二次創作小説(紙ほか)

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ろくきせ恋愛手帖 (祝☆完結!)
日時: 2024/07/16 22:34
名前: むう (ID: X4YiGJ8J)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3a/index.cgi?mode=view&no=18233

 「君に出会えてよかった」

 
 ********


 こんばんにちは、むうです!
 東方、鬼滅、花子くんにハマっている高1女子です。
 知ってるよーって方、いつも応援ありがとうございます。
 誰コイツって方、この機に是非名前を覚えて帰ってください。

 この小説は、六人の軌跡のスピンオフです。
 前作は参照のURLや、「完結小説図書館」にて読むことが出来ますよ。

 タイトルにもある通り、この小説はキャラ恋愛関係を始め、
 キャラの過去や裏話をぎゅっと集めた短編集になっています。


 また、話にはイメージ曲をつけているのもあります。
 私のおすすめの曲なので、聴いてもらえたら嬉しいです。

 あなたの推しの話が載るかも?
 楽しんで読んで頂けたらキャラも私も幸いです。
 では、短編集も完結までどうぞよろしくお願いいたします。



 〈作者からのお願い〉

「脱! 台本書き」目指して現在、セリフ量<場面描写の構成を頑張る日々。
 まだまだ普通の文章にはなかなかできず、台本のようになってしまうことがあります。
 ちょっと読みにくいかもしれません。すみません。
 温かい目で見ていただけると幸いです。


 〈注意〉

 ●スマホだと読みにくいかも
 ●ネタバレ入るかも
 ●オリキャラあり
 ●時々東方キャラ登場


 〈ルール〉

 ●拡散〇
 ●不定期更新
 ●中傷行為や荒らし、作品に対してのネット上での暴言×
 ●キャラの貸し出し〇(その場合コメント)
 ●また、ネット上での自作発言×
 ●リクエストなどはコメントにて
 



 上を読んで、OKな方はゆっくりしていってね!



 ▼むうの雑談掲示板もあるヨ。

「スレタイなんて知らないよ」

「【地縛少年花子くん】好きな人語ろ!」

 良かったらチェックしてみてね。

 
 ▼占いツクールでも執筆してるよ。

 よかったら『紅羽むう』で検索してみてね。
 評価してくれると嬉しいです。


 ▼2020年冬☆小説大会入賞!!

 ほんっとうに感謝です!
 ありがとうございました!
 受験受かりました!

 
  ーーーーーーーーーーーーーー

 【目次】♪→イメージ曲




 ◆◇企画コーナー◇◆

 キャラに○○してみる>>09>>53>>55>>78
 むうのおススメ本紹介>>13
 英語で鬼滅・花子くん!>>27
 ろくきせを知ったら知って欲しいもの>>96
 ろくきせ閲覧数10000突破記念>>118>>120>>121

 
 ◆◇むうの執筆裏話◆◇

 第1回「むうのリスタート」>>36
 第2回「遅くなりましたが受賞の言葉」>>34
 第3回「お知らせ! 必読お願い!」>>38
 第4回「むうと柱とカオ僕と」>>40
 第5回「花子くん考察と2話までの裏話」>>46
 第6回「第1回☆謝罪フェスティバル!!」>>58
 

 ◆◇オリキャラ設定集◇◆

 瀬戸山亜門>>31
 七不思議8番>>43
 

 ◆◇本編◇◆

 一気読み>>01-

☆1.トモダチ☆(by睦彦)

 ♪from Y to Y/初音ミク

 登場キャラクター紹介>>01
 時系列の図>>10
 Prologue>>02
 第1話「出会い」>>03-05
 第2話「嫌い。」>>06-08
 第3話「合同任務」>>11-12 >>14
 第4話「本当の気持ち」>>15-16
 第5話「早すぎる別れ」>>17

★2.踊り場の花子★(by花子隊)

♪春を告げる/Yama

 Prologue>>18
 第壱の怪「となりの怪異くん」>>19-21
 第弐の怪「……嘘でしょ!?」>>22-24
 第参の怪「黒札と白札」>>25-26
 第肆の怪「花子VS花子」>>28>>29>>32
 第伍の怪「月原八雲」>>35>>37>>39>>41-42


 ☆3.快晴☆(by有為)

