ダーク・ファンタジー小説
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- (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
- 日時: 2016/11/01 22:50
- 名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)
(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)
はじめましてミヤビと言います。
異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。
これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!
では下記に簡単な説明を乗せておこう。
また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!
【異世界ぐらしはじめます】設定資料
世界観設定
【属性】
〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低
【能力、職業】
能力
先天性、後天性のオリジナルスキル。
ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。
例
能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)
職業(有利→不利)
〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→
職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可
例
能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)
【武器】
武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)
【世界観】
世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。
世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、
この世界で生き残ることは出来るか・・・
(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。
同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。
それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。
だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。
一応地理は現実世界の配備で問題なし
スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。
* * * *
御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)
https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)
https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)
- 異世界ぐらしはじめます(ライラプス視点) ( No.8 )
- 日時: 2016/09/17 23:57
- 名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)
『ああ、美味しいなあ・・・このリンゴ。商者が「おいしいリンゴ」と言ったのも頷けるわ。』
市場を出発して2日。現在の食事事情は干肉と果物でどうにかなっている。
2日目の腐りかけの食べ物と言ったら意外に旨いもので癖になるが。
これは腐る予兆つまり食料の限界を知らせるものだ。
連休中買いだめしていたおやつを切らしてしまって天国から地獄に突き落とされた気分になる。
まあ買い出しにいけばいい話だが、旅というのは補給が道中望みが薄い航海のようなものだ。
本日蒼天見晴らし良し。目的の都市まであと3日。
まだ半分も来ていないのにハズレのリンゴを掴まされたか、とんだ災難だ。
我々日本人は商者に対して疑念の目で買うものに対して判別する眼で対応するべき、
そんな教訓を教えられたよ。
『さーサニー。まだ半分も来てないけど疲れてないかー?』
『・・・うん・・・♪』
2秒置いてちょっと頷いて返事をした、
気のせいか言葉もだんだんわかって来た、と言うよりなんか通じてきた。
『まだまだ続くなあ、地図になんか描いてないかな町とかさ。』
また地図を見てみるとそれなりに道は逸れるが村・・・いや集落かある。
とりあえず落ち着く所が欲しい、寄るのは問題ないだろう。
『情報もあるといいな。』
【集落クロウラ】
『・・本当に集落だな。』
後頭部を掻き不安になりながらも他にアテもない手前選りすぐりしている訳にはいかない。
集落は建物が12、店が道具屋と宿屋、鍛冶屋の3つ。
それと他が木造に対して大きい石造りの建物がある。
『まず道具屋だな、食料も扱っているみたいだからアイテムもあるだろう。』
* * * *
傷んだ果物に干肉、回復薬や包帯等の旅人用のものがそれなりに最低限ラインであるが揃っている。
『以前は1人で済ませていたから痛い目をみたからな、サニーはあの時人ごみにさらわれてしまったからな。
今回はサニーの出番だ、頼んだぞ・・・てか分かるかな言葉とか選別とか2重の意味で。』
サニーは「ててて」と小走りして商品まで寄りリンゴを持ち上げては嗅ぎ、
一通り見てきて帰ってきて反応はただ2回の首の横振りのみ。
『・・・だめかー。』
まあ選別が出来るのは助かる。
川魚を釣る考えもあったが、寄生虫を殺す火が使えないのにサバイバルは出来ない。
ゲームにいるのだ、川魚くらい大丈夫だ、そう思っていた時期が俺にもあった。
『いっかい釣ってサバいたらアニサキスがこんにちわしたときなんかそっ閉じしてしまったからな。』
そうしていると後ろから寄る足音が聞こえ、壁まで移動した・・が
『店に用があるわけじゃあなさそうだな。』
足音がこちらに来ていることを確認し、銃に手をする。
『旅人のあんちゃん。もしかして「プレーヤー」かい?』
『俺をプレーヤーと呼ぶってことはNPCやエネミーじゃあないってことか。』
声の主み目をやり少し距離を取るライラプス。
相手は茶色い皮製のエプロンをした小柄の
『・・ドワーフ?』
ライラプスは警戒を解き2歩近づき
『失礼ですがあなたもプレーヤーですか?』
『いや、残念だがここの住人だ。前にここを通った人がいてな。
もしここでの用が終わったんならウチの鍛冶屋来るか?』
銃の様子も鉄の具合を見て貰えるかもしれない、そう思ったライラプスは提案に乗ることにした。
道中では威嚇や止むを得ない戦闘でいくらか使用しているからな。
もし可能なら予備のバレルや護身用武器が欲しいな。
【ドワーフ工房】
『ようこそウチの店へ、まあ話す前になんか済ませることはあるかい?』
『そうですね、この武器なのですが点検は可能ですか?非破壊で。』
肩にスリングと呼ばれる銃についた帯をかけていたものを外し、
机に簡易的に清掃する度合まで解体し置いた。
『なんじゃこりゃあ。えらいコマい造りやのう。』
『銃という飛び道具なのですが。この筒の部品と胴部分のこの部品の集合体を知りたいのです。
壊れるならここなのでお願いしたいのです。』
ライラプスの能力「遮断」は薬室と呼ばれる発射準備に入った弾が入る筒に使うが、
残念ながら銃本題丸々を保護するレベルまでに至っておらず。
衝撃は部品へ、摩耗はバレルに行く。保護は暴発の予防程度なのだ。
『ああこれかい。そういえば最近都会ではこんな武器が出来たっちゅうのを聞いて
造ったのあったなあ・・これかいな。』
そうか、都会ですら開発は最近のレベルか・・・ん?造った?
