ダーク・ファンタジー小説

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-deviant- 異常者たちの物語
日時: 2013/10/13 10:43
名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: /TProENM)

——これは、『ディヴィアント』……異常者、と呼ばれた人間の青年と、その同族たちの物語である。

- - - - -

初めまして、まずはクリックありがとうございます。

私はエンヴィと言います、この作品が初投稿です。
何かと至らない箇所もあるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。

こちらは題名の通り、『異常者』と呼ばれる人物たちのお話で、基本的に主人公視点で書いて行きます。
時折別の人物のパートも入るので、それぞれの心情を読んでいただけたらなと思います。

基本的に更新は毎日1話ほどずつ、休日などで時間があるときは2、3話ほど更新します。

13/9/8  スレッド作成
13/10/9 返信100更新

- - - - -

注意事項 -attention-

当然ですが荒らしはやめてください。

露骨な宣伝はできるだけご遠慮願います。

基本タメ語はあまり受け付けません。

上記の注意点を守ってくださる方は是非、コメントをお待ちしております。
感想に添える形で紹介していただければ、相互の作品も読ませていただきます。

- - - - -

長らくお待たせしました、それでは本編をどうぞ。
楽しんでいただければ幸いに思います^^

- - - - -

目次 -Contents-

prologue >>1

Caputer1.  1 >>2 2 >>3 3 >>4 4 >>5 5 >>6

Chapter2.  1 >>8 2 >>11 3 >>16 4 >>17-18 5 >>19

Chapter3.  1 >>21 2 >>24 3 >>26 4 >>28 5 >>29

Chapter4.  1 >>33 2 >>37 3 >>41-42 4 >>46 5 >>47

Chapter5.  1 >>48 2 >>49 3 >>50 4 >>51 5 >>52

 Extra edition1.  1 >>55 2 >>56 3 >>57 4 >>58 5 >>59

Chapter6.  1 >>61 2 >>66 3 >>70 4 >>71 5 >>72

Chapter7.  1 >>76-77 2 >>78 3 >>81 4 >>82 5 >>83

Chapter8.  1 >>85 2 >>86 3 >>87 4 >>94

- - - - -

お客様 -visitor-

岸 柚美 様

はる 様

ブラッドベリー 様

ヒント 様

静花 様

あんず 様

- - - - -

イラスト -gallery-

作画・友人 >>75

- - - - -

登場人物 -characters-

NO.1 >>7
NO.2 >>20
NO.3 >>30
NO.4 >>53
NO.5 >>84
NO.6 >>101

※読まなくてもとくに本編に差支えありません。作者の混乱防止です。

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Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.5 )
日時: 2013/09/17 03:35
名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: 9ofUG3IM)

Chapter 1.

4

- - - - -

まず、相手の……傭兵?は、全員で6人いるようだった。
よくこれだけの人数があの馬車に収まったな、と思ったが、実際それ相応の大きさのある、結構デカイ馬車だったので無理な話でもないらしい。
まぁそれはともかく。

「アンだよ、ガキ3人ともやし1人だけかよ」
「ちゃっちゃと片付けてやるか」

気だるそうに傭兵どもは言った。
……つうか、お前らが無駄に身体がでかすぎるだけで一般人を『もやし』呼ばわりするなよな。
同じことを思ったらしいシーニーが、さっそく

「実力も知らないのにアーテルにそんなこと言っていいのー?」

と、純粋に疑問気な様子で尋ねた。
はい、もちろん傭兵の堪忍袋ぶっちぎれました。

「まずはテメェからだなガキィ!!!」

メイス、というかトロールが持つような醜い棍棒を振り上げながら、3人ほどがシーニーに攻撃を試みた。
ガキ1人相手に3人とか、もはやどちらがガキなのやら。
とりあえず俺は、シーニーからちょっと離れておいた。
傭兵の棍棒がブンっ、と振られて、




ぐちゃぁっ




シーニーの頭は一瞬で粉砕した。
ベシャ、だのグシャ、だのといった音をたてて脳汁が飛び出し、真っ赤な噴水がイルミネーションのように吹き上がる。
ゴロリ、とシーニーの青い目玉の片方が半壊しつつも俺の足元に転がってきた。うわ、目ぇ合った。気色悪い。

