二次創作小説(紙ほか)

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ろくきせ恋愛手帖 (祝☆完結!)
日時: 2024/07/16 22:34
名前: むう (ID: X4YiGJ8J)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode=view&no=18233

 「君に出会えてよかった」

 
 ********


 こんばんにちは、むうです!
 東方、鬼滅、花子くんにハマっている高1女子です。
 知ってるよーって方、いつも応援ありがとうございます。
 誰コイツって方、この機に是非名前を覚えて帰ってください。

 この小説は、六人の軌跡のスピンオフです。
 前作は参照のURLや、「完結小説図書館」にて読むことが出来ますよ。

 タイトルにもある通り、この小説はキャラ恋愛関係を始め、
 キャラの過去や裏話をぎゅっと集めた短編集になっています。


 また、話にはイメージ曲をつけているのもあります。
 私のおすすめの曲なので、聴いてもらえたら嬉しいです。

 あなたの推しの話が載るかも?
 楽しんで読んで頂けたらキャラも私も幸いです。
 では、短編集も完結までどうぞよろしくお願いいたします。



 〈作者からのお願い〉

「脱! 台本書き」目指して現在、セリフ量<場面描写の構成を頑張る日々。
 まだまだ普通の文章にはなかなかできず、台本のようになってしまうことがあります。
 ちょっと読みにくいかもしれません。すみません。
 温かい目で見ていただけると幸いです。


 〈注意〉

 ●スマホだと読みにくいかも
 ●ネタバレ入るかも
 ●オリキャラあり
 ●時々東方キャラ登場


 〈ルール〉

 ●拡散〇
 ●不定期更新
 ●中傷行為や荒らし、作品に対してのネット上での暴言×
 ●キャラの貸し出し〇(その場合コメント)
 ●また、ネット上での自作発言×
 ●リクエストなどはコメントにて
 



 上を読んで、OKな方はゆっくりしていってね!



 ▼むうの雑談掲示板もあるヨ。

「スレタイなんて知らないよ」

「【地縛少年花子くん】好きな人語ろ!」

 良かったらチェックしてみてね。

 
 ▼占いツクールでも執筆してるよ。

 よかったら『紅羽むう』で検索してみてね。
 評価してくれると嬉しいです。


 ▼2020年冬☆小説大会入賞!!

 ほんっとうに感謝です!
 ありがとうございました!
 受験受かりました!

 
  ーーーーーーーーーーーーーー

 【目次】♪→イメージ曲




 ◆◇企画コーナー◇◆

 キャラに○○してみる>>09>>53>>55>>78
 むうのおススメ本紹介>>13
 英語で鬼滅・花子くん!>>27
 ろくきせを知ったら知って欲しいもの>>96
 ろくきせ閲覧数10000突破記念>>118>>120>>121

 
 ◆◇むうの執筆裏話◆◇

 第1回「むうのリスタート」>>36
 第2回「遅くなりましたが受賞の言葉」>>34
 第3回「お知らせ! 必読お願い!」>>38
 第4回「むうと柱とカオ僕と」>>40
 第5回「花子くん考察と2話までの裏話」>>46
 第6回「第1回☆謝罪フェスティバル!!」>>58
 

 ◆◇オリキャラ設定集◇◆

 瀬戸山亜門>>31
 七不思議8番>>43
 

 ◆◇本編◇◆

 一気読み>>01-

☆1.トモダチ☆(by睦彦)

 ♪from Y to Y/初音ミク

 登場キャラクター紹介>>01
 時系列の図>>10
 Prologue>>02
 第1話「出会い」>>03-05
 第2話「嫌い。」>>06-08
 第3話「合同任務」>>11-12 >>14
 第4話「本当の気持ち」>>15-16
 第5話「早すぎる別れ」>>17

★2.踊り場の花子★(by花子隊)