 ♪快晴/orangestar

 登場キャラクター紹介>>80
 第1話「忌子」>>81>>82
 第2話「生きる意味」>>83>>84>>85
 第3話「懐古」>>86-89
 第4話「夜月家と宵宮家」>>90>>91>>92>>93>>94
 第5話「快晴」>>97

 
あとがき>>125
 
 
 

 
 
 

 
 2020.8.21 スレ立て、執筆開始
 2020.8.30 第1話執筆開始
 2020.9.01 第1話完結
 2020.9.02 第2話執筆開始
 2020.9.22 第2話完結
 2020.10.23 キメツ学園執筆開始
 2020.11.09 受験勉強のため更新停止予定。
 2020.02.13 ろくきせシリーズ一周年!! いえーい!
 2021.09.04 本編完結。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.1 )
日時: 2020/09/05 21:23
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 【第1話に登場するキャラクター】

()内は当時の年齢



 刻羽睦彦(こくばむつひこ)

 年齢:17歳(13歳) 光の呼吸/雷の呼吸

 高慢で目立ちたがり、自分にとことん正直の仁乃の同期。
 普通仁乃の話を持ち出されると顔が林檎になるほど仁乃の事が好き。
 
 


 胡桃沢仁乃(くるみざわにの)

 年齢:14歳(11歳) 四季の呼吸/血鬼術

 睦彦の同期で彼女。
 誰にでも優しく人当たりのいい性格で、睦彦をからかうことが趣味。
 体内に鬼の血が入っているが鬼化しない特殊体質。


 瀬戸山亜門(せとやまあもん)

 年齢:15歳(12歳) 水の呼吸

 睦彦の同期で、貧民街出身。
 剣術しか取り柄がないため、生まれつき高い能力を持っている睦彦が大嫌い。
 身体が弱く、風邪をこじらせて肺炎にかかり、不幸にも命を落とす。

 

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.2 )
日時: 2020/08/23 09:10
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 本編でちょこっと(過去シーンとコソコソ噂話だけ)しか出てこなかった亜門の話。
 もうちょっと膨らませたいなーと思って、第1話はこの話を書くことにしました。
 睦彦・仁乃・亜門のちょっと悲しいストーリー、どうぞお楽しみくださいませ。


 *******************



 【蝶屋敷】

 〈縁側〉


 夏の下旬。
 無惨戦が終わり、平和な時間もつかのま、いつもの慌ただしい生活が戻ってきていた。

 今日はこの屋敷には、今のところ俺とアオイさん、そして宵宮しかいない。
 炭治郎たちは全員任務があり朝早くから出かけているし、
 夏休みの間を縫ってこっちへ来る花子たちもまだ来ていないからだ。


 よって、俺こと刻羽睦彦は、特にすることのないまま廊下をぶらぶら歩いていた。
 と、縁側で宵宮が抹茶を飲んでいるのを見かけた。


 睦彦「宵宮!」
 有為「あ、睦彦くん。お疲れ様です」

 睦彦「お疲れ様ですって、俺なんもしてないけど」
 有為「じゃあ、お世話様です」
 睦彦「意味分かって言ってる?」
 有為「さあ?」


 敬語や一人称に対するわだかまりが治った彼女は、それでもまだ敬語が抜けないようだ。
 時々敬語になったりため口になったりするのが可愛らしいが、ただし可愛いのはそこだけだ。
 いや…顔もか。まあ、とにかく性格は言わずもがな。


 有為「今日は、静かですね、屋敷」
 睦彦「そうだな。今まで任務がなかった分が、今日に限って回ってきたって感じ」
 有為「睦彦くんは何か用事とかないんですか?」
 睦彦「ないなぁ」

 有為「……あの、どうですか、ボクの口調とか、おかしくないですか?」
 睦彦「なんで?」
 有為「……急に敬語抜けたりして、嫌われてたらどうしようと思って」


 こいつはいつもズバズバ自分の意見を言う癖に、いざとなると人の気持ちに敏感だ。
 まあある意味、極端に気を使いやすいのだろう。
 俺はそういうささやかな気遣いが得意ではないので、少し羨ましく思う。



 睦彦「あのさぁ。お前は嫌われてるかもとか思ってるけど、俺らが嫌っているはずないだろ」
 有為「……そう、なんでしょうか」
 睦彦「仮に、嫌ってたらこうやって話をしたりとかもないぜ」
 有為「……確かに」


