ダーク・ファンタジー小説

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(自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
日時: 2016/11/01 22:50
名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)

(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)

はじめましてミヤビと言います。

異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。

これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!

では下記に簡単な説明を乗せておこう。

また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!

【異世界ぐらしはじめます】設定資料

世界観設定

【属性】

〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低

【能力、職業】

能力

先天性、後天性のオリジナルスキル。

ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。


能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)


職業(有利→不利)

〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→

職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可


能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)

【武器】

武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)

【世界観】

世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。

世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、

この世界で生き残ることは出来るか・・・


(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。

同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。

それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。

だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。

一応地理は現実世界の配備で問題なし

スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。

* * * *

御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)

https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)

https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)

Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.3 )
日時: 2020/05/12 02:20
名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)

No.01 〜 最初にすること? 経験値狩り 〜

……気が付けばそこは薄暗い森の中だった。
自分以外は誰も居ない……とても静かな空間である。

「え?マジで?町スタートじゃねえのかよ。」

じゃあ、町が見えるまでは初期装備で頑張るしかないってコトか……。
そう思いながら足を踏み出した時、茂みの中から武装したモンスターが現れた。

「おいおい……いきなり戦闘かよ。えっと、武器は……これか?」

ウィンドを開き、何かそれっぽい物を選択すると、俺の手元に1本の突撃槍( ランス )が現れた。
銀色や華やかな装飾のイメージとは異なり、現れた突撃槍は血塗られたように真っ赤ではあったが……

とりあえず気にしている暇は無いので、俺は突撃槍を手にすると、襲いかかって来たモンスターを
横薙ぎで一蹴した。

武器の火力と序盤だけあって殆どのモンスターはすぐに消滅したが、中にはタフな奴も居るようで
薙ぎ払いを耐え抜いたモンスターが1匹、ゆっくりと立ち上がる。

「しぶとい奴!けど……これで終わりだ!!」

勢い良くジャンプしたモンスターの腹部に、俺が突き出した槍が見事に命中した。
攻撃を受けてHPが0になったモンスターが黒い霧となって消滅する。

「ふぅ……初陣は何とかなった……ん?」

再び静寂の時が訪れた瞬間、何やら水が流れる音がしたので、その音を頼りに歩を進めてみると
樹木で空が隠されていない場所に、大きな泉があった。

先程のモンスターの襲撃による緊張と、激しくは無かったが戦闘をしたことによって喉が渇いていたので
すぐに泉に向かった時、水面に映し出された自分の姿を見て正直驚いた。

顔はちゃんと自分の顔が反映されていて、髪はシャギーの入った青いショートヘア。
頭の防具は装備無し、肩から肘、掌までしっかりと保護している黒い籠手もまぁいいだろう。

問題は自分が纏っている胴体部分……鎧である。

色は籠手同様に黒一色。所々金色で装飾されているが……気になったのは左右一対の肩当てで
三重構造の1番外側に当たる部分。そこには左右同じように2本の太くて鋭利な棘が付いており
あろうことか巨大な目玉まで付いていた。ただの装飾かと思ったら、時々ちゃんと動いているのだ。

「何だこりゃ……ちょっと気味悪いな。すぐに解除して、町に着いたら売却……」

ウィンドを開いて、胴のパーツを解除しようとすると警告音のような音が小さく鳴り
同時に【 この装備は呪われていて解除できません 】という、どこかで見たことのあるような
メッセージまで出て来た。

「マジで!?ん?でも、装備が解除できねえだけで、特にデメリットも……」

【 移動速度が低下 】みたいな効果があるけど、元々素早さを犠牲にして
攻撃力や耐久力を上げるつもりだったから、それほど苦になるデメリットでもない。

あと、【 クラス 】としては普通の【 騎士 】ではなく【 暗黒騎士 】となっており
『 無実の罪で裏切者の烙印を押され、追放された騎士 』という有難味が一切感じられない説明まで
付け添えられていた。

「初っ端から散々な設定だな……悪魔にでも魂を売った人間が、魔界で馴染めず追放されたってトコか?」

そんな自分勝手な解釈をしていたときである。
少し離れた場所で茂みが揺れ動き、1人の美しい女性が現れた。

褐色の肌に、美しい銀色の長い髪。布地の極端に少ない官能的で機動力重視の衣装に身を包んでいる。
耳が尖っているところから察するに、まず種族【 英雄 】じゃないだろう。

「ん?珍しいですね……こんな所に人間が居るなんて……」
「あぁ……ちょっとしたゴタゴタで追放されちまってな、途方に暮れていたところだ。」

俺は目の前の女性に、たった今自分のキャラ説明で見たばかりの設定を少し掻い摘んで話した。

「そうですか。貴方も……私も、住み慣れた場所を追われた身なのですよ。」
「お前も?」
「はい。己の魔力を向上させたい一心で禁忌に触れてしまった……あの者達からすれば
 禁忌を破った上に、体が闇に染まってしまった私が汚らわしかったのでしょう。」
「そっか……まぁ、此処で会ったのも何かの縁だし、はぐれ者同士仲良くしようぜ。
 俺は【 アレン 】。属性は【 英雄 】、クラスは【 暗黒騎士 】だ。」

俺はそう言いながら、目の前の女性に向かって手を差し出す。

「そうですね……私は【 シルヴィア 】と申します。属性は【 自然 】、クラスは【 ダークエルフ 】です。」

そう自己紹介を述べたシルヴィアが、俺の差し出していた手を握り返してくれた直後
前方の茂みが揺れ動き、ゴブリンや狼が混合した群れが現れた。
その数……パッと見でも50匹は居るか……

「モンスターの群れか……シルヴィア。」
「はい。何ですか?アレン。」
「俺が何とか突破口を作る……お前はそこから戦線を離脱すると良い。」
「何を言っているのですか!?貴方1人であれだけの数を相手になど……」
「駄目ならそこでゲームオーバーになるだけだ。」