『申し訳ないが、造ったとおっしゃいましたか?』
『ああ、こんな精巧なもんじゃないがあるぜ。』
奥から持ってきたのは縦2連装式の前後に刃が付いた80cmの仕込み銃の剣。
銃剣だ。
『マスケット銃ってもんでな火薬と弾を先から詰める飛び道具があるんだがな、
装填してる間は無防備になるから剣を先に着けるんだが。
こいつは剣がメインで銃はサブのもんでな、装填方法を考えてたんだがこりゃあいいな。』
どうやら俺が持っていたライフルの弾がヒントになったらしい。
しかしこれは恰好いいな。先端は銃口があって斬りの動作しか出来ないが、
予備の武器にしてはいいものだと思う。
『もしよろしければ薬莢型の弾の製造方法を教えますので、
その銃剣ですが完成したら私に2本造って頂けますか?
もちろん見返りにまだ欲しいのでしたら要相談ですが。』
『お!本当かい!?弾の作り方を教えてくれんのかい!?
あーしかしそうだな。確かに2本となると素材がなあ。調達は出来んのかい?』
話を聞く所によると鋼材は鉱山の持ち主に交渉して取りにいく必要があるそうなんだが。
『それがこの立派な家か。石造りの目立つ家がまさにそれか。行くよサニー。』
サニーは小走りしライラプスのコートを掴む。
石造りの家に近づき尋ねようとゲートをくぐったそのとき
タアアアン!
銃声、ゲート3M離れたところに着弾。前方石造りの建物2階窓に人影。
『そっから近づくな!来たら命中させるぞ!』
この距離なら命中は容易いが争いに来たわけではない、穏便に済ませたいものだ。
何せサニーがいる手前手荒なことは避けたい。
ライラプスは両手をあげ遠いため大声で交渉する。
『すまない、なんて言ったらわからないが話をさせてほしい!
少し鉱山でほしい素材があって分けて欲しい。その相談に来ました!』
まあ俺なら見返りなければこんなの話にも乗らないのは分かっている、そのための交渉だ。
金は鱗で物々交換で済ませれば御の字だがそもそも少しの金すら手にしていないのだ。
せめて鉱山で困っていることがあれば付け入る隙はあるはず。
『帰んな!こっちは忙しいんだ!』
『見た所その用事というのは問題を抱えていらっしゃるということでしょうか!?
職務であればそこで警戒しているハズがありません!
では何故か!それは武力によってのみ解決または対処するしかない現状に陥っている!
これではどうでしょうか!?「その手伝いをします」!』
数日の用心棒といった所かな、簡単なクエストならいいのだが、
戦力増強のクエストならいくらか骨は折ってやる気ではいる。
『お前に何が出来る!?』
『ではこうしましょう!そこまで30m!そこまで一切コースを変えず真っ直ぐそちらへ歩きます!
こちらはこのスプーン1本!これでこちらを狙撃を退けられたら話を聞いてくれますか?!』
『ふざけやがって!死にやがれ!』
ザッ
ライラプスは歩き出し、山の地主は狙撃し5m左に逸れた。
精度は悪いのか腕が悪いのかまだ安全だ。
残り22m再装填を終了させた相手はまた狙撃、
カアアアアアン!
ライラプスはスプーンを振るい弾き落とす。
目の前で何が起こったか理解するのに時間がかかった山の地主が
『な!嘘だろ!クッ!』
残り14m再度狙撃し
カアアアアアアアン!・・・
同じようにスプーンを振るい弾き落とす
『化け物か!』
『どうでしょう!?腕前を認めて頂けますでしょうか!?』
『・・・ああわかった!今入れる!』
ふう、どうやら諦めてくれたようだ。
スキル「遮断」。実は50cm前方に下に傾けるように展開し弾いていただけで、
実はスプーンは飾りだったのだ。
交渉するならバリアを張れる用心棒より銃すら退ける腕前の用心棒のが採用率がぐんと上がると考えたからだ。
【山の地主の館】
石造りの建物の中は赤いカーペットに高級な木の家具に暖炉と鉱山から採れた金属は使用していないみたいだ。
鉱山は売り物の採取場所というのがよく分かる。
『我々を迎え入れてくれたこと感謝します。』
この赤いスーツの中年の男が山の地主ショーンというらしい。
『いやいいんだ、それで材料を分けて欲しいだって?
すまんが「NO」だ。漏らさないで頂きたいのだがあそこはもう枯渇寸前だ。
さらにそれを知らずか山賊が狙っていてな。今度はその権利書を奪おうってことらしい。
そのまま占拠するのではなく権利書さえ持っていればそれを売ることで持て余す山を金に換える、
または拠点にするのだろう。』
『要はその山賊を追い払う、でよろしいですかね?』
『いや、また来るだろうから始末が望ましい。』
射殺することに抵抗はない・・と言えば嘘になる。
せっかくここまで(人限定)ノーキルで来れているのだ。
その苦労をここで絶やしたくない。
『逮捕、またはしかるべき所へ連れて行くのは可能ですか?
賞金首なら有りがたいですが。』
『さあなあ。ま、もう来ないように出来るならそれでいいが。悪いがそんな設備はないぞ?』
牢屋無しか。見返りに馬貰って引きずって連れて行くか?
『ではどこかに預かって頂きましょうか。
その一時預かり場所はお願いします。』
交渉はなんとか終え、問題解決のち採掘になりそうだ。
そのままライラプス達は屋敷をあとにし宿屋に泊まる事になった。
- Re: 異世界ぐらしはじめます(ライラプス視点) ( No.9 )
- 日時: 2016/09/18 18:26
- 名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)
【宿屋】
ショーンとの交渉も終え、宿屋に入り、2人分注文する。
広さはそんなにないが十分な大きさだ。
ふう・・と溜息のちベッドに腰かけ休息を取るライラプス。
サニーは長旅ずっと床だったので、ベッドに飛び込み大はしゃぎし出した。
『そういえばここらへんからは言葉が通じ出したな。国境を越えたのか?』
『それはあっちのおかげなの!』
・・・ん?
今誰か喋った?