♪春を告げる/Yama

 Prologue>>18
 第壱の怪「となりの怪異くん」>>19-21
 第弐の怪「……嘘でしょ!?」>>22-24
 第参の怪「黒札と白札」>>25-26
 第肆の怪「花子VS花子」>>28>>29>>32
 第伍の怪「月原八雲」>>35>>37>>39>>41-42


 ☆3.快晴☆(by有為)

 ♪快晴/orangestar

 登場キャラクター紹介>>80
 第1話「忌子」>>81>>82
 第2話「生きる意味」>>83>>84>>85
 第3話「懐古」>>86-89
 第4話「夜月家と宵宮家」>>90>>91>>92>>93>>94
 第5話「快晴」>>97

 
あとがき>>125
 
 
 

 
 
 

 
 2020.8.21 スレ立て、執筆開始
 2020.8.30 第1話執筆開始
 2020.9.01 第1話完結
 2020.9.02 第2話執筆開始
 2020.9.22 第2話完結
 2020.10.23 キメツ学園執筆開始
 2020.11.09 受験勉強のため更新停止予定。
 2020.02.13 ろくきせシリーズ一周年!! いえーい!
 2021.09.04 本編完結。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.15 )
日時: 2020/09/01 17:13
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 さて、この話から、本当に書きたかった部分を書ける!!
 作者、ファイト。

 ****************************


 俺のけむり玉の攻撃をきっかけに、紫苑戦が終わった。
 飴屋にいなかったという女の子の弟がどうなったのかは、分からない。
 ただ、生きている可能性がとても少ないことだけは言える。

 失っても、失っても、いずれ立ち上がらなきゃいけない。
 どんなに苦しくても、痛くても、時間は何事もなかったかのように通り過ぎていく。
 
 途中で誰かが叫んでても、泣いてても、かまわず世界は廻っていくんだ。
 だからあの女の子が、今は辛くても、いずれ笑って話せるようになることを祈っている。


 睦彦「はぁ。終わった………」
 仁乃「お疲れ様。このあとみんな用事ある? ないなら一緒に夕飯食べに行かない?」
 睦彦「いいな! 亜門は家にでも帰ってろ。俺は胡桃沢と行く」


 ちょっと意地悪だったか?
 でもこいつと同じ場所で、隣り合って同じものを食べると思うと複雑な気分になる。
 ……別に、食べたくない訳じゃないけど。


 睦彦「おい亜門、ごめんってば。俺が悪かったよ、だから黙り込むなってば」
 亜門「(ぐらっ)」
 睦彦「お、おい、大丈夫か!? どうした?」


 さっきからずっとだんまりを決め込んでいる亜門の態度に苛立って、俺は声を荒げる。
 と、亜門の体が横にぐらりと傾いた。
 とっさに両手で彼の体を受け止める。


 亜門は、苦しそうに肩で息をして、ぐったりと俺の腕の中で目を閉じてしまった。
 さっきまでは元気だったのに、どうして突然……。


 睦彦「だ、大丈夫か? 熱っ! 凄い熱だ……どうしよう」
 仁乃「瀬戸山くんの家の場所なら知ってる。ここからそう遠くないよ」
 睦彦「分かった。案内頼む」


 額に当てた手から、彼の熱が伝わってくる。
 俺は亜門をおんぶすると、胡桃沢を先頭に、亜門の家に向かって歩き始めた。


 
 『体が弱いから、医者にほどほどにしとけって言われてんだよ!』


 前に確か、自分でそう言ってた気がする。
 ほどほどにと念を押されるほど、身体が弱いのか。
 任務に行っただけでしんどくなってしまうのか。

 
 『世の中には、才能に恵まれてない奴もいるんだよ!』


 こう言うことか。
 お前がなんであんなことを叫んだのか、ちょっとわかった気がした。
 理解すると同時に、心の中に去来する罪悪感。


 亜門「う……うん……」
 睦彦「寝とけよ、熱高いんだから。言っとくが好きでやってるわけじゃないからな」


 嘘だ。今、俺は心の底から亜門をなんとかしてあげたいと思っている。
 なのに口から出た言葉は正反対で、思えば俺は彼に本音を言ったことがあっただろうか?