俺はしっかりと突撃槍を握り締め、魔物の群れと対峙する。
連中の武器は剣や斧、それに爪と牙。どれも俺に攻撃を当てようとするなら
かなり接近しなくてはいけない。

「その前に……叩く!!」

間近まで迫っていたゴブリンの脇腹に突撃槍を叩きつけ、そのまま一気に薙ぎ払う。
吹っ飛んだゴブリンがすぐ傍に居たゴブリンや狼を巻き込み、そのゴブリンや狼が更にその横の……と
まるでドミノ倒しのように連鎖して吹っ飛び、少し離れたところで討伐成功を示す黒い霧が大量に出現した。

「よしっ!この調子なら……シルヴィア!さぁ、今のうちに……魔物が消えたところから!!」
「アレン……いえ、やっぱり駄目です!!私も一緒に戦います!!」

シルヴィアはそう言うと、俺が突撃槍を取り出した時と同じように、すぐさま洋弓と矢筒を取り出した。
矢筒の中には既に大量の矢が入っている。

「モンスターの群れ相手に単身戦いを挑もうとした貴方を見限ろうとしたこと、まずは謝罪させてください!
 葛藤して遅れた分は、戦働きにてお返しします!!」

そう言ったシルヴィアは洋弓に5本の矢をつがえ、一気に全ての矢を放った。
5本の矢はそれぞれ飛んでいる間に間隔が開いていき、そしてゴブリンや狼の額に
それぞれ1本ずつ突き刺さった。

「シルヴィア……ありがてえ!援護射撃、よろしく頼むぞ!!」
「お任せください!!」

俺が突撃槍を振り回して1度に大量の敵を薙ぎ払った後にできてしまう隙。
その隙を補うように後方から放たれる5本の矢が、確実に1匹ずつ仕留めていく。

気が付いた頃には、あれだけ多かったモンスターの群れは残り僅かとなっており
そのうちの何匹かが戦意喪失して森の中へ逃げ帰ったのをきっかけに、残りのすべてのモンスターが
一斉に我先にと森へ逃げ帰って行った。

「ふぅ……終わったぁ……」
「お疲れ様、アレン。」
「シルヴィア……何で逃げなかったんだ?俺を見限るつもりだったんだろ?」
「確かに……正直、私はあまり人間が好きではありません。愚かで……粗野で……
 あの時も最初は『 この男は何て馬鹿なんだ 』と思いました。やはり人間は考える力の乏しい存在だとも。
 ですが、貴方は言ってくれました。『 はぐれ者同士仲良くしよう 』……と。
 たったそれだけ、たったそれだけのことなのですが……生まれた森を追われ、1人となってしまった今……
 その言葉が……差し出してくれた手が、とても嬉しかったのです。」

絞り出すように、シルヴィアはそう語ってくれた。
彼女の本心……素直な言葉を。

「なぁ、シルヴィア。」
「はい。」
「人間嫌いのお前にこんなことを言うのは酷かもしれねえけどさ……その……
 もし、よかったら、俺とパーティを組まねえか?」
「私を……誘ってくださるのですか?」
「お前さえ良ければ……な。どうせ、此処でこの後別れても結局お互い1人なんだったら………」
「『 はぐれ者同士仲良くしよう 』……ですか?」
「うん、まぁ……そういうことかな。それで……どうするかの返事を聞きたいんだけど……」
「ふふっ……愚問ですね。」

シルヴィアは俺の前に立ち、綺麗な姿勢でお辞儀をした後、手を差し出した。

「そのお誘い、心から喜んでお引き受けします。この身果てる瞬間まで
 私は貴方の傍に居ると誓いましょう。
 これから、宜しくお願いしますね。アレン……いえ、主様。」
「お……おう。よろしく、シルヴィア。」

俺は差し出されたシルヴィアの手を握り返すと、シルヴィアはそのまま重ねた手を持ち上げ
籠手の上からではあるが、俺の手の甲にそっと口付けをした。

ゲームを始めて数分……俺は美人のダークエルフにとても気に入られたらしい。

Re: 異世界ぐらしはじめます(レックス視点)act1 ( No.4 )
日時: 2016/10/14 20:39
名前: ka☆zu ◆RfyqxjRpsY (ID: z6zuk1Ot)

act1 気付いたら義賊


あれは、小さい頃の話だ。

ある絵本を読んだ夜、夢を見た。
気がつくと僕は見た事もない場所にいて、得体の知れないモンスターに追われていた。
だけど逃げる途中で転んでしまい、追いつかれてしまった。
「だ、だれかたすけて・・・」
か細い声で助けを呼んでも、誰も来るわけがない。
モンスターが僕に食らいつこうとした時、綺麗な音色が響いたかと思うと、1匹のドラゴンが、そのモンスターを蹴散らしたんだ。
遅れて現れた人が、僕の手を取る。
「大丈夫だったかい?」
「うん、ありがと!おにいさんはだあれ?」
「僕かい?僕は旅の「コンダクター」さ・・・」
その瞬間僕の意識は途切れて、代わりに寝室の天井が見えたんだ。

どうしてそんな話をするのか?
それはこれからわかることさ。

とにかく続きを話そう。
それから十数年の月日が流れて、幼かった僕は今や高校2年生。
毎日の忙しさにかまけて、そんな夢の事なんて忘れていた。
そう、あの時までは。



・・・・・・


恐らく何時間か前の事、僕は通っている工業高校から家に帰った所だった。
その日はたまたま誕生日でね、仕事で何時も家にいない親が、テーブルにプレゼントの箱を置いていてくれたんだ。
「タッ君、いつもお疲れ様!これで遊んで、連休を楽しんでね!母より」
そうだ。名乗るのを忘れていたね。
僕は白亜 竜也。
みんなからは「タッ君」と呼ばれる普通の高校生。

