二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW *道標の灯火*
日時: 2020/09/15 16:16
名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)

初めまして、霧火と申します。

昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。


!注意事項!
   ↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
 ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
 超鈍足更新です。
 3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
 申し訳ありません。


新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。

**コメントをくれたお客様**

白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん

有り難うございます。小説を書く励みになります++


登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77

出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187


番外編(敵side)
>>188

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Re: 48章 完全密室と1匹の子猫 ( No.91 )
日時: 2018/02/13 18:37
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


「ぅ……」

誰かの駆ける音と何かを叩く音に、リオは重たい瞼を開いた。


「ここ、どこ…私、一体……?」

朦朧とする頭を押さえ、現在自分が居る場所を確認する。

まず目に入ったのは黄色。
四方八方どこを見ても黄色一色で、窓や入り口らしき物は見当たらない。


(何で?私、さっきまで遊園地に居たのに。アレを見てからの記憶が無い…というか、何であの女の人は──)


リオは考えるのを中断する。
自分の後ろから、聞き覚えのある声がしたからだ。


「待ち、やがれっ…!そいつぁ、俺の……」
「アキラ!起きて!」

手を伸ばして苦し気に呟くアキラの肩を揺らす。
暫くしてアキラが身動いだ。
瞼がゆっくりと持ち上がり、深緑色の瞳がリオを映した。


「お・そ・よ・う。随分魘されてたわね」
「リオ…?本当に、リオなのか?」

目をぱちくりさせるアキラに小さく笑う。


「こんな完成度が高い偽物が居るワケないでしょ」
「……そっか。そうだよな」

心底ほっとした様子のアキラにリオは笑みを無くす。


「……どうしたの?」
「…何でもねぇよ。それよりさ、他の人は無事なのか?」

触れられたくない内容なのか、アキラは話題を変えようと必死に口を動かす。
リオはそれ以上深く追求するのを止め、アキラの質問に頷く。


「多分ね。皆、眠ってるだけだと思う」

その場に倒れている人達は皆、規則正しい呼吸をしていて、命に別状は無さそうだ。


「それなら一安心だな。…あの姉ちゃんが犯人か」
「ここに居ない時点でまず間違いないわね」
「マイペースな眼鏡っ娘とばかり思って、すっかり油断してたぜ」


(アキラの場合女の人に対してはいっつも油断しまくり、頬緩みっぱなしじゃない)


喉から出掛けた言葉を飲み込んで、リオはライブキャスターを手に取る。


「女の人が来てから、15分しか経ってない…」


(…って事は、私達が今居る場所は遊園地からそんなに離れてない所なのかしら?)


どんな方法で自分達を移動させたのか分からないが、この大人数だ。
ポケモンの《テレポート》で移動させるという手もあるが《テレポート》は基本的に1人ずつしか
移動出来ないため時間が掛かる。なのでコレは無い。

次に飛行ポケモンに運ばせる、巨大な水ポケモンの背に全員乗せて海を渡る手がある。

まず飛行ポケモンに運ばせるのは、往復する時間が掛かるから無いだろう。
巨大な水ポケモンの背に…という方法については否定は出来ないが、そもそも【ライモンシティ】に
巨大な水タイプのポケモンを出せる様な海は無い。


(方法がどうであれ、観光客も多い【ライモンシティ】…誰かに見られる可能性は高いし、
遠出は出来ないハズだわ)


