ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- (自由参加小説)異世界ぐらしはじめます(祝!閲覧1000!)
- 日時: 2016/11/01 22:50
- 名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)
(紹介前に総合掲示板の雑談掲示板に「異世界ぐらしはじめます 雑談所」を設けました!お気軽にお聞き下さいませ♪Twitterにて基本活動しておりますので急ぎでしたらTwitterまで!)
はじめましてミヤビと言います。
異世界ぐらしでは中世チックなフィールドを好きなように駆け回り。
共闘するもよし自分で国をつくるもよし。
自分ならこうすると言ったことを書いちゃって下さい。
これはリレー小説形式で。
参加型の小説です。全てが正規ですべてが外伝であるこの世界にようこそ!
では下記に簡単な説明を乗せておこう。
また、【あくまで楽しむことを前提に】書いて下さい。
マナーを守り規則正しいもう一人の自分を小説で動かしましょう!
【異世界ぐらしはじめます】設定資料
世界観設定
【属性】
〔英雄〕基本人類のクラス、技術スキル高 基本値低
〔人外〕魔物相当のクラス、特殊スキル高 致命的な弱点有
〔自然〕精霊とかのクラス、保持スキル多 異常体勢低
【能力、職業】
能力
先天性、後天性のオリジナルスキル。
ストックは2まで。
強力な能力であればデメリットも付属させる。
例
能力(時を3秒止める)デメリット(次発動まで3時間チャージ)
職業(有利→不利)
〔英雄〕騎士→弓兵→魔術師→
〔人外〕死兵→呪士→死霊使→〔自然〕巨神→獣人→エルフ→
職業はオリジナルスキルの関係上でオリジナルの職業の作成可
例
能力(竜属性の召喚)職業(竜騎士『騎士』)
【武器】
武器や技術は中世17世紀ちょっと先程度、よくて蒸気機関までが好ましい。
(無論新型でボルトアクションのライフルから有線電気機材は可、
ただ量産する技術、発展途上の技術に留める)
【世界観】
世界が1度、人類文明が滅び再び現文明まで築き上げて17世紀。
過去の遺跡・遺産から可能な限り再現可能なものを生産しまた1から作り上げた物を使って
レンガ造りの建物や紙の作成。現歴史までなかった生命に宿る超能力『魔導力』によって可動する
乗り物や工具を作り。世界各地には『神殿』や『城都市』といった文化が確立されていった。
世界にはいくつかの大陸と無数の島があり、
上陸してすぐ山道を登ってはハルピュイアやマンドラゴラと遭遇する島もあれば
果てしない雪の平原で巨大な生物や奇妙な知的生命体に襲われる所も、
この世界で生き残ることは出来るか・・・
(参加者の視点)
あなたは普通の現実世界では人気ゲーム「ワールドレコード」をプレイしていたゲーマーで、
特殊ソフト(3DCG作成ソフト等)を使えば、自分好みの見た目をつくれたりする狩猟を目的にした
一大娯楽として確立されたゲームで早7年。
発信元の大企業『ノア』現社長『イズミ』はユーザーの期待に応えるべく。新技術の投入によって現ワールドレコードは
全く新しいゲームに生まれ変わると宣言。
同時刻、新デバイス『スフィア』と呼ばれる掌サイズのマウスの形のした機械(子機)を発売。
これと連動することで新感覚の体験ができるとのこと。
それを使うと一瞬白い閃光に包まれたと思ったら。
なんと自身が作成したキャラクターになっていた。
だが世界観は全くの別物。
土地勘無し、お金なし。ログアウト画面無し。
あるのは以前のステータスとスキル、アイテムのみ。
一応地理は現実世界の配備で問題なし
スタート地点は自由。
国を創るも奪うも自由。
この世界に入ったプレーヤーはここの住人となって元の世界に帰る方法を模索あるいは
世界征服を目論むことも自由。
* * * *
御用の方は下記まで御連絡下さい
(質問・感想お気軽に)
https://twitter.com/miyabi_virossa(ミヤビアドレス)
https://twitter.com/yawashigure(柔時雨)
- Re: 異世界ぐらしはじめます ( アレン視点 ) ( No.23 )
- 日時: 2020/05/14 13:32
- 名前: 柔時雨 (ID: lU2b9h8R)
「生ける屍( リビングデッド )?ゾンビじゃないのか?」
「まァ、ゾンビでも良いんだけどよ……ホラ、オレって結構、いろんなアンデッドの要素が
含まれてる……みたいだから?」
「自分の体のことなのに、曖昧ですね。」
「あんまり気にしてねェからな!自慢じゃねェが、きっとおそらくこの世界で1番元気な死体だぜェ!」
「元気な死体って……まぁ、目の前に居るから間違っちゃいないんだけど……皮肉な例えだな。」
今まで座っていた墓石から跳び下りたマウトが、ゆっくりと俺達の前に立つ。
「で?アレンとシルヴィアは何しに此処に来たんだ?身内の誰かの墓参りか?」
「いや、地図を見て少しこの周辺地域が気になって、確認しに来たんだ。」
「特に何の問題も無かったので、このまま拠点に引き返そうかと思っていたところです。」
「そうかい。いやァ……久々に楽しい話し相手に会えたと思ったんだが
あんまり引き留めちゃァ悪いな。」
「マウトはこれからどうするのです?」