『サニー?今誰か入って来た?』
『あっちとライラプスだけなの!』
・・・
『しゃべたあああああ!!!!?』
コホン、と咳払いし右手で自分の口を押え左手を前に出して状況整理に入る。
まず落ち着こうか、言葉が通じなかったのに普通に言葉が通じて
『あれええええ?!』
『落ち着くの!説明するの!』
* * * *
とりあえずテーブルに着き水を1杯づつ用意する。
『改めて自己紹介するの、あたしはサニーなの。
飛龍から助けてくれてありがとうなの。』
『あ、はいどういたしまして。
なんでいきなり言葉が通じるようになったか教えてくれるかな?』
今すぐにでもプレーヤーなのかとかおまえは何者なんだとか色々聞きたいが、
ここはぐっとこらえてこそ男なのだ。
『それはあたしのスキル「解析」のお陰なの。
言葉や暗号とかの不明という壁を取り払う能力なの。』
ふんすと鼻でドヤり自慢気に話すサニーはつまるところ万能の翻訳者ということか。
『つまり、謎の能力や現象の解析も可能なのか?』
『それは難度が上がればさらにレベルアップが必要なの。』
ほう、つまり難解であれば解析も良くて時間を要し悪ければ解析不能と言う訳か。
『で?君はプレーヤーなのかい?』
『元々この世界の住人なの!』
『なんなのプレーヤー全然遭遇しないじゃない。』
深い溜息を洩らし机に伏す形になるライラプス。
プレーヤーがいればそれなりに会話もでき・・いや会話って言ってもゲームシステムの話であるが。
つまりあれだけ行列が出来ているにも関わらずこう遭遇しないというのは
「それほど広大なフィールドを形成した世界」に来てしまったということだ。
これは実にまずい。恐らく各自のスタート地点はバラバラだろう。
そうでなければあの場所での開始はあまりにも不親切だ。
最初は町とかで始まるべきなのになぜ・・・
『幾つか順番に質問したいんだがいいか?』
『なんなのです?』
あまり考えたくはないが。
『この世界なんだがな。「一体何年前からあるんだ」?』
『うーんと、言っていることがわからないのですよ。』
それはそうか。他所から来た人間に「おまえのこの世界って何年前にある」て聞かれても困るわな。
しかしそれはこのゲームは限りなくリアルに近い世界であることも踏まえている可能性もある。
まあつまりこの子が教育を受けているかどうかが怪しい線もあるが。
都市にいけば分かる事があるかもしれない、まずは図書館とかあると助かるな。
『次だ、「この世界に来た一番古いプレーヤーは何年前から居る」?』
『あたしが聞いた事がある人で40年前かな?』
・・・決定だな。あまりにも遭遇しないプレーヤー、広大なフィールドに出現した理由、
そして何よりなぜ町からのスタートでないか。
結果を言おう
「最初はそもそも町なんてものはなく、開拓から始まるゲーム」だった可能性が高い。
狩猟ゲームだったのにその実は交流や創作がメインになったのもシステムがそれに見合っていたからだ。
これは俺が昼からログインしたからだろうか原因は分からんが、
出現場所や時間軸の違いを見るにこれを各プレーヤーがどう行動するかの実験場になっている?
いや非効率だ、あまりにも時間がかかるし、それに40年前にいたとしてそれほどの時間の差はおかしい。
『いくつか謎はあるが、その40年前に現れたプレーヤーの事を教えてくれないか?』
『いいの!』
『・・・その前になんか食うか。』
軽く食事を作りつまみながら話を聞く。
それは遠く寒い島国での話だそうで、小柄な青年が当初そこに巣くっていた凶獣たちを駆逐し、
領土を広げず十分な国土を維持し防衛に専念したとかで、
その青年というのも剣は常に鞘に納め、国民はその刀身を見たことが無いため、
剣あるいは別の武器だとかで話題になるとか。
その青年はどこか透き通ったような印象ですべてを見透かされいそうだったとか。
ただ変わったことに剣技はそれは凄かったそうで鞘から抜いてはいないそうだけど、
振り切った敵の斬撃が外れたように威力を殺さずいなしつづけたとか。
『つまり全くわからんな。』
『これは本当かは分からないんだけど、剣を抜く時は誰も見えなかった、
ある人は気が付いたら終わっていたとか、眩しくて見えなかったとか。』
『会ってみたいものだな。本当に気になってしまった。』
光る剣か、まあそんなんで目くらましか神速の斬撃なんて出来るなら敵う敵はいないだろうな。
『まあそれもこの仕事が終わってからだな、明日に備えて寝るぞ。』
* * * *
【ドワーフ工房】
早朝、預けていた生命線である武器の引き取りに来たライラプス。
『おはようございます、進捗はいかがですか?』
ドワーフの親方はニンマリ笑顔になり机に新品同様の状態まで修復してくれたようだ。
『あとこれは薬莢の前払いもとい教育料だ、1丁だけだが貸してやるよ。』
『有りがたいのですが、マスケットは使ったことが・・・これは薬莢対応になっている?!』
へへえ!と自慢気に誇りだし着々と説明をし出す。
『こいつぁ2発までしか撃てなかったが、その装填方法を参考にしてな。
グリップのところに指が余裕で入るレバーあるだろ?
それをグリップから離すように可動させて戻すと装填可能だ。』
『レバーアクション方式か・・どれ。』
クルッガチャキンッ!