 睦彦「だから、そんなに構えなくてもいいって。嫌われてないならいつも通りで」
 有為「なんか、睦彦くんらしいですね」
 睦彦「そうか? 自分じゃよくわかんないけど。嫌われる奴って大体決まってっからなぁ」



 有為「……嫌われたことがあるような口ぶりですね」
 睦彦「……まぁな。そいつのこと、俺も嫌ってたから、仲はめっちゃ悪かったけど」
 有為「……どんな方なんですか? 時々あったりとか、します?」


 
 睦彦「……もう、会えないよ。死んだんだ」




 あんなことになるなら、最初からしっかりと自分の気持ちを伝えとけばよかった。
 あの時の思い出が、今でもなお記憶から消えない。
 忘れるなと、人間の本能が訴えかけるように。




 有為「……すみません」
 睦彦「いいっていいって。じゃ、そうだな。お前も暇なら、話してやるよ」
 有為「上から目線ですね。もう、慣れましたけど」
 睦彦「ごめん。俺の悪癖だ。あいつも、俺のこういうところが嫌いだったんだろうな」


 有為「あなたが嫌じゃなければ、是非聞かせて下さい」
 睦彦「……了解。いいか、これは今から4年ほど前、俺が鬼殺隊に入隊した直後のことだ」



 記憶の片隅に入れていた、あの日の思い出をゆっくりと開いていく。
 今よりももっと初夏の緑が痛かったあの夏、俺はある少年に出会った。



 睦彦「話をしよう。俺がずっと嫌いだった人の話を」




 瀬戸山亜門。俺はコイツが嫌いだった。




 ネクスト→睦彦の過去の話、開幕! 次回もお楽しみに。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.3 )
日時: 2020/08/23 16:59
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


〈4年前 藤襲山〉

 四年前、鬼殺隊最終選別の会場、藤襲山にて。
 鬼殺隊に入隊する条件は、鬼の苦手な藤の花が生えていない山で7日生き延びること。
 幸い、師匠からの手厚い訓練のおかげで特にケガもなく、俺は山の鬼を一掃することができた。

 7日後俺は、精根尽き果て、汗をぬぐいながら山の神社へ階段を上った。
 実家が神社だからこんなのよゆーよゆー! …ではなく、やはり疲労のせいでかなり苦しい。
 肩で息をしながら神社に着く。


 黒髪「お帰りなさいませ」
 白髪「皆様は晴れて鬼殺隊に入隊されることになります。お疲れ様でした」


 抑揚のない声で、おかっぱの子供たちがそう告げ頭を下げる。
 選別が始まる前にあんなにいた人の数は、今や自分を含め3人しかいない。
 

 一人は、紫色の羽織を着、髪を二つ結びにした小柄な少女。
 お互い生き残ったら俺を「むっくん」と呼んでいいか、などと突飛な発言をした奴だ。
 確か名前は、胡桃沢仁乃。



 仁乃「お、キミも無事だったんだね。約束通り、これからはむっくんでいいよね」
 睦彦「勝手にしろ」



 もう一人は、俺と同じ位の身長の、肌の白い少年だった。
 俺より若干長い髪はサラサラで、黒の袴を着ている。
 

 睦彦「お前も今日から俺の同期だな。これからよろしくな。俺、刻羽睦彦」
 ??「……」
 睦彦「お前の名前は?」


 そいつはブスッとした表情で、モゴモゴと言った。
 何でそんなに不機嫌なのか、その理由はその時の自分にはわかるすべもなかった。


 亜門「瀬戸山亜門」
 睦彦「亜門か。歳は?」
 亜門「12」
 睦彦「一歳下か。よろしくな、亜門。これから一緒に頑張ろうぜ(手を差し出して)」


 あんなに沢山の人間が選別を受けたのに、俺たちしか生き残れなかった。
 彼らに俺たちが出来ることと言ったら、犠牲になった人の分まで戦うことだと思う。
 だからこの握手は、これから一緒に戦う仲間への信頼を籠めて。


 そう思って手を差し出した。




 バチッッ!



