ダーク・ファンタジー小説
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- ミステリ作家のリアルトリック【オリキャラ求ム】
- 日時: 2013/12/01 11:19
- 名前: はる (ID: JK5a7QPr)
- 参照: http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=big&illust_id=39522763
はるです。シリアスダークに書くのは二度目ですね…
そんなこんなで今回はミステリー。更新不定期です。
〜CAST〜
【久楽々 洋介】 〈kurara yousuke〉
Age 27
occpation 小説家
height 182㎝
weight 65kg
taste 読書、料理
【来栖 李亞霧】〈kurusu riamu〉
Age 16
occpation 高校生
height 158㎝
weight 42㎏
taste 運動
オリキャラ募集中!応募はこちらから→>>8
応募状況
李亞霧の友人・クラスメート 10人募集!(現在)
洋介の友人・ライバル 3人募集!(現在)
警察関係者 15人募集!(現在)
- Re: ミステリ作家のリアルトリック ( No.1 )
- 日時: 2013/08/23 19:58
- 名前: はる (ID: m3gfL0Am)
「第一幕 ハイスクール・ミステリー」
李亞霧は握りしめた拳をさらに強く握った。
目の前に、あの男がいる。
大切な友人を奪った—あの男。
許さない…絶対に許さない!
李亞霧の手から血がこぼれた。握りすぎて、手のひらの皮膚に爪が刺さってしまったのだ。それでも李亞霧は握りしめた手を開かない。いや、開けない。
——彼女の握るナイフは、彼女自身の血液でうっすらと汚れていた——
「…今日のゲストは、二十代の若さで直木賞を受賞した、くら…久楽々洋介さんです!拍手をどうぞ—っ!」
洋介は、アナウンサーの合図とともに舞台中央へと歩み寄った。
今日の観客は、いつもの客層と違い若い女性が圧倒的に多い。なぜか?
洋介は自問し、そしてすぐに自答する。
—今日のゲストが俺だからか。
…断っておくが、彼は決して自惚れではない。ただ、事実を述べたまでである。
洋介…久楽々洋介の外見は、パッと見芸能人か何かのように整っていた。
背中の中ほどまで伸びた薄い茶髪、若干青みがかった硝子の瞳。ひょろりと伸びた身長と全く比例しない痩せた身体を新調したスーツに包んでいる。
「はじめまして、久楽々です。」
洋介は、にっこりとよそいき用の笑顔を浮かべた。ギャラリーが黄色い歓声を上げるのを聞いて、満足そうにほほ笑む。
——彼の優しげな微笑みは、数時間後にすべて消え去るのであった——
- Re: ミステリ作家のリアルトリック ( No.2 )
- 日時: 2013/08/24 10:15
- 名前: はる (ID: m3gfL0Am)
「ありがとうございました、久楽々洋介先生でしたー!」
新人男性アナウンサーが笑顔で番組の終了を告げる。名残惜しそうな、けれど大きな拍手で洋介はセット裏へと戻っていった。
「久楽々先生、今日はありがとうございました!」
「いえいえ、新作の宣伝もできたんだから、こちらこそお礼を言わせてもらいたいです。」
プロデューサーにはあくまでも謙虚に頭を下げる。その間も薄っぺらい笑みは顔からはがれない。簡単な挨拶や、次のオファーや社交辞令のやり取りの後、ようやくプロデューサーに解放された洋介は、テレビ局を後にした。
入口の自動ドアを抜けると、洋介の顔に張り付いた微笑みは消える。外はもう暗いので、洋介はタクシーで帰ろうと右手をあげかけ…また下ろした。そのまま彼は近くにあったはずのコインパーキングへ向かった。喉が渇いたのでジュースを買おうと思ったのだ。パーキング近くにはいつも自販機がある。