「俺か?俺はちょいとやることがあるんでなァ。それが終わったら……そうだな……また地中に戻るか。」
「やること?何をするんだ?」
「最近よォ、馬鹿な人間が墓荒らしをしてやがるらしいんだ。」
「墓荒らしだと!?」
「おう。あの世の川の淵でボーッとしてた時によォ、冥府に旅立つ婆ちゃんの魂が
『 死んだ時に棺桶に入れてもらった、思い出のサファイアのブローチを賊に奪われた 』……って
泣きながら船に乗って旅立って行ったんだ。
皆、生前の行いや残してきた家族を思って暗い表情だったが……ここ最近は特に
墓荒らしの被害者が多くってな。遺族が良かれと思って棺桶に入れた思い出の品が盗まれたって
すすり泣いてやがる。」
「それでわざわざ出て来たというのですか。意外と御優しいのですね。」
「まァ、そいつ等は既に天国か地獄のどっちかに逝っちまったワケだからさ……
今更感謝の言葉を聞きたいとか、そんなつもりは、これっぽっちもねェんだ。
ただ……人が安らかに眠るのを邪魔した揚句、そういう思い出の品を持って行っちまう奴等が
許せねェだけなんだよ。」
「充分な理由じゃねえか。よし!俺達もその墓荒らし退治、手伝うよ。」
「はい!死者を労わること無く、己の欲望のためだけに墓や棺桶を掘り返す愚行……
絶対に許せません!!」
「あんた等……マジで助かる。もし、オレが動けなくなった時は頼むわ。」
「わかった。」
「墓荒らしが動くとすれば夜中……まだ時間があるので、今のうちに休んでおきましょう。」
「そうだな。馬達も少し離れた場所に繋いでおこう。」
* * * * *
それから数時間後。
周囲は完全に暗くなった頃、オレ達が身を隠している場所から少し離れた場所で
何やら重い物を動かす音が聞こえてきた。
「来たか……」
「ヒャッハー!!今まで散々待たされたんだ、もう暴れちまって良いよなァ!?」
「待ちなさい、マウト!まだ、墓荒らしと決まったわけでは……」
「いや、こんな時間に墓地に居る時点で『 私は賊です 』って言ってるようなもんだ。
とりあえず、行くだけ行って話を聞いてみよう。」
「はい!」
マウトがテンション高く飛び出した先では案の定、2人組の男達が墓石を動かし
中の棺桶を掘り返している最中だった。
「テメエ等か!!最近、此処に出現するようになった墓荒らしってのは!?
まったく……死んだ人間から物を奪ってんじゃねェぞ、コラァ!!」
「ん?ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!ゾンビが出たあぁぁぁぁ!!」
「おうよ!オレ様はこの世界1テンションの高い最強のゾンビ、マウト様だぜェ!!
ホラ……ミッドナイトのホーリーなパーティしようじゃねェか……ギャハハハハハ!!」
「夜中にこのテンション……さすがアンデッド。」
「私達には真似できませんね……。」
「ひぃ!!まだ仲間が居やがった……にっ……逃げ……」
「おっとォ!逃がさねェよ!!『 岩融( いわとおし ) 』!!」
マウトがそう言いながら突き出した右肘から、肉を貫通して伸びた骨が逃げようとした男の背中を強打した。
「ぐあぁぁ……!」
「おいおい!パーティはこれからだろォ?仮に逃げるんなら、しっかり逃げなァ!!
まァ……逃がすつもりはねェけどな!!ギャハハハハハ!!」
「落ち着け、マウト。ちょっと……そいつ等と話をさせてくれねえか?」
「……わァったよ。そン代わり、そいつ等の返答次第じゃ、オレはまたご機嫌になるぜェ?」
「あぁ。その時は好きにしろ。俺もシルヴィアも止めたりしない。」
俺は怯える墓荒らしに歩み寄り、喉元に突撃槍の先端を突き付ける。
「お前等、何でこんなくだらねえ真似したんだ?死者は丁重に葬り、安らかに眠らせてやるのが
最低限の礼儀ってもんだろ?」
「へっ……へへ……そうは言うけどよぉ、兄ちゃん。死んだ奴が金銀財宝を持ってたところで
何の役に立つ?これで美味い物を買えるわけでも無けりゃ、遊んで暮らすことだってできねぇ!
俺達はよぉ……死んだ人間共の代わりに、この使われねえ金を有効利用してやってるんだよ。」
「そっ……そうだ!これも……ある意味、ボランティアなんだ!」
俺に槍を突き付けられている男と結託して、マウトの骨で背中を強打された男が声を上げる。
痛みはまだ和らいでいないらしく、左手で背中を押さえて仰け反っているが……
「マウト。この世界でもあの世の川の渡し賃ってのはあるのか?」
「おゥ、あるぜェ!まァ……1人につき、金貨1枚だけどな。それ以上に持って逝ってる奴は
地獄の沙汰も金次第とか思ってんじゃねェの?知らねェけど。」
「なるほど。じゃあ、お前等はその賃金を奪っていた可能性があるわけだ……。」
「ちなみに……そのお金が払えなかったら、どうなるのですか?マウト。」
「そりゃ、もちろん船に乗せてもらえねェさ。いや、その川渡ししてる野郎がかなりの守銭奴でよォ。
鐚1文マケようともしねェ!で、結局、金の無い奴は永遠に……俺と同じように
天国にも地獄にも行けずに川の淵を彷徨うことになるのさ!」
「……だそうです。とんでもないことをしてしまいましたね、貴方達。」
シルヴィアはそう淡々と言いながら、弓に5本の矢をつがえて墓荒らし達に狙いを定める。
「棺桶に金を入れる理由がちゃんとあったってわけか……それをお前等は……」
「はっ!だからどうした!兄ちゃんも姉ちゃんも、そのゾンビの話を信じるのか!?