まあその箱を開けてみたら、拳位の端末が入っていてね、びっくりしたよ。
それが今日発売の、ある人気ゲームの拡張ツールだったんだから。



ワールドレコード。
最近人気の、狩猟ゲームだ。
けれど、どちらかというと他のプレイヤーとの繋がりを意識したものであるという事で、武器を作るのを主軸に活動している人もいるとか。
僕はやっていなかったけれど、折角なのでスマートフォンにインストールして、ゲームを起動した。

まず初めに、キャラクター作成。
性別はもちろん男性。
名前は・・・
ふと思い出した、あの夢で聞いた名前にしようかと思ったけど、考えを改める。
「夢の中の人を、そんな事に使うのはね」
で、自分の名前から連想して、「レックス」に決定。
その次は種族。
これは人間である「英雄」にした。
次にスキル。
いくつか選べるみたいだったけど、どうもピンと来るものがなかったので、「オリジナルスキル」を選んだ。
これは、その人だけの特別なスキルを覚える事ができるコマンドらしい。
(素早く操作したいから、幾つかの武器を軽々と持ち運びたい。・・・なら、武器を普段は、小さくして持ち運べる能力とかかな?)
という事で、説明にそんな事を書いて次へ。
もう一つは、「風の力を借りて、一時的にスピードを上げる」と書いておいた。
しかし、その次のクラスを選ぶ行程で疲れが出てしまい、眠ってしまった。
オリジナルクラスを選んだ所までは覚えていたのだが・・・
そして最後に、「設定が完了しました、ゲームを開始します」というメッセージを聞いたのを最後に、僕の意識は途切れた。


・・・・・・



気付いたら僕は、草原に寝転がっていた。
近くに立っていた看板を見ると、「フォレスティア大陸」と書いてあった。
自分の服装を確認してみる。
狩人が被るようなつばの尖った帽子と、毛皮で出来た盗賊風の服、毛皮のブーツに、皮のグローブ。
そして傍には、小さな弓と短剣。
どうしていいかわからず、とりあえず「コマンド!」と叫んでみる。


すると、目の前に電子ウィンドウのようなものが現れた。
そこで自分のステータスを確認してみる。
「オリジナルクラス・・・義賊!?」
まさか意識が途切れている間にそんなヤバそうな事を入力していたとは・・・
装備は、「ボロボロの弓」と「バトルナイフ」。
しかも矢がない。
従って使える武器は、バトルナイフだけだ。
しかも錆びている。
「大丈夫かなこんなんで・・・」
とため息をついた所に、狼のようなモンスターが駆け寄ってきた。
「え、ちょっと、これじゃ無理!」
今にも噛み付いてきそうになった瞬間、僕は無心になってモンスターに、弓を突き刺していた。


狼のモンスターは倒れる。
「弓だけでも、結構いけるんだね。」
とか呟きながら、僕はモンスターが落とした袋を拾う。
その中には、鉄鉱石らしきものと、幾つもの小さなバネが入っていた。
「バネなんて、何に使うのさ・・・」
そう僕が零すと、
「お、あいつなんて弱そうじゃないか?」
「そうだな!持ち物を剥いでやるか!」
下衆染みた声がした。
振り返ると盗賊風の男が五人、こちらを見て笑っていた。
「NPCでは、ないようだね」
僕の呟きは、彼らには聞こえなかったようだ。


「まさかこんなとこにこんなのが居るなんてな!」
「お前も不運だよな!盗賊なんかになっちまってよ!」
「って事で、全部置いて行け!」
五人の大男は、片刃斧を振り上げる。その一つをナイフで防ぐも、錆びたナイフはそれだけで折れてしまった。
「へへへ・・・後は矢のない弓だけだな!」
「これで終わりだぜ!」
男達が斧を振り下ろす。


僕はとっさに、近くにあった二股の木の枝を二本掴む。
そして無意識に短い部分を持ち、斧を防御した。
「なっ、俺たちの斧が木の枝なんかに!?」
そして僕は気づく。

僕に似合った戦術を。

僕は彼らの懐に飛び込んで、腹部に枝で突きを入れた。
2人の男は倒れる。
「なっ!お前ら!」
「ちくしょう!やっちまえ!」
残りの三人が叫ぶ。
僕は腕を回し、遠心力で枝を回転させる。
一番長い枝が前に来る。
僕は思いついた技名を言いながら、三人に対して、メチャクチャに突きを入れた。

「双角乱撃!」
「なっ!?そんな技あるわけ・・・」


滅多打ちにした盗賊達はみんな伸びて、気を失っている。
僕は一言、言いたかった事を言っておく。
「盗賊と一緒にしないで欲しいな。僕は「義賊」、レックスだ」


初めての集団相手の戦闘に、勝利した。
と同時に、いつの間にか腰に付いていた端末「スフィア」に、メッセージが届いた音がした。
「プレイヤーレベル1、クラス「義賊」のレックスさんが新しい武器スキルを習得しました。」
僕は、そのメッセージを見てちょっと嬉しくなった。



「お金も増えたし、街に行ってみようかな。」
僕が向かったのは、街の中の施設、「武器作成所」。
僕のような、武器を自力で作成出来ないプレイヤーが、簡単に武器を作成できる施設だ。
そこにあった溶鉱炉で鉄鉱石を溶かし、長い鉄の筒を一本と、サイズの違う四つのリング、そしてナイフの持ち手の破片を張ったスイッチを作る。
長い筒に穴を開け、そこに幾つかのバネを仕込んでリングと組み合わせる。