「ハッ、生意気な口たたくからこうなるんだよォ、クソガキが!」

下ひた嗤いを浮かべた傭兵は、今度は俺の方へ向き直った。

「ギャハハ!次はお前だァ!!!」

はぁ、と俺はため息をついた。
俺は傭兵に、『最後の警告』を——面倒だがしておいた。

「いいのかよ?後ろ」
「あぁ?何が……」

傭兵のうち1人が言いながら振り返って、言葉を失った。
気づいた2人も振り向き、「な、ハァ!?なんで……!!」とかなんとか、ありきたりに驚いた。

そこには、

「んも〜、痛いなぁホント」

そう言いつつ、頭をポリポリかくシーニーがいた。
その足元には、先ほどぶちまけた脳漿や血液、目玉の片方も転がっていた。けして、さっきのが幻だったわけではないことを表している。

戸惑う傭兵たちに、シーニーは一歩踏み出した。
ちょうどそこにあった、『元・シーニーの目玉』だったものが踏んづけられてクチャ、と潰れた。
シーニーはニッコリ、無邪気に傭兵たちに笑いかけた。

「オジサンたち、力はあるんだね〜♪結構痛かったよ、今の」

そして、言う。

「じゃぁ次、『僕たちの番』!」

それを合図に、俺は動いた。
背中がすっかりがら空きになった傭兵の1人を狙い、左手で背骨を折った。
ポキ、と小枝でも折れるような手ごたえが左手に残る。

「ぐがっ!?」

まずはその1人がぶっ倒れた。隣にいた傭兵が「うわぁっ!?」と飛びのく。おいおい、さっきの強気は宇宙の彼方にでも旅行に行ったか。

「お、おお前もディヴィアント、なのか!?あのガキと同じで!?」

震えた声で傭兵は言った。
俺は、左手をさすりながら言った。

「まぁそうだが、今のは俺の能力じゃない。ただの格闘技だ」

つうか、地味に左手痛い。うん、ヒトの背骨は迂闊に折っちゃいかんな。

シーニーは心底楽しそうに笑っていた。

「あはは、遊ぶのってホント楽しいよね〜オジサン!ほら、次オジサンたちの番だよっ。早く続けようよ〜、『戦争ごっこ』!」

言いながらシーニーは、手にちょっと付着した、先ほどの名残である自分の血を、ドロ遊びをしている子供の用に自然な動作で服で拭きふきした。
そう、なんであれ、シーニーにとってこれら一連のことは遊びでしかない。彼は心の底から、狂気でも気違いでもなく純粋にこの『遊び』を楽しんでいるのである。

俺?俺は……服が汚れるからあんまり楽しくないんだがな。

と、そんな俺たちに、すっかり忘れていたがあの赤髪双子が声をかけてきた。

「そっち終わったかい?ボクたちの方、もう終わったんだけれども」
「ンだよもぉ〜、ぜんっぜん手ごたえねえじゃん!つまんねーの……」

なぜか身長の2倍はあろう、巨大マシンガンを肩に担いだルージュは唇を尖らせながら愚痴ていた。
一方ロッソは、いつも持ち歩いている水筒から冷水を両手にぶっかけていた。ロッソの両手は一見普通のように見えて……冷水をかけられた箇所から、ジュゥゥ……と煙が上がっている。まるで熱した鉄だ。
俺は呆れながら言った。

「3人をヤるだけで、どんだけ能力使ってるんだよ……。そういうの『無駄遣い』って言うんだぞ?」
「いいじゃん、減るモンじゃないし」

シシッ、とルージュはイタズラが成功したように笑った。
とたん、彼女が持っていたマシンガンは、『パリンッ』とガラスが割れるような音をたてて消失した。

ちなみに、さっきからロッソとルージュの後ろには、
文字通り蜂の巣にされた傭兵3人が、赤い湖の中央に奇妙なオブジェのように折り重ねられていた。
それぞれが、手足を曲げたりと変なポーズをとっている。まぁ、これはあの2人が『ヤった』後に勝手に弄ったのだろう。相変わらず悪趣味なトリック(イタズラ)だ。

と、いうわけで。

俺たちの前には、すっかり戦意消失な生き残り傭兵2人と、同じ様子な貴族と従者が残った。

さて、どうするか……。
ガキ3人は全員、まだ全然遊び足りなさそうだ。というかシーニーはともかく、あの2人はどんだけ暇人だったんだよ……?

