ダーク・ファンタジー小説

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(自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
日時: 2016/11/01 22:50
名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)

(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)

はじめましてミヤビと言います。

異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。

これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!

では下記に簡単な説明を乗せておこう。

また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!

【異世界ぐらしはじめます】設定資料

世界観設定

【属性】

〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低

【能力、職業】

能力

先天性、後天性のオリジナルスキル。

ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。


能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)


職業(有利→不利)

〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→

職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可


能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)

【武器】

武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)

【世界観】

世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。

世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、

この世界で生き残ることは出来るか・・・


(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。

同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。

それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。

だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。

一応地理は現実世界の配備で問題なし

スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。

* * * *

御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)

https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)

https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)

Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.28 )
日時: 2016/10/02 03:52
名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)

「えっと……主様。こういう時、何て言えばよろしいんでしたっけ?」
「ん?あぁ、『 迅速なフラグ回収、お見事ですね 』とでも言ってやれ。」
「わかりました。次から似たような状況に遭遇した時は、そう申します。」
「おおっとォ!宝を守る番人ってワケかい。地中からの登場はアンデッドの専売特許だぜェ……
 真似してんじゃねェよ!!」
「いや、そんなことないだろ……最初、この部屋に入った時は他に穴なんて無かったし……
 どうやら俺達が此処に来た最初のパーティってことみてえだな。」
「そのようですね。とりあえず、生きて帰るためにもあのゴーレムを倒してしまいましょう!!」
「っしゃァ!任せなァ!!オレ様が先行してアイツのボディに風穴開けてやる!!」

そう言ったマウトが駆け出し、肘を突き出して鋭利な骨を出そうとした瞬間
先にゴーレムが太い2本の腕を伸ばしてマウトを掴み、そのまま担ぎあげると……
その場で高々とジャンプした。

「まさか……あのゴーレム、『 バスター 』ができるのか!?」
「HA☆HA☆HA……大惨事だ。」
「言ってる場合かぁぁぁぁぁ!!」

そして……ゴーレムが着地した衝撃により、マウトの全身から鈍く嫌な音が聞こえてきた。

「マウト!大丈夫ですか!?」
「ノープロブレム……関節が外れて骨が何本か逝っちまったが、全然問題ねェ!!」
「自力で治せそうか?」
「関節はな……だが、折れちまった骨は無理だ。けどよォ、人間には12本の骨があるんだぜ?
 何本か折れたトコロで大丈夫、大丈夫!!」
「もっとあるわ!けど、問題無いようなら………」

俺が言葉を続ける前方で、バスターを受けて立ちあがったマウトの体が、縫い目に合わせてバラバラに
崩壊した。

「マウトぉぉぉ!?」
「うっわ、ヤッベ!!縫合が解けちまった!!」
「シルヴィア!!俺がマウトのパーツを回収してくるから援護を頼む!!」
「了解しました!!」

俺は突撃槍でゴーレムの腕を牽制しながら、バラバラになったマウトを
大き目の革袋の中へと回収する。

「ギャハハハ!!すまねェな、大将。さっきのバスターを受けた時にやっちまったみてェだ。」
「それだけ強い衝撃だったってことか………なぁ、マウト。」
「はいな。」
「お前、このバラバラになったパーツ、自由に動かせねえのか?
 『 バラバラ○フェスティバル! 』とか言って……」
「言わんとしてることは解るが、試したことねェからなァ……あと、多分だけどな。
 伏字にしなきゃいけねェところ、伏字になってねェよな?絶対。」

とりあえず、マウトの体を回収してシルヴィアと合流。
振り返って改めてゴーレムと対峙してみると、その体には10本の矢が突き刺さっていた。

「くっ……流石にタフですね……主様、『 ゼーレンヴァンデルング・エクリクシス 』で
 焼き払ってよろしいですか?」
「よし、許可しよう。」
「待て待て待て待て!!オレァ、その技を見た事ねェけどよォ、『 焼き払う 』ってコトは
 炎系の何かだったりすんのか?」
「はい。無差別で攻撃をする炎属性の上級魔法です。何か問題でも?」
「大アリだっつうの!!そんなもんで攻撃してみろ!!
 肝心のお宝まで駄目になったらどうしてくれんだよ!?」
「その時は諦めてください。」
「此処まで来て、こんなバラバラにまでされたってのに、諦められるわけねェだろ!!」
「しかし、他にゴーレムを止める手段が……」
「ゴーレムを止める方法?あれ……何かそれ、本で読んだことあるぞ。」
「本当ですか!?主様。」
「あぁ……確か、ゴーレムの額には『 emeht( 心理 ) 』って書かれた羊皮紙が
 貼り付けられているか……あるいは直接書かれているんだ。
 ……で、こいつ等を止める時は、この『 emeht 』の最初の『 e 』の部分を
 破るなり消すなりすればいい。
 そうすると『 meht( 死 ) 』って意味になるらしく、ゴーレムは本来の土の姿に戻るらしい。」
「確かにゴーレムの額に何やら紙が張り付けられていますが……あれはそういうことだったのですか。」
「つまりよォ、あの土人形はそこを攻撃しねェ限り、ずっと動き続けるってコトか?」
「そういうことになるな。」
「弱点さえ解れば……私にお任せください!」