そして完成した、僕だけの武器。
それは、「鉄のトンファー」だった。
軽く特訓場で模擬戦が行われる。
魔力で動くモンスター人形相手に、キズ一つつかずに勝利した。

と、メッセージが届く。
「プレイヤー、レックスさんによって新しい武器「トンファー」と、武器スキル「トンファースキル」が解放されました!」

僕は得意げになって、建物を出たんだ。
「オリジナルスキル、拡縮」
自分で作った能力で、トンファーと弓をキーホルダーサイズにしてポケットにしまう。
そんな時、
「やっと会えたね、タッ君。」
そんな声に振り向くと、
「やあ、久しぶり」
そこには、燕尾服に五色の弦のバイオリンを持った青年。
小さい頃の夢で僕を助けてくれた、あの人にそっくりな人が立っていた。





プレイヤー「レックス」
レベル1
種族「英雄」
クラス「義賊(オリジナル)」
オリジナルスキル「拡縮」「???」
武器「トンファー」「弓」

Re: 異世界ぐらしはじめます(アレン視点) ( No.5 )
日時: 2016/09/14 23:28
名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)

No.02 〜 贅沢は言わない。まずは雨風を凌げれば 〜

シルヴィアが仲間になってから更に数分が経過。
俺達は森を抜けるどころか、さっきから居る泉の傍で対面する形で座っている。

「さて、シルヴィアさん。」
「はい、主様。」
「これから拠点となる場所を探すことになるのですが!
 やっぱり、お互い暗黒騎士とダークエルフという立場上、人の居る町は
 避けるべきなんだと思うんだけど……何か意見はありますか?」
「配慮していただき、ありがとうございます。そうですね……主様以外の人間は、まだどうも……
 はい。そちらの案件は、そうしていただけると嬉しいです。
 あの、少しだけ……あまり関係の無い話ですが、主様に意見具申をしても、よろしいですか?」
「何でしょう?」
「主様はその……ずっと私の傍に居てくださいますよね?」

シルヴィアの言葉に、俺の心臓が1回大きく『ドクン』と揺れ動いた。

先程、シルヴィアと出会う前にウィンドを開いた時
どこにも『 ログアウト 』の表記が無かったことは既に確認している。
『どこかのゲームみてえな状況だな。』と、思わず笑ってしまったくらいだ。

モンスターの大軍と対峙した時、ゲームオーバーになれば
現実に戻れるか、死後の世界へ直行かを確かめようとも思ったが……
死ぬことより経験値を優先してしまった。

たぶん、このゲームを始めて、この状況を知った多くの奴等は
条件の解らないゲームクリアを目指すだろうことになるんだろう。

俺?俺はあの時……シルヴィアが仲間になってくれた時、既に結論を出した。
『 この世界で第2の人生を始める 』……と。

両親が交通事故で既に他界してしまった現状、元の世界に未練なんて殆ど無いしなぁ……

グッバイ!現実世界。
ウェルカム!ファンタジー世界。

だから、シルヴィアの不安げな質問には、胸を張ってこう答える。

「当り前じゃねえか。俺達は仲間だぜ?何より……」
「何より?」
「俺を主様なんて慕ってくれる可愛いダークエルフを置いて何処かに行けるかぁぁぁ!!」
「主様……可愛いだなんてそんな……ありがとうございますぅ!」

……とまぁ、テンションに任せて盛り上がったところで、改めて本題に戻る。

「じゃあ、本拠地確保はその方向で進めるとして、後は……」
「まだ何か?」
「いや、実は……俺、結構離れた場所からこの地に来てさ、土地勘が全然無いんだよ。
 だから、どこにどんな町があるのか……まったく知らねえんだ。」
「そうなのですか?それは困りましたね……私もずっと森暮らしだったので、人間の町の事までは……」
「ん?森暮らしだったのに、人間の存在は知ってたのか?」
「当然です!以前、私が住んでいた森の近くで木々を伐採していた者を少し見た程度ですが……」
「エルフの住む森の近くで木々の伐採とか……勇気あるな、そいつ。」

こりゃシルヴィアだけじゃなく、他のエルフが人間に対して抱くイメージも相当悪いものだろうなぁ。

「拠点の他に地図も必要ってことか。」
「とりあえず、最優先すべきは拠点です。その後、お手数ですが……人間の町で
 地図を購入して来ていただいて宜しいですか?」
「あぁ、うん。もちろん。よし!じゃあ、その方針でいこうか。」
「はい!」

双方合意したところで俺達は森を抜け、道なりに歩を進めてみた。

「……この辺りは荒野なのか。さっきの森からそんなに離れてねえのにな。」
「そうですね……あら?」
「どうした?シルヴィア。」
「向こうに白い煙が多数見えます。」

シルヴィアが指差した方を見ると、即興で作られたような天幕が多数見える陣営から
複数の白煙が立ち昇っているのが確かに見えた。

「何だ?この世界にも軍隊があるのか?」
「どうします?避けますか?」
「……いや、行ってみよう。シルヴィアが人間嫌いなのは承知してるけど
 何か情報を得られるかもしれないからさ。
 大丈夫。話すのは俺に任せて、シルヴィアは傍に居てくれるだけで良いから。」
「主様……はい!ありがとうございます。よろしくお願いします。」

俺とシルヴィアが訪れた場所は小規模な宿営地で、どこかの正規軍人を初め
義勇兵や傭兵のような腕自慢達も集まっている。

「主様。まずはどうすれば……片っ端から人間を脅して情報を入手しますか?」
「それだけは絶対にやらねえでくれ。此処に居られなくなる……とりあえず、行商人を探そう。
 露店でもあれば儲けもんだ。」

まぁ、そう広くは無い宿営地だったため、広場の一角で店を構えている行商人を
すぐ見つけることができた。

「らっしゃい!何をお探しで?」
「ん?あぁ、その……地図が欲しいんだが、この店で取り扱ってるか?」
「地図ですか?本格的な物は軍などの所有物となりますので取り扱ってはおりませんが……
 安い物でよろしければ幾つかございますよ。」
「あぁ。最低限の町や周辺地域が解ればそれでいいんだ。売ってもらえるかな?
 ついでに、此処がどの辺りなのかを教えていただけると助かるのだが……」
「はい!もちろんですとも。」

