ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- とうめいセカイ。 完結
- 日時: 2010/07/14 17:09
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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だんだんココで書くのも、ちょっと慣れてきました。
◇お客様◇
風水様 白柊様 時雨様 空様
白兎様
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- Re: とうめいセカイ。 ( No.13 )
- 日時: 2010/07/04 15:18
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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ⅴ
「なんで死んじゃったんかな……」
二日後。 海香の命日。
学校は平日だけど、放課後にお墓参りに行くと決めていた。
「犯人まだ捕まってないとか、アリかよ」
部屋でヒロが呟く。
今まで、一度も忘れた事なんてなかった。
海香。
大好きだった。
「犯人見つけ出して……殺してやろっかな」
「そんな事して、海香は喜ぶの?」
声がした。
狭い部屋の、窓べ。
「……………あ?」
誰か座ってる。
女の子。
誰だ。 いや、いつ入ってきた?
女の子が、こちらを見る。
「キミの魂は、本当に安らげる?」
立ち上がり、扉の方へ移動する。
ヒロは生唾を飲み込み、ゆっくりとドアノブに手をかけた。
その時。
「逃げちゃダメだろー、このガキ」
「っ!!? 」
すり抜けてきた。
黒いローブをまとった、大柄な男。
「ひっ………」
「叫んでもらっちゃ困るだよな」
口を手で塞がれる。 そのまま床に押し倒され、身動きが出来なくなった。
その様子を無表情で見ていた女の子が、フワリと近づく。
「もう叫ばない?」
「…………っ」
必死で頷くと、込められていた力がふっと弱くなる。
ヒロは咳込みながら、強張った表情で男を見る。
「誰だ……アンタら……」
「おいおい。 見上の奴に話しかける時は敬語だろ」
キレイな顔をした男が、ニヤリと笑う。
「サク、もういいだろ」
女の子の言葉に、渋々ヒロの上から退く男。
ヒロは茫然とした顔で二人を見た。
ワケが分からなかった。
「誰……てか、どこから入ったわけ」
「ここから」
女の子が、スッと窓を指差す。
ここは二階。
窓から入れるわけない。
「お前さ、さっき見ただろ。 俺どっから入ってきたよ」
「…………………っっ!!! 」
驚き過ぎて腰が砕けた。
男は、閉じている扉を透けてきた。
人間にはできない。
「………カミサマですか?」
ぼんやりと、そんな事を口に出した。
いや、全然そういうの信じてないんだけど。
この二人の雰囲気が、普通のソレとは違う気がした。
「違う。 ボクらはカミサマなんてものじゃない」
女の子が真面目に反論して、目を伏せる。
全体的に、壊れやすそうな、ガラスのような女の子だった。
「ボクは天使だ。 カミサマなんて物じゃない。 人の魂をあたたかい所に運ぶ、届け屋だ」
天使。
そう聞いて、少し納得する。
この子なら、そういう電波な事を言っても説得力がある。
白、というよりかはほんのり灰色の髪は腰まである。
透き通るような肌に、淡い色の目。
服装は、珍しいデザインのワンピースだった。
「お前、信じてないだろ」
「…………………」
「本当の事を言え」
「…………………まあ、はい」
女の子は仕方ないと、
そっと手を差し出した。
「…………なんだ、それ」
その小さな手の中にあったのは、小さな光だった。
あたたかくて、震えている。
小さな小さな、ひな鳥のような光。
「魂だ」
「魂?」
「星屑 海香の魂だ」
名前。
なまえ。
愛しい彼女の名前。
「お前……なんで海香を知ってっ」
「彼女は今、泣いている。 ずっと昔から。 ずっと」
そっと、落とさないように。
抱きしめる。
「殺された。 1年前」
「なんで………それを知ってんだ」
「天使だから」
当然だと言うふうに言われ、ヒロはうろたえる。
「ちなみに、俺は死神だ。 天使なんかじゃない。 そんな優しいモンじゃない。 幾度オレがその魂を喰おうとしても、セイは許してくれねーんだ」
「だって、泣いてるし」
ヒロがその魂に触れようとすると。
「壊れるよ」
「っ」
手をひっこめる。
- Re: とうめいセカイ。 ( No.14 )
- 日時: 2010/07/04 15:20
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
>>白柊さん
うわあ、コメを二回も(・.・)
ありがたいですm(__)m
双子ラブです。 姉妹もいいけど、兄弟も
いいかなーと思ってます(*^_^*)
- Re: とうめいセカイ。 ( No.15 )
- 日時: 2010/07/04 17:06
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
- 参照: http://l-seed.jp/patio/upl/1278230715-1.jpg
参照、潮音です。
- Re: キラキラ。 改名しました。 ( No.16 )
- 日時: 2010/07/04 17:07
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
- 参照: http://l-seed.jp/patio/upl/1278230715-2.jpg
参照、海香です。
- Re: とうめいセカイ。 ( No.17 )
- 日時: 2010/07/04 17:31
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
- 参照: http://l-seed.jp/patio/upl/1278230715-2.jpg
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そっと触れるだけで壊れる。
それほど脆い魂を、やさしく持っていた。
「それ……海香?」
「海香だったもの。 海香本人じゃないけど」
「………お前ら、誰だよ」
うんざり。
そういう顔で男が身を乗り出す。
「聞いてなかったのか人間。 俺は死神で、セイは天使だ」
「……セイ」
「セイは天使だから魂に触れられるんだ。 人間が触っていい代物じゃねーんだよ」
魂。
人の、人そのものの根源。
「海香は殺された。 それだけだ」
「そいつ、見つかってないんだろ?」
女の子が小さく口を開く。
ヒロはハッとして、女の子を見た。
「お前らッ、まさか海香を殺した奴知ってんのかッ」
「…………」 「おい」
掴みかかろうとしたヒロの前を、男が遮る。
ジロッと男はヒロを睨む。
「知ってて当たり前だろうが。 一応、人の魂持ってんだからよ」
「じゃあ、警察に」 「それは無理だ」
キッパリと。
女の子が断った。
「なんで」
「ボクらは今、人間に姿を見せ、更に犯人を知っているという禁忌を犯している。 そのうえ犯人を人間に教えるなんて、さすがに出来ない」
「そんな……ッ」
「ボクらがお前の前に現れたのは、この魂があまりにも泣いているから」
光を見る。
ふるえている。
「うるさいんだ。 眠たくても眠れない。 必死で泣いて、誰かに助けを求めてる。 見てられない。 だからお前に会いに来た。 コイツの声を、聴かせるために」
言って。
女の子はそっと手を伸ばしてヒロに魂を近づけた。
やわらかな、音。
魂の鼓動。
そして──、
叫び。 慟哭。 不協和音。
泣いていた。 魂が、海香が、泣いていた。
「…………ッ」
「これ以上はマズい。 精神を壊す」
男に言われ、魂を耳から離す。
ヒロはガクリとその場にくずれ込んだ。
「う……みかッ……海香ッ」
「必死で呼んでいる。 お前と、もう一つの同じ波長を持つ魂を」
もうひとつ?
ヒロの頭の中に、ある人物が浮かぶ。
同じ波長。
あの子だ。 あの子しかいない。
双子の妹、潮音──。
「オレ……潮音に会ってくる」
「会ってどうする?」
「分からないけど……ッ」
会いたい。
海香を助けたい。
潮音は、もう一人の海香だから。
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