二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットモンスターBW *道標の灯火*
- 日時: 2020/09/15 16:16
- 名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)
初めまして、霧火と申します。
昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。
!注意事項!
↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
超鈍足更新です。
3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
申し訳ありません。
新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。
**コメントをくれたお客様**
白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん
有り難うございます。小説を書く励みになります++
登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77
出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187
番外編(敵side)
>>188
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- Re: 62章 リオvsカミツレ② ( No.126 )
- 日時: 2018/02/13 21:45
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「もう1度お願いね、エモンガ!」
カミツレは最初に出したエモンガを繰り出す。
リオはカミツレの肩に乗ったエモンガをじっと見つめる。
(…こっちの作戦を話せば、カミツレさんは警戒してエモンガじゃない、別のポケモンを出す。
そしたらそのポケモンの力をしっかり見極めて作戦を立てようと思ったんだけど…勘が外れちゃった。
でも、油断は禁物よね)
「行くわよバルチャイ!騙し討ち!」
バルチャイはカミツレの肩を離れ宙に浮いたエモンガに真正面から突っ込む。
しかし衝突するとエモンガが受け身の体制を取った瞬間に、視界からバルチャイが消えた。
『?』
「下よ!」
カミツレの声も虚しく、エモンガはバルチャイの攻撃を下からまともに受けた。
「エモンガ、メロメロよ」
『エモッ☆』
攻撃を喰らったエモンガも負けてはいない。
上に飛んだ体勢を宙返りする事で整えると、エモンガはバルチャイに向かってウインクする。
瞑った目から出現したピンク色のキラキラしたハートはバルチャイを囲み、そのまま命中した。
「?何も起こらない…?」
リオは技が命中したのを確かにこの目で確認した。
しかしダメージや状態異常を受けた様子は見られない。
カミツレの様子を盗み見ても綺麗な笑みを浮かべているだけで、技のヒントは得られない。
(1度バルチャイをボールに戻す…?でも交代を読まれて、次に出した子にも今の技を出されたら意味が無い。
無意味にこっちの手持ちを晒すより、一か八か──指示を出して技の効果を知る!)
「バルチャイ乱れ突き!」
リオはバルチャイに攻撃の指示を出した────が。
『…チャイVv』
「バルチャイ…?」
聞こえなかったのか、バルチャイはその場から動かずエモンガを見つめている。
「乱れ突き!」
再び指示を出すが、結果は同じでバルチャイは動かない。
変だと思ったリオはスポットライトの光に目を細めながら、上空のバルチャイを見る。
すると、バルチャイの目がハートになっている事に気付いた。
「アレは状態異常?でも、私が知ってる物と違う…!」
リオが知る状態異常は麻痺や火傷、毒・猛毒、氷に眠り…混乱と怯みの8種類。
8種類それぞれの効果は覚えているが今のバルチャイにはどの状態も当て嵌まらず、
内心動揺が隠しきれないリオ。
そんなリオに、今度はカミツレが口を開く番だった。
「このエモンガ、可愛い顔をしてるけど実は♂なの。《メロメロ》は♂なら♀を、♀なら♂を誘惑して
名前の通りメロメロにしちゃうの。この技を受けた相手は普段より技を出し難くなるわ。
その子も、エモンガの可愛さの中にある男らしさにすっかり夢中みたいね」