銃剣を回転させレバーを可動させて装填するスピンコックというリロード方式で、
ターミネーターのT800シュワちゃんがやっていたやつである。
『へえ、そんな装填方法があんのかい。』
『これ正直レバーが脆いと出来ないからやりたくはないんだけどね。
で、このレバー丈夫?』
『すまねえなそんな強度要らねえと思ってたからよ、
リロードは片手で支えてする設計だ。時間あるならカスタムするぜ?』
それから持っていたタングステンを譲渡してカスタムして頂いた。
持っててよかったぜ。
【鉱山の麓】
3時間かけて制作して頂き、片手で装填が可能になった。
改めて見てみて剣の中心フレームが前後に銃身と骨組にしては頑丈そうなフレームをこしらえ、
刃は日本刀のような切れ味というよりグラディエーターの剣みたいた叩き斬るような構造だ。
重量はそれなりにあり、5Kgm前後か・・骨を断つには良いが細かい動きは出来ないな。
銃剣を左腰の即席でこしらえた皮の鞘に戻す。
『サニー、戦闘は出来るかい?』
『隠れてるの。』
出来ないのだねありがとう。
* * * *
鉱山入口に見張りが2人、どうも真面目そうな顔つきだなあ、
距離800m先の壁から覗き、近くの草むらから左上の高さ3mくらいの崖の上まで近づき。
『スキル「遮断」。』
見張りを囲うようにスキルを展開、箱のようなイメージだ。またしっかり「密封」してあるから、
そのまま酸欠になるまで放置。
暴れだしても光以外を通さないこのスキルは声も届かない、つまり異変があっても伝える術はない。
『もう倒れてそろそろか、スキル解除。』
近づいて脈を確認、気絶で済んでいるのを確認しそのまま敵をロープで縛り草むらに隠して中へと入る。
【鉱山内部】
洞窟を照らすはランプの灯りのみ、等間隔に配置したそれは丁度良い灯りになり、
道の確認は容易な反面、「隠れるのが困難」な状態だ。
足跡や奥の強い灯りのある場所を探しては同様の方法で対処し。
ついに最奥の部屋までたどり着く。
壁に隠れながら部屋の中を覗き、テーブルや酒瓶等の物がある以外特に見当たらず、
中に入り机にあった見取り図のようなものを見つけ確認をしていた。
カラカラ・・ガシャアアアン!
『・・!』
しまった罠か!背後の出入り口は鉄の柵が下りた形で閉じられ、鎖は柵の上に2か所。
左右の3階の上に分けてある。
『ここはどうやら監獄に変えられていたということか。』
ワラワラと敵が現れほとんど見下されている形だ。
サニーは幸いにも柵の向こう側に待機させていたため大丈夫だが、
ここは広くサニーの効果の範囲外、交渉は不可能。
『何を言っても分からんだろうが、来るなら容赦はせんぞ!』
どうも先ほど借りた銃剣の出番のようだ。
『シャアアア!』
斧を持った敵が2階から跳びかかり斬りつける体制に入る。
ライラプスは前にステップし敵の着地地点後ろへ移動し銃剣を抜刀。
敵の着地と同時に右半回転、その勢いで斧の柄部分を斬り破壊、
その後勢いを殺さず、能力「遮断」を左手に展開、
ガードした左拳で顔面を殴りつけ5m先の壁に殴り飛ばし叩き付ける。
1階後方にいた剣を持った敵が駆け寄り斬りつけに来る、
左足を前に出し後方へ視線を向け、敵の肩へ発砲。
重い分跳ね上がらず精度は十分にあった。
そして今度は2人がかりで前方から弓兵構えの姿勢。
ライラプスは敵上方の足場を狙撃、崩れて下敷きにするついでにその足場にいた敵も落ち、すぐに動けない状態になる。
敵は2連装のこの銃剣が撃ち尽くしたと考え3階の弓兵が4人狙撃の姿勢になる。
すかさずスピンコック、敵2人の肩を狙撃、弓兵2人が矢を放ち、
スキル「遮断」を射線上に展開、剣を振るって弾くフリをして矢を無力化。
スピンコック、残りの敵を狙撃し無力化する。
銃剣残弾0、再装填するにはまだ敵がいる。
『そこまでだ野郎ども!』
突然大きな声で静止させ3階から飛び降りてきたボスらしき人物。
大柄の2Mはあろう重量級の敵。
獲物は大きな斧、まるで船を留める錨のようなデカいものをキャンディのように軽く持っている。
『おたずねしても?』
『ああここまでやる奴は久々だ、ひょっとしなくともプレーヤーだろう?
初めましてご同輩。』
『まさか、プレーヤーか!?』
- Re: 異世界ぐらしはじめます(レックス視点)act2 ( No.10 )
- 日時: 2016/09/18 20:16
- 名前: ka☆zu ◆RfyqxjRpsY (ID: pNfZbSQl)
act2 腕のいい仲間
レックス「最初に言っておくよ。自分語りはやめた」
「君は・・・」
「君の思っている通りだよ。僕は音魔導士(コンダクター)、タクトだ」
燕尾服の彼は言った。
五色の弦のバイオリンも、しっかりと持っていた。
傍には、あの時のドラゴンが成長したような、大きな緑のドラゴン。
手首から肘にかけて、半透明の黄緑色をしたブレードが生えていた。
「彼はサックス。クラスは「自然」の「獣人」、職業は「ドラゴン」かな」
「そんな名前だったんだ・・・」
タクトはレックスの言葉に、笑って答える。
「ちなみに僕のクラスは、「英雄」の「魔術師」、職業が「音魔導士」だね」
その後は、レックスの質問が続いた。
「でも、僕の夢の中の存在のはずの君がここに?」
タクトは答える。
「よくはわからない。でも君が一度僕の名前を入力してくれたお陰で生まれたみたいだ。ここをゲームの中と自覚して、意志を持った「NPC」としてね」
「意思を持った、NPC?」
「その通り。僕にプレイヤーは存在しない。だけど自分の意思で動けるし、この世界が作られたものだと知っている。」
そう言うとタクトは、レックスに背を向けた。
「何処かへ行ってしまうの?」
レックスの質問に、やんわりと答えた。
「同行してもいいけれど、それじゃ君のためにならないからね。それじゃあ、また会おう。タッ君」