シルヴィアはそう言うと5本の矢を弓につがえ、ゴーレムの額に狙いを定める。

「このままあの羊皮紙を狙います。5本の矢でe・m・e・h・tの5文字を射抜けば
 倒すことができるでしょう!!」

そう言いながら放たれたシルヴィアの5本の矢は、ゴーレムの額に向かう直前
頭を守るために伸ばされたゴーレムの腕に突き刺さった。

「くっ……!やはり、そう簡単にはやらせてもらえませんか。」
「とりあえず、まずは足を崩す!移動できなくさえすれば、あとは何とでもできる!!」

俺が前線に立って突き出した槍の先端と、ゴーレムが繰り出した右ストレートの握り拳が
ぶつかり合う。

「ぐっ……!何てパワー……腕の筋肉がやられそうだ……!!」
「主様!……え?」
「何だ?」

ふっと横を見ると、人間の足が俺の真横を通り過ぎ……ゴーレムの腕に踵落としをしたかと思うと
その踵から跳び出した鋭利な骨がゴーレムの腕を貫通し、そのまま床に突き刺さる。

「これって……マウト!?」
「ヒャッハー!駄目元でやってみたら、何か上手くいったみてェだ!!そうだな……
 こいつは『 箆深( のぶか ) 』って名前にしよう。」

マウトのバラバラになったパーツは他にもゴーレムの体に突き刺さり、前のめりの状態となったゴーレムは
完全に自由を奪われていた。

「やっちまえ、大将!!土人形の額を貫け!!」
「おう!!『 エクリクシス・ フィンスターニス 』!!」

俺が改めて突き出した槍の先端は、ゴーレムの額の羊皮紙に書かれた
最初の『 e 』の文字に無事に突き刺さった。

同時に、まだ突撃槍からオーラが注ぎ込まれていないゴーレムの体に罅が入り……そして
一瞬にして大量の土が豪快な音を立てて床の上に山を作った。

「あ……しまった。マウトの体が土葬されちまった。」
「んァ?あァ、別に良いって!あんなにバラバラになっちまった体を縫合すんのは面倒だからな。
 どこかその辺で別の死体を見つけて、頭だけ付け替えてくれればいい。」

そう……シルヴィアの足元で、頭だけの状態で転がっているマウトが言った。

「うっわ、すげえシュールな光景……」
「お疲れ様です、主様。あとはあの宝物がミミックでなければ……あれらは全て私達の物です。」
「あぁ……そうだった。」

俺は土の山の後方にある3つの宝箱を突撃槍の先端で突っついた。
どれも『 急に蓋から牙が生えて襲いかかって来た! 』なんてことはなく
静かに輝きを放っている。

「本物だ……3つとも本物だぞ!!」
「よっしゃあァァァァァ!!大金持ちだァァァ!!」
「やりましたね!!主様、マウト!!」

俺はウィンドを開き、前方の宝箱3つを箱ごと【 ストック 】に全て納める。

「まぁ……今日は帰ったら酒宴を開くけど、この金で豪遊するつもりはないよ。
 地下の一角……そうだな、ゲートと酒の貯蔵庫の傍にでも『 宝物庫 』って形でスペースを作り
 この3つの宝箱と……今後受けるクエストの報酬をまとめて保管するつもりだ。」
「そうですね。地下には使われていない場所が沢山ありますから……良い考えだと思います。」
「クエストの報酬もどんどん貯めていくんだろ?ヒャッハー!オレ達3人で使う分なんて限られるだろうし
 億万長者も夢じゃねェなァ!!」
「よし!じゃあ、話も纏まったことだし……拠点に戻るぞ!!」

こうして、宝探しは無事終了。
マウトの尋常じゃない被害さえ除けば……自分達の所持金が一気に膨れ上がるという
とても良い結果となった。

異世界ぐらしはじめます(レックス視点、act5) ( No.29 )
日時: 2016/10/13 16:16
名前: ka☆zu ◆RfyqxjRpsY (ID: z6zuk1Ot)

act5 機械の馬、スパーク


拠点が完成して、僕達は建物を走らせながら放浪していた。
「ずっと拠点を走らせても良いけど、絶対変な目で見られるよね」
「そうだナ。それに、素早く移動出来る乗り物がいるゼ」
「素早く乗れる乗り物か・・・馬とか?」
「それが一番良いナ」



拠点を停めてスキルで小型化すると、僕はそれを小さな箱にしまって腰につけた。
そして町へ出ると、馬舎に行った。
「馬が借りたい?乗馬スキルライセンスは持っているのかい?」
「ライセンス、ですか?」
「呆れた、そんな事も知らないのかい。それじゃ馬は貸せねえな」
と、話を切り上げられてしまった。