嘘を言ってる可能性だってあるかもしんねえだろ!?だいたい、死後の世界なんて……
あるわけがない!!」
そう言いながらマウトに骨で小突かれた男が痛みが和らいだのだろう……
落ちていたつるはしを拾い上げ、俺に向かって振り上げて来た。
「主様!くっ……!!」
「ん?まァ、そう慌てんなって。」
「「え……?」」
墓荒らしがつるはしを振り下ろした瞬間、俺の横に立ったマウトの左肩につるはしが
深々と突き刺さった。
「マウト!お前……!!」
「主様を御守りしたことは称賛に値しますが、何を自分から敵の攻撃を受けに行っているのです!?」
「何を驚いてんだよ、2人共。オレ様はゾンビだぜ?痛覚なんか、とっくに無くなってるっつゥの!」
「「あ………」」
「ひっ……ひぃぃぃ!!」
攻撃して来た方の男がつるはしから手を離し、慌てて逃げ出したのをマウトがジッと見つめる。
「まァ、こんなコソ泥みてェな真似しかできねェ小心者にしちゃ、頑張った方か。」
マウトはそう言うと、肩の肉ごとつるはしを引き抜くと、そのまま地面に潜り、逃げ出した墓荒らしに
向かって迫って行く。
「死後の世界なんて……あるわけねェ?そう思うんだったら、いっぺん臨死体験して来いや!!
くらえ……名前を変えて何世代にも渡って受け継がれる奥義!『 棒火矢( ほうびや ) 』!!」
そう言いながら地中から勢いよく飛び出したマウトは、男の尻に指を豪快に突き刺した。
結果だけ見れば、俗にいう『 カンチョー 』である。
まさか、この世界で『 カンチョー 』を目の当たりにする日が来るとは……あんなのを見たのは
小学生の時以来だ。
しかも……よく見ると、重ね合わせた左右の手の人差し指と中指……つまり、計4本の指が
相手の尻に深々と突き刺さっている。
この光景には思わず、俺もシルヴィアも無言のまま、ただ自分達の尻を武器を持っていない方の手で
覆い隠した。
「あァん?どうした?気持ち良すぎて声も出ねェか!?とんだ変態野郎だな!ギャハハハハハハ!!」
「……さて、残るはお前だけだが……」
「ひっ……わっ、悪かった!マジで反省してる!!あのゾンビの話を聞くまで
本当に死後の世界ってヤツのことを何も知らなかったんだ!!だから……殺さないでくれ!!
あと、さっきのアレもしねぇでくれ!!」
「お……おう。」
涙ながらに必死の形相で謝罪する墓荒らしの姿に、思わず突撃槍を引いてしまう。
たぶん、『 アレ 』って……マウトのカンチョーのことだろうなぁ……
- Re: 異世界ぐらしはじめます ( アレン視点 ) ( No.24 )
- 日時: 2016/09/23 22:39
- 名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)
翌朝。
俺は縄で縛り上げた墓荒らし達を町の役所に連行し、再び墓地へと引き換えして来た。
マウトのアレを受けた方の男がまだ目を覚ましていなかったけど……まぁ、何とかなるだろう。
「……で?これはどういう状況なんだ?」
俺が墓地に戻って来ると、シルヴィアの足元でマウトが横たわっていた。
しかもピクリとも動かない。
「主様……それが……」
「ん?よォ、アレン。おかえりィ〜!」
「あ、生きてたのか。どうした?太陽の光で浄化されそうなのか?」
「あァん?オレが今更、太陽の光なんかでくたばるかよ!まァ、そりゃ夜の方が好きだけどな。」
「そうなのか。じゃあ、これは一体どういう……?」
「いやァ……昨日の夜さァ、あんだけテンション高く動き回ったから大丈夫かと思ったんだけどさ……
やっぱ、駄目みたいだったわ!死後硬直で体が動かねェ!!ギャハハハハハハハ!!」
「あ……あぁ、そっか……死後硬直か。」
「事が収拾して、しばらく体を休めていたために……」
「アレンでもシルヴィアでも良い。腐った肉に触りたくねェ気持ちも、解らなくはねェけど
頼む……ちょっと軽く揉んでくれねェか?」
「仕方ないな……じゃあ、俺は腕を揉んでやる。」
「では、私は足を揉んで差し上げましょう。」
「すまねェ、助かる。」
〜 数分後 〜
マウトのマッサージ、終了。
血の気が引いて熱の無いマウトの体はひんやりしていて、ちょっと気持ち良かった。
「うっし!オレ様、完全復活!!」
「いや、完全じゃねえだろ……どうすんだよ、その肩と肘の肉。」
マウトの体……左肩と右肘の肉が、昨夜の戦闘で剥がれ落ちてしまっている。
「あァ?あ〜……まァ、どっかその辺で転がってる死体のパーツを勝手に使わせてもらうさ。
でも、関節が外せるとはいえ、縫合がめんどくせェな……。」
「他の人の体の部位でも、縫合さえすれば使用できるのですか!?」
「おうよ!まァ、馴染むまでには少し時間がかかるけどな。」
「……なぁ、マウト。お前、これからどうするんだ?墓荒らしは退治したし……
昨日言ってたみたいに、また地中に戻るのか?」
「まァ……それしかすることもなけりゃ、行くところもねェしな。」
「だったら……もし、お前さえ良かったら、俺達と一緒に来ないか?」
「あァ?」
「シルヴィアも良いよな?」
「もちろんです。まぁ……強制するつもりはありませんが……」
「おいおい……マジかよ?マジでオレを誘ってくれちゃってんの?