「くっ…!」
艶笑するカミツレにリオは唇を噛む。
《メロメロ》の効果は分かったが、同時に厄介な技というのを思い知らされたからだ。
「技の説明も終わった所でフィニッシュよ。エモンガ、スパーク!」
エモンガは頬の電気袋から放電すると、その電気を自身に纏いバルチャイに向かって滑空する。
「躱して!!」
リオは回避を命ずるが、やはりバルチャイの目はハートのまま。
遂には効果抜群の技を受けてしまい、フィールドに叩き付けられた。
ハートだった目は、今はグルグルと回っている。
「バルチャイ、戦闘不能。エモンガの勝ち!」
「…ありがとうバルチャイ。ご苦労様、ゆっくり休んで」
リオは気絶したバルチャイを戻し、嬉しそうにカミツレの周りを飛んでいるエモンガを見た後、
天井を見上げる。
「さぁ、次は誰で来るのかしら?」
カミツレの声にリオは天井を見るのを止め、ふっと笑う。
「私の2番手はこの子です!」
そう言ってリオが次に繰り出したのは、フサフサした尻尾が自慢のチラーミィだ。
フィールドに立ったチラーミィにカミツレは顔を綻ばせる。
「綺麗な毛並みをしているわね、そのチラーミィ。とても大切にされているのね」
「ありがとうございます!」
「その綺麗な毛並みを乱してしまうけど…許してね。エモンガ、スパーク!」
『エモ!』
エモンガは再び電気を纏ってチラーミィに接近する。
「チラーミィ、ジェットコースターに乗って!」
チラーミィは頷くと、オレンジ色のレールを走るジェットコースターに飛び乗って
滑空して来たエモンガの攻撃を躱す。
チラーミィの跡を追う様にリオもまた、空いているジェットコースターに乗車する。
「逃がしちゃ駄目。追い掛けて、燕返し!」
「させません!アンコール!」
チラーミィは素早く拍手する。
すると高く上昇して《燕返し》の構えをしていたエモンガは下降し、電気袋から電気を放ち始める。
その様子を見たカミツレは、初めて困った笑みを浮かべた。
「必中技である《燕返し》と相手の戦略を乱す《ボルトチェンジ》、更には《メロメロ》まで
封じちゃうなんて…意地悪ね」
「これも戦略のうちです!」
すっかり遠くなったカミツレに聞こえる様に、リオは大きな声で叫ぶ。
「…そうね。この状態も少し経てば解けるし、暫くこの技を貫きましょう!スパーク!!」
ジェットコースターが1つ目の透明なトンネルを抜けるのを確認して、電気を纏ったエモンガは
チラーミィに思い切りぶつかる。
タイミング良く、ジェットコースターは足場の前で1度停まった。
「負けないでチラーミィ!スイープビンタ!」
リオはそこで降りて、攻撃を喰らっているチラーミィに指示を出す。
チラーミィはエモンガが逃げない様にマントを掴むと、尻尾を硬化させて数回叩く。
『エモー!!』
チラーミィの手を振り払い、上昇して電気袋からバチバチと電気を出すエモンガ。
そんなエモンガを凛とした声が制した──声の持ち主はカミツレだ。
「落ち着いてエモンガ。冷静さを欠いたら、貴方本来の戦いは出来ないわ。
2つ目のトンネルを抜けた時が勝負所よ」
『!…モンガ』
エモンガはカミツレの言葉にハッと目を見開くと、大きく深呼吸して頷いた。
(流石カミツレさんだな。自分は動けない、戦況が分かり難い、1つの技しか出せない…そんな圧倒的に
不利な状況でも焦りが殆ど感じられねぇ。…もう1つの職業のお蔭だな)
ずっと黙っていたアキラはカミツレの背中を見る。
その背中は直視出来ないくらい眩しく、光っている様に見える。
(俺は何度もこのカリスマ性に呑まれそうになったけど…)
「大丈夫だよ、お前なら」
聞こえなくても良い…アキラは遠くで拳を握っている金髪の少女に、小さなエールを送った。
ジェットコースターは、再び動き始める。
- Re: 63章 リオvsカミツレ③ ( No.127 )
- 日時: 2018/02/13 22:31
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
ジェットコースターが2つめのトンネルを通過する。
リオとカミツレが口を開いたのは、ほぼ同時だった。
「スパーク!」
「スピードスターよ!」
エモンガは電気を纏い、チラーミィは尻尾を振って星形の光を放つ。
電気と光が互いの身体に命中し、火花が辺りに飛び散る。
リオは飛んで来た火花を手で払うと攻撃態勢なのか──再び高く上昇したエモンガを見上げる。
(それにしてもあのエモンガ、思っていた以上に手強い…!)