さっきの話が気になったので、僕はコマンドを開いた。
丁度、「スキル」の中に「ライセンス」という項目があったので見てみると、目の前の画面から数枚のカードが出てきた。
そのカードは、それぞれが免許証みたいなデザインで、それぞれ「トンファー」「ボウガン」「機械整備」などと書かれていた。
ついでにボルトのスキルを確認してみると、「バトルスパナ」の他に「鍛冶」「大工」「裁縫」「機械整備」「料理」「錬金術」など技術系のライセンスが大量に出てきた。
そして、その中に乗馬はなかった。



「でもライセンスって、どうやって取るんだろうね?」
「さっきの馬舎で聞いてみるカ?」
という事で、僕らは馬舎に戻って、話を聞く事にしたんだ。
そうしたら、近くで訓練を受けられると聞いたんで、やってみる事にしたんだ。



僕は結構苦労して、マスターまでに丸一日かかってしまった。
対してボルトは、1時間程度で町一番の暴れ馬を手なずけてしまったみたいだ。
つぐつぐ、彼は凄いと思うよ。
残る問題は、馬を手に入れる事だけだった。



けれど僕がライセンスを取得したのとほぼ同時に、事故が起きた。
さっきボルトが手懐けていた暴れ馬が、他の人を乗せた途端に暴れ出し、馬舎に突っ込んで大怪我をしてしまったんだ。
その脚は、全て折れていた。
「こいつ・・・もう走れないな」
それを聞いた暴れ馬は、しおらしくしょぼくれてしまった。
「残念だが、安楽死させるしか・・・」
スタッフのその言葉を聞いて、黙っていられなかったのはボルトだった。
「それはさせねエ!俺が何とかしてやるゼ!俺なりの方法でなァ!」



そう言うと、鉱山に行った時にたんまり掘ってきた鉄鉱石を取り出した。(厳密には、僕のスキルで元の大きさに戻した)
あとは、いつもの大量のバネ。
「スキル、工房」
ボルトが呟くと、小型の鎔鉱炉と鍛冶場が現れた。
ボルトはそれで鉱石を幾らか溶かすと、幾つものパーツを設計図もなしに作り上げ、どんどん組み合わせていく。
「レックス!例のモーターを一つくレ!オリジナルの方ダ!」
僕がそれを手渡すと、ボルトはそれを鉄のカタマリにセットして、全てのパーツを組み立てた。
完成したそれは、僕らの世界で言う馬型ロボットだった。



そしてボルトは、暴れ馬の方に向き直すとスパナを構えて言う。
「少々痛いが、勘弁してくれヨ!」
すると暴れ馬にスパナを当て、かなりの電圧で放電を行った。
馬からスパナを離すと、その先には何やらナットのような物がくわえられていた。
馬はもう動かない。
「これは、こいつの魂を成型したものダ。こいつを中枢に組み込むゼ!」
そう言って機械の頭部を開け、中にそれを組み込んだ。
そして再び頭を閉じると、それは目を開けた。



「動ケル・・・話セル・・・?」
「おうヨ!俺らと意思疎通できるようにしといたゼ!」
「本当ニ、マタ走レルノカ?」
そういって馬は駆ける。
「走レル!マダ走レル!」
しばらく駆けずり回った後、馬は僕達の前で止まる。
「一緒ニ行ク。名前クレ」
暴れ馬は偉そうに言った。
だから僕はこう言ってやったのさ。
「ボルトが作った機械の馬だから・・・機馬スパークとかどう?」
もちろん意味は「機(械の)馬」で、ボルトにちなんでスパークだ。
馬の反応はと言うと、
「・・・ 気ニ入ッタ!気ニ入ッタ!」
割と気に入ったようだ。



機械の馬スパークを仲間にして、僕らは拠点に戻った。
すると、何故か胸騒ぎがしたんだ。
充電中のスパークを置いて、僕達は転送石の部屋に行った。
すると案の定、空間が歪んで、大きな裂け目が出来ていた。
「飛び込んでみる?」
「ここに入れば、新しい冒険の始まりって訳だナ?じゃあ入らなきゃ損だろうヨ!」
「そうだね!行こう!」
僕はトンファーを、ボルトはバトルスパナを構えて、裂け目に飛び込んでいった。
「「別の世界へ・・・レッツゴー!」」




プレイヤー「レックス」
レベル22
武器スキルランク3(トンファー)
種族「英雄」
クラス「弓兵」
職業「義賊(オリジナル)」
オリジナルスキル「拡縮(物の大きさを自在に変えられる)」「疾風(風の力を借りて防御力と引き換えに、スピードを上げる)」
武器「トンファー」「ボウガン」


仲間1「ボルト」
レベル28
武器スキルランク4(バトルスパナ)
種族「人外」
クラス「死兵、アンデッド」
職業「武器職人(オリジナル)」
オリジナルスキル「工房(目の前に、その時に必要な物の作業台を出現させる)」「???」
武器「バトルスパナ」
本人の属性「電気」
弱点「毒と炎に弱い」

Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.30 )
日時: 2016/10/15 02:11
名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)

No.08 〜 〜 異世界からの戦士来訪 Ⅱ 〜 〜

タドミール・テルミヌス中庭。

「はっ!」

黒馬に跨って突撃槍を構え、馬を走らせながら中庭の真中に設置した的に向かって勢いよく突きを繰り出す。
槍の先端は的の中心ではなく外側の円を捉え、的全体が衝撃でカタカタと揺れ動く。