ゾンビってだけで、あんた等に迷惑をかけるかもしれねェのによォ?」
「それがどうした。俺は【 暗黒騎士 】で、シルヴィアは【 ダークエルフ 】だぜ?
今更仲間に【 生ける屍( リビングデッド ) 】が増えたところで、どうってことねえよ。」
「主様も私も訳あって元居た場所を追放された身なのです。貴方の場合は少し違いますが……
まぁ、そのようなことはどうでも良いでしょう。
少なくとも、このような場所で1人で居るよりは楽しいと思いますよ?」
「はぐれ者同士仲良くしようぜ、マウト。」
俺はそう言いながら、マウトの前に手を差し伸べる。
「アレン……シルヴィア……くそっ!泣きてェくらい嬉しいのに、涙すら出て来ねェ!
いいぜェ!あんた等と一緒に居たら、退屈しないで済みそうだ……喜んで仲良くさせてもらうとすっか!」
そう言うとマウトは、俺が差し出していた手をしっかりと握り返した。
「今日から世話になるぜ、大将!シルヴィアは……すまねェ、ちょっと呼び方が思い浮かばねェ。」
「私はシルヴィアのままで構いませんよ。うふふ、これから賑やかになりますね。」
「そうだな。じゃあ、改めて……よろしく、マウト。」
こうして今まで俺とシルヴィア2人だけだったパーティに、死んでいるのに元気で憎めない
ゾンビが仲間に加わった。
拠点で朝とか昼にマウトを見かけなかったら、死後硬直になってる可能性があるという事だけ
注意しておこう……
- 異世界ぐらしはじめます(ライラプス視点) ( No.25 )
- 日時: 2016/09/25 21:40
- 名前: ミヤビ (ID: WVvT30No)
小鳥のさえずりが朝を知らせカーテンから日差しが入って来る。
この少し古ぼけた悪く言えば馬小屋や倉庫のような掃除した分マシではあるが埃っぽい所である。
ここは城下町の住宅街エリアと言うべき場所にある借りている住処である。
ここに居る理由を説明するには昨日まで遡る必要がある。
【昨日】
依頼を受けた後、バネッサに下宿先に良い物件を進めて貰うため、
少し歩いた所、川・・・と思ったら凄い深さの谷に架かる橋を渡り、そこの物置のような物件に案内される。
『ココなんてどうだい?鍵付き、家具一式あり、汚いけど掃除すればまだ使えるよ。
あ、でもその床の蓋は開けないでね。奥に古いゲートがあるんだけど。ちょっと不気味だから閉めてるの。』
一通り説明を受け、ライラプスたちはこうして寝床を確保出来たわけだ。
『まさかあの開かない扉がここにつながっていたとはな。』
『おかげで長い下水道を通るハメになったの。』
どうやら真っ先に扉の道中の廊下に扉をこしらえる必要性が出てきたようだ。
そう、異世界から帰還した時に使ったゲート、その真上に今下宿している。
つまり、プレーヤーであり異世界の存在を知る者にとってこの物件は価値は十分にあるものだった。
『ただ帰るときにつかったあのアイテムがないから今のところ使えないのだがな。』
『でも野宿より断然いいの!』
『あとサニー、俺たちはこの受けた依頼をまず確実に達成させる必要がある。
まずクエストを受注できる身分になれること。
そしてそうなると武器も持って入れるようになる。なんせ整備出来ないからな、
こういった職業の人間は武器の持ち込みが許されるようになる。』
そしてアレン達はイラストは自前で交渉していたことからこの王都ではルールを設けている。
クエストの難易度に合わせて各人員に配分して解決できるシステム。
『どうやらここの国王を一度調べるのが得策だろう、恐らくプレーヤーだ。
それも管理するのが得意なやつだ。もうゲームというより人生と捉えている可能性がある。』
『ゲーム?へんなこと言うのライラプス。』
『こっちのことだ。まずは食事!あとは依頼を達成させに行くぞ。』
【レストラン】
『昨日は眠れたかい?さ、馬車は用意してあるから乗りな。』
バネッサの出迎えの後正門から預け物を引き取り、
外で待たせていた馬車に乗り込む。
バネッサとサニー、そしてライラプスの3人は北の隣町へと馬車を走らせる。
* * * *
王都から出て右の北方面へと向かい、景色は長い20度くらいの勾配が続き、
右は崖、左は山と麓は深い森が生い茂っている。
ライラプス達はその崖沿いに少し遠い町まで行く計画だ。
幾分か進み少し坂道になった所を馬が頑張りながら引っ張っているものの、
速度は遅くなっている。つまりここは一番狙われやすい場所でもある。
第一の元依頼者が襲われた場所、恐らくここだろう。
遠くから聞こえる騒音、サニーが聞いた所足音に分類されるものだそうだ。
この世界の馬に変わる機動戦に使われるダチョウのような生き物で、