タクトとサックスは、歩いて去っていった。
「行ってしまった」
一人取り残されたレックスは、しばしポカンとその方向を見つめていたが、思い立ったように呟いた。
「とりあえず、服を新調したいな。これじゃ盗賊だもんね」
そして、コマンドに書かれていたもう一つのスキルを使う。
「スキル、疾風」
疾風とは、風の力を借りて少しの間だけ、スピードが速くなるスキルだ。
その副作用として、防御力がガタ落ちしてしまう。
そのスキルのスピードのまま、レックスは街へ走っていった。
道中何度か襲ってきた馬系のモンスターを倒して矢でその皮を剥ぎ取り、材料となりうるものを集めていった。
その中で、レックスは弓矢の扱いがあまり得意でないと悟った。
弓を持つ側の手が不安定で、狙いが定めにくいのだ。
「これも何とかしないとね」
壊れかけの弓を見て、呟いた。
街に着くと、集めた皮を仕立て屋に渡し、緑の丈夫で軽い服に仕立てて貰った。
途中で採取した木の葉で色をつけると、深くも鮮やかな緑になった。
そんな上着と、丈夫な皮の長ズボン、染色して貰った例の帽子。
元着ていた服を売却し、それを纏うとかなりしっかりと、義賊だと主張が出来た。
職人に礼を言い、街へ出るとレックスは思案する。
「弓を直してもらうのもアリだけど、自分の技能的にこのままじゃ使いこなせないな・・・腕のバランスさえ取れれば良いんだけど・・・」
と、街のはずれで喧騒を聞きつける。
「何だろう?」
近づいてみると、大量のゾンビが誰かに襲いかかっている。
「あっ、あー」
そしてその被害者もまた、ゾンビの様だった。
「ちッ・・・ここまでカ!」
レックスは救出のため、ゾンビの群れに突入していった。
「手を貸します!」
「誰だか知らねえガ、助かるゼ!」
襲われていた方のゾンビは、何か破損したモノをいじっていた。
「この武器を直したラ加勢すル!それまで持ちこたえててくれねえカ!?」
「わかりました!」
レックスはトンファーを構える。
襲い来るゾンビをいなし続ける。
「双角乱撃!」
何体か撃破したところで、閃いた。
(これ、空手みたいに思いっきり突きを入れたら強いかも・・・)
そして何体か重なって襲いかかるゾンビに向かって、思いついた技名を叫びながら突きを食らわせる。
「鋼鉄拳!」
トンファーでの突きは先頭のゾンビのみぞおちに入り、後ろのゾンビ達まで衝撃が伝わる。
そしてゾンビが半減した頃、
「待たせたナ!完成したゼ!」
さっきから武器をいじっていたゾンビが立ち上がる。
それは鉄製の、大きなスパナだった。
「決めるゼ!エレキパイカー!!!」
味方のゾンビはスパナを構え、敵のゾンビ達を次々と抑えつける。
するとスパナに電流が流れ、それを食らったゾンビ達は感電し、消滅した。
味方のゾンビとレックスは礼を言い合う。
「助かったゼ!ありがとナ!」
「いえ。にしても、その武器凄いですね」
「おうヨ!これは俺が作製した武器、「バトルスパナ」ダ!」
そう言えば、メッセージに流れてきていた。
新たな武器、バトルスパナが作製されたと。
「そうだ。自己紹介し忘れてました。僕はレックス。クラスは「英雄」の「弓兵」、職業は「義賊」でトンファー使いです」
「レックスってのカ、よろしくナ!俺はボルト!クラスは「人外」の「死兵」、職業は「武器職人」ダ!見ての通リスパナ使いサ!」
ボルトはゾンビの筈だが、何処か清潔だ。
服は見るからに洗いたてのツナギだし、目は片方無いが眼帯で隠されている。
腐っている気配も無いし、ウジなどの気配も無い。
何より死臭も、異臭もしない。
それに、この明るさだ。
「清潔にしてっからナ!俺自身不潔なのは嫌いだシ、職人である以上人間や精霊、獣人達も客にいるんダ!リピーターを増やすためにモ、不潔にゃなれねえヨ!」
そう言ったあとに、ボルトはこんな事を持ちかける。
「助けてくれたお礼ニ、何か作ってやるヨ!以前からある武器なら、何でもいけるゼ!」
レックスは少し考え、弓をだして聞く。
「じゃあこれなんですけど、どうも腕のバランスが取れなくてうまく撃てないんですよね・・・何とか改良できますか?」
ボルトは弓を見て、答える。
「お前随分扱い辛え弓を使ってたナ・・・まあ任せとケ!使いやすく強化してやるヨ!」
その後ボルトは、レックスと相談して弓の改良設計を立てていた。
「まず、どうバランスが取れねえんダ?」
「何か、思いっきり押さえても弓を持つ左手の力が足りなくて・・・矢の力に負けるんですよね・・・」
それを聞いて、ボルトは思案する。
「成る程ナ・・・じゃあ、左腕全体で押さえる形に変えるカ・・・ついでに、片手で撃てるようにもしてやるヨ!」
ボルトは、何か閃いたようだ。
「スキル、工房」
ボルトが言うと、彼の目の前に大きな作業台が現れた。
「何か素材を持ってねえカ?使えそうなもん出してくれヨ」
そう言われ、レックスはとりあえず持っていた素材を全て出した。
木の枝数本、服を作る時に余った皮、染色に使った葉っぱの余り、布切れ数枚、魔物のキバ数本、ゾンビの骨数本(消毒済み)、トンファーを作った時に余った鉄鉱石の欠片が五つ、あの魔物が落とした小さなバネ大量。
その中のバネを見て、ボルトはニヤリと笑う。
「面白えもん持ってるじゃねえカ。これを幾つか使わせて貰うゼ」
数十分後、ボルトは作業を終えて完成した「それ」をレックスに見せる。
「出来たゼ!」
それは、補強された後に鉄でコーディングした弓。(弦も布切れから作ったものに張り替えられ、強化されている)それを取り付けた小手のようなものだった。
それを掴んで親指が当たる部分にボタンがある。
小手の本体は木の皮(ボルトがその辺の木をボルトで捩じ切った)で、持ち手の部分と弓を取り付けてある所に幾つかバネが入っている。