「ふぅ……思ったより難しいな。」
「一部始終見てたけどよォ……的が小さいんじゃねェか?」
「そうか?こういうのって、小さな的の狙った場所に、確実に当てられるように
 練習するもんじゃねえのか?」
「そりゃそうかもしれねェけどさ、アレンは馬上で突撃槍を振るのに慣れてねェんだろ?」
「だから練習してんだよ。まぁ……確かに、もう少し大きい的があれば良かったんだけど……」
「そんなアレンに吉報だ!さっき、この的が入ってた倉庫を物色してたら……ホレ!」

そう言いながらマウトが人の形を模したリアルな的を取り出した。

「うわ……こんなのあったのか。」
「結構奥にあって、取り出すのが大変だったぜェ。」
「あの暗い倉庫にこのリアルな模型……こりゃ一種の恐怖モンだな……」
「しかも……」

マウトが自分の肘から鋭利な骨を突き出し、そのまま人形を攻撃した瞬間
人形の口から大量の赤い液体が飛び出した。

「血(らしきもの)まで出るオプション付きだぜェ。」
「トラウマになるわぁぁぁ!!」

マウトにツッコミを入れた後、俺はふっとあることを思いつく。

「そうだ!マウトを練習相手にすればいいんじゃねえか。動くし、攻撃しても死なねえし。」
「最近、オレの扱いが雑な件について……まァ、別に構わねェけどな。」
「それじゃあ、いくぜ!こいつは俺も初めて試すから結果がどうなるか解らねえ。
 とりあえず……気合い入れて受けてくれ!」
「キバるのは構わねェが、何か出ちゃいけねェものが出てしまったらゴメンな。」
「えっ!?やだ、ちょっとそれ困る!!」

しかし、螺旋状に渦巻いた闇のオーラを放っていた突撃槍を、既に突き出していた状態で
寸止めすることができず、そのままマウトの体に突き刺さっ

〜 しばらくお待ちください 〜


「はぁ……はぁ……酷い目に遭った……」
「その言葉、そっくりそのまま返してもいいかい?大将。」

俺の眼下、黒馬の足元でバラバラになった状態のマウトが声をかけてくる。

「御二人共、こちらに……何が遭ったのですか?」
「シルヴィア……いや、気にしないでくれ……大丈夫、うん……大丈夫……
 ちょっとマウトに手合わせの相手をしてもらっていただけなんだ。」
「ヤラレチャッタ!」
「そうですか。鍛錬は良いですが、ほどほどにしてくださいね。マウトの縫合、大変なのですから。」
「わかった。今後は注意する。」
「それより……シルヴィア、何かアレンに用事があったんじゃねェのか?」
「え?あぁ、そうでした。主様、愛馬を厩に戻したらすぐ、大広間に来て頂けますか?」
「大広間に?わかった。」
「マウトも同席お願いします。貴方も此処の一員なのですから。」
「行きてェけどよォ……見ての通りバラバラだし……アレン。責任取って、頭だけ運搬頼むわ。」
「……わかった。その代わり、残りのパーツは自分で城内に押し込んどけよ。
 自由に動かせる技を習得してんだから。」
「へいへい。」


〜 数分後 〜


タドミール・テルミヌス最上階・大広間。

言われた通り、頭だけのマウトとしばらく待っていると、シルヴィアが負傷した何処かの兵士を連れて
大広間に入って来た。

「シルヴィア……そいつは?」
「お父さん、娘さんを私にくださいってかァ?ギャハハハハハ!!」
「え?マジで!?そいつはめでたいな。すぐに宴会の準備を……」
「ちっ……違います!!」

シルヴィアは素早く弓を構えると1本の矢を放ってマウトの額のど真ん中を射抜き
もう1本つがえると、顔を真っ赤にして俺の方に狙いを定めてくる。

「悪かった、冗談だって!」
「当り前です!私が身も心も捧げて良いと思い忠誠を誓っているのは、主様だけなのですから!!」
「で、真面目な話……本当にどうしたんだ?」
「あ……あの……此処は地獄なのですか?生首が喋って……」
「おっ、喋れるのか。まぁ……そいつのことはあんまり気にしねえで、そういう生き物だと思ってくれ。」
「ゆっくりして逝ってね!」
「は……はぁ……」
「それで?話を本題に戻すけど……何が遭ったんだ?その怪我……」
「はい。私は『 シフルール 』の町を守る関所で警備をしていた者なのですが……」
「シルヴィア。シフルールってどの辺り?」
「此処より南西の方角にある町です。海に面しているため、貿易が盛んだとか。」
「南西か……あぁ、悪い。話を続けてくれ。」
「では、失礼して……先程も申しましたが、私はその町の関所で警備の任を務めておりました。
 そして先日、いつものように警備をしていたつい先日のこと……西方から大軍勢が現れたかと思うと
 いきなり攻撃を仕掛けてきたのです。」
「物騒な話だな……敵の軍隊と目的って解っているのか?」
「はい。敵の大将と思われる男が『 我々は『 エルセア 』の軍勢である 』と
 『 我が主、『 ロニキス 』様が、この地の豊富な資源を自分の物にしたいと仰った 』……と
 言っていたのを覚えています。」
「エルセア?」
「主様、エルセアは大陸西方、ミュンヘル墓地の手前にあるこの大陸で1番の大都市だそうです。
 シフルールとの位置関係も確認しました。領土拡大のための進行と考えるのが1番濃厚かと……。」