 情けない。本当に、カッコ悪い。
 自分が嫌になる。嫌われても仕方ないと、そう思ってしまう。



 亜門「…………刻羽」
 睦彦「なんだ?」
 亜門「どうしたら、お前みたいになれるのか、教えてほしい」


 亜門が俺を大嫌いだといった理由はつまり。
 彼は俺に憧れていたのだ。
 彼にとって、俺の存在は目標でありライバルで、実力のある人に見えたから疎ましく思った。
 
 だから、「お前は凄いな」という手紙をよこした。
 だから、どうやっても俺みたいになれないことを悔やんで俺を殴った。
 生まれつき弱い体でも、俺みたいになれることを願っていた。


 睦彦「俺は、どうやったらお前みたいになれるのか、教えてほしい」


 お前が俺になりたいと思うように、俺もお前になりたい。


 俺がお前にとって大きな存在でごめん。
 でも俺は、亜門みたいに丁寧に剣を振れないし、亜門みたいに体も弱くない。
 お前が何を考えていたのかもっと早く分かれば、無駄な時間を使わなくて済んだのに。
 
 もしお前と俺が同じ立場にあったら、最初から仲良くすることが出来たのかな。
 それとも、人生には谷が必要だよってことで済ませれば、全部よく思えたりするのだろうか。



 亜門「……お前は、僕みたいにならなくていいよ」
 睦彦「じゃあ言わせてもらうけど、お前も俺みたいにならなくていい」
 亜門「……ちょっと走っただけで熱が出る体なんか嫌だ」
 睦彦「俺も、雑で天邪鬼で虚勢張って目立ってる性格が嫌だ」


 睦彦「ああもう、話が平行線で進まねえ」
 仁乃「むっくんはむっくんで、瀬戸山くんは瀬戸山くん。これで完了でしょ」
 亜門「……そんな、あっさり……」


 仁乃「だって、ありのままの自分って、素敵じゃない? 例えば、むっくんの不意打ち苦手なところも、瀬戸山くんの直情径行も、見方を変えれば長所になるんだから」


 胡桃沢は、至極当たり前のような口調でそう言って、「ね?」とニッコリと笑った。
 俺が困った時、お前の言葉にいつも救われている。

 睦彦「いつもありがとな、胡桃沢」
 仁乃「友達だもん。お互い様でしょ。悲しみも嬉しみも分け合わなきゃ損だよ」
 睦彦「……あ、ああ、友達。友達な!」


 亜門「……なんで、そんなに挙動不審なんだよ……。分かりやすい奴だな」
 仁乃「ん? むっくんは友達のままの関係が嫌なの? え、ってことはむっくん、さては……」
 睦彦「ち・が・う!! 揃っておちょくるのはやめろ!!」


 前に、胡桃沢から亜門の話を聞いたとき、彼女はこう言った。
「瀬戸山くんは、むっくんが大好きだよ」と。
 その時は、なんでそんなことを感じたのかよく分からなかったけど、今は理解できる。


 だって、俺もこいつのことが好きだから。
 だから、俺はニッコリ笑って、俺なりの「大好き」を伝える。


 睦彦「………やっぱりお前は、嫌いだよ」





 ****************************


 〈有為side〉

 有為「けっこう、亜門さんと上手く言ってるじゃないですか。でも……ああ、なんですね」
 睦彦「ああ、亜門はもういないよ」


 睦彦くんは、何度、その言葉を飲み込んで理解したんだろう。
 すらすらと言葉を並べた彼をみて、ボクはつい泣きそうになってしまう。


 有為「……亜門さんは、睦彦くんにとってどんな存在だったんですか?」
 睦彦「お前、そりゃあ……大っ嫌いだよ。ずっとずっと、大っ嫌いな人だったよ」

 そう言う彼の表情はイキイキとしていて。
 彼と亜門さんの中では、「嫌い」という言葉こそがお互いを支え合うものだったんだなと思う。
 

 睦彦「もうそろそろ、この話も終わるけど、宵宮は続きが待ちきれないみたいだな」
 有為「茶化さないでください。いいところで話を終わらせるからいけないんだ」
 睦彦「まあまあ。分かった。……でも、いっこだけ俺と約束な」


