ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- とうめいセカイ。 完結
- 日時: 2010/07/14 17:09
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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だんだんココで書くのも、ちょっと慣れてきました。
◇お客様◇
風水様 白柊様 時雨様 空様
白兎様
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- Re: とうめいセカイ。 ( No.3 )
- 日時: 2010/07/03 09:47
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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はじまりはいつだって、
誰にも予測はできないから。
ⅴ
息をきらして、走る。
振り向くな。
振り向いちゃダメ。
心の中でそう叫びながら、走る。
狂う雨の中。
ただひたすらに。
真っ黒な影が追ってくる。
逃げなきゃ。
捕まってしまう。
捕まったら何をされるんだろう。
殺されるのかな。
そう考えたら、一層恐ろしくなる。
「……潮音」
愛しい妹の名前を呼びながら、
もうこれでおしまいなのだと。
どこかで確信している自分もいた。
ナイフが、
そんな事やめてほしいのに。
ナイフが、
潮音、潮音、潮音!!
「行くか、セイ」
「……………」
一つの命のおわりを、二つの魂が見ていた。
あまりにも残酷で、儚い、命のおわり。
「セイ、魂はオレが狩るぞ」
「うん。 サク、よろしく」
哀しい。
哀しい音がする。
鼓膜に響いて、少しだけ。
「…………海香?」
同じ空の下。
きっと、彼女もキミを見ている。
- Re: とうめいセカイ。 ( No.4 )
- 日時: 2010/07/03 10:17
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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第1章
やわらかなじかん
雨が降っている。
窓の外を見て、潮音は深く溜息をついた。
携帯を手にして、パコパコボタンを押す。
「もっしー潮音だけど〜。 今日やっぱダメだよね」
『ああ、潮音? こりゃあダメだわ。 また今度にしようぜー』
「了解〜」
最悪だった。
せっかく友達と遊ぶ約束をしていたのに。
この雨のせいで中止だ。
「ぬーん。 最悪だよ、サイアク」
一人部屋で悶絶しながら、潮音がボコスカとクッションを殴る。
高校生になって、明るい色に染めた髪は、今はもう黒ずんでいる。
キレイというよりは、可愛い顔立ち。 外で遊んでばかりで、勉強は中の下くらいだ。
「もうすぐ受験なんだから」
そう言われるけれど、正直夢もなにもない。
「だったら遊ぶしかないじゃーん」
と開き直っている。
高校だって、いけるレベルでしか行ってない。
進路希望も、テキトーに書いた。
テキトー人間なのだ。 きっと。
「…………………雨かぁ」
イチゴ型のテーブルに置かれている写真たて。
映っているのは、同じ顔の少女。
潮音と、双子の姉の海香だった。
笑ってスイカを食べているところを、父さんに激写された。
「…………………雨、ね」
呟く。
そういや、雨だったかーと思う。
海香が殺された日も。
1年前だったけど、犯人はまだ捕まっていない。
雨のせいで、証拠が流されたと言われた。
アタシの半分が死んだ。
潮音の中で何かが崩れて、今もそれは散らかしっぱなし。
泣かなかった。
怒りとひどいショックで、涙もでなかった。
「誰が海香殺したんだろ」
だから、捜してる。
これが今の潮音の生きがいかもしれない。
捜す、というよりは、求める。
今となってはぼんやりと、
浅はかな願いだけど。
もっかい海香と会いたい。
だったら、会えばいいんじゃないか。
「アタシ、あったまいいじゃん♪」
- Re: とうめいセカイ。 ( No.5 )
- 日時: 2010/07/03 17:02
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
- 参照: http://l-seed.jp/patio2/upl/1277291392-2.jpg
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せっかくの休みなんだから、何かしたいと思う。
だけど、する事といえば宿題とか勉強。
何のために休みがあるのか分からない。
「もうちっと気楽に行きたいんだけどーっ」
雨があがって。
キラキラの町を一人で歩く。
傘も持たずに。
「あれ。 潮音?」
「ぬぬ?」
呼ばれて振り返る。
転寝 李人がいた。
「あれ、転寝じゃん。 部活帰り?」
「ああ。 ………潮音は?」
「アタシは普通に歩いてるだけー」
李人はあまり喋らない性格だ。
大人しくて、冷静で、クールなイメージがある。
あまり人と接したがらないようなのだけど、そのルックスが百点満点なわけで、よく女子からモテる。
野球部の帰りなのか、ユニフォーム姿。
膝小僧がドロドロだ。
「雨ふったから練習ナシっぽいの?」
「まいったよ。 突然のザアザアぶりだから」
隣並んで歩くと、カップルみたい。
そう思いながら、潮音は歩いた。
頭2つ分高い、李人の背。
「だからそんなドロドロなわけね。 納得」
「笑うなよ」
小学時代からの腐れ縁である李人は、潮音の前では少しだけよく喋る。
その冷静な面を、やわらかい表情でほぐす事もできた。
ふいに潮音は、李人からじっと見られている事に気づく。
たまらなくなって見ると、やはり目があった。
「……なんですかな」
「キレイに笑えるようになったな。 と思って」
「ほほー」
顔をサワサワ触って、潮音は満面の笑顔を浮かべる。
無邪気に手でピースを作り、
「惚れましたか? 惚れましたかコンニャロー♪」
「惚れても無いし、コンニャローでもない」
「ええ〜? アタシ、トキメキ恋愛シュミレーションゲームみたいな展開を希望してたのにぃ」
ぶぅ。
いじけた顔も可愛らしい。
クスクスと李人も笑う。
「そういや……、三日後だったな」
「なにがさ?」
「命日」
その言葉に、ハッとする。
忘れていた。
三日後、海香の命日。
「………うーん。 しょげるね」
「すまん。 そんなつもりじゃないんだ」
「わーってるって。 気にすんなよ少年っ。 アタシ、もうそろそろ帰る。 誰かに見られたら付き合ってるって思われるかも知れないしねーっ」
おどけてみせる。
自分はもう大丈夫だと、安心させるために。
李人に、迷惑はかけたくなかった。
「潮音……」
「バイビー転寝☆ また明日ねっ」
光もいろいろ。
いろんな色が混ざり合って。
やがて黒になる。
- Re: とうめいセカイ。 ( No.6 )
- 日時: 2010/07/03 17:10
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
- 参照: http://l-seed.jp/patio2/upl/1277291392-2.jpg
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ⅴ
寄り添い合う二つの魂。
そっと、心細そうに少女の結末を見ている。
「ココロ、壊れてないな」
「………それがいいよ」
ぎゅっと。
握りしめる手と手。
「セイ、いつでも俺の魂喰っていいからな」
「バカ言うな。 いくらお前でも……怒るよ」
怒るというよりは、
ポスンとパンチを胸にくらわしただけ。
「あの子たち……ちゃんと、自分たちの場所に行けるのかな」
「それはあいつら次第だ。 俺らが心配する義理じゃねぇだろ」
「そうだけど、気になる。 ボクは、気にする」
伝えたい。
声を、伝えたい。
つぶれたノドを必死で掻きむしって。
届いて。
「魂が、こんなに泣いてるんだから」
言って。
天使の少女はそっと、
やわらかい、消えそうな魂を抱きしめた。
- Re: とうめいセカイ。 ( No.7 )
- 日時: 2010/07/04 08:32
- 名前: 風水 (ID: PA3b2Hh4)
新しいの作ったですか。
相変わらず読みやすいです(^_^)
途中詩みたいなのありますけど、キレイですね。
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