2足歩行型で、高低差のある足場に使われる生き物「ゲヘナ」だそうだ。
『まあそうさな。サニー、バネッサさん。馬車の中へ。』
戦闘できるのはライラプス1人、ライフルに5発・銃剣命名「グラマン」2丁総弾数6発計12発。
しかも2発撃つ度にレバーでコッキング、つまり再装填の必要がある。
17発の命綱と慣れない護身用のブレード。
『まあ相手によっては行けるだろう。』
来た!側面の森からゴブリンみたいな装備をした上半身半裸の族、
武器は槍や剣、そしてボウガン・・というより石弓か。
ライラプスはライフルを構え右膝を地面につけ左足を曲げて座り込むようになる。
狙撃の態勢だ。
優先順位は石弓、槍、剣の順番。敵の数は18、足が速いから多くても5人は接触を許してしまうだろう。
第一射、右端の石弓持ちの右腕手首付近へ着弾。
第二射、となりの石弓持ち、石弓へ着弾破壊。
第三射、左端の石弓持ちの左膝着弾、その衝撃が乗っていたゲヘナにも伝わったのか転げ落ちる。
第四射、その隣の槍使いの脇腹へ着弾、転落。
第五射、数えて3つ隣の槍使いの右肩の関節部へ着弾。後ろへ吹き飛ぶように転落
ライフルを背負い左右の腰に携帯していたグラマンを抜き取り十分近づいた敵をテンポよく
1
2
3
4
と敵にある程度の狙いで撃ち武器破壊や四肢へ着弾し現在負傷者はいるが死傷者は今のところ出ていない。
気になるのは狙いを外した脇腹へ撃ってしまったことだ。
ライラプスはスピンコックし2丁を再装填。また各敵を狙撃、3人はゲヘナが転倒、1人は武器を破壊され撤退。
撤退7、転落5、重傷者1。
『残り戦力・・5!』
10m間隔を円を描くように時計回りで囲う。
残弾4発。銃兵として錬度はあり自信もついている。
外すことはしない、だがどうしても最後の1人は最悪剣で戦うことになる計算だ、
なんとか残弾を確保しながら戦う必要性があるな。
後方槍使いが突進
気配を察知、槍を突き出した反対側へ横へ飛ぶように避けすれ違い様に1発、
肘から注射針を刺すように左腕へ着弾転倒。
ライラプスが地面に寝そべった態勢になり正面と後方から突進。
次は剣だ。ギロチンのように長剣で地面を削りながら近づいて来る。
敵はすれ違うようにコースを左寄りになっている。
スキル「遮断」発動。敵の進行方向へ左手前右奥へと偏らせたスキルを配置、
それぞれがスキルにぶつかると右へと飛ばされる形になる。
接触、衝撃で武器を落とし、ライラプスは転げるようにコースから外れ、
敵はコースを修正させられ正面衝突する。
残り3人になると2人は縄を取り出し円を作る。
捕縛する気のようだ。
2人は縄を投擲、それと同時に2丁で狙撃。
1発は左肩へ、もう1発は縄が手首に巻きつかれ狙いがブレ、帯刀していた鞘へ着弾
『しまッ!』
グンッと引っ張られ引きずられる。
敵は勝ち誇った顔をしている、そのままS字に曲がっては段差を登ったり。
そしてボロボロになったであろうライラプスを見るため後ろを見る。
族は驚いた。ライラプスはスキルを使いサーフボードのようにして滑っていたのだ。
傍から見ればスケート靴でも履いているのかと思っても仕方がない。
緩くなった瞬間を狙い右肩甲骨を狙撃、転落する。
そして遠くなってしまった最後の敵を狙うため、ライフルへ1発装填し馬車へと向かった族を狙撃。
右手首に被弾し、クリーンヒットしたか赤い飛沫と剣が宙を舞った。
* * * *
その後何人か逃し、捕縛した族からプレーヤーの情報を得ぬまま、ロープで縛りがけ下に吊るし放置。
族の捕縛の看板を立て通りすがった兵に功績をくれてやろう。
『まずは1人目の被害者の無念は晴らせたかな?』
右手首をロープで少し痛めたがまだ大丈夫だ。
こうして隣町へと到着、遺族へ連絡を済ませ墓へ遺骨を届ける。
ようやく中身無き墓に意味を持たせてやれたのだ。
帰って来た被害者のためにもう一度葬儀を遺族が始め、
ライラプス達は離れた所で見守るように見る。
『本当は生きた人間を護衛出来れば、こんな複雑な気持ちにもならなかったんだろうな。』
これはゲームだ、だから気に病む必要性はないのだと自分に言い聞かせるライラプス。
しかしこのリアリティある世界で過ごし命無きものとは思えなくなってしまった。
俺がもう少し早くログインしていれば、もしくは・もしくはと過ぎた、無駄なことが脳裏をよぎる。
『なあサニー、この世界の族はなんたって物を奪ったりするのに殺したりするんだろうな。』
『サニーにはそれを解析する力はないの。でもそれしか能が無かったと思うの。』
ファンタジーの世界で社会がない世界から始めていれば理解出来たのだろうか?