むむむ、と人差し指で米神を押さえて自分達が居る場所を絞り込むリオ。

しかしそんなリオの頑張りは、アキラの次の一言で見事に壊される。


「分かったのは眼鏡の姉ちゃんが犯人だって事、俺達が遊園地のピカチュウバルーンの中に
 居るって事だけだな」
「…………はい?」

手を下ろし、アキラを見るリオ。
その顔は若干引き攣っている。


「…何で分かるの?」
「何でって…俺は11年この街に住んでんだぞ?周りから聞こえる声や音で、今自分がどこに居るかくらい、
 簡単に分かるさ」

ふふん、と得意そうに笑って自分を見るアキラに、リオも笑顔で反撃に出る。


「凄いわね!じゃあ、当然ここから脱出する方法も知ってるのよね?」
「まさか。地元の人間とはいえ遊園地の関係者じゃない、一般人の俺が知ってると思うか?」

そう言って、アキラは大袈裟に肩を竦める。


「従業員なら知ってるかもしれねぇけど、その従業員が犯人なんだもんな」
「結局、出口は自分達で探すしかないって事ね」

溜め息を吐き、上を見るリオ。
つられる様にアキラも上を見る。


「あと調べてないのは天井だけ、か」
「…全っ然先が見えないな」

光が差し込んでいる所為か、それとも天井がそれ程高い位置にあるのか上の方がどうなっているのか
目視出来ない。


「仕方ない。ここはバルチャイに見に行ってもら────」

腰のベルトに伸ばした手が止まる。
口を震わせるリオに徒〈ただ〉ならぬ何かを感じ、アキラはリオの前に屈み顔を覗き込む。


「…どうした?」
「無いっ…!バルチャイの、皆のボールが無いの!!」
「!?」

アキラはカッ、と目を見開くと近くに落ちていた自分のバッグを引き寄せ、外ポケットに手を突っ込んだ。
しかしその手は何も掴まずに静かに下ろされる。


「……チッ。ご丁寧に空のボールまで無くなってやがる」
「イベントっていうのは私達を一カ所に集める口実で、最初からポケモンを盗むのが狙いで…?」
「監禁だけならまだ許せるけど、よりによってポケモン泥棒かよ」
「いや、許さないでよ」

どこかズレた幼馴染の発言に突っ込む。


「…というか、どうするの!?皆の事は勿論心配だけど、私達、完全に脱出する方法を見失ったわよ!
 このままじゃ、中の空気が無くなって……」

リオはそれ以上言うのを止めた。アキラもまた、リオが言いたい事は分かっていた。

バルーンは気体を入れて膨らませる物だが、中の気体がずっと残るワケでは無い。
日にちが経つと中の気体が減るし、バルーンは段々しぼんで行く。

もし、その中に人が入っていたら──


「……遊園地にある物はシンボル的要素があるし、決められた時間に気体を入れているとは思うけどな」
「アキラはその時間って、」

言い終わる前に首を横に振られ、リオは俯く。


(色んな事が起こりすぎたせいかな。頭が痛い…息も、なんだか苦しい……)


目を開けているのも怠くなって、リオは目を閉じた──


その時。



「辻斬り!!」

凛とした声と何かを切り裂く音が鼓膜を貫き、リオは閉じた目を開いた。
音のした方向を見ると自分の真横の壁に、ぽっかり穴が空いていた。


「2人共無事!?」

そしてその穴から顔を覗かせたのは、数分前まで一緒だったアヤネだった。


「は、はい…」
「なんとか無事だよ、母さん」

アヤネの顔を見て、一気に不安だった気持ちが吹き飛んだ2人はぎこちなく笑った。
そんな2人をアヤネは力一杯抱き締める。


「良かった…本当に、良かった!」
「アヤネさん…」
「…お前も、助けてくれてサンキューな」

アキラは紫色の体毛と切れ長で大きな緑色の瞳を持つ、子猫の姿をしたポケモンを撫でる。
性悪ポケモンのチョロネコは喉を鳴らし、お返しにアキラの頬を舐める。


入り込む光と風、そして自分達を包む温もりに、リオとアキラは顔を見合わせ微笑んだ。

Re: ポケットモンスターBW 道標の灯火*参照2700突破感謝* ( No.92 )
日時: 2012/06/19 21:37
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: QpE/G9Cv)

 どうも、こちらでコメするのも久しぶりになります、白黒です。

 とりあえずまだ見ていないところをざっと見ましたけれど……リオ達、結構やばいことに巻き込まれてますね。

 個人的には、コマタナを使う少女が気になるところですね。プラズマ団の関係者なのか……なんにせよ、なんだか怖いです。

 そちらも忙しいでしょうが、これからも頑張ってください。

Re: ポケットモンスターBW 道標の灯火*参照2700突破感謝* ( No.93 )
日時: 2012/06/20 18:15
名前: 霧火 (ID: Gx2AelYh)