「ひ、ヒィィ……っ」

傭兵の1人が、間抜けに怯えた風で、逃げ出そうとした。

「あー、待ってよオジサン!もうちょっと遊ぼうよ〜っ」
「うあああぁぁ、来るな来るな来るな!!!」

服は血で汚れきっているのに、全く外傷のないピンピンしたシーニーを、傭兵は本気で化け物を見る目つきで恐れた。
それを皮切りに、他の3人も逃げ出そうとした。
そして当然のように、それを追いかけようとシーニーも双子も動き出して、



「ハイハイ、そこまでにしやがれっつうの」



ガシっ、と双子の襟首を後ろから掴む太い腕。

「うわっきゃ」
「ごふぁっ」

ロッソとルージュは喉が詰まって、それぞれ変な悲鳴をあげた(もちろん最初の「うわっきゃ」がロッソである。……ルージュ、せめて悲鳴くらいは可愛らしくできないのか)。

俺は、その双子を掴んだ人物を見上げた。

「グラウ?」
「よぉアーテル。ガキ3人のお守りお疲れサン、って感じだな。ガッハッハ!」

相変わらず豪快に笑うグラウに、さらに後ろからフライパンが『投げられて』頭にヒットした。

「いっ!?」
「笑ってる場合じゃないでしょうが!早く『依頼人』抑えてきなさい!」

フライパンを投げてきたのは……グラウと同じ、銀色の髪を後ろで縛った強気そうなオバ……女性だった。そう、彼女こそがグラウの配偶者・シンザである。
シンザはフライパンの痛みにひたすら耐えるグラウと、その彼に必然的に振り回される形になった双子をサクっと無視して俺の方へ来た。

「アーテル、ちょっと悪いんだけどとりあえずあの『あほんだら貴族』どもを連れ戻してくれないかい?」
「あいつらを?……まぁ、事情は知らないがいいけど」
「頼むよ。あたしとこのバカ夫は『掃除』だけしておくから」

そういって、シンザはハァ、とため息をついて辺り一帯を——傭兵の死体・計4体と、シーニーの『残骸』を見回した。
……相変わらず気苦労の多い方だ。

とりあえず俺は、逃げ出した貴族一行と、それを追いかけて行ったシーニーをさっさと連れ戻すことにした。

Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.6 )
日時: 2013/09/17 03:35
名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: 9ofUG3IM)

Chapter 1.

5

- - - - -

幸い、全員そんなに遠くへは逃げていなかったので、俺はさっさと逃亡者と追放者を回収してグラウの家に向かった。
一応、すれ違いにはならないよう先ほどの戦闘跡も通ってみたが、死体や血の跡はきれいさっぱり掃除されていた。

というわけで、現在はグラウの家で再び先ほどのメンバーと集合している状態である。

まず、帰ってきた俺を見てまっさきに反応したのはルージュだった。

「あーお帰りアーテ……ぶはっ!!ちょ、なんだそれめっちゃ笑えるんだけど!?」
「笑うなアホが」

俺は米俵のように肩に担いでいた傭兵2人を、ぺいっと捨てるように地面に降ろした。
続いて、気絶した貴族を背負ってひたすらシーニーへの恐怖に耐えて付いてきた従者に「もう着いたっての、いい加減落ち着け」と言っておいた。……肉体的にも精神的にも瀕死の重傷である。全くこれだからどこもかしこも『もやし』な貴族のボンボンは……。

地面に捨てられて、寝たままの傭兵をルージュはツンツンつついて遊び始めた。それを呆れたようにロッソがたしなめる。

「ルージュ……君、もうちょっと品に欠けない遊びを思いつかないの?」
「なんでー?ロッソこそしょっちゅう死体積み上げてオブジェ作ったり悪趣味じゃんかよ」
「アレは立派な芸術(アート)だからね」

どこがだよ。

と、そんな俺たちにシンザが「ハイハイ、そこまでにしなさい」と注目を自分へ向けさせた。
シーニーがシンザに尋ねる。

「そういえば、どうしてシンザおばさんは」
「『シンザさん』とお呼び」
「んー、えっとシンザさんは、どうしてこのオジサンたちを連れてくるように言ったのー?」

こんなガキ相手にまで『おばさん呼び禁止令』を出さなくとも……。
まぁそれは無視して、俺は同じことを疑問に思っていたので無言でいた。
シンザが答える。

「そいつらはねぇ、クエストを持ってきた依頼人なんだよ……」

やれやれ、といった風にシンザは言った。補足するようにグラウが、

「いやー、お前たちにちょうどいい案件だから、お前たちに任せようと思ったんだがなぁ。『今は出かけている』っつった途端、探して勝手に飛び出しちまった、ガハハ!」
「だ・か・ら、笑いごとじゃないっつってんだろうがバカ夫!」