その中は矢の保管庫になっており、レックスのスキルで小さくした矢が大量に装填されている。
前の矢が撃たれると、すぐに保管庫から矢がセットされ、自動で普通の大きさになる。
更に弓には、同時に5本矢が撃てる改良がしてある。
簡単に言うと、腕に取り付けるタイプのボウガンだ。
「指のとこにあるボタンを押すと発射出来るゼ!それと多分撃つ時は動けねえから、敵が近い時はトンファーのが良イ。あくまでデカイ敵や、遠距離攻撃様と割り切れヨ」
「ありがとうございます!」
「いや、お前がバネを沢山持ってたお陰ダ」
ボルトは少し、照れているようだった。
「じゃあナ!また何かあったら俺を頼ってくれヨ!」
ボルトは歩いて行こうとする。
「待って!」
レックスは彼を呼び止めた。
レックスはボルトに、さっきから考えていた事を切り出す。
「ボルトさん!俺の仲間になってください!パーティの一員に!」
レックスがそう言うと、ボルトは少し驚いたが、俯く。
「気持ちは嬉しいけどヨ、俺はゾンビだ。そんなんがパーティにいたら、色々と大変だゼ?」
「そんなことない!」
飾らない、でもまっすぐなレックスの叫びは届く。
「そんなに本気なら、行かせて貰うとするカ・・・なってやるゼ!お前の仲間ニ!」
「ありがとうございます!」
「あ、それと敬語はやめてくれヨ。調子狂うゼ」
「うん。・・・よろしく、ボルト!」
「おうヨ!リーダー!」
レックスとボルトは、次の街へ意気揚々と歩いていった。
プレイヤー「レックス」
レベル8
武器スキルランク2(トンファー)
種族「英雄」
クラス「弓兵」
職業「義賊(オリジナル)」
オリジナルスキル「拡縮(物の大きさを自在に変えられる)」「疾風(風の力を借りて防御力と引き換えに、スピードを上げる)」
武器「トンファー」「ボウガン」
仲間1「ボルト」
レベル12
武器スキルランク3(バトルスパナ)
種族「人外」
クラス「死兵」
職業「武器職人(オリジナル)」
オリジナルスキル「工房(目の前に、その時に必要な物の作業台を出現させる)」「???」
武器「バトルスパナ」
本人の属性「電気」
弱点「毒と炎に弱い」
- Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.11 )
- 日時: 2016/09/19 11:44
- 名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)
No.04 〜 守れ!近隣の平和 そして繋がる世界 〜
自分達の拠点を手に入れた次の日。
俺とシルヴィアは地図を頼りにタドミール・テルミヌスから1番近い村を訪れていた。
「……こいつぁ酷ぇ……。」
必要物資を購入しようと訪れた村の家屋は焼け焦げ、生活感の殆どが消え失せている。
「此処で一体何が……!?」
「それを確認するためにも生存者を………ん?」
俺達が生存者探しを始めようとした時である。
瓦礫の陰から1人の男の子が木の棒を持って飛び出してきた。
「とっ……盗賊め!また村を荒らしに来たのか!?」
「え?」
「貴様!子どもであろうと、我が主アレン様を侮辱するような言動は許さぬぞ!!」
「いいから、シルヴィア。落ち着いて。」
俺は隣で弓に5本の矢をつがえたシルヴィアを宥める様に止めた。
っていうか、こんな小さな子にその5本の矢を撃ち込むつもりだったのか……?
「俺達はこの村に略奪……えっと、物を盗みに来たんじゃねえんだ。」
「そんなの信用できるか!!」
「主様。やはりこの者にはそれ相応の罰を………」
「どっちも落ち着け!!なぁ、ボウズ。俺達、この村には本当に今来たばかりなんだ。
よかったら、此処で何が遭ったのか……話してくれねえか?」
「……何も……しないか?」
「あぁ。約束する。俺達はお前から何も奪わない。」
「……ついさっきまでは何の変わりは無かったんだ。いきなり、馬に乗った奴等が来て……
家に火を付けて、物を壊したり……家の中にいきなり入ってお金や……食べ物を持って行っちゃった……
俺ン家にも何人か来て……逆らった父ちゃんが……父ちゃんが……!!」
必死に涙を堪えて話してくれていたが、ついにその堰が崩壊し、男の子の目から大粒の涙が零れ落ちた。
「よく話してくれた。お前の他に生き残った人の所に案内してくれるか?」
男の子は服の袖で涙を拭いながら、黙ったまま……だが、力強く頷いてくれた。
「ありがとう。行こう、シルヴィア。」
「はい!その……少年。先程はすまなかった。お前も……必死だったのだな。」
男の子は静かに頷いて、俺達をまだ比較的被害の少ない小屋のような建物へ案内してくれた。
中に入ると、お年寄りや子ども……怪我をした若い人達が暗い表情で寄り集まっている。
「母ちゃん!」
「あっ……コラ!何処に行ってたの!?」
「あの兄ちゃん達が話を聞きたいって。」
「え?」
男の子の母親が頭を上げたと同時に、俺とシルヴィアは頭を下げて挨拶をする。
そして、そのまま俺はできるだけ丁寧な言葉で、男の子の母親に尋ねた。
「すいません。驚かせて……最近、この村の近くの廃墟に住み着いた者です。
少し必要な物資を購入しに訪れたら……大体の話はその子から聞きました。賊の襲撃に遭ったとか?」
「え……えぇ……その通りです。」
「この村はよく賊に襲われるのです……」
近くに居たお爺さんも話に加わってきた。そのお爺さんの話によると、今回の襲撃で3回目だそうだ。
「怪我してる人も居るみてえだし……やられるがまま、奪われるままというわけじゃなかったと……」
「そりゃあ、自分達が生まれ育った村だ!守るのは当然だろ!?だが……数が違いすぎた。」
近くに居た怪我をした若いお兄さんが声を荒げて……すぐ、悔しそうに唇を噛み締めながら項垂れた。
「くっ……これだから人間は!これが……これが同じ種族同士でやることか!?
