見た。
「………………蓮華?」
傍にいたセイも、音に覚めたのか、不思議な顔をしている。
その傍らで、
血を流して倒れている蓮華がいた。
「………………あ、 ああ ああああああ あ」
胸を打たれている。 死んでいる。
もう、無理だ。
セイの中で、とっくに砕けていたはずの破片が、どこかに刺さった。
痛くて痛くて、とれない。
「ああああああああああああああああああっ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ! ひゃああああああっ」
つんざくような絶叫をセイが叫び、蓮華を抱きかかえ、涙を流す。
今まで必死でせき止めていた感情をあらわにして。
そして。
サクも同じだった。
撃った涼香を殴り、蹴り、銃を取り上げた。
血を吐き、虫の息である涼香の目玉を容赦なく撃つ。
「ああああああああああっ、があぁぁぁぁぁっ」
痛みで転げまわる様を見下ろし、サクは無言で涼香の足を撃った。
苦しんで死ぬように。
次に、手。 その次に、脇腹。
「こ、こんな死に方やだよぉ……」
泣きじゃくる涼香を冷たい目で見下ろし、最後の一発を口に向けて撃った。
どんっ。
「あああああああああああっ、ああああああああ? ああああああああああああああああああっ、▽×□○」
意味不明な奇声をあげているセイを見て、サクは彼女に近寄る。
もう、手遅れだ。
自分は、人殺しを殺してしまった。
「セイ」
「うーうーうーうーうーうーっ」
「セイ、楽になりたいか?」
もはや言葉を無くし、セイは狂ったように唸る。
そんなセイを殺しても、自分は………、
「セイ、お前はオレみたいになるなよ」
優しくサクはそう言って。
銃口を自分の頭にあて、
撃った。
- Re: とうめいセカイ。 ( No.74 )
- 日時: 2010/07/14 17:09
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
.
ⅴ
何時の間に、悪魔というものになったんだろう。
長かった気もするし、一瞬だった気もする。
サクは黒いマントを翻し、ぼんやりと違う世界を行き来していた。
「………………え?」
そして、見つけてしまった。
自分が昔、必死で守ろうとしていた少女を。
「セイ?」
「………それは、ボクの事か?」
髪は薄い色だけど、絶対にそれはセイだった。
その姿からして、悪魔じゃない事は分かる。
「お前……セイなのか?」
「たぶん、ボクはセイだ。 覚えてはいないけど、そう呼ばれてた気がする」
「なんで……此処に居るんだ?」
ここは、死んだ者しか来れない世界。
本当の世界とリンクした、別の異なる次元。
「ボクが、この子を撃ったんだ」
そう言って、セイがそっと自分を指差した。
「……お前が?」
「この子は酷く泣いていて、とても苦しそうだった。 ボクが銃で殺してなければ、ムゴい死に方をしそうだったんだ」
おそらく、彼はセイが芸術品だと見定められた時の人格の一つなのだろう。
セイではない。
決して。
「………」
だけど。
「お前は、セイだよ」
「お前がそういうのなら、セイでいい。 その名前を、ボクは知っているから」
愛しいキミを今度こそ、自分は守ろうと決めた。
ⅴ
「何をにやけてる」
「昔のオレたち」
「……………」
セイはふいっとそっぽを向き、どこかを見つめた。
白い世界。 サクはそのすぐ傍にいて、セイから離れようとしない。
「セイ、何考えてるんだ?」
「別に。 ボクは他の事を考えないから」
セイは魂をそっと取り出す。
それは、不幸な死を遂げてしまった、小さな魂。
「次はソイツを助けるの?」
「これ、ボクとセイに似てるんだ。 とてもとても壊れやすくて、愛しくなる」
「オレが妬くだろ」
サクがしれっと言うと、セイが複雑な顔をする。
「サクの思い人がどんな人なのか、ボクにも興味はあるが、忘れないでよ。 ボクはボクで、セイはセイだから」
「わーってる。 男相手に手ェ出さねーし」
「……男でもないと思うんだけどな」
セイは言って。
魂を抱きしめて、下界を目指す。
愛しい悪魔と共に。
終わり
- Re: とうめいセカイ。 ( No.75 )
- 日時: 2010/07/14 17:21
- 名前: 白兎 (ID: WkxsA0sZ)
何だしょー? この「えへへ(照)」の魔力は一体。 何となく可愛い。
・・・それと
サクゥゥゥゥゥ〜〜〜〜!!!!
;(≧0≦); セイィィィィィ〜〜〜〜!!!!
以上、心の叫び((笑
二人はそれからどうなるのだ……??
- Re: とうめいセカイ。 完結 ( No.76 )
- 日時: 2010/07/14 17:30
- 名前: 白兎 (ID: WkxsA0sZ)
……(涙)
コメント書いてる間に終了してたというね……。
うわーんっ(ノ△<。) ←書くの遅いからだろ。
完結おめでとうございます^^
セイはセイの中のボクが殺してあげた…って感じですかね。
セイはこれからも不幸な魂を助けてあげるのかな。
- Re: とうめいセカイ。 完結 ( No.77 )
- 日時: 2010/07/14 18:20
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
コメ、いつもありがとうございます(^'^)
本当に感謝です(*^_^*)
白兎さんも頑張って下さい!
完結したんで、これはロックします(^^ゞ
「崩壊少女と無心少年」 の方もよろしくデス!
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