シンザは遠慮容赦なくフライパンでグラウの頭をフルスイング。ごふっ、とグラウは再び痛みに悶えて頭を押さえた。……全く、このアホおやじもディヴィアントでなければ即死だぞ(死因:フライパンとかシャレにもならん)。

だがまぁ、これでやっとこの貴族が何をしに俺たちを訪ねてきたのかがわかった。

と、そこにロッソが興味津々に会話に割り込んできた。

「ねぇ、ちなみにそのクエストの受諾者にはボクたちも含まれているのかな?」
「うぇ、おいロッソ〜、こんなバカの最弱版みたいなヤツのクエスト受けるのかよー?」

ルージュは若干めんどくさそうにそう言ったが、ロッソも反論した。

「考えてみなよルージュ。あえてアーテルたちに依頼されるクエストだよ?いい暇つぶしになると思わない?」

歳の近い女子からは割と人気があるらしい、甘いマスクをニヤリと笑って歪める。思いっきり悪人面だぞ、オイ。
しかし、それにルージュもようやく思い至って「なーるほど……♪」と鏡のようにニヤリと笑った。……お前らな。

とりあえず、この中で最も頼りになるシンザが、唯一意識のある依頼者……の、従者にテキパキと話しかけていた。

「んで、アンタはこいつらに何を依頼したいわけ?従者なら知ってるでしょ?」
「は、はい……えっと、そのぉ」
「シャキっとしなさい!男でしょうが!!」
「はいぃっ!スイマセン!!!」

従者が話し出すまで、双子は漫才のような雑談を続け、シーニーは適当な椅子に座って足をブラブラさせ、俺はとりあえずぼーっとつっ立っていた。

- - - - -

従者のおどおどした話し方で、無駄に時間を喰ってしまった。
要約すると、こうだ。



『殺してほしい人——正確には団体がいる』



……もう慣れたが、やはり疑問に思う。
なぜ俺とシーニーへの依頼は、こういう『始末』系統のクエストばかり届けられるのだろう?いや、まぁ俺たちの能力の内容を思えば、これ以上向いているクエストもないとわかるが。
そう、ロッソとルージュが期待していたのはこういうことだ。全く暇人というか、悪趣味な双子である。

貴族……レドリーア?とか言ったか。そいつの家には、祖父の代から因縁のある、いわゆるライバル貴族がいるのだそうな。
それで、今その貴族のせがれ同志で、王家の女をどちらが嫁にとるのか争っているらしい。
一見色恋沙汰に見えるが、そんな要素はかけらもない。要するに、玉の輿である。王女はすでに許嫁が決まってしまっているので、まだ相手の決まっていない王家の娘たちがこぞって狙われているのだ。
で、そのライバル貴族のほうが現在有利な立場らしく、このままではこの依頼者貴族は負けてしまう、という。

そこで、そのライバル貴族を消してほしいという結論だ。
幸い(?)、ターゲットとなるそいつらは少人数家族で、せがれを含めて両親しかいない。兄弟はゼロ。つまり重点的に消すのは3人ということだ。
それに、さらに側近や有能で危険と思われる執事などもろもろをプラスして……最低人数でも、ざっと7人と言ったところか。

「お、お願いできますでしょうか……?」

すっかり縮こまった従者は、おずおずといった風体で俺に尋ねた。

「報酬は?」
「は、はいっ、こちらになりますっ」

馬車から慌てて運んできたのは、手のひらに乗るサイズの小さな麻袋。
渡されたそれの中身を確認する。10枚ほど入った金貨がジャラリ、と音をたてた。
ちなみに、この世界でいう金貨とは、3枚ほどで4人家族を半年あまり余裕で養える金の単位だ。