バルチャイとチラーミィの攻撃を何度も受けているのに、防御が長けているのか未だ戦闘不能にならない。
♀の方のエモンガは隙をついてネットに落とす事が出来たが、♂のエモンガにはその隙が見当たらない。
(流石ジムリーダーのポケモン、といった所かしら)
そう思った後、リオはチラーミィに向かって声を張り上げる。
「チラーミィ!」
チラーミィがこちらの姿を見たのを確認するとリオは両手を挙げ、上を見た後に手を下ろす。
リオの摩訶不思議な行動にカミツレとエモンガは怪訝な顔をするが、チラーミィは笑顔で頷いた。
どうやら伝わった様だ。
「…何の相談か分からないけど、早く終わらせましょ。スパーク!」
「迎え撃つわよっ、スイープビンタ!」
滑空して向かって来たエモンガに、今度は硬化させた尻尾を振るう──しかし。
『ラー…ミミッ!?』
「!!」
急に曲がったジェットコースターにバランスを崩し、技は呆気なく避けられた上に、
エモンガの攻撃を喰らってしまった。
「チラーミィ!」
「ふふ、ジェットコースターは今度は私達に味方してくれたみたい」
カミツレの言葉にリオが拳を握り締めた丁度その時、エモンガの電気袋から出ていた電気が
ピタリと止まった。
「!」
「《アンコール》状態が漸く解けたみたいね。エモンガ、メロメロ!」
『エーモッ♪』
エモンガが飛ばしたハートは起き上がったチラーミィの顔に命中した。
少しずつチラーミィの頬が染まり始めた、と思ったら急に尻尾で顔を隠した。
恥ずかし気に尻尾の隙間からチラチラとエモンガの様子を窺う姿は、恋する乙女そのものだ。
『ラーミィ…』
「くっ…チラーミィまで!」
正に形勢逆転とも言える光景にリオは歯噛みする。
(せめて、エモンガともっと距離が空けば…!そうすれば態勢と作戦を立て直せるのに!)
リオの願いが届いたのか、ジェットコースターは徐々に速度を上げ始めた。
進行先には円を画いているレールがある。
お世辞にも速いとは言えないエモンガの飛行速度。
チラーミィの乗るジェットコースターとの距離はどんどん開いていく。
「よし!これなら直ぐに追い付かれない!」
(このチャンス、無駄にはしないわ!)
ほっと胸を撫で下ろしたリオの表情には明るさが戻っていた。
しかしバトルを見学していたアキラは小さく呟いた。
──ダメだ、と。
しかし目の前のバトルに全神経を使っているリオには、そんな小さな呟きに耳を傾けている余裕は無い。
聞こえているのは自分とカミツレさんだけ…頭では理解していても、
アキラは叫ばずにはいられなかった。
「馬鹿!早くチラーミィを 「アキラ君。今、私と戦っているのはリオちゃんよ」 …っ」
カミツレに注意され、アキラは続けようとした言葉を呑み込む。
(早く気付けリオ!そんな距離、何の気休めにもならねぇんだよ…!)
(このジェットコースターを使った皆が思う事は同じ。
「この距離なら攻撃を受けない」「作戦を立て直せる」。目で見える差という物を人は特に気にする。
だからそう思うのは当たり前。…でも、今のスピードならあっという間に一回転のレールに突入する。
スピードを殆ど落とす事なく進むそのコースは、乗っているポケモンの動きを封じる。
振り落とされない様にポケモンは手すりに掴まり、恐怖から目を閉じる。
つまりチャレンジャーのポケモンは手と視覚を封じられる。それに対して私のポケモン達は上空から、
他のレールから…いつでも攻撃する事が出来る。気付いた時には、一回転が終わったと同時にポケモンは
戦闘不能…今までずっとそうだった。私の後ろに居るアキラ君もその1人)
カミツレは目を閉じて、過去に挑戦して来たトレーナー達の姿を思い浮かべる。
驚愕、苦渋、憤怒。
果たして今、自分と戦っている少女はどんな表情を浮かべるのか。
(リオちゃんもその他大勢になるのか、それとも……ふふっ、ゾクゾクしちゃう)
一方、リオは──
(…変だわ)
こちらを見据えたまま、指示を出さないカミツレに疑問を感じていた。
リオは最初、カミツレが何の指示も出さないのはエモンガの攻撃が当たらないと判断したからだと思った。
しかし直ぐにその考えは「有り得ない」と消し去った。
何故ならカミツレはジムリーダーで、このジムを考え設置した人物だから。
ジェットコースターの速度は充分に熟知してる筈だし、こうして差が開いた時の対策もあるだろう。
それなのに指示を出さないという事は…
「考えられるのは、やっぱり1つかな」
「対策を考える必要が無い」──それこそが、リオが行き着いた答えだった。
現にカミツレが指示を出さずに黙っているのに、エモンガは慌てるどころか落ち着いている。
(絶対的な、勝てるという自信の秘密があの一回転のレールに隠されてるって事ね。でも、)
「その自信、私達が崩してみせる!」
リオの声が響き渡る。
ジェットコースターはいよいよ、一回転のレールに突入する。
*あとがき*
文の長さの割に、実は話は進んでないっていう(またか!