しかも話を聞けば、ほぼ一方的な虐殺ではないか!!このような所業……人外どもと何が違う!?」
ついに我慢しきれなくなったシルヴィアが拳で柱を叩き、怒りを露わにする。
「シルヴィア………爺さん、賊共はまた此処に来るのか?」
「はい。今夜、完全に物資を奪い取るようなことを言っておりました……次の略奪を許せば
儂等はもう……生きていけません。」
「わかりました。なら、その賊共……俺達が倒しましょう。」
「えぇ!?貴方がたが!?」
「兄ちゃん……姉ちゃん……」
「心配すんな、ボウズ。必ず……この村を守ってやる。」
俺とシルヴィアは建物から出て、荒れた村を見て歩いた。
「あの人達、可哀想だったな……あれが民の現実ってわけか……」
「いつも争いを起こすのは『 力 』を持つ者……そして被害者は……」
「くそっ……こりゃ、何としてでも有言実行しねえとな……手伝ってくれるか?シルヴィア。」
「返答が必要ですか?このような所業、許せるものですか!えぇ……やってみせますとも!」
- Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.12 )
- 日時: 2016/10/04 08:01
- 名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)
数時間後。
日がすっかり落ちて辺りが暗くなった頃、俺とシルヴィアは村の入り口で待機していた。
「シルヴィア。此処は俺が見てるから、お前は反対側の入り口を見て来てくれないか?
念のために……連中の規模も解らない今、二手に分かれる可能性も否定できないからな。」
「わかりました!」
シルヴィアが反対側の入り口へ向かった直後、すぐ傍の丘から複数の蹄の音が聞こえてきた。
頭を上げてそちらを見ると、数人の男達が馬に跨り……武器を携えた状態で現れた。
大勢の賊の後方に居る……深々とローブを被り、大きな戦斧を持った奴が、おそらく大将だろう。
「ん?何だ?村の入り口に見慣れない奴が……?」
「どうします?兄貴!」
「構う事は無い!邪魔するなら殺してしまえ!!」
「へいッ!!」
「あれが賊か……人数は十数人ってとこか。」
俺は突撃槍を構え、そのまま真っ先に突っ込んできた馬上の賊に向かって伸ばし……そのまま突き刺した。
馬だけが俺の横を通り過ぎ、村の中へと走って行く。
「がっ……!ぐはあぁぁぁぁぁぁ!!」
「なっ!?」
「……返す。俺がこんな物持っていても邪魔なだけだからな。」
俺はそう言うと突撃槍を横に薙ぎ、反動で突き刺さっていた賊を仲間の元へ返す。
「この野郎……よくも同胞を!!」
「何だ、お前!!この村の奴等に雇われた傭兵か!?」
「いや……金の契約は一切してねえ。俺がボランティアでやってるだけだ。」
「はぁ?何だそりゃ……あれか?『 一宿一飯の恩義 』がどうこうってやつか?」
「それも違う。俺がこの村に来たのは今日の昼下がりだ……ただ……」
俺は突撃槍を構え直し、盗賊達へと突き付ける。
「この村に来た時、男の子が1人……親父を殺されたと泣いていた。多くの人が苦しんでいた。
その光景を見て人として何とかしてやりたいって思った……戦う理由はそれで充分だろ?」
「こいつ……野郎共!何をボケっとしてやがる!!早くあいつを始末しろ!!」
「へっ……へい!!」
盗賊達が馬に跨り、武器を構えて突っ込んで来たので、俺は改めて突撃槍を構え直す。
「ヒャッハー!!正義の味方のつもりか知らねえけどな!俺達相手にたった1人で何ができる!?」
「お前等に勝てる!!」
剣を振り下ろした盗賊の左頬に突撃槍の側面を叩き込み、そのままフルスイングして
馬の上から叩き落とした。
「この野郎……調子に乗んなよ!!」
突撃槍を振り切り、隙ができていた俺の側面から盗賊が2人、それぞれ武器を構えて突っ込んでくる。
「死ね……ぇぐああぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
武器を振り下ろそうとするより先に悲鳴を上げた盗賊達が馬の上から転げ落ちた。
その手を見てみると、1本の矢が突き刺さっている。
「何やら急に騒がしくなったかと思えば……貴様等!私の主様に刃を向けたこと、万死に値すると知れ!!」
よく知っている声がした方を見ると、廃墟となった建物の屋根の上に立っていたシルヴィアが立っており
そこからつがえた2本の矢を放ち、少し離れた場所で隣接するように馬上に居た盗賊達を同時に射抜いた。
「遅くなってしまい申し訳ありません。主様。」
「いやいや……ありがとう。おかげで助かったよ、シルヴィア。」
屋根の上から跳び下り、傍に駆け寄って来たシルヴィアの頭を撫でる。
「なっ!?あいつ……仲間が居たのか!?」
「しかも、かなりの美人じゃねえか……野郎共!!あの女エルフは生きて捕えろ……ん?」
盗賊の大将が命令を下した頃には、何人かの盗賊が反転していた。
「あれ……?」
「冗談じゃねえ!!あいつ1人相手でも何もできなかったのに……2人なんて相手できるか!!