いや、理解出来ないのだろう。
『あたしからは何も言えないさ。あたしは毎日店の飲んだくれの笑顔とかが気に入ってるからね。
殺しちゃあその笑顔は拝めないからね。』
バネッサ、サニー、ライラプス。1受付嬢兼ウエイターと2人の冒険者には理解出来ないまま。
鐘の音とともに馬車を再び走らせ次の目的地へと向かう。
『確か次は近くの森の奥だったか。幻の岳と呼ばれたものの近くへの埋葬か。』
『物好きなの。』
しかしその遺言書も文字が文字なだけに見たくはないのだが、
完全ホラーである、煤のようにも見えるこの生者が書いたとは思えないコレは・・・。
『ほら到着したよ。前居た町で待ってるから終わったら狼煙を上げてくれ。』
そう言って馬車を走らせサニーと2人になる。
狼煙の道具を携帯し、弾を装填し準備を整える。
『サニー、森は得意か?俺は残念ながらこういう所は不得手でな。』
『大丈夫なの、鼻は利くし耳も良好なの!』
平地では慣れたものだが、森は障害物が多く奇襲や射撃の邪魔になるものも多く危険がいっぱいだ。
特にさきほどの族、「あれで全員だといいのだが。」
特にさっきの重傷者はあのあと逃げ、治療するなら同様に逃げた3人があたると助かるのだが。
* * * *
深い森、霧のような白い空気が漂い底が浅い川もそこらに点在し、
雑草は特に見当たらず、岩場や中サイズの枝草が道は遮り木々が生い茂って木漏れ日すら射さない空間。
精神をやってしまいそうな所だ。
『まだ道があるだけいいの。もっと酷い所もあるに違いないの。』
『幻の岳ねえ。ありそうな所は分かるか?』
『あっちは分からないけど、このひとならわかりそうなの!』
スウッと出て来る被害者その二
『でたあああ!』
まさか同行してきているとは・・
いや埋めてと言ったのだからそりゃあ来るか。
- Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.26 )
- 日時: 2016/10/15 02:17
- 名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)
No.07 〜 Let! トレジャーハンティング 〜
この日、俺達は拠点の近くにある遺跡に来ていた。
「さてと、それじゃあこの遺跡の調査を始めるとするか。」
「調査って……アレン、建前はそのくれェにして、本音は?」
「この遺跡で宝探しするぞ!」
「ヒャッハー!そうこなくちゃ!!」
「ご機嫌ですね、御二人共。宝が残っているとは限りませんし、遺跡の地図もありません。
仮に手付かずだってとして、その場合は侵入者用の罠が使われないで残っている可能性もあります。」
「あっ……それもそうか。まぁ、お宝が無くっても冒険……じゃねえ、『 調査 』できるわけだし
仮に何か遭った時は……マウトを犠牲にしよう。」
「うおォォい!?大将、そりゃねェだろ!!」
「だってお前、ゾンビじゃん!痛覚がねえんだし……俺達の中で1番被害少ないだろ!!」
「安心なさい、マウト。たとえバラバラになったとしても、私がまた縫合して差し上げますから。」
「そう言われると反論できねェ……わァったよ。けど、できるだけ被害が出ないように頼むぜ。」
「善処はするつもりだ。」
話が纏まり、遺跡の中へ足を進めると……目の前には、そこそこ広い空間が広がっていた。
ただ……入って来た場所を除く前方と左右の3面が壁になっており、他に進める道が見当たらない。
「いきなり行き止まりか……。」
「もし仮に……此処が本当に、宝探しができるようなダンジョンなのであれば
どこかに隠し通路のようなものがあるはずなのですが……」
「ンな物探すの面倒だし、周りの壁をテキトーに壊してみようぜ?」
「やめなさい!この遺跡そのものに価値が遭った場合、どうするのです!?大損害ですよ!!」
「ん?正面の壁に何か書いてある。」
「「え?」」
正面の壁に近づくと、壁に文字が刻みこまれており、その下に絵が描かれた複数の石板が無造作に
置かれていた。
「えっと……
『フランベルジュとユグドラシルの間に存在する正しきものを1つ選び穴にはめ込め』……か。」
「これは……謎解きというものですか?」
「だろうな。とりあえず石板を見てみよう。」
「ほいよ。これがその石板、全部だ。」
マウトがそう言って俺達の足元に置いた石板は全部で15枚。
『 月 』・『 星 』・『 太陽 』・『 雲 』・『 雨 』・『 雷 』・『 火 』・『 岩 』
『 葉っぱ 』・『 骸骨 』・『 剣 』・『 盾 』・『 城 』・『 鍵 』・『 リンゴ 』の
絵が描かれている。
「訳わっかんねェ……とりあえず、月から順番に埋め込んでいってみようぜ!」
「では、もし間違えて何か罠が作動した場合は、正解が出るまでマウトが
全て引き受けてくださるのですね。」
「オッホゥ!相変わらず綺麗な顔して言うことキッツいぜ、シルヴィア!」
「……俺、解ったかもしれない。」
「何!?」
「本当ですか!?主様!」
「多分な。もし間違ってた場合は……マウト、すまん。」
「おいおいおいおい!何、ナチュラルに謝ってんだよ!そういうこと言うんだったら
『 自分の考えは絶対に間違ってない!』って確信を持ってから行動しやがれ!!」
俺は15枚の石板の中から『 雨 』の石板を手に取り、穴に押し込んだ。