俺は地図と情報の代金として、先程の戦闘で仕入れた金の半分を支払った。

「よし!これで地図は確保できた。」

ついでに周辺状況も把握した。
まず、俺の居るこの世界は『 ヴァイナー 』と呼ばれる大陸……サーバーで
ひし形のような形をした大陸の北が山岳地帯、西に人が住む村や町が集結していて
東は森や草原が広がっていて、南は運河や海が栄えている。

そして、俺達が居るのは東の大きな森を抜け、北に向かって少し歩いた場所にある
『 テロス荒野 』だということまで解った。

「地図によると、西方と南方に人間の町があるのですね。でしたら……私達の拠点探しは
 北方で行うのが宜しいかと。」
「そうだな。北で廃墟でも探して、そこをリフォームしていくか。」
「はい!では、早速向かいましょうか。」
「そうだな………」

話が纏まり、北へ向かおうとした直後、他の戦士達が騒いでいるのに気付いた。

「ん?」
「何でしょう?騒々しい……」
「……この騒ぎ様……何かと戦ってるのか?」

俺は突撃槍を構え、ゆっくりと立ち上がる。

「加勢されるのですか?」
「あぁ。別に善行をするためじゃねえよ。勝てば報酬が貰えるだろうし……それが無くても
 戦っている相手がモンスターだった場合、倒した後で素材を剥ぎ取ることもできるしな。」
「なるほど……相手が人間だった時は追い剥ぎができると……」
「まぁ、確かにそういうことで間違ってはいねえんだけども……それはあんまりやりたくねえなぁ。
 とりあえず戦場に行ってみようぜ。」
「はい!」

俺とシルヴィアが武器を構え、大勢の猛々しい声が聞こえる方へ向かってみると
大勢の戦士が複数のモンスターと戦闘していた。

先程戦ったゴブリンや狼の他に、今度は空を飛んでいる半人半鳥……ハーピィの姿まで確認できる。

「うおっ!今度はハーピィまで居るのか!?……シルヴィアは集中的にハーピィを倒してくれ!
 地上の敵は俺が引き受ける!!」
「承知しました!!」

シルヴィアが5本の矢で1度に5匹のハーピィを退治するのを横目で見た後
俺は自分に迫って来たゴブリンの腹部に突撃槍を突き刺した。

すると突き刺した槍がドス黒い邪気のようなオーラを放ち
それがそのまま先端に突き刺さったゴブリンに流れ込むと、俺の目の前で盛大に爆発した。
同時に、火の粉のように飛び散ったオーラが周囲のモンスターにもダメージを与える。

「お……おぉ……!何か、必殺技っぽいのが……もう1回やってできたら、確実だな。」

俺は傍に居たゴブリンを突撃槍で叩きつけ、地面に倒れたところを突き刺し
同じことが起こるか試してみる。

すると、先程と同じようにゴブリンを付いた瞬間、突撃槍から邪気が発生し
それがゴブリンの体に流れ込んだかと思うと、次の瞬間爆発した。

「やっぱりそうだ……突きが進化してる……」

俺はウィンドを開いて武器や技を確認すると、4つの空白だった技覧の1番上に
『 エクリクシス・ フィンスターニス 』……という技名が表記されていた。

「よし!このまま一気に殲滅してやる!!かかって来やがれ、モンスター共!!」
「主様、御見事でございます!!私も……何か……」

狼を薙ぎ払った時にふっと後方を見ると、シルヴィアが1本の細長い闇の塊を作り出して居り
それを弓につがえると、狙いを上空に定める。

「いきます……『 ラーテゥンヴァッルン・ドゥンケルハイト 』!!」

シルヴィアの放った闇の矢はハーピィ達よりも高い位置まで飛んでいくと、そこで破裂し
上空から無数の闇の雨がハーピィや地上のモンスター達に降り注ぐ。

「おぉ……やるじゃねえか、シルヴィア!!おかげで殆どの敵を一掃できた!」
「少しはお役に立ちましたでしょうか?」
「もちろん!充分すぎる活躍だぜ!!頼りにしてる……その調子で頑張ってくれ!!」
「主様……ありがとうございます!さぁ、残りの敵も殲滅してしまいましょう!!」
「おう!!」

といっても、他にも戦っている戦士も居るからな……
モンスター達はどんどん黒い霧となって消滅していき、戦場にはただ牙やら羽やらの素材だけが残った。

「シルヴィア!他にモンスターは!?」
「………いえ、後は人間の姿だけ……お疲れ様です、主様。私達の勝利です!」
「そうか。じゃあ、シルヴィアは此処で素材を集めていてくれるか?
 俺は宿営地で報酬を貰った後、北へ向かう準備をして此処に戻って来るから。」
「了解です。どうか御気をつけて……」
「いや?気を付けるようなことは何も………」

その後、宿営地で自分が予想していた倍以上の報酬を貰い、地図を買った行商人の店で
水と干し肉を購入し
戦場跡で素材集めをしていたシルヴィアと合流して、そのまま北の山岳地帯へ向けて出発した。

Re: 異世界ぐらしはじめます(ライラプス視点)2話 ( No.6 )
日時: 2016/09/14 23:16
名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)

先ほどのマントの人物をロストしてしまったので、まあ無駄弾を使ってしまったわけだが確かな事がわかった。
・・どうやら人はいるらしい。
ちゃんとログインできたようだが如何せ不思議な事がある、倒してもアイテムがドロップしない。
これはアレかな?剥ぎ取れというのだろうか、残念ながらナイフすらないのでそれは出来ないな。

さて整理しよう。

1つ、
この状況下で欲張りたくはないが、折角討伐した飛龍だ、なんとかアイテムか金相当の何かにしたい。
しかしここに放置もするわけにはいかないか。
だからこの(ピー)重い(ピー)ッタレのこいつを放置するしかない。
なんせ移動させることすら困難だからだ。