白黒さん

リオもアキラも性格は違えどお人好し、そしてポケモンが絡むと熱くなるタイプなので
必然的に色々な事に巻き込まれます。
これがもしリオの姉だったら「面倒くさい」と一蹴されて終わりそうですが(苦笑)

女の子については手持ちが悪タイプで外見が危ないコマタナなので、
性格の方もそれに合わせて冷たく、危険な感じにしました(なので「怖い」は褒め言葉です)。
コマタナ使いの女の子の詳細は、今後少しずつ明らかにしていきたいと思います。

はい、白黒さんも頑張って下さい。お互い頑張りましょう!

Re: 49章 夏…新たな出会い ( No.94 )
日時: 2018/02/13 18:58
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


「短時間でライモンシティを出る方法?」
「ああ。何でも良いんだ」

救出された2人は遊園地であった事をアヤネに説明した。
正直アヤネを巻き込むのは避けたかったが2人の──子供の頭で考えるのには限界があったため、
大人のアヤネの力も借りる事にした。

三人寄れば文殊の知恵、である。


「…そういう事なら、列車を利用したと考えた方が良さそうね」
「!そうか、その手があったか!」
「列車?」

アキラは合点がいったとばかりにパチン、と指を鳴らす。
話についていけず、疑問符を浮かべるリオにアヤネは人差し指を立てる。


「説明しますね。この街には【バトルサブウェイ】っていう、施設から乗り込める地下鉄があるの。
 その場所は名前の通り、バトルをする為の施設ですが、勝負を行う列車の中で1つだけ…
 用途が違う列車があるんです。


 それが──」



「えー…まもなく、カナワタウン行き列車が発車致します。ドアが閉まりますので、
 ご注「「その列車、待ったーー!!!」」Σい!?」

車掌がドアを閉めようとしたその時、物凄い勢いで子供が階段を駆け下りて来た──リオとアキラである。
2人は勢いを殺さず、野球選手顔負けの滑り込みで乗車に成功した。

※危険ですので絶対にマネをしないで下さい※


「滑り込みセーフ…ってか?」
「この列車を逃してたら、1時間近く待つ事になってたわね…」
「つーか、ほっぺに泥付いてんぞリオ」
「アキラこそ。おでこに思いっきり泥が付いてるわよ」

互いに頬や額に付いた泥を見て吹き出す。
倒れ込んだまま指差し合って笑う男女の姿は中々シュールである。
リオは内心、乗り込んだ車両に人が少なくて良かったと思った。


そんなリオの上に、1つの影が落ちた。


「女性がいつまでも床に寝そべってるなんて、はしたない」

嘆息して綺麗な手を差し伸べたのは青い髪と瞳、オレンジと黒を基調とした服を着た少年。
身長からして、リオより2〜3歳程年上だろうか。


「あ、ありがとう」
「礼には及ばないさ」

リオが手を乗せた事を確認すると、少年は引っ張ってリオを立たせた。
倒れない様にと背中を支える事も忘れない。
紳士的な対応をした少年に再度お礼を言うリオ。

その様子を見ていると、アキラの上にも1つ影が落ちた。


「立てるかい?」
「あ、すみませ……」

目の前にある手を取り、顔を上げたアキラに電流が走った。


「なぁに、気にする事は無いぞ少年」


そう言って力強く手を握り返したのは、額に汗を滲ませた山男だった──



 ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼



「まだかな……」

一刻も早く犯人に追い付きたいという気持ちが焦って、リオは頻りに外を眺める。
カナワタウンは鳥ポケモンに乗って来れない場所にあるため、移動手段はこの列車しかない。


(…頭では理解してるけど、こうしている間に犯人がもっと遠くに逃げちゃったら…)


ネガティブな考えが頭に浮かんでは消える。


一方、アキラは──


「少年はボクの名前知りたくないのか?」
「…特に興味ないっす」

額に汗を滲ませて顔を近付けて来る山男にギギギ、と首を捻って顔を逸らしていた。


「遠慮するな少年!名前を知る事から2人の仲は進展していくんだぞ!」
「……俺が進展を望むのは女性だけなんで」

力無く笑うアキラ。
しかし山男は拗ねた様にアキラの肩を叩く。


「ノリが悪いぞ少年!そこは普通、名前を聞く物だぞ!」


(………早く目的地に着けこの野郎!)