 有為「なんでしょう?」
 睦彦「俺が話してる途中にもし泣いてしまったら、からかわないでくれよ」


 やっぱり、睦彦くんはずるい。
 そんなに寂しそうな顔で言われたら、断るなんてできるわけないじゃないか。


 有為「把握しました。涙で前が見えなくならないでくださいね」
 睦彦「フラグ立てるのやめろよオイ。よし、それからの話を始めるぞ」



 亜門さんの命日まで、話の中ではあと2日だ。

 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.16 )
日時: 2020/09/01 17:52
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 今日は頑張って第1話完結させよう。
 よし、全集中。

 ****************************


 亜門の熱は、あれからずっと下がらない。
 俺は時間がある限り、胡桃沢と足しげく彼の家にお見舞いに行った。
 そして今日も、俺は彼の家の一室で亜門と向かい合っている。


 亜門「なんだよ、また来たのかよ。風邪うつっても知らないからな」
 睦彦「俺今まで風邪ひいたことないんだ」
 亜門「……なんとかは風邪ひかないってな」
 
 おい、俺のことを今遠回しに馬鹿って言ったよな?
 悪かったな馬鹿で。そーだよ俺は馬鹿だよ!
 
 頭から布団を被った亜門の顔は、昨日よりも火照っていてかなりしんどそうだった。
 時折ゴホゴホとせき込んだりもした。
 食欲がないと言って、食事もとってないらしく、彼はだんだん痩せて来ていた。

 少し触っただけでも崩れそうなほど細い腕を見て、俺は急に怖くなった。
 親戚も母さんも、親父も兄ちゃんも、俺の周りの人はみんな俺を置いていく。
 
 睦彦「………いなくなったりとか、しないよな?」
 亜門「何言ってんだお前。お前に心配されるほどヤワじゃないよ」
 睦彦「………だ、だよな。なんか、ごめんな」

 でも、なんでだろう。さっきからずっと胸が痛いのはなんでだろう。
 早く良くなってほしいと思う。
 また胡桃沢を入れた三人で、一緒に仕事をしたいと思う。
 
 できるかな?
 あれ、なんで疑ってるんだ俺は。治ったらできるじゃんか。あれ、可笑しいな俺。


 亜門「ごめんな、刻羽。心配かけて」
 睦彦「ああいや、俺の方こそ、さっきも……その前も、お前に迷惑かけて、……ごめん」

 本当はずっとずっと謝りたかった。
 今までごめんって、仲良くしようって、たったその一言がどうしても言えなくて。
 
 相手には相手の事情があって、自分がどうこうできるわけじゃないけど。
 俺も自分勝手な理由で相手を傷つけてごめんって、ずっと伝えたかった。


 ああ、やっと……。
 一年もかかってしまうなんて、ほんとうに馬鹿だな、俺って。


 亜門「……僕もごめん。いきなり殴って。痛かっただろ? ……本当に悪かったよ」
 睦彦「ああ、すげー痛かったよ」
 亜門「……やっぱり」
 睦彦「だから、殴ってくれてありがとう」