シルヴィアが机の上で地図を広げ、俺に報告する。

「領土拡大のための進行が可能な位置関係なんだな……ん?えっと、位置関係としては
 エルセアの方が西寄りの上の方にあって、シフルールが南にあるんだよな?
 それでよく、北に陣取っているであろうエルセアの軍勢の後方、更に北方にある此処まで来れたな。」
「はい。シフルールが襲撃を受けた当日、港から船を出して東へ……そして先日、フィーネ荒野で
 貴殿等が戦っている姿を思い出し……断られることを覚悟の上で、あの戦場から貴殿等が去った
 北を目指して……」
「おそらく、この辺りまで来た時点で力尽きたのでしょう。
 拠点の前で倒れていたところを発見しましたので、保護と手当てを。」
「なるほど……シルヴィアが見つけなかったら、ヤバかったってことだな。」
「確か、アレン殿でしたね?お願いします!どうか我等に加勢して頂けませんか!?」

玉座に座る俺の前で、若い傷だらけの兵士が土下座した。

「……悪いな、今はまだ何とも言えない。俺はこの大陸の事に関して無知なんでね。
 少し、エルセアの方についても調べさせてくれ。その上でどう動くかを決めさせてもらう。」
「……わかりました。では、失礼させていただきます。少しでも早く戻り、味方に加勢したいので。」
「傷が治るまで安静に……していられないんだな。わかった、くれぐれも気をつけてな。」

兵士が一礼して大広間を出ていった後、俺は深いため息を吐く。

「ギャハハハ!あんなこと言って……既に答えは決まってんだろ?アレン。」
「まぁな。シルヴィア、マウトの縫合にはどれくらい掛かりそうだ?」
「何度かやりましたので、かなり慣れてきました。30分もあれば再生可能です。」
「わかった。じゃあ、余裕を持って1時間後!シフルールに向けて進軍するぞ!!」
「エルセアの軍勢と戦うのですね。」
「あぁ。エルセアの領主・ロニキスの悪評は、最寄りの村に買い出しに行った時に、よく耳にしたからな……
 俺達ができることなんて小規模だけど、ここいらで少し天討を喰らわしてやるのも有りだろう。」
「わかりました。では、出撃の準備を……行きますよ、マウト。」
「シルヴィア、連れて行ってくれ。」
「……仕方ありませんね。」

シルヴィアはそう言うと、マウトの白髪を掴み……ぶら下げた状態で大広間を出ようとする。

「ちょォい!!シルヴィアさん、痛くはねェ……痛くはねェんだけどさァ、
 その持ち方止めてもらえませんかねェ!?ハゲる……ハゲちまう!!
 オレァ、ソウルフルな連中と違って、毛根が弱いんだっつうの!!聞いてる?
 できることなら、その豊満な胸に抱き寄せる感じで……」
「煩いです。床の上をダイレクトに転がって移動しないだけ、ありがたく思ってください。」
「おい!大将、側近の態度がよろしくねェぞ!!教育はどうなってんだ!?」
「いいから早く縫合してもらって来い……バラバラにしたのは俺だけど。」

Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.31 )
日時: 2016/10/15 02:30
名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)

〜 1時間後 〜

準備が整い、俺達はシフルールに向かって出発していた。

「悪いな、マウト。俺達ばっかり馬に乗っちまって。」
「んァ?そんなこと気にしねェでいいって!っていうか……冷静によォく考えてみろ。
 ゾンビが馬に跨って颯爽と草原を走ってる光景の方が、よっぽど異様だとは思わねェか?」
「……確かに。」
「くすっ……や……やめてください、ちょっと想像してしまったではありませんか。」
「白馬のゾンビ様をか?」
「はい……っと!雑談を楽しむのは此処までのようですね。見えてきました。」
「ん?」

拠点に救援要請をしに来た兵士は大陸の東部を迂回してきたため遠回りになるが
俺達は拠点からほぼ直線距離で移動したため、かなりの時間を短縮することができた。

少し離れた場所から戦場を見ていると……全身を黄金の鎧で包んだ大勢の兵士達が
奥に見える石造りの関所に押し寄せている。

「あれか……手前の軍勢がエルセアの奴等か。」
「何だァ?ありゃ……兵法ってヤツを殆ど知らねェオレ様でも解るぜ。
 エルセアの連中、統率ガタガタじゃねェか。」
「まぁ、こと籠城戦に関しては、策など殆ど無意味です。より多くの兵を導入して
 関所や城門を突破さえすれば良いのですから。」
「なるほど。それで、エルセア側には兵士達を連続で投入できるだけの余裕がある……と」
「何でもいいから早く暴れに……おォ?」
「どうした?マウト。」
「何か、エルセアの陣営に変な物が……」
「「変な物?」」