 亜門「………うるさいチビ」
 睦彦「………ッ」
 仁乃「ちょっと! 貴方何してるの!? 人の手を叩くなんて!!」


 睦彦「………おい。どういうことだよ! 俺が何かしたってのか!?」
 亜門「僕はお前とつるむ気はない。あっちへ行け」
 睦彦「なんだそれ!! お前何様だよ!?」


 亜門は何も言わずに、俺と距離を置いてチッと舌打ちをするだけだった。
 そういうわけで、初対面での俺と亜門の関係は、あまりよくなかった。

 いつか、仲良くなれる日が来るのだと思っていた。
 少なくとも今日一日、用事が全部終われば、親しく話しかけてくれると思っていた。


 でも、そんな淡い期待に添えるようなことは、一つとして起こらなかった。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.4 )
日時: 2020/08/24 16:34
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 続き行きまーす!
 話の都合上どうしても暗くなるのは許してね。
 

 ***************


 睦彦「(なんだコイツ……。俺の手を叩きやがって)」


 亜門の第一印象は、俺の中で最悪だった。
 空気の読めない自分勝手な奴。たった数分間で、彼の印象はそれで定着してしまっていた。
 

 睦彦「(そもそもお前と身長ほぼ変わんねえだろ。チビはお互い様だろうがクソッ)」


 イライラをこらえながら、俺はその後の隊服の採寸や鋼玉選びをした。
 そしてその間も亜門は、横目で俺をジッと睨んでいた。



 黒髪「それでは最後に、皆様には鎹鴉をつけさせていただきます」
 白髪「鎹鴉を通じて、皆様に任務の指令が届きます」



  カァァァァァァ——————!!


 睦・亜・仁「うわっ!」
 鎹鴉「カァ———!(睦彦の肩にとまって)」


 睦彦「えーーっと、かすがい、がらす?」
 鎹鴉「ケケケ」
 睦彦「けけけって……」


 仁乃「え、鴉? ……雀じゃない?」
 鎹雀「チュンチュン!!」
 仁乃「まぁ、可愛いからいいか。これ、名前はもうついてるの?」


 白髪「ついているものもいますがその鎹雀には名前はありません」
 黒髪「ご自由に付けていただいて結構でございます」

 仁乃「そっかぁ。君オス?」
 鎹雀「チュンチュン!」
 仁乃「じゃあ、豆みたいに小さいから、豆吉ね!」
 豆吉「チュンチュン! 仁乃、ヨロシクネ」


 亜門「チッ。おい鴉。お前の名前は何て言うんだ?」
 鎹鴉「ワシノ名前ハ金剛(こんごう)ジャ」
 亜門「………似合わねぇ、絶対それ強力の男の名前だろ」 
 金剛「ツツキマースゾ」


 そんなこんなで、無事選別後の用事が一通り終わった。
 あとは師匠の家へ帰って、受かったことを報告するだけか。



 睦彦「(先生、喜ぶだろうなぁ。頑張って良かったぁ…!)」


 しみじみと、先生の元で修業した日々のことを思い出していると。
 亜門がまたも俺をジッと見つめているのに気づく。
 何か言いたそうな雰囲気。



 睦彦「何だよ」
 亜門「………ちょっと面貸せ」

 
 仁乃「…………」



 胡桃沢が心配そうな目で一瞬俺を見たが、俺はその視線をサラッと受け流した。
 どうせ、大したことは起こらないと、そう思った。
 そして、その予測は結果的に大きく外れたのだ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・


 人目のつかない神社の裏へ連れ出して、亜門は俺を真正面から見つめて言った。


 
 亜門「お前なんか大っ嫌いだ」
 睦彦「………へ?」

 
 何を言われたのか、一瞬理解が追い付かなかった。
 今、何て言った? 嫌い? 俺のことが?

 初対面で何故そのように言われなければいけないのか分からず、目を見開く。
 亜門は鬱陶しそうに俺を斜めから睨んだ。

 亜門「僕には何のとりえもない。剣士になることだけが唯一の夢だ。それなのに」


 彼は顔をしかめて、言いにくそうに無理やり口の奥から言葉を絞り出した。


 亜門「最終選別で、鬼は皆お前が倒しちゃったじゃないか」
 睦彦「…………お前が倒せないのが悪いだろ」


 ……そんな彼に、俺はたいして何も考えずにそう言ってしまった。
 鬼を倒すのが条件で、それが分かっているのに倒せなかったなら、お前の努力が足りてない。
 そう言うことだろ、と念を押すように俺もまた亜門を睨む。


