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とうめいセカイ。 完結
日時: 2010/07/14 17:09
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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だんだんココで書くのも、ちょっと慣れてきました。




◇お客様◇

     風水様  白柊様  時雨様  空様
     白兎様

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Re: とうめいセカイ。 ( No.33 )
日時: 2010/07/09 16:46
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

謎はもうすぐで解けます。
キーマンは、ヒロが抱いた海香への想いですね(^^)/
>時雨さん


ども、アキラです。
応援コメも含め、今までの小説でもお世話になって
おります(^'^)
お互い頑張りましょうッ
>白兎さん

Re: とうめいセカイ。 ( No.34 )
日時: 2010/07/09 17:23
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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気づいてた。

ヒロが海香を好きだって事も。

知っていた。

ヒロが海香を殺した事も。

許せなかった。

たとえそれが、ヒロ自身が望んでいた事で無くても。




           
           ⅴ



目を覚ますと、そこは病院だった。


「…………あれ?」
「お、起きたな」


声がした。
ひどく低くて、唸るような声。
見ると、天使の傍にいた悪魔の男が居た。


「お前……、悪魔のおっさん」
「おっさんて何だ。 オニーサンだろうが。 言っとくけどな。 オレがお前をここに運んでやったんだからな」


そこで思い出した。
そうだ。 自分は、刺されたんだ。


「あいつは……っ」
「まだ動くな。 傷、開いてんだから」
「くっそやろ」


顔をしかめる。
唇を噛みしめると、血の味がひろがった。


「あいつは……、あの白いやつ」
「セイのことか? どっか行ってんじゃねぇの? 白いやつとか言うなよ、カワイソーだな」
「……あいつ、俺が海香を殺したって言った」


ヒロの言葉に、悪魔がピクリと眉を動かす。


「本当なのか? アンタなら分かってんだろ?」
「……それを確かめるのは、オレじゃねぇだろ」


ヒロ。
確かめるのは、ヒロだ。


「それよかさ、お前、親は? 息子が怪我したって家に連絡入れたらしいけど、来ねーじゃん……」


悪魔は、そっと口を閉じた。
その時のヒロの表情が、いつもより少し大人びた感じに見えた。


「……まァ、いいや。 んで、お前はどうしたいの」
「俺は……本当の事が知りたい」


ハッキリと答える。
あの墓場にいた、海香と名乗った少女。
あれは、絶対に──





           ⅴ




あの日、眠ってしまったから、お迎えに遅れてしまった。
急いで雨の中、傘をもう1本持って走る。


もう授業は終わってるはず。
暗い中、もし一人で帰ってしまっていたらどうしよう。
携帯は、塾のせいかマナーモードのまま。


塾はまだ電気がついていて、中にいた先生に聞くと、男の子と一緒に帰ったと聞かされた。
男の子?
どうして彼女が男の子と帰ったのか、分からなかった。
その男子が誰かという事も。


暗い夜道を戻っていたら、二人の人影を見つけた。
見覚えのあった人だったので、彼女は立ち止る。


それは、彼女のかたわれと、彼女のボーイフレンドだった。
立ち止って、何か話してる。
邪魔をしてはいけない。 そう思い、彼女が立ち去ろうとしたとき。


人影が、一人消えた。


何かを叫び、怒鳴り、蹴るような仕草をし、男子が去っていく。
雨の中。 人通りの少ない、路地裏。 


「……………海香?」


彼女が見たのは。
腹に大量の血を浴びた、同じ顔の少女の死体だった。

Re: とうめいセカイ。 ( No.35 )
日時: 2010/07/09 17:47
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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もう一度、やりなおそう。
曇天の下、あの墓地にヒロはいた。


腹部には包帯が巻いたまま。 その傍らには、悪魔。


「ありがとな。 病院から出してくれて」
「別に。 人間は嫌いだけど、魂は好きだから」


悪魔はニカッと笑った。
ヒロもつられて笑うが、すぐにその顔が緊張になる。
確かめる。
確かめて、それから。

それから。


「また来てるの。 包丁で刺したのに、死に損ないね。 ヒロくん」


海香の墓標にもたれかかる少女。
ヒロはそいつをじっと見つめた。


「なに怖い顔して。 そんなに私が生きている事が恐ろしいの? あなたが殺したから」
「………もうやめろよ。 潮音」


ヒロの言葉に、海香の仮面を被った潮音が笑う。


「潮音? 潮音なんていない。 今は私が海香よ」
「……お前は潮音だ。 海香は死んだ」
「死んだ? 違う、死んだんじゃない。 殺されたのよッ」


突如声を荒げ、隠し持っていたのか、包丁をヒロに突きつける。


「あの日、あなたが私を刺して殺したの。 あなたは覚えていないでしょうけどね」
「あり得ないだろッ。 人を殺してその記憶が無いなんて!」
「嘘。 あなたは本当は忘れてるだけの臆病者だッ」


潮音は、ヒロが海香を殺したと言う。
なんのために?
どうして愛する女性を殺さなきゃいけない?