マウトが指差した先……エルセアの陣営にシルヴィアと視線を向けると、軍勢のド真ん中に極太の光の柱が
出現していた。

「あの光は……見覚えがあるな……。」
「まさか、またライラプス殿とサニー殿が?」
「え?誰だよ、そいつ等?」
「仮にそうだったとしたら……ったく!あいつ等、何でいっつも敵のド真ん中に出てくるんだよ!!
 シルヴィア!!俺は先行してあいつ等を助けに行く!!」
「解りました。私も愛馬を繋ぎ終えたらすぐに向かいます!マウト、主様と先に行ってください。」
「任せなァ……ヒャッハー!!派手に暴れるぜェ!!」
「急ぐぞ、マウト!!遅れるな!!」
「おうよォ!!」

俺は黒馬に跨ったまま、マウトと共に戦場に向かった。


*****


「どうしよう、『 ボルト 』……あんなに意気込んで来たのに、いきなり修羅場なんだけど?」
「あぁ……やっちまった感が凄いナ。」
「貴様等!!どこの者だ!?シフルールの奴等の仲間か!?」
「『 シフルール 』なんて知らないよ!!あぁもう!仕方無いなぁ。」

男性は自分に向かって剣を振り上げていたエルセア兵の顎に、鉄製のトンファーを握った手でアッパーを
喰らわした。

「ぐおぉぉぉ……」
「こいつ、よくも!!」
「おい!無茶するナ!!いくら何でも数が違いすぎル!!」
「でも……!!」
「『 ディアヴォロス・エスピラール 』!!」

俺の愛馬である黒馬が勢い良く地面を蹴り、大きく跳躍すると同時に俺の突撃槍を
闇のオーラが螺旋状に包み込む。

そして、着地と同時に1人の兵士を突き……馬上で槍を薙ぎ払う素振りを見せたと同時に
突きを受けた兵士を中心にドス黒いオーラによる大爆発が発生し、周囲の兵士も飲み込んだ。

「まったく!またお前は戦場の中心に……って、あれ?」
「ヒャッハー!!なかなかド派手にやるじゃねェか……んァ?どうした、大将。」
「いや、えっと……どちら様で?」

俺とマウトの前に居たのは以前知り合ったライラプスとサニー……ではない人物が立っていた。
1人はつばの尖った帽子をかぶり、パッと見盗賊が愛用していそうな布の服を着た男性
もう1人は……マウトをめちゃくちゃ健康的にしたら、多分こんな感じかなぁと思うくらい綺麗な体で
ツナギを着て眼帯をしたゾンビが武器を持って立っていた。

「あの……助けてくれて……」
「おォっとォ!待ちなァ、兄ちゃん。今の状況、理解できてるかァ?
 オレと違って立派な脳みそ詰まってんだろうが!!」
「マウトの言う通りだ。いきなり訳のわからねえ状況に巻き込まれて、訊きたい事もあるだろうが……
 それも周囲の敵をある程度片付けてからだ。」
「まァ、ここはウチの大将と自慢の側近が、何とかしてくれるだろうがなァ!!」
「あまり期待されても困ります。やれるだけはやりますが、貴方も主様のために頑張りなさい。」

そう言いながら現れたシルヴィアは弓につがえていた5本の矢を放ち、エルセア兵の鎧の隙間に
器用に1本ずつ撃ち込んでいく。

「まぁ……話し合いの場を設けるのは、意外と簡単なんだよなぁ……皆、俺の傍に近寄れ!!
 いくぞ……『 エグリマティアス・ナハトムズィーク 』!!」

地面に突撃槍を差し込んだ場所を中心に闇のオーラで作られた壁が円形に広がっていく。

「よし、これで少しは時間が稼げる……」
「あの……じゃあ、改めて。お兄さん達、助けてくれてありがとう。
 僕は『 レックス 』。種族は【 英雄 】、クラスは一応【 弓兵 】で、職業は【 義賊 】です。」
「俺は『 ボルト 』。種族は【 人外 】で、クラスは【 死兵 】。職業は【 武器職人 】ダ!」

また珍しい能力を持った奴等だな。いや、今はそれ以上に……

「見ろよ、マウト!お前の他にも自立してるゾンビが居たぞ!!」
「割とよくある構成なのでしょうか?何にせよ……良かったですね、マウト。」
「ナカーマァ!!(゜∀゜)人(゜∀゜)」
「あ……あの、それで貴方達は……?」
「おっと、すまねえ……俺はアレン。種族は【 英雄 】で……このヴァイナー大陸で
 クラス【 暗黒騎士 】として活動している。」
「私は主・アレン様のパートナー兼側近をしておりますシルヴィアと申します。
 種族は【 自然 】、クラスは【 ダークエルフ 】です。以後、お見知り置きください。」
「ヒャッハー!!オレはこの大陸で1番元気で最強な死体のマウト様だァ!!
 種族ってヤツは【 人外 】、クラスは【 生ける屍(リビングデッド) 】さ。」
「まぁ……すぐには覚えられねえだろうからさ、ゆっくり1つずつ把握してくれりゃ、それでいい。」
「は……はぁ……」
「さてと、じゃあ自己紹介も終わったことだし……シルヴィア。
 現状をレックスとボルトに教えてやってくれ。」
「承知致しました。主様は?」
「マウトと一緒に、もう少し連中を動けなくして来る。」
「ヒャッハー!!そうこなくっちゃなァ!!いくぜ、大将!!」