 俺がお礼を言うとは思ってなかったのだろう。
 亜門がびっくりしたように顔を上げ、俺の顔をまじまじと見つめた。


 睦彦「だって、実際あのことがなければ、俺は一生お前と話さなかったと思うし」
 亜門「……ほんと、お前は嫌いだ」
 睦彦「知ってる」


 目をそらしてそう呟く。
 と、不意に肩に重い感触を感じる。
 慌てて顔を上げると、布団から這い上がった亜門が、俺の背中に腕を回していた。


 睦彦「おい、離れろよ。ちょっと、恥ずかしいんだけど」
 亜門「………っ」
 睦彦「ああもう、ほんとーに仕方ないなぁ!」


 何泣いてんだよ、馬鹿。

 めんどくさそうにそういうと、俺は亜門の長い髪に手を伸ばす。
 癖のないその髪を手で梳き、優しく彼の頭をなでる。


 睦彦「おーきなおやまのこうさぎは〜。なーぜにお目目が赤うござるー♪」
 亜門「音痴」
 睦彦「うるさい。 おやまのー木の実を食べたとてー♪ そーれでお目目が赤うござるー♪」


 小さいころ、この子守唄を歌いながら、母さんは俺をあやしていたらしい。
 俺は男だし、腕の中のこいつは赤ん坊でもなんでもないけど、この歌を歌おう。
 

 睦彦「ごめんな、亜門。そして、ありがとな。好きだよ」
 亜門「馬鹿やろ……僕も、本当は、お前の事、ずっと………っ」
 睦彦「知ってるよ」

 
 大きなお山の子ウサギより、目をはらした亜門が俺の背中に回した腕にさらに力を籠める。
 あったかいなと、ただそれだけを思った。


 俺は彼が泣き終わるまで、ずっと彼の頭をなで続けていた。
 泣き止むと、亜門は少し笑った。


 ****************************



 睦彦「じゃあ、そろそろ帰る。風邪、ちゃんと治せよ」
 亜門「ふん」


 和室のふすまに手をかけて振り返る。
 亜門は布団の中に入ったまま、視線も合わせずに鼻を鳴らした。


 可愛げのない奴だ。
 まあそれが、この瀬戸山亜門という人間なのだけど。
 
 俺たちは、ちゃんと友達になれただろうか。
 少し遠回りをしすぎたけれど、行きつくべき場所に辿り着けただろうか。
 それともまだ、道の途中なのかな。

 それでもいい。また、ゆっくりと進めばいい。
 また、今度会った時に、笑って話しかけよう。


 亜門「刻羽。ありがと」


 部屋から出る寸前、布団の中から聞こえた彼の言葉を反芻する。
 今日に限って「またな」がなかった理由を、俺はここで分かったら良かったのだろうか。
 分かったとして、その理由が正しいのかと、俺はちゃんと彼に聞けただろうか。


 睦彦「じゃあな、亜門。また明日」


 また明日。
 この言葉を聞いたとき、亜門は何を感じたんだろう。


 今日、彼が生きててくれる。
 それだけで、明日もきっと生きててくれると思ってしまうのは悪いことなのだろうか。
 明日、彼が生きている確証は、どこにもないのに。


 
 

 
 
 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.17 )
日時: 2020/09/01 18:45
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 亜門が死んだ。
 そう書かれた手紙を鴉から受け取った俺は、手紙をぐちゃぐちゃに破いて捨てた。
 そして、地面を思いっきり右足で踏んづけた。

 そうでもしないと気持ちが整理できそうもなくて、だからと言って何かできるわけでもなく。
 ただ、胸の中に大きな黒い靄が、ずっと巣食って一向に出てこなかった。


 また明日なんて、来なかった。
 彼と一緒に笑って話せる未来は、来なかった。
 望んでいた未来は、もうない。
 
 俺は甘えていた。俺は間違えてしまった。
 昨日生きていた人は、今日も生きているのだと勝手に思い込んでしまっていた。
 また、会えるんだと、そう信じ込んでしまっていた。


 睦彦「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな!!」


 何が友達だ、何がありがとうだ。何がヤワじゃないだ。
 結局こうなった。結局お前は俺の前から居なくなった。何が心配するなだ馬鹿。
 お前が死んでしまったら、残された俺はどうしろって言うんだ。