ではどうするか。
刃物を探す。

2つ、
刃物はどこにあるか。
城の中は見ていないのでそこしかないだろう。
ただ剣ではない、解体用の刃物だ。調理器具が一番好ましいか。

3つ、
こいつは食えるか。
正直変な臭いもしない、肉質はゲル状でも何でもない。
至って普通よりの食事が出来ると見ていいだろう。


結果、こいつは当分の生活源になる。
だからこいつは確保する必要性がある。

『決まりだな。スキル展開、遮断。』

スキルを展開し四方を遮り万一のために盗難防止をする。
まあ盗むやつはいないだろう。

* * * * 

【古城内部】

思ったより酷い有様だ。
言葉を選ぶべきなんだろうけど、なんか1.5m四方に黒いススみたいなのがある、
うん、見覚えのある形。
どうやら先ほどの飛龍と含めて考えてここはドラゴン種に襲われたみたいだ。
先ほどは火を使わなかった。だから別のやつがやったのだろう、このスス。

話を戻そう。

ドラゴンの解体には何が要るか。まず刃物が通るとは思わない、
魚じゃないんだ鱗の剥がし方は1枚単位の作業になるだろう。
ホント厨房が生きていたらどれほど助かったか、数日野営は確定だ。

『厨房っと。やっと着いた。5階中3階に来てようやく見つけた。
考えながらでも良いんだけど、すまない独り言はやはり必要だ。喋っていると落ち着く。
あと誰かいたら気付いて貰えるしモンスターと思われて襲われない、
正に一石二鳥だな。』

でも疲れるや。

『さーてなんかないかなー。』

中華包丁みたいなの発見。

『こいつはいいや、あとはピッケルみたいなやつは・・・ないよな、
普通に物置だよな。』

* * * *

『んーこんぐらいでいいだろう。』

中華包丁、ピッケル、斧

『大型ペンチとか欲しかったけど仕方ない。
あと気のせいだろうか?』

チラッ

・・・

後ろを確認するも何も変わったものはない。

『・・・視線を感じる。』

そのまま特に気にせず城壁の上の飛龍の所まで行くライラプス。

【飛龍死体の傍】

『さて、解体するか。』

中華包丁で鱗を1枚ずつ剥がし、露わになった肉を包丁で切り取り500gくらいだろうか肉を採取した。

ぐうううう・・・・

俺じゃないぞ?俺じゃ。

『・・・ないぞ・・?』

音源は後方、見張り塔の壁の向こう側。何かいたな。
てか生き物だよな?

『肉食いたいのか?!火があったら助かるんだが。一緒に食べないか?!』

大声で交渉してみたが驚いてそのまま逃げてしまった、
あれか?通じなかったか?
まあまた来るだろうし気長に待とう。
それにとりあえず干し肉にしてみるのも悪くないだろう。

『・・・来たな。』

そろそろ気配が分かってきた。これか、正確には足音、
干草を石でこすったような音だ。
草履というより雪国で使っているような干草で出来たブーツのようなものだろう。

今度は失敗しないように「言葉」を使わずにアプローチしよう。
まず笑ってーの、手招きしてーの、肉をあげるように差し出すジェスチャーしてーの。

反応あり。

めっちゃ疑ってるな。ここは大阪のおっちゃんみたいな「ええーからこんかい」ジェスチャーだ。
お、申し訳なさそうな感じで来たな。

『・・・・!・・・!・・・。』

『え!?なんて!?』

全く分からない言葉だ。設定間違えたかな、これはマズイ。

『・・・?』

仕方ない、反応から察するにCPUではないな・・
ジェスチャーで持っている肉を指して次にマントの人を指し・・・人?

なんだろう、毛むくじゃらだ、分かりやすく言うとケモノだ。
二足歩行の身長130くらいのツンツンした毛並みの青い・・ケモノだ。

(それなら火はないか・・まあだからなんだという話だが・・。)
そのまま肉をケモノの手に握らせる。

パアアっと笑顔になって肉にガッツきだし、満足した顔になる。
うん、生でもイケる口か。

しかし意思疎通できないのは痛いな。

自分を指して
『ライラプス。』

と何度も区切りながら言う。

すると

『らいらぷす?』

とケモノは言い満面の笑みでよーしと言い頭を撫でる。
まるで犬の扱いだ。

『サニー!』

同じような仕草をしている、どうやらサニーと言うらしい。

『そーか、サニーか!よろしくサニー!』

会話が成立しにくい仲間の誕生だ。

それから野宿し町のある方へと移動することにし、この古城を拠点に情報を収集することに決めた。
サニーは相変わらず何を言いたいかわからんが聞いたことのない言葉である以上、
何かしらの対策は講じたいものだ。解読スキル持ちの誰かが居れば助かるのだが。

『そうこうしている内に敵か。』

ウルフが3頭、対してこっちは護衛対象1と銃1丁のハンデ戦か。

1頭が飛び出してきた、狙いはライラプスの胴体。
銃口を口に突き刺し発砲、1頭は崩れるように消え2頭目が飛びついてくる。

『スキル、遮断!』

壁を展開しガード、その隙に再装填し三頭目の腹を狙撃。

『しまった!』

2頭目がサニーに飛びついた!