車掌のアナウンスが流れたのは、それから3分後。
リオとアキラが外を見ようと顔を挙げた時だった。


〔まもなくカナワタウン〜、カナワタウンです。ご降りの際は荷物のお忘れの無いよう、お願い致します〕


「アキラ!」
「…やっとか!!」

少し離れた所で俯いていたアキラに声を掛けると、アキラは嬉々とした表情で立ち上がり、
扉の前に居たリオの隣に並ぶ。

そして扉が開くと同時にリオ達は外へと飛び出した。


「何故あんなに慌てているんだ?(特に赤い髪の少年)」

扉から入る風が少年の青い髪を揺らす。
不思議そうに首を傾げていると、野太い声が後ろからした。


「少年待たせ……む?少年?少年は何処だ!?」
「…赤髪の彼なら金髪の女の子と一緒に降りましたよ」

ハンカチで手を拭いている山男から距離を取り、外を指差す。


「ぬぅ…!ボクがトイレに行っている間に…!!」
「………私も降りるとしよう」

悔しそうに唸っている山男に背を向け、少年は列車を降りた。


「今度会ったら、名前を聞くまで逃がさないぞ少年…!絶対にだ!!」

山男がこんな決心をしている事を、リオ達は知らない。



今回新たに登場した2人ですが、既に気付いている方も多いでしょうか?
はい、夏のライモンシティで色々な意味で有名なあの2人です。
「時期的に出るなー」と思ったので、勢いで出してしまいました。…山男、動かしやすいです(笑)

山男はかなりのギャグ要員なので、今作──BW2にも出る気がします(あくまで勘ですが)。
BW2を買って、まだライモンシティに着いていないので今から楽しみです。
…すみません、話が逸れました。

次回、遂に犯人とリオ達が対峙する…!?
それでは次回もお楽しみに!

Re: 50章 先の見えない線路 ( No.95 )
日時: 2018/02/13 19:00
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


カナワタウン。
カナワとは交差する鉄の輪の意であり、鉄道車両が整備されたり停泊したりする車両基地の街だ。

階段を上がると、まず一両の電車が視界に映った。
その電車を中心に線路が放射線状に伸びている。


「俺は向こうを捜す、リオは橋の上から犯人が居ないか確認してくれ!」
「うん!そっちはお願いね!」

アキラは頷くと民家がある方へと走って行った。
それを見送った後、リオは橋の上から辺りを見渡す。


「この車両はシングルトレイン!バトルサブウェイで最も古い車両で、イッシュ地方をぐるっと回る
 環状線なのです!」

その横で、作業員の男性が旅人に電車について説明している。


(犯人に繋がる手掛かりがあるかもしれない!)


リオは話に耳を傾けながら犯人を捜す。


「【シリンダーブリッジ】は知ってますか?あの橋を通っているのは、このシングルトレインなのです」
「ほぅ…」


(──って、終わりかい!!)