でも自分はカミツレさんを喋らせたり、長々と考え事させる事が出来て満足です^^←
今回の「ジェットコースターを使った挑戦者のポケモンは手と視覚が封じられる」という
カミツレさんの発言は、あくまで自分の実体験です。
ジェットコースターって安全バーが付いてるって分かってても、つい手すり(?)に強く掴まっちゃったり
目を閉じたりしちゃうんですよね…手を離せて目を開けてる人を見る度に
「あ な た が 勇 者 か」って思います(真顔
さて、次回はいよいよカミツレさんのエース登場!対するリオのポケモンは…!?
長くなりましたが、それでは次回もお楽しみに!
- Re: 64章 リオvsカミツレ④ ( No.128 )
- 日時: 2018/02/13 22:40
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
乗り物は一定の速度を超えると、人間の体が後ろに引っ張られる感覚に陥る時がある。
今のチラーミィは正にその状態で、後ろに飛ばされない様にと前屈みになって手すりにしがみついている。
そうしている内に、ジェットコースターはレールの半分…円を画いている所に差し掛かった。
そしてジェットコースターが逆さまの状態で止まった時、カミツレは口を開いた。
「これでトドメよ!エモンガ、燕返しっ!」
『エモッ!』
エモンガは先程までの飛行速度からは想像出来ない速さで、ジェットコースターに向かう。
そして無防備な標的──チラーミィに鋭い一撃を放ち、突然の攻撃に体力が尽きたチラーミィは
ネットに落ちる。
…そうなる筈だった。
『…?』
「どうしたの、エモンガ?」
困惑顔のエモンガに疑問を感じたカミツレは、目を凝らして遠く離れたジェットコースターの中を確認する。
そして細めていた目を今度は大きく見開いた。
(さっきまでジェットコースターに乗っていたチラーミィが居ない!)
「アクアテール!」
「『!』」
リオの声がした刹那、エモンガに影が落ちた。
見上げると尻尾に水を渦状に纏ったチラーミィが、こちらに向かって降って来た。
(やった…技を出せた!)
チラーミィの尻尾に纏われた水を見て、リオは無意識に拳を握った。
しかし流石はジムリーダー。カミツレが動揺したのは一瞬で、すぐにエモンガに指示を出すべく口を開く。
「ボルトチェンジで迎え撃つのよ!」
『エモ〜…ン、……エモォッ』
「!」
エモンガは指先から白い電気を作り出す。
…が、スポットライトの強い光で反射した水の眩しさに目を瞑ってしまう。
目を瞑った状態で放たれた球体の電気の軌道は僅かに逸れ、チラーミィの頬を掠めて天井に当たって
霧の様に消えた。
「いっけーー!!」
落下の勢いが加わった《アクアテール》は重い一撃となり、水飛沫が辺りに飛び散る。
「エモンガ!!」
チラーミィが尻尾を退かすと、そこには目を回しているエモンガが居た。
「エモンガ、戦闘不能。チラーミィの勝ち!」
「戻ってエモンガ。…不利な状況でも最後まで戦い抜いた貴方は、とても素敵だったわ」
エモンガをボールに戻し、カミツレはチラーミィを見る。
「よくあのジェットコースターから手を離せたわね。降りる為とはいえ、一歩間違えればネットに落ちる。
そんなリスクが高い賭けに指示も出されてないのに挑んで、それで勝っちゃうなんて…
そのチラーミィ、大物ね」
『ラミ、ラーミィ!』
カミツレの言葉にチラーミィは首を横に振った後、リオを見た。
「?」
「指示なら出してましたよ。《メロメロ》が放たれる前に」
「…あの変な動きか!」
「変な動きってのは余計だけど、アキラ正解。手を挙げたら【手を離す】。上を見たら【ジャンプ】。
手を下ろしたら【攻撃】。あれはその事を伝えるジェスチャーだったんです。
早めに指示を出したのは、覚悟を決める時間が必要だと思ったんで」
リオの解説にカミツレは驚く。
「もしかして最後に《スイープビンタ》でなく《アクアテール》を指示したのも、
こうなると分かってて?」
「スポットライトの光を利用しようって考えはジムに入った時からありましたけど…技の選択は賭けでした。
エモンガが視界に入らなければ《メロメロ》の力は薄まって【手を離す】と【ジャンプ】、
この2つは確実にやってくれると信じてました。でも、攻撃はエモンガを視界に入れて、
至近距離でしないといけない。《メロメロ》で技が出せずに反撃されて終わるか、否か──
どっちに転ぶか私もチラーミィも分からないから、正直…恐くて仕方なかったです」