同時に左側から轟音が響き始め、3分も経たないうちに左側の壁に大きな穴が作られた。
中を覗き込んだマウトによると「下の階に続く階段がある」らしい。
「正解……ってことでいいのかな?」
「お見事です、主様!しかし、これはどういう意味なのでしょう?」
「シルヴィア……今日って何曜日だ?」
「えっと……確か……あぁ、そういうことですか。」
「察しが良いな。確か、フランベルジュっていうのは『 火 』の形をした剣だって聞く。
そして、ユグドラシルはトネリコ科のでっかい『 木 』なんだってな。
で……『 火 』と『 木 』、その2つの間に当てはまる『 水 』を連想させる
『 雨 』の絵を押し込んでみたら、見ての通りってわけさ。」
「なるほど……うふふ、少し……悔しいです。」
「俺に先に答えられて……か?」
「はい。ほんのちっぽけなプライド……自尊心が傷ついたとでもいうのでしょうか。
人間より知恵のあるはずのエルフである私が、人間の主様に謎解き……
知恵比べで後れを取ってしまいました。」
「まぁ、最初の部屋で問題も簡単だったしな……大丈夫!こういうのは一瞬のひらめきだから。」
「柔軟な発想というやつですね。次の部屋に謎解きがあった場合、私も頑張らなくては。」
「話は済んだかい?」
「マウト。どこに行ってたんだ?」
「先に穴に入ってどこまで続いてんのか確かめて来た。あと、罠の有無もなァ。」
「そっか……ありがとう。それで、どうだった?」
「罠は何も無かったぜ。狭い通路だ……体の1部が何処かに接触しただけで何かある……って
思ってたんだけどなァ。
そんで、通路の先には此処と同じような部屋があるぜェ。しかもまた、『 道無し 』だ。」
「わかった。じゃあ、とにかくその部屋まで行ってみよう。」
俺達は出現した穴に入り、マウトが言った通り人が1人やっと通れるほどの狭い通路を抜け
再び大広間に出た。
「主様。やはり、また謎解きのようです。それも、最初の部屋と同じ形式です。」
「正解だと思う石板を穴にはめ込め……ってことか。」
俺は壁に歩み寄り、刻まれた問題を声に出して読み始める。
「『 次のモンスターの中から違うものを選び、それを穴にはめ込め 』……か。」
問題文の下には
『 キマイラ 』・『 マンティコア 』・『 鵺( ぬえ ) 』・『 コカトリス 』と刻まれており
石板にはそれぞれ『 ライオン 』・『 鷲 』・『 犬 』・『 馬 』・『 牛 』・『 豚 』
『 鶏 』・『 魚 』・『 トカゲ 』・『 蛇 』など10匹の動物が描かれていた。
「こいつァ簡単だな。ヌエってェのは東方の妖怪だろ?仲間はずれはこいつだ!」
「だよなぁ……でも、石板に描かれてるのは動物であって、『 鵺 』そのものが
描かれてるやつは無いぞ。」
「あァん?じゃあ、それっぽい『 ライオン 』でも押し込んどけ!」
マウトがそう言って穴にライオンが描かれた石板を押し込んだ。
すると、石板は穴から弾き出され、どこからか落ちてきた金属製のたらいが
マウトの頭を強襲・直撃した。
「ぐおォォォ……」
「昭和のコントか!?」
「大丈夫ですか!?マウト!!」
「あァ……ちィとばかし、首の関節がおかしくなったような気がしたが……フン!」
マウトは自分の両手で頭を押さえると、強引に間接を捻って通常に戻した。
「答えが間違っていたら石板は弾かれ、金たらいか……。」
「とりあえず、マウトのおかげで選択肢が1つ減りました。残りは9枚ですか……」
「……あっ!じゃあ今度は俺が試すよ。」
「主様、また答えが解ったのですか!?」
「いや、今回は自信がない……でも、ちょっとコレじゃないかなと思うヤツがあるんだ。」
俺はそう言って『 鶏 』の絵が描かれた石板を手に取り、穴に押し込んだ。
そして……石板はまたしても弾かれ、どういうわけかマウトの頭上から再び金たらいが降ってきた。
痛覚は無いはずだが、予期せぬダメージを受けた衝撃でマウトが前のめりに倒れた。
「マウトぉぉぉ!!あれ!?何で……何でたらいがマウトの上に?」
「ンなこたァ、オレが訊きたいわァァァ!!」
「主様。なぜ……鶏の石板を選ばれたのですか?」
「他の3匹はベースとなっているのが動物なのに対して、コカトリスは鳥だから
もしやと思ったんだけど……違ってたみてえだ。」
「ったく……ひでェとばっちりだったぜ。」
「すまん、マウト。」
「…………なるほど……わかりました。おそらく、これが正解です。」
シルヴィアはそう言うと、『 蛇 』が描かれた石板を手に取り、壁の穴にはめ込んだ。
同時に先程と同じような轟音が響き渡り、右側の壁に新たな道が出現した。
「ヒャッハー!道が出てきた!!やるじゃねェか、シルヴィア!」
「本当によくやってくれた!でも……何で蛇なんだ?」
「ここに書かれているモンスターは4匹とも合成獣です。
キマイラはライオンとヤギ、ドラゴンの頭を持ち、体もライオンで、尻尾が蛇です。
そして鵺は猿の顔にタヌキの胴体、虎の手足と蛇の尻尾を持っています。
コカトリスは頭から足、羽までが鶏で、尻尾が蛇です。
ただ、マンティコアは頭が人間で体はライオン、背中には蝙蝠の翼が生えていて、尻尾がサソリと
マンティコアだけが唯一、蛇のパーツを持っていないのです。」
「なるほど、マンティコアが『 違うもの 』で、こいつに無いパーツの『 蛇 』が正解ってことか。」
「ギャハハハ!いいぜ、いいぜェ……このお宝が近づいてきてる感じ!