しかも、あの弓の腕前……かなりヤベぇ!!」
「俺達はこんな所で死にたくねえんでな!!やるんなら、あんた1人でやってくれ!!」
「おいっ……!!お前等!!」
「おいおい……敵前逃亡かよ。」
「私にお任せください。」
シルヴィアが一斉に放った5本の矢は、賊達の頭上で大きな弧を描き……
逃げ出そうとした盗賊達が乗っていた馬の真正面に降り注ぐと、そのまま地面に突き刺さった。
突然のことで馬は驚いて嘶き、上に居た盗賊達を振り落とす。
「うぐぁ……!!」
「いってぇ……ひっ!!」
馬から落ちてすぐ起き上がった盗賊達が、接近してすぐ側にいたシルヴィアに驚きの声を上げる。
「たっ……頼む!美人な姉ちゃん!!命……命だけは助けてくれ!!」
「先程も言ったはずだ。主様に刃を向けた愚行……万死に値すると。」
「いや……ちょっと待って!!それは……」
「今まで好き勝手やってきておいて、自分の都合が悪くなったら命乞い?……ふざけるな!!」
そう言って放ったシルヴィアの矢は、後退りしたり逃げ腰だった盗賊達の足を的確に射抜いた。
「ひっ……ひいぃぃぃぃ!!」
「さぁ、残るはてめえだけだぜ?大将……どうする?盗んだ金品や手を付けてない食料を返すって言うんなら
少しは考えてやっても良いぜ?」
「ふざけるな……ふざけるなよ!!くそっ!!お前等さえ……お前等さえ居なければ
全てが上手くいってたんだぁぁぁぁぁ!!」
盗賊の大将が怒りを露わにし、馬上で戦斧を構えると俺の方に向かって馬を走らせてきた。
「主様!!」
「死ねえぇぇぇぇ!!」
「……っ!!」
俺は槍の側面を使って斧の衝撃を受け流してそのまま振りかえり、通過しようとした大将の背後から突撃槍を突き刺した。
「ぐああぁぁぁぁ!!」
「大将よぉ……上手くなんていかねえよ……悪事なんて。今回、たまたま俺達だったってだけで
きっと違う日、違う所で他の誰かが、きっとこうしてただろうさ。」
「かはっ……頼む……殺さないで……命……命だけは助けてくれっ……!!」
「………何人だ?」
「はぁ……?」
「お前はそうやって命乞いをした人達を何人助けたことがある?
どうせムカつく笑みを浮かべながら武器を持たねえ人達を何人も殺してきたんだろ!?」
「それは……まだ、ゲームを始めたばかりなんで………」
「っ……!」
こいつ、俺と同じプレイヤーなのか?じゃあ……此処で始末してしまったら、こいつの命は……?
駄目だ……PKをするわけにはいかない……
「貴様!何を訳の解らないことを……そんなふざけた理由が通用すると思っているのか!?」
「……落ちつけ、シルヴィア。」
「主様!?」
俺は突撃槍を横に薙ぎ、その勢いで盗賊の大将を振り落とす。
「……今ならまだ『 怪我をした 』程度だ。他の連中も助かる……これに懲りたら
くだらねえ真似なんてさっさと辞めて、早急にジョブチェンジする方法を探すんだな。」
「助けて……くれるのか?」
「あぁ。俺はお前達とは違う……PKをするつもりなんて最初から無いからな。」
「……主様が許されるのでしたら……貴様等!主様の寛大な処置に感謝するのだな!!」
「すまねぇ……すまねぇ!!」
「……ふざけんなよ……偉そうに……何様のつもりだ!?」
シルヴィアに矢を射られた盗賊の1人が立ちあがり、双剣を抜いてシルヴィアに襲いかかっていた。
「なっ……!?」
「シルヴィア!!危ねえ!!」
「この……馬鹿野郎があぁぁぁぁ!!」
盗賊が振り下ろした双剣を突撃槍を盾代わりにして受け止め、盗賊の大将が賊の顔面に拳を叩き込んだ。
「すまねえ……あんた等には本当に迷惑を掛けた……俺の盗賊団は、俺が思っていた以上に
統率が最悪だったみてえだ……。」
大将が己の拳を見つめながら呟き、殴られた盗賊が鼻血を流しながら白目を剥いて仰向けに倒れた直後
頭上から1匹の蛇が空中で首をもたげ、体をくねらせて牙を剥きながらシルヴィアの上に落ちて来た。
「え……?あくっ……!」
「シルヴィア!?」
立ったまま脱力するように後ろへと倒れかけたシルヴィアを慌てて受け止めた。
顔は赤く染まり、額からは汗がにじみ出ている。
「こいつ……双剣で斬りかかる直前、バッグに隠し持ってた蛇を投げてやがったのか……
くそっ!まさか二重の策があったとは……」
盗賊の大将はそう言いながら地面を這っていた蛇に斧を叩きつけ、頭と胴とに両断する。
「この症状……毒か!?」
月明かりを頼りにシルヴィアの顔、喉、首筋を観察し……そして、左の胸に小さな歯型があるのを発見した。
「見つけた!くっ……迷ってる場合じゃないか。許せ、シルヴィア!!」
俺はシルヴィアを地面の上に横たえると、ただでさえ布面積が少なかった服を力任せに引き裂いた。
褐色で豊満な胸が露わになり、その勢いで弾むのを手で押さえつけて止め、血の滲んでいる左胸の傷口に
口を付け、強く吸って、口の中に溜まったシルヴィアの血を地面に吐き出す。
「………っ!」
「苦しいか!?もう少しだけ我慢してくれ!」
俺は寝かせていたシルヴィアを抱きかかえ、盗賊達に背を向ける。
「……村の人達には俺からお前等のことを『 全員死んだ 』ってことにしておいてやる。
命も奪わねえでおいてやるから……こんな真似、二度とすんじゃねえぞ。」
「あぁ。俺の盗賊団は今日で解散する……すまねえ、兄ちゃん……感謝する。
そうだ!お詫びと言っちゃあ、何だが……」
大将はそう言うと自分の【 ウィンド 】を開き、俺の【 ストック 】に何かを送り込んだ。
「今はその姉ちゃんの方を優先しな。俺からのプレゼントは後日ゆっくり確認してくれ。」
そう言い残し、大将や盗賊達が互いに支え合いながら去って行くのを確認した後
俺も急いで村に駆け込んだ。
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