「そちらは前金となります……。依頼を達成なさったら、さらに20枚ほどを差し上げようかとおも、思っていまして」

どもりながら、なぜか必死に従者は説明した。
俺はシーニーをチラ、と見る。
相変わらず暇そうに足をブラブラさせていた。とくに反論はない。
俺は従者に向き直り、言った。




「引き受けた」




——さて、暇つぶしが来たか。

Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.7 )
日時: 2013/09/17 03:36
名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: 9ofUG3IM)

characters NO.1

- - - - -

1.アーテル

この物語の主人公。黒い長髪を束ねた容姿の青年。年齢不詳。
能力:移し身
タッグ:シーニー

「あー、ったく……服が汚れるっつってんだろうが」

2.シーニー

青い大きな瞳を持つ、10歳に満たぬ少年。
能力:蘇生
タッグ:アーテル

「いいじゃーん、やろうよ戦争ごっこ!」

3.ロッソ

炎のような赤髪、十代半ばの少年。少女たちに結構人気のある顔立ち。ルージュの双子の兄。
能力:製造
タッグ:ルージュ

「心外だね、これは立派なアートだよ」

4.ルージュ

炎のような赤髪、十代半ばの少女。ある意味少女たちに人気のある性格。ロッソの双子の妹。
能力:怪力
タッグ:ロッソ

「どうでもいいっつうの、とりあえず穴開けりゃいいんだな?」

5.グラウ

短い銀髪をツンツンに立てた、鍛冶屋の中年の男。常に片手に酒を樽ごと持ち歩く。シンザの夫。
能力:鉄壁
タッグ:シンザ

「ガハハ!傑作だなぁオイ!酒の肴にもってこいだ!!」

6.シンザ

銀髪を頭の高い位置で結んだ、中年の女性。若いころは美人だったそうな。グラウの妻。
能力:清掃
タッグ:グラウ

「笑いごとじゃないっての……!脳みそ叩き割ってやろうかバカ夫」

- - - - -

Re: -deviant- 異常者たちの物語 ( No.8 )
日時: 2013/09/17 03:36
名前: エンヴィ ◆3M6zglQ7Wk (ID: 9ofUG3IM)

Chapter 2.

1

- - - - -

と、いうわけで。
今回の依頼はいわゆる『暗殺』の類に属する。
なので、行動は夜になった。

効率的には暗殺より虐殺のほうが楽なのだが(人目を気にしてコソコソする必要がないので)、まぁ依頼人の事情が事情なので仕方ないか。

「あー早く夜にならないかなー♪」

まだ沈んでいない太陽を見上げながらシーニーが言った。
依頼を受けてからずっとこの調子だ。まるで夕飯のメニューがカレーライスに決まった時の子供のように無邪気だ。
と、そこでシーニーは俺を振り返った。

「ね、そういえば今回はロッソお兄ちゃんとルージュお姉ちゃんも一緒なの?」
「ん?ああ、そういえば成り行き上そうなってたな」
「そっか〜♪人数は多いほうが楽しいもんね!」

街中を歩きながらのこの会話。
道行く人々は、俺とシーニーを親子だか歳の離れた兄弟だかと思っているのか、微笑ましげに眺めて通り過ぎていく。
ふと、こういうときに思う。もしシーニーの考えている内容をこの人々が知ったら、どのような反応をするのだろう?
ひたすらに人間と『虐殺のやり合い』という『遊び』を楽しむ少年。
普通のヒトなら、口をそろえてこういうだろう。



——「狂っている」と。



だが、俺はそうは思えない。
シーニーは至って正気だし、別に普通の少年が……例えば読書を楽しむのと同じように、シーニーも趣味としてそれを楽しんでいるだけなのだ。俺だって趣味の一つくらいはある。今は言わないが。
とにかく、だからこそシーニーは狂っているとは思えない。
どこぞの変態のように『背徳感にゾクゾクする』だの『殺すたびに快感を感じる』だの、そんな気色悪いことはいっさい思わず、ただ『楽しい』だけ。だから俺はそう思うわけだが——


そう言った場合、大体の奴は『お前も狂っている』と言う。
ま、当たり前か。

結局は、俺も周りとはズレているのかもしれない。いろいろと。

「おーい、シーニー!」
「あ、ルージュお姉ちゃんっ」

遠くから呼びかけたルージュは、いきなりシーニーに、ロッソからもらった小型銃の銃口を向けた。

パンッ、パンパンパン!!