闇の障壁が消えたと同時に、俺とマウトは再びエルセア兵の大軍の中に突っ込んでいった。

Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.32 )
日時: 2016/10/15 00:08
名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)

エルセア軍・本陣。

「伝令!!突如背後から現れた怪しい軍団により、後方の部隊が壊滅的な被害を受けております!!」
「何だと!?えぇい……攻城は上手くいかんし、後方には謎の軍団だとぉ?
 このまま成果を残せなければ、私は無能な指揮官ということになる……それだけは避けなければ……」
「いかがなさいましょう?」
「とりあえず、攻城が優先だ!!あの関所の門さえ突破してしまえば、こっちのもの……
 衝車の準備をせよ!!完成し、門を突破するまで後方に居る謎の軍団を近づけさせるな!!」
「はっ!!」


* * * * *


「逃げられると思った?ギャハハハ!!残念でしたァ!!」
「はぅっ!?」

地中から突如現れるマウトのカンチョー……もとい『 棒火矢 』を受けた犠牲者だけで一筋の道が
築き上げられていた。

「フッ……またつまらぬものを刺しちまった……」
「相変わらず強力だな……その技。」
「まァ、此処は鍛えようと思っても鍛えられねェ、急所ってヤツだろうから……ん?」
「どうした?マウト。」
「いや……連中、何かやり始めてるぞ。」
「何!?」

馬上からマウトが指差す方を見ると、大勢の兵士達が木造で大型の何かを建造しているのが見えた。

「あれは……」
「この野郎!!よくも、好き勝手暴れて…………」
「『 鋼鉄拳 』!!」
「はぐぁぁ!!」

俺の背後で声がしたので振り返ると、レックスがエルセア兵を1人鉄製のトンファーで殴り倒していた。

「おぉ!すまねぇ、レックス。助かった……」
「どういたしまして。それより、話はシルヴィアさんから聞きました。
 奥に見える関所……シフルールだっけ?そこの人達を助けるんでしょ?僕達も手伝うよ!!」
「すまねぇ、恩に着る。」
「それデ?アレンさんだっけ?状況はどうなってるんダ?」
「それなんだが……厄介なことに、連中……衝車を作ってやがる。」
「「衝車?」」

俺の言葉にレックスとボルトの頭の上に疑問符が浮かび上がる。
そっちのサーバーには無い物なのか?いや、仮に無かったとしても……武器職人を名乗るなら
せめて知識だけは持っておけよ、ボルトさんよぉ。

「衝車ってのは、まぁ……簡単に言ったら、攻城用アイテムの1つさ。
 構造はでっかい杭の付いた車……が解らねえなら、馬車だと思ってくれれば良い。
 とにかく、その先端の馬鹿デカい杭を門に打ち付けることによって破壊させるためのものだ。」
「そんな物があったのカ!!創作意欲が掻き立てられるゼ!!」
「残念だけど……敵方の物なんだよなぁ……」
「え?じゃあ、あれが完成したらマズいんじゃないですか!?」
「正解。良くできましたッてかァ?ギャハハハハハ!!」
「わかっタ!そういうことなら、俺があそこまで行って衝車を壊してやるヨ。」
「ボルト?」

頼もしい申し出を提案してくれた綺麗な方のゾンビ・ボルトの方に皆の視線が集中する。
そして、同時に少し遅れて追いついてきたシルヴィアが不安点を発言してくれた。

「気持ちは有難いのですが、1人で行かせるわけには……
 ボルト殿がマウトのように痛みを感じない体質なら、それも考慮できるのですが……」
「初めて会った時、ゾンビ達に襲われてダメージ受けてたよね、ボルト。」
「レックス。そういう昔の話は言わなくても良いんだゼ。」
「ギャハハハハハハ!!どういう状況だよ、ゾンビがゾンビに襲われるってよォ!!
 面白すぎんだろ、お前!!」
「うるさイ!俺にもいろいろ遭ったんだヨ!!」
「そこ!ゾンビ同士で不毛な争いすんな!!取っ組み合いで決着つかねえだろうが!!
 でも実際、武器のエキスパートであるボルトが行ってくれれば、本当にありがたいと思う。
 危険だけど……頼まれてくれるか?ボルト。」
「任せロ!!」
「それじゃあ、僕が先に行ってボルトの進む道を作るよ!!」
「すまねえナ……レックス。」
「よしっ!!じゃあ俺達は各々の判断でエルセア兵達を撃退させるぞ!!
 余裕があれば、2人の援護だ!!」
「承知致しました!!」
「ヒャッハー!!ボルトと取っ組み合いができなかった分、連中で発散させてもらうぜェ!!」