旅人は顎に手をやり、興味深そうに電車を見つめる。
逆にリオは思ったより早く終わってしまった話にガックリと肩を落とす。
そこに探索が終わったアキラが戻って来た。


「居たか?」
「ダメ、居ないわ。犯人に繋がる情報も無いし。…そっちは?」
「こっちもサッパリだ。駅員に確認したから、この街に居るのは間違いねぇんだが…」
「…アキラが犯人が映ったカメラを懐から出した時は流石にドン引きしたわ」

リオは顔を逸らしてボソリ、と呟く。

カナワタウンに着いて直ぐにリオは「捜している人が居る」と言って駅員に犯人の特徴を告げ、
ソレに当て嵌まる人物が乗車したか尋ねた。

ポケモンが盗まれた事は話さなかった。
公にすると騒ぎになるし、犯人に勘付かれて再び逃げられる可能性があるからだ。

しかし言葉で伝えるのは限界がある。現に駅員は難しい顔をして唸るばかりだった。
そこでアキラが懐から出したのはカメラだった。
中には犯人の姿が写っていて、カメラを見た駅員が犯人が乗った事を断言したので、
犯人がこの街に居る事を確信した。

アキラの機転が無かったら、進展は無かっただろう。
それは確かなのだが──


「あの短時間で、よくあれだけの枚数を撮れたわね。ご丁寧にアングルを変えた物からアップの物まで」
「いっ、良いだろ別に…人は見る方向によって印象が変わるんだし、色んな角度から撮っといた方が
 情報収集に役立つだろ?」

「…」

ジト目になるリオを早口で説得するアキラ。
実際に犯人を捜すのに役立っているが、アキラは気付いているのだろうか。
カメラで女性を撮ったのは事件が起きる前。つまり事件が起こらなかったら、
その理屈が覆されるという事を。

黙り込んだリオの髪を、アキラはぐしゃぐしゃと掻き乱す様に撫でる。


「あー!もうこの話は終わりにして捜索を再開するぞ!」


(……何か腑に落ちない)


乱れた髪を手で直しながらリオは視線を横にやる。


瞳に映ったのは電車と──


「…っ!」
「お、おいリオ!?」

言葉を発するより先に、リオは橋から飛び降りて車両に向かって走る。
幸か不幸か、人々は女性が奏でる笛の音色や物々交換に夢中で、リオが飛び降りた事に気付いていない。


「あの高さから飛び降りて、捻挫でもしたらどうすんだよ!…ったく!!」

アキラは悪態をついて階段を下りると、ホームから線路に降りる。


「ちょっと君!!」

駅員の止める言葉を無視し、アキラはリオを追って走る。



「昔っから……本当に危なっかしいじゃじゃ馬だな、アイツは!」



リオとアキラが半ば転がり込む形で車両に乗り込むと、全てのドアが一斉に閉まった。
乗客の安全を考えたゆっくりした閉まり方じゃない──障子を力任せに閉める様な、
そんな荒々しい閉まり方だ。


「な…何で急にドアが」

突然の事にアキラは周りを見渡す。


「好都合じゃない。これで向こうも逃げられないハズよ」

リオは臆する事なく口許に笑みを浮かべると、前を指差す。
その先には運転席があった。


一方…


「な…何がどうなってるんだ!?まだ車掌は乗っていないのに!」

外では突然閉まったドアに皆、驚いていた。
横に引っ張っても叩いても微動だにしないドアに駅員は焦燥する。

何か特殊な力が働いている──駅員が直感的に感じた、その時。


ガタン!


列車が大きく揺れた。
駅員がドアから手を離すと、列車が独りでに走り出した。
しかし、進行先にはリオ達が乗って来た列車が停車している。


「そ、そこの列車!止まりなさい!」

駅員がマイクで呼び掛ける。列車は速度を緩めるどころか、どんどん加速している。
ある者は目を瞑り、またある者は耳を塞ぎ、悲鳴を上げる。


(このままでは、間違いなくぶつかる…!)


この場に居る誰もがそう思った。
しかし列車はそんな彼等の考えを嘲笑うかの様に目の前の列車を回避した。


──ふわり。


浮いた、のだ。

大きな列車がまるで綿毛の様に宙に浮かび、列車を追い越した。
駅員の手からマイクが虚しく落ちる。
列車は小さくなり、やがて完全に見えなくなった。


あの列車は一体どこに行くのだろうか?

終点はあるのだろうか?

列車に乗り込んだ少年少女は大丈夫なのか?


それは、誰にも分からない……


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