「あ。」
「!?っおい、」

ベシャァッ。

4、5発ほど命中した銃弾はシーニーの片腕をもいだ。脇腹からは血が吹き出し、内臓が見え隠れする。
しかし、そんな負傷は次の瞬間には、まるで逆再生したように蘇生を始めた。
もがれた腕の付け根からニュルニュルと新たな腕が生え、寸秒で元の腕が構成される。指先まで正確に。
内臓が見え隠れした脇腹は、ザァァッ、と皮膚が一斉に蘇生してはみ出した内臓を包み込み、後も残らない。外からでは見えないが、およそ体内の負傷した内臓も同時進行で蘇生しているのだろう。

そして、わずか1、2秒にも満たずシーニーは完全体に戻った。

「はっや!やっぱスゲェなー、シーニーは!」

感心したようにルージュが駆けつけてきた。走りながら横にポイッ、とゴミのように放った小型銃は、砕け散って霧散した。
ロッソも同じく後ろから付いてくる。
そんな双子にシーニーは、

「もお、びっくりしたよ〜。痛かったんだけどっ」

ぷくっ、と頬を膨らませて怒るジェスチャーをした。もちろんコイツのことだから、本気で怒っているわけがない。

「悪ぃ悪ぃ、ちょっと試してみたくてさ〜」

ヘラヘラ笑いながら謝るルージュ。



先ほどの俺の語りをちょっと訂正しよう。
俺は確かに世間からすればちょっとズレているかもしれない。
が、こいつらと比べればぜんっぜん常識人である。本当に。まだまともなほうである。本当に(大事なことなので2回言った)。



俺は一応、双子に注意しておいた。

「お前らなぁ、いくらシーニーの能力が『蘇生』だからって調子乗りすぎるといい加減殴るぞ」
「こっわー、アーテルが怒った!ぎゃはは」

ルージュは全く反省しない笑い声で笑った。……ったくこいつは。

「いや〜ゴメンね、アーテル。ボクも面白そうだからのってみたんだよね」
「のるな阿呆が」

ロッソは両手の熱を冷ますように、服に触れないよう空中でプラプラさせていた。

そうだ、いい機会だからこの2人の能力についてちょっと解説。

まず、ロッソは『製造』という能力を持っている。
名前の通り、あらゆる『物』を製造できる能力だ。何もない空間から、ただ両手のみを使って物を創造することができる。ただし生き物は作れない。
コイツはこれを使って、ありとあらゆる『武器』を作り出す。
マシンガンでも小型銃でも、時には剣やらメイスやら。
ちなみに、作り終わった後ロッソが再び念じると、作った物は消えてなくなる。
一見かなり戦闘に有利そうだが、欠点はある。
それは、作る物は一度に1つまでしか作り出せない。2つ目を作り出すと、1つ目は即座に消失してしまうのだそうだ。
そして、物を作った直後は両手が焼けた鉄のようにものすごい高温になる。急いで冷水などで冷やさないと、手以外の箇所——手首や腕などに、火傷が付きかねない。
そして、最大の欠点が……

ロッソは非力である。

いくら巨大なバズーカやマシンガンを作っても、それを操れないのだ。腕力が皆無だから(優男の容姿は裏切らない)。

しかしそれを補うのが、ルージュである。

ルージュの能力は『怪力』。こちらも名前の通り、明らかに人間業ではない怪力を発揮する能力である。
ルージュはロッソの作り出した武器を『振り回す』役なのだ。

要するに、ロッソが武器の提供者(あるいは囮)で、ルージュが戦闘員(あるいは盾)というわけだ。

ちなみにルージュの怪力の限界は、いまだ俺たちにもわからない。
ただ、大の大人の男6人が必死で運んでいた中型船を、たった1人で持ち上げて沖まで軽く運んだ経験がある。
一応少女であるし、結構細身な体つきをしているにも関わらず、その腕力はすさまじい。
力だけの対決なら俺でも負けるだろう。だが頭が悪いので、一応俺はコイツと勝負して負けたことはない(ちょっとした優越感を感じる俺も結局はガキなのか……?)。

閑話休題。

Re: 不死の世界 ( No.9 )
日時: 2013/09/15 16:44
名前: 岸 柚美 (ID: 6afFI3FF)

どうも!岸って言います。
私、こういう小説って大好きです!
続き、楽しみにしてるので、よろしくお願いします!


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