『・・・!!!』

サニーは右大腿に装備していたナイフを振るってコースを変え、
着地した所を狙撃。背中へ直撃し全滅させることに成功した。

『飛龍と違い消滅したな。大型だと消滅しないのかな?』

新たな発見と捉えるか、それとも1つの謎がうまれたと考えるべきか。

なんにせよやることに変わりはないんだ。
前向きに考えよう。

【近場の町エンテ】

それなりの人が集まった小規模の町、宿と露店が主な構成だ。
感じは「中継地点の市場」といったものか。
分かりやすく言うなら高速道路のサービスエリアのようなものだ。

『さあサニー。はぐれないように手をつなごうか。』

そっと手を握り暫く歩くと上機嫌ではしゃぎだしたサニー。
そーか気に入ったか。

『お、あったあった。地図は・・まあ下の上のクオリティかな。
おっちゃん地図くれ!』

『・・・?・・・・。』

あ、このニュアンスサニーと同じ言葉か。
どうしようまず言葉が通じないならジェスチャーで買い物するしかねえじゃん。

地図を指し人差し指を立て。1つくれのサイン。

商者は値札を出してきた。なるほど足元を見ているのか・・1200。

こちらは鞄から飛龍の鱗を12枚出す。

商者は?を浮かべ鑑定し出し、冷や汗を流した後引きつった笑顔で頷く。

『そーか成立か。ありがとな。』

その後自分の足元を指して、次に地図を指す。
「ここはどのあたりですか?」と伝え、位置も教えて頂いた。

どうやらここから北東1時方向に都市があるらしい、
目指すはそこだ。

『あとは鱗は246枚。他は取ることが出来ないほど硬かったからな。
さーて、お前さんと話せるのはいつになるのか。』

『・・・♪』

『うん、だんだん寂しくなってきたぞ♪』

目指すはこの世界の近場の都市、古城からかなり遠くなるが・・
なあに都市はきっと最高な所さ多分な。あと言葉・・覚えなきゃダメかなあ。

他の地域では通じることを願う。

Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.7 )
日時: 2016/10/04 07:01
名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)

No.03 〜 拠点確保!動きだす戦いの時 〜

宿営地を出発してからほぼ1日を費やし、俺達は北の山岳地帯に到着した。

「さてと……北に到着したみたいだが、ここからまた、拠点として使えそうな建造物を探さねえとな。」
「森に居た頃に読んだ書物に記載されていたのですが、この辺りでは昔、激しい戦があったそうです。
 使い物になるかどうかは解りませんが、それなりの数の廃墟はあるかもしれません。」
「まぁ、時間もあるし、1つずつ見て廻ろうか。」
「はい。」

しばらくシルヴィアと周囲を散策し、廃れた建物を見つけては使用できるかどうかを検討し合う。

「……なかなか良いのが見つからないな。」
「そうですね……ん?主様!あちらを御覧ください。」
「ん?」

シルヴィアが指差した方を見ると、背後を断崖に守られた真っ黒な城が建っていた。

「うおっ!よく見つけたな、シルヴィア。けど、此処からじゃ……もう少し近づいてみるか。」

念のため、俺達は武器を構えながら、シルヴィアが見つけた城へと接近する。
その黒い外観は中々の威圧感を放っており、これは近づいてようやく気付いたのだが
閉ざされた城門と荒野の地の間には、頑丈な鉄の橋が掛けられており、鎖や石の装飾によって
しっかりと固定されている。

「おぉ……立派な建物だな。この黒い石……あれか。黒曜石ってヤツか。」
「目立つような破損も殆ど無いですね。これなら、充分利用可能かと。」
「とりあえず中も見てみよう。結論を出すのはそれからかな。」
「あっ、そうですね。」

俺とシルヴィアは閉ざされていた木製の扉を押し開け、城内へと歩を進めた。
中はしんと静まり返り、石の冷たさだけが伝わってくる。

「こりゃ早めに灯りを調達したほうが良いな……まぁ、可能な範囲で2手に分かれて探索しよう。
 シルヴィアは上の階を見て来てくれ。俺はこの階と地下を見てくる。」
「承知致しました。では探索後、このエントランスでまた。」
「おう。何か見つけたりした場合は、再会した時に報告ということで。」
「了解です。」

シルヴィアはそう言うと、石造りの階段を上って行った。

「さてと、俺も始めるとするか。」

モンスターが住み付いている可能性もあるので槍を持ち、シルヴィアが上って行った階段を中心に
向かって右側の通路を進み、1番奥の部屋から探索を開始した。

1階には倉庫の他は特に目立った発見が無かったので、俺はエントランスの石階段を下りて
地下へと向かった。
そこは地下の薄暗さに加え、壁や床、天井の黒曜石による暗さが作り出した完全なる闇の世界で
灯りが無いと、殆ど何も見えない。

幸い、俺は少し目が慣れてきたので、壁に触れながら道なりにどんどん奥を目指して歩を進めた。

途中、自分の籠手が何か金属にぶつかり、乾き澄んだ音を地下空間に響かせる。

「ん?これは……」

手探りで確かめてみると所々隙間があり、何となくこれが鉄格子であることが解って来た。

「ということは、地下は全体的に牢屋なのか……窓も無い、こんな場所に……か。」

とりあえず探索を終えてエントランスに戻ると、同じように探索を終えていたシルヴィアが待っていた。

「あっ……お疲れさまです、主様。どうでしたか?」
「地下は殆ど牢屋、1階は倉庫と思われる広い空間以外の場所は個室だったよ。
 あと……その倉庫で良い物を見つけたから今、【 所持品 】という形でストックしてる。
 シルヴィアの方はどうだった?」
「はい。最上階以外は大広間がありました。おそらく、軍議や謁見などはそちらで行っていたのでしょう。
 他は別搭に向かう廊下以外は、大小様々な個室でした。」
「あっ、別搭へ行く通路は上の階にあるのか。外から見えていたのに1階から行けなかったんだよ。」
「別搭も確認して参りましょうか?」
「いや、どうせ兵舎とか食堂だろうから暇な時で良いよ。」
「暇な時……ということは、主様!」
「うん。モンスターも住み付いてなかったし、ここ最近人が使った形跡も無い……
 誰も利用する者が居そうにないので、今日から此処を俺達の拠点とする!」