ヒロがグルグル考えていると、


「私が、転寝くんを好きだと知ってたんでしょ」
「………ッ」


ドクンと、心臓が急激に大きく高鳴った。
手をギュッと握り、目を見開く。


「あなたは私を好いていたけど、私は転寝くんが好きだった。 それに気づいて、あなたは……ッ、“海香を殺したんだ” よっ」


ハッとして、ヒロが潮音を見る。
潮音は、真っ赤になって泣いていた。


「ヒロなんて大嫌いッ。 海香は血だらけで、すぐに救急車呼んで……だけどもうダメで! あの後、アタシはあんたに言ったじゃん! 『海香は死んだよ』って! なのにあんたは、何も覚えていないような感じで、驚いて……。 泣いていた。 海香を殺したのはアンタなのにッ」


回想をしてみる。
あの日、コンビニから帰ってきてすぐぐらいに、携帯が鳴った。
言われたのだ。 潮音に。

海香が、死んだと。

それを聞いて、目の前が真っ暗になった。
殺されたと聞いて、今度は怒りと絶望がつのった。


「オレはその時初めて海香の死を知ったんだッ。 オレは殺してないッ!」


潮音が信じられないといったように睨みつける。


「アタシは見た! 海香を刺して、蹴って、怒鳴りながら逃げていくヒロを! だけどアンタは葬式の時だって本当に何も覚えていない風だから……アタシ、警察に言うの止めたの。 アンタが覚えていないのなら、海香の絶望を味あわせてやるって……」


ずっと、抑えてきた。 この1年間。
必死で笑顔をつくり、心を変え、無邪気さを装った。
死ぬほど苦しくて、地獄だった。


いくら待っても、ヒロは海香の事を思い出す事はない。
だったら。


一周忌の時、髪を切り、海香になりきって思い出させよう。
そう思った。
なのにヒロは思い出さなかった。


「酷いよ………ヒロ………」
「オレはっ、本当に覚えていないんだっ!」


ヒロが叫ぶ。
覚えていない。
自分が海香を殺した事すら。 何も。


「もう一人の人格があったとしたら?」


悪魔の傍に、何時の間にいたのか、天使が座っていた。
じっと二人を見て、そう言った。


「………もう一人の人格?」
「沐樹 ヒロに、もう一人の人格があったとしたら」


静かな天使の言葉に、ヒロが眉をしかめる。
潮音も何を言いだすのかと、天使を見つめた。
何も反応がないので、天使は立ち上がり、語り始める。


「二重人格。 他者の人格が現れ、無意識にその人格が表となり、自分の知らない所で自分の知らない事をする。 もし、ヒロの中にそう言った人格がいたのなら……。 凶暴で、愛する人間を殺すという、酷く残酷で嫉妬心の強い人格がいたなら」


ヒロの中のヒロ。


「心当たりはあるか?」


ヒロの中の、ヒロ。
いつも一人きり。 孤独しか生み出さない心。


「サクに聞いたら、お前の家庭環境は複雑らしいし」
「ああ、そういや見舞いにも来てなかったな」


壊れた。
壊れた。
壊れた。


「ああ、オレは海香を愛してる」


殺してしまいたい。
壊してしまいたい。
それほどまでに、手に入れたい少女。

Re: とうめいセカイ。 ( No.36 )
日時: 2010/07/09 21:45
名前: 風水 (ID: STEmBwbT)

潮音は海香のふりして、ヒロの記憶を引き出そうと

してたんですね。

それにしても、人格がもうひとつあったとは!

Re: とうめいセカイ。 ( No.37 )
日時: 2010/07/09 22:09
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

このお話は、この双子ちゃんのお話と
次のセイとサクの話で強制終了しますm(__)m
どうしても、やっぱヤンデレが書きたいので☆汗


風水さん>> ヒロがどうしてそうなったのかは
      今から書いて行きます!


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