大きく息を吐いて、ぎこちなく笑ったリオにカミツレは肩を竦める。
「その賭けに結局勝っちゃう貴女達の方がずっと恐いわ」
「あはは…」
「だけどね、それと同じくらい震えるの。強い挑戦者と戦える慶びに!」
両手を広げて告げると、カミツレは手に取ったモンスターボールに優しくキスをする。
「さぁ、もっと楽しみましょう!」
高く投げられたモンスターボールが音を立てて開く。
「スパークよ!」
リオ達が姿を確認する前に、そのポケモンは雷鳴を轟かせてチラーミィに体当たりし、
そのまま横を駆け抜ける。
攻撃を受け、膝をつくチラーミィ。
「チラーミィ!」
『ラ、ミ…』
チラーミィは自分を攻撃した相手を睨む。
そのポケモンもまた、止まってチラーミィを睨みつけた。
「華麗に駆け抜けるわよ……ゼブライカ!」
応える様にカミツレのエースポケモン──ゼブライカは蹄を鳴らした。
後書きと言うか、書いていて思った事→メロメロ+状態異常のコンボの鬼畜さは異常。
- Re: 更新報告 ( No.129 )
- 日時: 2012/12/15 15:45
- 名前: 霧火 (ID: /ZfshGS3)
何故か新しい話をあげてもPageが更新されなかったので、ここで一応報告をば。
今後もこの様な事があれば、こんな形でお知らせします(無いといいなぁ)。
12/15 更新しました!
- Re: 65章 リオvsカミツレ⑤ ( No.130 )
- 日時: 2018/02/13 22:47
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「あの子が、カミツレさんのエースポケモン……」
リオの小さな呟きが聞こえたのか、ゼブライカは横目でリオを見た。
しかしそれも一瞬で、再び自分を見上げているチラーミィを見下ろす。
鋭く吊り上がった青い瞳がチラーミィを射抜く。
しかし、並のポケモンなら気圧されるであろうその瞳にチラーミィは、
『…ラミィィィ!!』
竦むどころか更に強く睨み返した。
そして立ち上がって自分を奮い立たせるかの様に、大きく叫んだ。
「…っ、」
チラーミィの叫びに、リオは胸の辺りまで挙げていた手を止める。
その手にはチラーミィのボールが握られていた。
リオは静かに、荒い息を繰り返すチラーミィに語りかける。
「…戻って、チラーミィ」
そう言ったリオだったが、ボールの開閉ボタンはそのままだ。
強制的にボールに戻す事も出来る。
でもそれをしないのは、チラーミィの気持ちを尊重したいから。
『ラーミッ!!』
そんなリオの意思に気付いたのか、チラーミィは笑って頭を振った。
素直な性格のチラーミィが初めて見せた我が儘だった。
「…分かったわ、チラーミィ。貴女の気持ちを汲む…けど、これ以上ダメだと思ったらすぐ戻すからね!」
ボールをベルトに戻したリオに、暫く静観していたカミツレが声を掛ける。
「このままチラーミィで続行かしら?」
「はい!」
「それでは、試合再開!」
審判の掛け声の後、直ぐさまカミツレが動いた。
「ゼブライカ、二度蹴り!」
ゼブライカは背を向けると、チラーミィ目掛けて脚を蹴り上げる。
「ゼブライカの足に、スイープビンタ!」
一拍遅れて、チラーミィは硬化させた尻尾をゼブライカの脚に叩き付ける。
(効果抜群の《二度蹴り》を躱す事は出来ないけど、こうして脚に直接攻撃を当てれば
ゼブライカの攻撃を弱める事が出来る。それに身体に直接攻撃されるより、
フサフサの尻尾で攻撃を受けた方がダメージが少なくなる)
リオが考えを巡らせている間にも、チラーミィは身体を捻って攻撃を出し続ける。
(そして技の名前通り2回しか攻撃出来ないゼブライカに対して、チラーミィのこの技には制限が無い。
攻撃が2回で終わってもチラーミィの特性【テクニシャン】で《スイープビンタ》の威力は上がるから、
攻撃力はこっちが上)
『ラーミィッ!』
『!!』
チラーミィの3撃目がゼブライカの顔に命中する。
2発はゼブライカの攻撃で相殺されてしまったが、リオの予想通り後退したのはゼブライカだった。
しかしそれでも、ゼブライカに余程自信があるのか──カミツレは笑みを浮かべたまま。
「上手くダメージを減らしたわね。でもここまでよ」
「…」
リオはチラーミィの身体を見て、指を動かす。
「ゼブライカ、ニトロチャージ!」
その場で足踏みを始めるゼブライカ。
やがてその動きは激しさを増し、ゼブライカの身体から湯気が立ち上がる。
白い湯気が視界を悪くし始めた頃。湯気の中から炎を纏ったゼブライカが飛び出して来た。
(…速い!)