 葬式に行く前に食べた朝食も八割ほど戻してしまった。
 俺が今こうやって苦しんでるのも、泣きたいのも、後悔してるのも全部お前のせい。
 全部全部お前のせい。お前のせい。


 お前なんか、大っ嫌いだ。


 ****************************


 葬式会場の亜門の家で、お坊さんと一緒にお経を読み上げる。
 俺の隣に座る胡桃沢は終始泣いていて、俺は余計に自分が泣けないことが悪いと思った。

 納骨する時に、棺に入れられた亜門を見た。
 沢山の花に囲まれて、胸の前で手を組んだ彼はとてもきれいで。
 墓の中に入れられる場面でも、涙は一滴も流れなかった。


 仁乃「我慢してるの?」
 睦彦「別に」


 震える声で胡桃沢が問いかけて来たが、俺はなんてこともないような調子で言った。
 本当は、辛いし苦しいという言葉では到底表せないような複雑な気持ちだった。
 今すぐに心の中身を全部吐き出したかった。


 でも、出来なかった。
 代わりに、線香をあげるときに感極まって手が止まってしまう胡桃沢の右手を、そっと握った。
 

 亜門は今、空で俺のことを憶病だと思っているのだろうか。
 そう思われても別にしょうがない。
 泣けることなら全てを洗いざらいに流したいのに、なぜ。


 こんなことになるなら、お前になんか合わなければよかった。
 こんなことになるなら、永遠に嫌われたままで良かった。
 

 でも、あの時お前に抱き着かれて嬉しかった。
 お前と一緒に任務に行けてよかった。お前に殴られてよかった。
 お前の同期が俺で良かった。お前にとって大きな存在になれてよかった。

 
 ——お前の友達になれて、よかった。



 ……そう思うのに、なんで。
 いつもそうだ。俺は肝心な時に、本音を言えない。


 ただ、汗ばかりが体中から流れるばかりで。
 それでも葬式に参列した人たちは、そんな俺を見て何も言わなかった。
 

 
 ****************************


 全てのスケジュールが終わって、放心しながら瀬戸山家を胡桃沢と一緒に出る。
 正門の前で、人々を見送っている男の人と目が合う。
 確か彼は、亜門の育手だったはずだ。


 先生「君が、刻羽睦彦くんだね。ご参列頂きありがとう」
 睦彦「………どうも」


 一番苦しいだろうに、先生が俺に向けた笑顔はとっても優しかった。
 そんな彼にどんな態度を取ればいいのか分からず、俺はゆるゆると下を向く。

 彼女なりの励ましだろう。
 胡桃沢が、さっき俺がしたように、そっと俺の右手を握った。


 先生「あの子はもともと体が弱くてね。鬼殺隊に入隊するのは諦めなさいと言ったんだけどね」
 仁乃「……なんで、入隊を?」
 先生「頑張り屋さんだったし、負けん気も強かったからね」

 確かにと俺は思った。


 先生「選別の後、家に帰ってくるなり神妙な顔をするもんだから、どうしたのか聞いてみたら」
 睦彦「……すみません」
 先生「いいや、君は何も悪くない。ただ、亜門も悪いことをしたと思ったんだろう」

 先生「『どうしたら仲良くなれると思う?』って、私に何回も聞いて来たんだよ」
 睦彦「そんな、バカな」

 先生「本当だ。答えを教えなかったから、自分で模索して。そしたらある日、『やった!』って」
 睦彦「……喜んでました?」
 先生「うん。『友達になれた』って」


 ………友達になれた。
 やばい、ダメだ。抑えて来たものが零れそうになる。


 先生「あれからずっと、夕食のたんびに『刻羽が』『刻羽が』ってうるさくてね」
 仁乃「良かった……」
 先生「だから、刻羽くん。亜門と仲良くしてくれて、本当にありがとう」


