ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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とうめいセカイ。 完結
日時: 2010/07/14 17:09
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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だんだんココで書くのも、ちょっと慣れてきました。




◇お客様◇

     風水様  白柊様  時雨様  空様
     白兎様

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Re: とうめいセカイ。 ( No.68 )
日時: 2010/07/13 16:38
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

セイの真相はもう少しです。
あー終わっちゃうなぁ……。
…えへへ照
>白兎さん


セイは一人称「ぼく」だし少年風なんで男の子みたいデス(*^_^*)
そこが自分も気に行ってます。
>空さん


涼香の事は、これからちょくちょく出てきます(^.^)
人それぞれなんで、賛否両論ですね
>時雨さん

Re: とうめいセカイ。 ( No.69 )
日時: 2010/07/13 17:08
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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泣きやんだセイを椅子に座らせ、熱い紅茶を出す。
一切それに手をつけず、セイは虚ろな目でテーブルを見ていた。


「セイ、何か食べてよ。 痩せてるじゃない」
「いい。 いらない。 平気」


何も口にせず、セイはじっとしている。
サクは、自分の部屋に少女が二人いる事が奇妙でならず、ボーとしていた。


「なぁ……、お前昨日なんであんな事してた」
「え?」
「猫……殺してたろ」


焦点が鈍り、困惑が浮かぶ。
セイは一瞬だけサクを見て、視線を落とした。


「なんであんな事したんだ」
「……私が、猫と遊んじゃったから」
「は?」


蓮華も怪訝な表情をしている。


「猫と遊んだらダメなんだよ。 王様は絶対に許さない。 許してくれない。 だから絶対に動かない。 もし動いたら、王様は私を壊しちゃう」


言いながら震え、ギュッとスカートの裾を掴む。


「ここに居たら……ッ、壊される!」


パニックになったのか、椅子から立ち上がってフラつく足で玄関へ。
蓮華が慌てて止める。


「そんな奴のいる所に帰るの!? ダメだよっ、セイがセイじゃなくなるよっ」
「それおもっきし虐待じゃねぇか。 行くな」


手を振りほどく。
セイは涙を流して、叫んだ。


「あの人は私が居ないと歌えない! 私が壊れるとあの人は歌えるの!」


助けようとする手を払いのけ、セイは裸足のまま外へ飛び出す。


「さ、サクさん……っ、このままじゃ、セイが」
「分かってる」


さすがにもう放っておく事は出来ない。
サクは蓮華と外に出て、白い屋敷を睨みつける。


「おい、その神影って奴は今いるのか?」
「分からない……もしいたら、大変よ。 セイは家から出ちゃいけないって言われてるの……」


顔を真っ青にさせてブルブル震える蓮華。
あの綺麗な涼香が娘に虐待を加えるとは考えにくいが、人間は誰にでも裏がある。


セイを助けるため、二人は白い屋敷にむかった。

Re: とうめいセカイ。 ( No.70 )
日時: 2010/07/14 15:21
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: BwWmaw9W)

サクと蓮華かっこいい!
頑張れ!

「あの人は私が居ないと歌えない! 私が壊れるとあの人は歌えるの!」
この文、どういう意味でしょう?

Re: とうめいセカイ。 ( No.71 )
日時: 2010/07/14 16:11
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

真相はもう分かると思います!
できれば今日でこれ、終わりたいデス(^.^)

Re: とうめいセカイ。 ( No.72 )
日時: 2010/07/14 16:35
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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「これ、不法侵入じゃないですか?」
「オレも昨日思ったけど、しゃーないだろ」