ホラ、次の部屋に行こうぜェ!!」
「そうだな……先へ進もう!」
- Re: 異世界ぐらしはじめます( アレン視点 ) ( No.27 )
- 日時: 2016/10/02 03:47
- 名前: 柔時雨 (ID: d3Qv8qHc)
俺達はまた狭い通路を通り、3度目の同じような部屋に辿り着いた。
奥の壁には案の定、何やら文字が刻まれている。
「えっと……『 次の絵を正しく並び替えよ。さすれば最後の扉が開かれる 』か。
どうやら謎解きはこれで最後みたいだな。」
問題文の下に視線を落とすと、4枚の石板が枠にはめ込まれていた。
それぞれ
『 たくさんの料理を食べている人間 』・『 喧嘩している人間 』・『 買い物をしている人間 』
『 抱き合っている男女 』の姿が描かれている。
「これは……どういう意味なのでしょう?」
「しりとり……ってわけでもなさそうだな。とりあえず、石板を枠から……」
「ちょいと待ちな、アレン。」
枠から石板を取り出そうとした時、マウトが俺の肩を掴んで止めた。
「ん?どうした?マウト。」
「上……見てみな。」
「上?」
マウトの言う通り、俺とシルヴィアが部屋の天井を見上げると……
そこには無数の鋭利な棘が付いており、その棘には複数の人間の骨やボロボロの衣服が
引っ掛かっている。
「あれは……!?私達以前にこの問題に挑んだ者達ですか!?」
「もしかして、この問題にはタイムリミットがあるのか!?」
「たぶんな。スタートはその石板を1枚でも抜いた瞬間、ゲームオーバーは……見ての通りだ。」
「では、答えが解るまでは迂闊に手を出せませんね。」
「そうだな……う〜ん……」
俺はもう一度、枠にはめられた4つの石板に視線を戻す。
「物を買って、飯を食って……残りの2枚はどういう意味だ?」
「1枚は男女が……その……愛し合っているのでは……?」
「あぁ、セッ………」
「直球すぎます!主様!!」
「……こほん。じゃあ、仮にこの絵が夜の営みだったとして、この喧嘩の絵は?
男女同士でトラブルを起こした訳じゃなさそうだぞ。殴り合ってるの、どう見ても2人の男だ。」
「アレじゃねェの?痴情の縺れで、浮気現場発覚。」
「……やだなぁ、そんな回答。」
「えっと……マウトの意見を含めて考慮しますと、買い物をして、食事して
あっ……愛し合ったまではよかったが、浮気が発覚してしまい修羅場になった……と。」
「まぁ……他に考えようがないからなぁ。それで回答してみるか。」
「……ん?悪い、ちょっと待ってくれ。」
「マウト?」
俺の傍まで歩いてきたマウトが石板の絵をじっと眺めて……そして笑いだした。
「ギャハハハハハ!!なるほどなァ。コイツを考えた奴ァ良い趣味してるぜ!
『 門が開かれる 』ってのも、比喩表現ってヤツか?まァいいや。
大将、今からオレの言う順番に石板を並び替えてくれ。」
「わかった。」
俺が枠から4枚の石板を抜き取ったと同時に、棘付きの天井がゆっくりと降下を始める。
「それで!?どの順番で納めれば良い?」
「まずは『 男女が抱き合っている絵 』だ。次に『 飯を食ってる絵 』
『 買い物している絵 』、そして最後に『 殴り合いをしている絵 』だ!」
「わかった!」
マウトが言った順番に石板をはめ込んでいくと……天井はその動きを止め
正面の壁がゆっくりと左右に開いた。
「止まった……」
「やりますね、マウト!ちなみにこれは何の順番なのです?」
「あァん?2人共、『 神曲 』って聞いたことねェか?」
「名前くらいなら……確か、ダンテって詩人が作ったんだよな?」
「私もまだ、読んだことは……マウトは読んだことあるのですか?」
「まァ……読んだっつうよりは、見た……でもねェ、『 聞いた 』ってのが1番正しいかな。」
「どういう意味だ?」
「結論から言うとだな、その4枚の絵は地獄に堕ちた奴等の罪状……それの比較的軽い順だ。」
「「えっ!?」」
「あの世の川の岸辺に賢者の魂がオレと同じように彷徨っててよォ、そいつから聞いた。
さっき、アレンが言ったダンテって奴が書いた『 神曲 』の地獄の世界観をなァ。
まず罪人共は船に乗って彼岸へ行き、そこで蛇の尻尾を持つ王様によって裁かれる。
で、その絵は順番に『 愛欲 』、『 貪食 』、『 浪費 』、『 憤怒 』を
表現してんだと思うぜ。
この4つは地獄の中でもまだ優しい方らしく、この後、炎上する都市の内側に続く更なる下層は
より罪の重い連中の行き着く場所になっているらしい。」
「なるほど……そういう話は詳しいな、マウト。」
「まァ、こればっかりはなァ!死ななきゃ見れねェ世界だ。オレも話を聞いただけで
見た事はねェんだけど。
たぶん、これに失敗して上に突き刺さっている奴等の何人かの魂は
今頃身を持って体験してると思うぜェ!ギャハハハハハハ!!」
「とにかく……何にせよ、これで宝への道ができたってわけだ。あと少し、頑張ろうぜ!」
「はい!」
「ったりめェだ!それが欲しくて此処まで来たんだからなァ!」
そして、眼前で大きく開かれた扉をくぐり、地下へと続く通路を進んで行くと……他の部屋と変わらない
ただ広いだけの空間に出た。
他の部屋と違うところといえば、奥の台座に蓋が開いた状態で金貨や宝石なんかがみっちりと詰まった宝箱が
3つも置いてあるくらいか。
「おぉ!マジであったよ……お宝。」
「ヒャッハー!!全部オレ達のモンだァァァ!!」
「待ってください!!あれは本当に宝物なのでしょうか?」
「どういうことだ?シルヴィア。」
「モンスターの中には人間の欲望を利用し、宝箱や高価な壺の姿になって接近して来た冒険者を襲う
『 ミミック 』というものが存在するのです。あれがミミックとは言いきれませんが……
接近するにしても、もう少し用心された方がよろしいかと………」
「心配性だなァ、シルヴィアは。此処まで何も無かったんだぜ?」
「釣り天井のギミックはあったけどな。」
「それも余裕を持って防いだじゃねェか!大丈夫、他に何もありゃしねェって!」
マウトがそう言って足を踏み出した瞬間、床が大きく盛り上がり……中から1体のゴーレムが出現した。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16