 ………もう、ダメだった。抑えきれなかった。
 握られていない左手が震える。両目から熱い水滴が零れだす。


 亜門と、友達になることができたのに。
 友達だって、そんなに喜んでくれたというのに。
 昨日、やっと本音を言えたというのに。



 彼には、もう会えない。




 睦彦「…………うあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 仁乃「………ふっ。ふ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 
 涙が溢れて溢れて、一向に止まらない。視界がぼやけて、目の奥がちらつく。
 でも、心の中にいた黒い靄は、もういなかった。

 俺は亜門が好きだ。ずっとずっと、ずっと好きだ。大好きだ。
 また一緒に会いたかった。また一緒に笑いたかった。 
 また一緒に仕事して、また一緒に馬鹿話をして、また「刻羽」って呼んでほしかった。

 

 でも、もう「また」はない。



 だから、しっかりと、自分の記憶に焼き付けて置こう。
 そして彼の話を語るときのために、また彼のことを思い出そう。
 
 瀬戸山亜門って言う、バカで不愛想で自分勝手で直情径行な奴がいたって。
 そいつは、俺のことをずっと嫌いだったって。
 そう、笑って彼の話をしよう。


 だから今は、思いっきり泣かせてくれ。
 瀬戸山亜門、お前は俺にとって、大切な同期で、ライバルで、友達で、大っ嫌いな人間だよ。
 

 ☆第1話 END☆

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.18 )
日時: 2020/09/02 16:32
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 こんな噂、知ってますか?
 かもめ学園に伝わる【8番目】の怪異の話。

 美術室前のB階段、その反対側にある理科室前のA階段。
 そこに現れる花子さんの命令には、絶対に逆らってはいけません。

 もしも、逆らってしまったら………。
 階段の中に閉じ込められて、永遠に出られなくなるでしょう。
 そして、誰にも見つけられず、階段の中で一生を終えることになってしまうのです。

 

 ——こんな噂、知ってますか? 七不思議が8番目、「無限階段」。


 隠された七不思議8番目を知ると、不幸が訪れる。
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.19 )
日時: 2020/10/25 09:04
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 第2話突入でーす!
 花子くんファンの皆さん、大変お待たせしました!!

 ****************************

 〈寧々side〉


 今日は、夏休みだけど登校日で、私は朝から学園の教室に居る。
 授業と言っても、課題を出したり、夏休みの過ごし方を習ったりするだけのもの。
 だから午前中で授業は終わる。

 今日は有為ちゃんに大正時代へ転移させてもらえるすっごく嬉しい日。
 授業が終わったら超特急で女子トイレへ行って、花子くんや光くんたちと一緒に出発。
 ああ、考えただけでもワクワクする!!


 葵「寧々ちゃん! ニコニコしてるけど、どうしたの?」
 寧々「葵〜。今日、大正時代に行くの。葵も一緒に行かない?」
 葵「ほんと? 良かったら私も一緒に行きたいな」

 茜「アオちゃんが行くなら僕も行くよ!」
 寧々「え、でも1番のお仕事とかは……」
 茜「ミライとカコに任せておけば大丈夫!」


 そうそう、茜くんは七不思議1番なのよね。
 この前の無惨戦では、時間を止めたり大活躍で、葵もちょっとは見直したんじゃないかしら。
 だって、60点って言ってたし。

 
 