俺達はそれぞれのやるべきことのため、エルセアの軍勢に向かって突っ込んで行った。

「レックス!!キツくなったら無理するなヨ!最悪、俺1人でも………」
「何言ってんの!!ボルトを衝車の所へ送るまで退けないよ!!」
「ヒャッハー!!その意気や良し!!気に入ったぜェ、お前等。」

レックスとボルトに向かって突き出された槍の先端が、地中から勢い良く飛び出したマウトに
深々と突き刺さる。

「なっ……!?マウトさん!?」
「何やってんダ、お前!!」
「ギャハハハ!!オレ様のこれを初めて見る奴は決まって同じリアクションだなァ。
 アレンもシルヴィアもそうだった。」

マウトは槍の柄を握り締め、その先に居るエルセア兵を見下す。

「ひっ……ば……化け物……」
「何だァ?今気付いたのか……死体が動いている時点で気付くべきだったなァ。
 オラ!ボケっとしてねェで、お前等は早く行け!!オレ様が行ってぶっ壊しても良いんだろうが……
 今、ちょっと動けなくてなァ……代わりに盛大にぶっ壊してくれ。」
「マウトさん……ありがとう!!」
「お前……この仕事が終わったら酒の1杯でも奢らせてくれよナ!」
「できれば酒より牛乳が良いなァ……カ・ル・シ・ウ・ムはァァァ……大事だぜ!!」

そう言いながら関節を外したマウトは肘から鋭利な骨を伸ばし、槍の先に居たエルセア兵を攻撃した。

「ヒャッハー!こんかいは無事に骨への被害は避けられたぜ。」
「お疲れ様です、マウト。では……私も頑張らなければなりませんね。」

シルヴィアは衝車の組み立てをしている場所の上空に狙いを定め、闇で作った1本の太い矢を弓につがえる。

「いきます……『 ラーテゥンヴァッルン・ドゥンケルハイト 』!!」

シルヴィアの弓から放たれた闇の塊は狙い通り作業場の真上まで行くと爆散し、雨のように降り注ぐ。

「うっわ……シルヴィアさん、凄……あの矢の爆発するタイミングとか、狙ってたのかな?」
「だろうナ……レックス、今度弓の使い方教えてもらったらどうダ?」
「今はボウガンになっちゃったけど……一応、考えとく。」

「待てぇい!!これ以上、勝手な真似は許さ……ごふぁぁぁ!!」
「人が急いでるって時に邪魔してんじゃねえぞ、こらぁ!!」

俺は2人の前に立ちはだかったエルセア兵を、突撃槍で一蹴した。

「アレンさん!!」
「吉報だ!シルヴィアのおかげで敵本陣にいる連中に負傷者が出たうえに
 衝車そのものにもちょっとした被害が遭ったらしく、作業が滞っているみたいだ!!」
「今がチャンスってことですね!!行こう、ボルト!!」
「おウ!ここまでしてもらって、失敗したんじゃ顔向けできねえからナ!!」


+++++


エルセア軍・本陣

「くそっ!!何故だ……我々はこの大陸で最強の軍勢なのだぞ!!それが、どこの誰とも知れぬ
 無名な奴等にぃぃぃ!!」
「将軍!!ここは一度、撤退を……」
「撤退?そうだ、撤退だ!!私は撤退する!!後の事は任せたぞ!!」
「えっ!?そんな……将軍!?」

俺達が衝車に近づいた時、1人の男性が馬に跨って去って行くのが見えた。
伝令の可能性もあるが……今はとにかく関所を守らなければ。

「よし、到着!!じゃあ、レックス、ボルト……頼む!!」
「わかった!!『 灼熱鋼鉄拳 』!!」
「任せロ!!いくゼ……『 エレキパイカー 』!!」

レックスはトンファーに炎を、ボルトは手にしたスパナに強力な電気を纏わせると、
勢いに任せて同時に衝車を殴り、破壊した。

「ひぃぃぃ!!もう駄目だ!!衝車は壊され、将軍も逃げた!!撤退、撤退ぃぃぃぃぃ!!」

衝車を壊されたことにより、一気に戦意を喪失したエルセア兵達が我先にと戦場から離脱して行った。
その光景を眺めていたシフルールの関所の上から歓声が巻き起こる。

「ふぅ……お疲れ。2人のおかげで楽に勝利することができたよ。」
「いや、少しでも役に立てたのならそれで……あっ!そうだ、アレンさん。話が……」
「あるだろうとは思っていた。此処じゃ何だし……俺達の拠点に案内するから、そこで話を聞こう。」
「アレンさんの拠点……」
「シルヴィア、マウト。引き揚げるぞ!客人2人と一緒にな。」
「はい。それでは、私も馬を連れてきますね。」
「ヒャッハー!!久々にちゃんと暴れることができて、満足だぜェ!!」
「レックスとボルトはどうする?徒歩が嫌なら俺かシルヴィアの後ろに乗っても良いんだけど……」
「えっと……アレンさん、その馬に乗るのって……ライセンスが必要?」
「お前は何を言ってるんだ?まぁ……その辺の話も、後で聞かせてもらうとするか。」


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