俺の宣言に、シルヴィアが微笑みながら拍手で賛成の意を示してくれた。

「それじゃあ、必要物資は後々調達するとして……シルヴィア。その大広間まで案内してくれないか?」
「了解です。」

石造りの階段を上り最上階に到着すると、先行していたシルヴィアが階段正面の大きな扉を押し開けた。
中は確かに、玉座の間というほどではないが、『 この場所では真面目にしなければならない 』と思わせる
空気が微かに残っている。

「おぉ!良い感じの部屋だな。」
「はい。どうぞ、主様。こちらの玉座に……どこも破損していないことは確認済みです。
 綺麗に布拭きをしておきましたので、すぐにでも御使用いただけます。」
「そっか。ありがとう、シルヴィア。」

俺は隣に居たシルヴィアの頭を撫でてあげた。同時にシルヴィアが顔を真っ赤にして
頬に手を当てながら、体をモジモジさせる。

「この玉座は後で座らせてもらうとして、先に見て欲しい物があるんだ。」
「見て欲しい物……ですか?」

玉座の丁度正面に置かれた立派な机の傍に移動すると、【 ストック 】の中から
倉庫で見つけたアイテムを取り出し、そのまま机の上で広げた。

「これは……地図ですか!?」
「あぁ。しかも宿営地で買った一般向けの物じゃない……周辺の廃墟や、誰も気づかないような抜け道まで
 ちゃんと記載された正真正銘、本物の地図だ。
 御丁寧なことに、この拠点の場所に記までつけてくれてある。」
「なるほど……以前使用されていた物が、そのまま残っていたのですね。お見事です、主様!
 大発見です!!」
「そう言ってくれると、嬉しいな。それじゃあ……この地図をシルヴィア、お前に渡しておく。」
「えっ!?私に……ですか!?」
「あぁ。エルフは俺達人間より頭が良いからな。この地図の内容を覚えて
 今後の戦いに『 知識 』として役立ててほしいんだ。お願いできるかな?」
「主様……はい!もちろんです、お任せください!!」

シルヴィアは丸めた地図を大事そうに抱きかかえ、満面の笑みを見せてくれた。

「よし、それじゃあ……次は今後の方針なんだけど……」

俺はシルヴィアが用意してくれた玉座に腰を下ろして、話を続けた。

「此処を拠点に世界征服ですか?」
「いやいや!そんな真似はしねえよ!!まぁ……当面のやることは
 『 モンスター討伐 』、『 賊討伐 』、『 大きな戦の際は義勇兵として参加する 』……こんなもんかな。」
「善行を積まれる……ということですか?」
「戦っている本人はそんなつもりは無いけど、結果だけ見ればそうなっていた……って感じかな。
 慈善事業じゃないからな。報酬が貰える時は遠慮しないで貰うさ。」
「なるほど。」
「後、シルヴィア……これだけは絶対に守ってほしい事が2つあるんだけど聞いてくれるか?」
「もちろんです。どうぞ、仰ってください。」
「じゃあ……1つ、俺達からは絶対に戦を仕掛けないこと。
 そして2つ、助けを求めて来た者は【 英雄 】・【 人外 】・【 精霊 】の種族に関わらず救いの手を
 差し伸べること。」
「義勇軍のありかたのような約束ですね。」
「まぁ、実際それに近い事をしようと思ってる。人間嫌いのシルヴィアには2つ目は難しいかもしれないけど
 頑張って守ってもらいたい。」
「はい。私も……救いの手を差し伸べてもらえた時の嬉しさは知っていますから……
 御安心ください。この2つの約束、絶対に違えるようなことはいたしません!」
「ありがとう、シルヴィア。その代わりと言ったら何だけど……
 村や町を襲ってる賊や軍隊、この城に攻め込んできた『 なんちゃって勇者 』共を相手にする時は
 容赦なんて一切、しなくて良いから。」

城の見た目がコレなのに加え、そこに居るのが暗黒騎士とダークエルフだという情報が
いずれ何らかの形で広まったら、それを討伐して名を上げようと考える奴等も来る……と思う。

「わかりました!私達に挑んだ者や賊に対しては一切の容赦は要らない!
 二度とそのような考えが思い浮かばなくなるよう、徹底的に排除しろというわけですね。」
「おう!その通りだ。」

俺とシルヴィアは大広間を出て、そのまま隣接していたベランダへと足を運んで外の景色を眺める。

「シルヴィア。この城の周り……あの鉄の橋の下に溶岩を流すことってできるか?」
「そうですね……後ほど、炎属性の魔法を色々試してみます。」
「ごめんな、無理ばっかり言って。」
「いえ!そんな……むしろ、もっと頼ってくださっても良いのですよ?」
「いや、あんまり頼りっぱなしってのも……その辺はまぁ、臨機応変に適材適所ということで。」
「わかりました。では、主様。最初のお仕事でございます。」
「最初のお仕事?」
「はい。私達の拠点となるこの城に、名前を付けてくださいませんか?」
「えぇ!?俺、そんなにネーミングセンス、良い方じゃないんですけど!?」
「構いません。この城の君主として……さぁ、どうぞ。」

俺は腕を組んで、しばらく悩み……そして

「よし、それじゃあ今日から此処は【 タドミール・テルミヌス 】と命名する!」
「承知致しました。では、地図にもそのように記載しておきますね。」
「あぁ、頼む。」

ゲーム開始2日目で早くも俺は自分の拠点を手に入れた。
『 他のプレイヤーは今頃、金を払って宿屋に泊っているんだろうなぁ 』……と思うと
ちょっと優越感に浸れる。

そういや、このゲームってギルドバトルのようなシステムってあるのかな?

「まぁ……あったらあったで頑張ればいいか。1人じゃ……ないんだしな。」

開かれている扉の奥、大広間の机の上で地図を広げ、羽ペンで何かを記入しているシルヴィアを見つめた後
自分の掌に視線を落として……決意を固めるために、強く握り拳を作った。

俺達の戦いの日々が、今……本当の意味でスタートする。


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