 キーンコーンカーンコーン


 寧々「あ、もうHRの時間! じゃあ二人とも先行ってて!」
 茜「八尋さんどこに行くの?」
 寧々「光くんと先輩たち誘ってくる」
 葵「行ってらっしゃーい〜」


 私は慌てて教室を出る。
 葵がのんびり笑って見送ってくれた。流石親友、頼りになる。


 そして頼りになる人はもう一人。
 渡り廊下を渡って、中等部の校舎に足を踏み入れる。
 昇降口横の階段を3階までのぼって、突き当りにある教室の扉をガラッと開けた。


 
 土籠先生「はいじゃあ、あとはHRして終わりだから、早めに準備してくださいねー」
 寧々「(ひょこっ)」
 光「(あ、先輩!)」


 扉から顔をのぞかせると、教室の後ろの方で友達と喋っていた光くんが即座に気づく。
 ちょっとはにかんで、嬉しそうに駆け寄ってくれる彼に、私もにっこりとほほ笑んだ。


 光「お久しぶりっす先輩。先輩から用事なんて、珍しいっすね!」
 寧々「えっと、今日大正時代に行くの。源センパイと一緒にどう?」
 光「そりゃあ行きますよ。楽しみですね!」

 光くん、待ちきれないと言うようにそわそわしてる。
 その様子が餌をまつ子犬みたいで、とってもかわいい。

 
 光「じゃあ放課後、トイレで待ち合わせしましょう」
 寧々「うん、分かったわ。花子くんにも伝えておくわね」


 廊下でひそひそと秘密の会話をする。
 話し終わると、私はまた中等部の校舎を出て、今度は高等部の生徒会室へダッシュ!


 先生「八尋さん、廊下は走らなーい!!」
 寧々「すみませええええええええんん!!」


 廊下を走って走って、ミサキ階段がある2階の美術室前のB階段の4段目を踏……まずに。
 私は突き当りの生徒会室まで一目散にかけた。
 よかった、何も起きなくて。また人形みたいにされたらと思うと怖い。


(ガラッ)


 メイ「じゃああとは、私資料まとめておきますねー」
 輝「よろしく。じゃあまた放課後。(ガラッ)。あ、八尋さん」


 キャッ、源センパイ今日もカッコイイっ!
 生徒会室でシジマさんと打ち合わせしていた先輩は、生徒会室を出ると私にイケメンスマイル。
 はぁ〜〜やっぱりイケメンね……。


 輝「どうしたの? 何か用? また7番にイジワルされたのかな」
 寧々「た、確かに毎回思わせぶりなことをされたり、からかわれてはいますけど…じゃなくて!」
 輝「おや、違うのか。いつでも成敗はできるからね(ニコッ)」


 寧々「えっと、大正時代に行くんです。一緒にどうですか?」
 輝「うん、今日は早めに仕事も終わったし、光と一緒に行けると思うよ」
 寧々「ホ、本当ですか? ありがとうございますっ」

 夢みたい、源センパイとまた一緒に大正時代に行けるなんて。
 みんな誤解してるかもしれないけれど、私の本命は花子くんじゃなくて先輩なんだから!


 (花子「大声で言われるとショックなんだケド……」)


 花子くんのこと、別に嫌いってわけじゃないわ。
 だけど、会うたびに「大根」って言ったり、からかったり、思わせぶりなことするし。
 身長は私よりちょっと低いし、あまりタイプじゃないし。


 (花子「タイプじゃないって、そんなきっぱり言わなくてもいいジャン……」)


 あくまで花子くんとの関係は助手! 光くんに関してもただの後輩。
 私が花子くんと縁を結んだのは、恋愛とはまったく違うことなんだから!
 ……あっちは、色々言ってるけど、私は花子くんのことなんとも……。




 花子『俺からのおまじない♪』




 寧々「あああああああああああああああああああああああっ!!! ///」



 いらないこと考えちゃった! だめ、あれはダメよ。
 あれはもうごみ箱に捨てる! あとあの告白の木も一緒に捨てる!!


 だって花子くんってばドSでスケベでエロでエッチで、まあちょっとカッコイイけど……。
 絶っっっっっっっっっ対にタイプじゃないんだからぁ!!
 私ったら何一人で赤くなってるのよ馬鹿……。

 もう、この話終わり!!
 もう時間もないし、とっとと七峰先輩の所に行って今日行けるか聞いてくるんだからね!!



 ネクスト→次は花子くんsideでーす。お楽しみに♪

 


 

 


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