百円を入れ、炭酸飲料水のボタンをプッシュする。こんな暑い熱帯夜には冷たいジュースでも飲まなければ。ちなみに彼は下戸である。
意外と固かったキャップを苦労して開け、口元で傾ける。とたんに彼の口内には微炭酸の刺激と甘みの強い果汁の味が広がった。予想外においしい新製品のジュースに、思わず目を細める。一瞬、無防備な表情を作り、
その瞬間、腹部に強い衝撃を覚えた。
「ッ!?」
口に含んでいたジュースを噴き出す。その瞬間、肺にジュースが入り思わずむせかえった。手のひらから落ちたペットボトルに名残惜しそうな視線を向けると同時に、わき腹にもう一発。
流石に姿勢を保てなくなり、地面に尻もちをついてしまう。ジュースがこぼれていたせいでズボンが濡れた。
顔をあげると、その上に何かがかぶさってくる。それが人間の体で、そしてそれがまだ若い女性…いや少女のものだと気がつくのにはしばらくの時間を要した。
彼女は彼の胴体の上に馬乗りになり、両手を大きく掲げていた。その手に持つ物体は、月の光にきらりと反射する。
ナイフだとわかるのに、そんなに時間はいらなかった。
- Re: ミステリ作家のリアルトリック ( No.3 )
- 日時: 2013/08/24 13:10
- 名前: はる (ID: m3gfL0Am)
顔を右にそらして、突き刺さりそうなナイフをさっと避ける。アスファルトに金属が触れる「ごつっ」という鈍い音がした。
「やめろ!」
情けないことに、洋介の非力な体では、この少女一人を押さえつけることもできない。右手首を握れたと思ったら、あっという間に振りほどかれた。左手を振りまわし、彼女の視界を遮ろうと奮闘するが、無駄な努力甚だしかった。彼女は片手で洋介の左手を押さえつけ、もう片方の手でナイフを振り上げる。
洋介は、あきらめと恐怖の混じった思いで目をつむった。
ぽたり。
洋介の頬が、何かで濡れる。
雨かと思ったが、そうではなかった。
微かにぬくもりを帯びたソレは、上に乗っかっている少女の両目からこぼれた涙であった。
「…さ、ゆ…」
白湯?
洋介は少女が何を言いたいのか解らなかったが、とりあえずはチャンスだと上半身を起こした。
「キャッ!」
と小さい悲鳴をあげて、彼女はとびのいた。
あまりにもあっさり命が助かったので拍子抜けした洋介は、警察に電話しようと携帯電話を取り出し…無理だった。さっきの衝撃で壊れていた。それならばと公衆電話を捜して…無かった。自販機はあるくせに公衆電話はなかった。
ではどうするか?
「…人殺し!」
「…はあ」
少女がいきなり放ったその言葉に、洋介は間抜けな声を出した。
「沙有を殺したんでしょ!」
「…はあ。…って違う違う!なんでそうなってるんだ!?」
認めそうになって、洋介は思わず手と顔をぶんぶん横に振った。
「だって、沙有の遺書に書いてあったもの!久楽々洋介に殺されたって!…もしかして、別の久楽々さん?それはペンネームだったり?」
彼女は何を言っているのか。洋介はしばらく考えて、目の前の少女に答えた。
「久楽々は本名だし、俺も自分以外に久楽々は知らない。でも、俺は「さゆ」なんて人は知らない。」
その言葉に、少女は不審げな顔で首をかしげる。
「じゃあ、これは何よ?」
彼女の定期入れ。さっと目を通すと、名前の欄に「来栖 李亞霧」と書いてある。…り、あ、む?で良いのだろうか。今はやりのキラキラネームに洋介はため息をつく。
そして、その横。
其の写真。
全く見覚えのない少女と、仲良さげに肩を組んでピ—スする自分の写真があった。
- Re: ミステリ作家のリアルトリック ( No.4 )
- 日時: 2013/08/24 15:56
- 名前: はる (ID: m3gfL0Am)
待て待て、ちょっと待て。
洋介は、ぐちゃぐちゃになった思考回路を必死でまとめようとする。
—遊園地でこんな写真撮ったことあったか?もしかしたらこの沙有という子は自分のファンで、ストーカー気質で、こんな写真を合成…
「…合成か何かと考えたでしょ。」