 俺の言葉を受けて、亜門の表情に衝撃が走った。
 彼の手が俺の肩に伸び、あっと思った時には、俺の腹めがけて彼の細い足が伸びていた。

 
 亜門「……世の中には、才能に恵まれてない奴もいるんだよ!! それなのにお前は!!」


  〜ガツッ〜


 対して対策もしなかった俺は、あっけなく自分の腹を思いっきり彼の足で蹴られる。
 焼けるような痛みを感じ、受け身も取れないまま俺は砂利の地面に倒れこんだ。


 睦彦「う゛っ!」
 亜門「この害悪! 害っっ悪!! 害悪!!(ガツッ ガツッ ガツッッ)」



 彼が、なぜそんなに俺を嫌っているのか分からなかった。
 なぜいきなり俺を攻撃するのか分からなかった。
 
 睦彦「う゛っ あ゛っ、ぐっ」
 亜門「お前なんか大っ嫌いだ! お前なんか嫌いだ!!」



 脚を俺めがけて振り下ろす亜門は、泣いているように見えた。
 何かを必死で我慢するように、その口元はきつく結ばれていた。


 睦彦「俺も、お前なんか嫌いだ!! 当たり前だ、いきなり殴ってくる相手を好きになれるか!」
 亜門「黙れッッ(ガツッッッ)」
 睦彦「う゛ッ!!」


 一方的に痛めつけれたこと、それ以上の侮辱はなかった。
 殴られ、痛みに耐えながら、俺は頭の中で必死に考えた。

 何が悪かった? 何が許せなかった? どうしたら好かれる? どうしたら変わる?
 どうしてお前はそんなに泣きそうなんだよ。
 どうしてお前は俺に執着するんだよ。上手い奴ならもっといっぱいいるだろうが。
 お前は俺を殴ってどうしたいんだ?
 この場限りの鬱憤を晴らすために俺を殴るなら、お前も鬼だ。鬼だお前は鬼だ。


 お前なんか嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い、大っ嫌いだ!!



 亜門「じゃあな。ド三流」
 睦彦「お前なんか大っ嫌いだぁぁぁぁぁ!! 何なんだよお前ぇぇぇぇぇぇ゛ぇぇ!!」


 言葉とは裏腹に、両目から熱い水滴がこぼれ落ちた。
 ……最悪だ。生き延びれたのに、勝ったのに、それがこんなことで最悪な日になるなんて。


 痛みに顔をしかめながら起き上がる。
 親父の形見の巫女装束はよれよれになっていて、腕にも顔紙も足にも擦り傷が出来ている。
 ……しごく、ダサい。


 仁乃「むっくん! 姿が見えないから来てみれば、どうしたのその傷!!」
 睦彦「胡桃沢……」
 仁乃「何があったの!? 誰にやられたの!?」
 睦彦「………」


 仁乃「………教えて。何があったの」


 駆けつけてきた胡桃沢の真剣な様子に、俺はしぶしぶ事の顛末を説明した。
 亜門が俺を連れ出すなり、自分のことを嫌いと言った挙句、俺を殴ったと。
 そう伝えた。


 仁乃「………あの人、一体どういうつもりなの。嫌いだからって、そんなこと……」
 睦彦「……気持ちはわかるけど、あまり検索はしないでやってくれ」
 仁乃「でも、むっくんはあの人に」
 睦彦「……俺のせいだから。な、お願い」




 仁乃「………分かった。また何かあったら、ちゃんと言うんだよ」


 全部俺が悪いってんだろ、亜門。
 仕方ないよな。わがままで虚勢張って目立ってる奴なんか、ウザったらしくて当然だ。
 それにお前は俺と比べてしまったんだろ。
 仕方ないよ、俺が自分にうぬぼれてたから、腹が立ったんだろ。



 ………もう、帰ろう。
 本当は分かっていたんだ。
 鬼殺隊はアレでも一部の組織なんだから、人間関係だってちゃんとある。
 自分を好ましく思う人と思わない人がいる。
 そんな常識的なことを、俺が分からなかった。それだけのことだ。



 睦彦「……………大変だな」



 もう帰って寝よう。
 帰って、先生に沢山褒めてもらって、今日の悲しいことは嬉しいことで上書きしよう。
 それがいい。


 何かあったと聞かれても、「何もない」ってそういえばいい。
 だから、今日一日はせめて、楽しいことが悲しいことより多くありますように。



 ネクスト→先生の家に帰った睦彦。次回もお楽しみに。



 



 
 


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