同じように屋敷内に潜入し、庭の方へ回る。
ハッとして、サクが蓮華の目を塞いだ。


「ひっ」 「見るな。 見ていいモンじゃない」


セイが殺したとされる、大量の猫の死骸。
鼻が折れそうなほどの悪臭が漂い、庭の隅に黒い山となっている。


「く、臭い……ッ」
「絶対見るな。 目も開けるな」


親友が殺戮を行っていたと知ると、どう思うんだろう。
それにこの死骸の山。 蓮華が見たら絶対嘔吐どころでは済まない。


昨日の窓は運良く開いていて、蓮華と中に入る。 カーテンを閉めて外の景色を遮り、やっと手を離した。


「なんだったの?」 「聞かない方がいいだろーが。 さっさとセイを探すぞ」 「……ええ」


ふと、ある事に気づいた蓮華だが、触れずに同意しておいた。
昨日、正確に言えば、今日の朝方2時にセイを見つけたリビングを通り、エレベーターを見つける。


「すっごい……家にこんなものまであるのね」


それに乗り、階数を見れば4階まである。


「セイは一人っ子か?」
「そのはずよ。 やっぱり有名オペラ歌手だから、景気もいいんでしょうよ」


仕方なく、面倒くさいが一階ずつ捜索する事にした。
焦りからか、イライラする。


最後の4階につき、エレベーターの扉が開いた瞬間、


「………………キレイ」


歌。
歌が聴こえた。
あまりのその美しさに、サクも目を瞠る。


気高く、気品が溢れ、澄んだ川のように響き、ソプラノの声が旋律を生み出していく。


その声に吸い込まれるようにして二人が進むと、真っ白なドーム型の部屋があった。
アクセントとして目立つ、黒く艶のあるグランドピアノが中心にあり、その横で、男が歌っている。


「神影涼香……ッ」
「あいつが……」


ポスターで見た時も思ったが、やはり綺麗だった。
男性の割にはやたらと長い艶やかな髪も、その服装も顔立ちも。


その涼香の傍らで、ボーと猫を抱いて座っているセイの姿が目に映る。
人形のように、まったく動かない。
あの位置からだと、二人が見えているはずなのに。


なんの反応も見せないセイを見て、蓮華が大声を出す。


「もうやめてっ! そんな歌、聴きたくもないっ!」


美しい音色は止まり、涼香がゆっくりと振り返る。
視界に二人をとらえると、大きく手を拡げて、


微笑んだ。


「おお! せっかくの客人だというのに、私はなんて無礼な事を。 インターホンを押してくれれば、歌なんて歌わず、お迎えしたのに」


表情豊かにそう言い、二人に握手を求めた。


「もしかして、セイの友達かな? 私のファンだったり。 二人は兄妹かい?」


想像と全然違う、子供から好かれそうな涼香の印象に、蓮華も戸惑う。
サクも同じだったが、自分は見てきている。
セイの異常な様子を。


「神影さん、単刀直入に言ってもいースカ?」


一応敬語だよなと思い、サクが慣れない言葉遣いで涼香に話しかける。


「なんだい?」
「アンタ、自分の娘メチャクチャにしてねーか?」


その言葉に。
セイがゆっくりと反応を示した。
顔を上げ、何かを訴えるように口を開く。 声は出なかった。


「私が? 自慢の娘を? ははははっ、バカを言っちゃいけないなー、少年君。 私はセイを愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、こーんなに愛してるのにっ」


涼香はクルクルとドーム内を回り、鼻歌を歌う。
感情豊かなのは、歌手だからかも知れないが、どこか違和感を感じた。


「まあ、ただし──」


立ち止まり、


「芸術品として、だけどね♪」






            ⅴ




あの人は、美しいものが無いと歌えないと言う。

だから、私を傍に置いて、何時間も何時間も歌い続ける。


足がしびれて、お腹が鳴っても、動くなと言われる。

だって、私は芸術品なのだから。

時に少年ものの服を着せられ、「ボク」と言うように言われ。

じっとじっと、毛並みの柔らかな猫を抱く。

彼は猫が大好きだから。

そうして、私を傍に置いて、歌い続ける。

昔は子守唄のその歌声も、今では恐ろしい呪詛になってしまったけど。


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