ギクリ。洋介は肩をびくんとふるわせてから、「何のことかな?」と爽やかな笑顔。よく考えると、自分を襲ってきた女の子とこうやって話していること自体がおかしいのだが、パニック状態の脳ではロクに何も考えられない。
「知り合いのカメラ屋さんが言ってたんだけど、これは絶対合成じゃないって。合成でここまできれいには撮れないって。」
ということは、実際にこの少女と会ったことがあると言うことになってしまう。…困った。洋介はこの少女と何も関係なんて…そうか。
洋介はある一つの可能性に思い当たり、…それは現実の記憶となって蘇ってきた。
「簡単な事だったな、よく考えると。…李亞霧ちゃん、だったかな?この写真は俺…僕と彼女が関係あったことにはならないよ。」
「やめてよ、「ちゃん」なんてつけるの。ついでに、私の前で気取っても良いことないわよ。俺でも自分でも小生でもなんでもいいからさっさと話して。」
ませた口調に作り笑いがヒクッと歪む。気にしたら負けだと自分に言い聞かせる。十も下の娘っ子に言い負かされてどうするんだ。
とにかく、乾いたくちびるを軽くなめ、湿らしてから洋介は続ける。
「じゃあそうさせてもらう。李亞霧…くん。俺はある考えに至った。」
「くん?…「ちゃん」よかマシか。続けて?」
多少不満げだったが、この呼び方に納得したようだ。
そう、それは数日前——…
- Re: ミステリ作家のリアルトリック ( No.5 )
- 日時: 2013/08/25 10:15
- 名前: はる (ID: m3gfL0Am)
〜回想〜
その日、洋介はとてつもなく暇だった。
〆切ギリギリで書き上げた原稿は、今はすでに編集者の手元にある。
次の仕事はまだ未定。
しばらく自炊生活をしていたせいか、懐にはたっぷりと余裕があった。
…小説家というのは、仕事が無い時はとことんないがある時はとことんあるものだ。次の仕事までに、尽き果てたネタを捜しに行かなければならない。特に、洋介のようなミステリ作家は。
と、言うわけで、洋介は近所の遊園地にやってきた。
中央に位置する大きな観覧車。その後ろに見えるのは日本で二十四番目に怖いジェットコースター。入口付近にはお化け屋敷もある。
少々不謹慎ながらも、「お化け屋敷の中で本物の死体とか見つからないかな」と考え、そこから膨らむストーリーを手帳にまとめていく。
平日真昼間の遊園地で一人何かを書いている彼は、幼い子供を連れた母親達の冷たい視線の標的となった。蛇足だが。
「あの、すいません。…久楽々先生ですか?」
そんな彼に声をかけるモノ好きな少女。
鎖骨あたりまで伸びた茶色の髪を黒いゴムでポニーテールにしている。
「え?あ、はい。そうですよ」
人の良さそうな笑みを浮かべて頷く。するとその少女は、ぱぁっと顔を輝かして洋介の隣に座った。別に許可した覚えはない。
「あれ?平日だけど、学校は?」
洋介にとってはどうでもいいが、一応はこれを聞いておかなければ大人としての信用がすたるだろう。別にサボっていたからといってどうというわけでもないが。
「今日は創立記念日でお休みなんです。…わあ。私、久楽々先生の大ファンなんです!」
「そうか。ありがとう。自分の小説を面白いと言ってもらうのは励みになるよ。」
いくら洋介でも褒められればうれしい。
「あの、サインとか写真撮ってもらったりとか…良いですか!?」
アイドルか何かならマネージャーの許可がいるのだろうが、洋介に断る理由は見当たらない。
「ああ、いいよ。」
彼女の差し出す白いハンカチに自分の名前を書いてから、取り出されたデジタルカメラで写真を撮る。
そう、その時のポーズ。
「あの…迷惑だとは思うんですけど、肩を組んでもらっていいですか?」
「ああ。…ん、まあ。良いよ!」
気易くOKしてしまったその言葉。
それが…彼女、李亞霧の持つ写真だ。
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