「チラーミィ戻って!!」
リオはその速さに息を呑み、チラーミィをボールに戻す。
「…ご苦労様。ゆっくり休んでね」
「チャレンジャー。そのチラーミィは戦闘不能と見なして宜しいですか?」
「構いません」
「ではこの勝負、ゼブライカの勝ちとします。チャレンジャーは次のポケモンを出して下さい」
審判の言葉に頷き、リオは3個目のボールを手に取り…苦笑した。
アキラはチラーミィの戦いを振り返り「あ、」と声を漏らす。
「そうか…それなら、リオの判断は正しいな。普段のチラーミィなら《アクアテール》をぶつけて
炎を消すなりして、威力を弱める事だって出来た。でもチラーミィは体力が限界。それに加えて、」
「…まさか、エモンガを倒した直後に特性の【静電気】が発動するなんてね」
エモンガを倒した時には気付かなかったが、ゼブライカが登場して、チラーミィに《スイープビンタ》を
指示した時──その時にリオは気付いてしまった。
チラーミィの尻尾の周りを微弱な電気が走り、そのせいで攻撃が一拍遅れたのを。
体力が限界で、麻痺状態になっているチラーミィがこれ以上戦えないのは明白だった。
「バトルは何が起こるか本当に分からないわね…」
(でも、だからこそ面白い)
「さぁリオちゃん。最後のポケモンは誰?」
「私の最後のポケモンはこの子です!出て来て、ヒトモシ!」
リオが繰り出した3番手は相棒であるヒトモシだ。
チラーミィより更に小さいヒトモシに、ゼブライカは鼻を鳴らす。
「また随分と可愛らしい子が出て来たわね」
「見た目で判断したら火傷しますよ。勝ちに行くわよ…ヒトモシ!」
『モシ!!』
リオとヒトモシの目に、闘志の炎がメラメラと燃える。
その時、ヒトモシの紫色の蝋燭の炎が大きく揺らめき、一瞬オレンジ色に輝いた──
相変わらず亀更新で失礼します…霧火です。
長く粘っていたチラーミィですが、今回遂にダウンしてしまいました。こうして見ると
チラーミィの防御力が長けている様に見えますが、実はそうでもなかったりします。
「なら何故?」と聞かれると、その理由はチラーミィが殆どジェットコースターに乗って
バトルをしていたから。それが答えです。
例えばチラーミィが乗ったジェットコースターが…
==|チラーミィ|→ ←エモンガ
上の様にエモンガに向かっていたら、接近してる分ダメージは大きくなってましたが
チラーミィの乗っていたのは図とは逆、つまり
←|チラーミィ|== ←エモンガ
こんな感じに進むジェットコースターでした。
エモンガの飛行速度は速くないので(※あくまでこの小説では、です)差は開く一方。
特に《スパーク》や《燕返し》と、技構成の半分が物理技の♂のエモンガは相手に
接近しないといけないのに、相手はジェットコースターに乗って移動しています。
…詳しく表記しませんでしたが、速いジェットコースターに追い付いて攻撃を当てた
エモンガの苦労(疲労)は並大抵の物ではありませんでした。
ずっと飛びっぱなしで相手を追い、攻撃しないといけませんから…攻撃を当てるまでに疲れて、
どうしても技の威力が弱まっちゃうんです。なので、あの一回転のレールは本当にエモンガ達にとって
一発逆転出来る、救いのレール…という勝手な設定です←
…すみません、話が逸れました。つまり、そんなワケでチラーミィへのダメージは軽減されました。
説明分かり辛くてごめんなさい(汗)。
後書きが無駄に長くなってしまったので、最後は簡潔に。
次回はエース対決です。それでは、次回もお楽しみに!
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