社会問題小説・評論板
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- はりぼて王国の女王様。
- 日時: 2017/08/16 01:42
- 名前: 小麦 (ID: Uk0b6ssr)
私立黎明女子学園。——屈指のお嬢様学園。
選りすぐりのお嬢様達が通う、正に白亜の宮殿のような学園。
しかしその中にも、やはり『格差』が有った。
私、——伊集院小瑠璃こそがそのピラミッドの頂点。
容姿端麗、文武両道、大企業伊集院グループ会長の一人娘。
私はこの宮殿の女王様。
下級生は勿論、同級生、上級生も私には敬語を使う。
私の命令は絶対。逆らうなんて絶対に有り得ない。
—こんなに完璧な私も、ストレスは溜まる。
高貴な家柄だから、作法には気をつけなくてはならない。
屋敷内の乱れた言葉はけして許されない。
常に文武ともに学園のトップでなければならない——。
そのストレスを発散するには人間を甚振るのが一番。
逆らう生意気な小娘は、私が自らの手で『制裁』する。—学園の掟。
小娘は私たちの格好の玩具になって、壊れて果てる。
だって私は女王様、周りの小娘はすべて奴隷なんだから。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.20 )
- 日時: 2015/01/03 18:24
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
私は頬を手で覆った。だけれど赤色の液は手の隙間を通り、ぽたぽたと床を汚した。後から痛みがずきずきと襲ってくる。耐え切れず、私は蹲った。
「…あはっ」
紫乃の笑い声が聞こえた。
「あは、あははははははははっ!ざまぁ見ろぉぉぉ!きゃはははっ!」
紫乃は狂ったように笑い出す。
「しっ紫乃さん…っ?」
「ざまぁ見ろっ、ざまぁ見ろっ、ざまぁ見ろぉぉぉ!!死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえっ!!あんたも、あんたもねっ、私の苦しみをぉ、味わえば良いのよぉ!!ほら、死ね、死ねええぇぇ!あはははははははは!」
紫乃はそう早口で言ったあと、私にまたカッターを振りかざした。
「清華よりっ…清華よりもっと酷くしてあげるからあぁぁ!!」
「止めなさいっ!!」
黒服の男が紫乃の両腕を掴む。
「…え」
紫乃はカッターナイフを落とす。そして周りを見回す。—紫乃は黒服の男に囲まれていた。
「…嘘、何なのよ…これ」
紫乃は手首を動かそうとしたが、男の屈強な腕には敵わない。
せめてもと脚をばたつかせるが、もはや意味のない事だった。
「嫌あぁぁぁっ!!何なのよぉっ!あなた誰っ!?」
「小瑠璃お嬢様のボディーガードのような者です」
「…はぁッ?なんで…なんでこんな所にそんなのが居るのよぉ!」
「小瑠璃様にはブザーのような物をお持ちになってもらっておりまして。小瑠璃様に危険が及んだ場合、そのブザーが押されれば私どもが1分以内に駆けつけるということになっております」
「え…は…どういう事よ…?私をどうするつもりなのよぉ!」
「警察に引渡します」
「え…」
「お嬢様の伊集院グループは警察上層部にもつながりが御座いまして。あなたは友人を切りつけ、小瑠璃様も傷つけたとして警察に引き渡すのです」
「え…ちょっと嫌!やめて!放して!放してよぉぉぉぉぉ!」
紫乃は叫びながら、黒服の男たちに連れ去られていった。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.21 )
- 日時: 2015/01/03 21:01
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
『中学生女子 友人切りつけ 一人重体』
『友人殺害女子中学生 重度の麻薬依存症』
『クラスメイト殺害少女 心の闇』
「ほんっと…マスコミって馬鹿しかいないわねぇ」
私は見ていた雑誌をゴミ箱に放り投げる。
「でも小瑠璃様、あんなボディーガードが居るなんて本当に凄いですねぇ」
「えぇ私もびっくりしちゃいましたよ、もう、危機一髪って感じでしたね」
可憐と美鈴は口々に言う。
—お父様が付けてくださったボディーガード。私はいらない、無駄だ、やりすぎだといつも言っていたが、案外役に立つ物だ。
「それにしても小瑠璃様」可憐が私に声をかける。
「紫乃は少年院入りが決まって—清華は全治3ヶ月で入院中。玩具をまた決めなきゃいけないんじゃないですか?」
「もう決めてるのよ」
可憐と美鈴がぴくりと肩を跳ねさせる。
「今回の玩具は、二人よ」
可憐と美鈴が期待に口元を緩め、身を乗り出す。
私はすぅと息を吸い、地獄に落ちる、その二人の名前を告げる。
「西条可憐と、白柳美鈴」
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.22 )
- 日時: 2015/01/03 23:29
- 名前: 藍里四季 ◆wcVYJeVNy. (ID: bAE3NR8r)
えっ!?
嘘!?
可憐ちゃんと美鈴ちゃんって、小瑠璃ちゃんの友達だったんじゃ……?
急展開ですね!
続きが楽しみです(´∀`*)
風邪が流行っているようですが、体調にはお気を付けてくださいね。
それでは、また。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.23 )
- 日時: 2015/01/05 09:56
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
「…は?」
可憐が声を漏らし、ぶるぶると肩を震わせる、
「…ど…ういう…事ですか、小瑠璃…様」
美鈴は涙声でそう言い、私を涙の溜まった目で睨む。
「言ったままよ。今回の玩具はあなた達」
民衆はざわざわと騒ぎ始め、ただ呆然と立ち尽くしている可憐と美鈴に鋭い視線を向ける。それは紛れもなく、恨みのこもった目線。
「なっ…何でっ!わたっ…私達、何かしましたかっ!?」
可憐が耳を劈くような声で叫び、机をばんと両手で叩く。
「家柄も財産も大したことないくせに、私に代わって勝手に『玩具遊び』に参加して…本当に酷いことを玩具の皆さんにしたじゃない、償うべきよ」
「は…あッ!?」
「無駄口を叩くのはそれぐらいにして。皆さん、新しい玩具は可憐と美鈴。今回はたくさん痛めつけてくれた人間に、褒美をあげるわ」
「例えば…これとか」
私は指に嵌めていたピンクダイヤモンドの指輪を外し、見せつける。民衆は騒ぎに騒ぎ、目を輝かせる。私にとっては特に価値のない物だが、下衆にとってはかなりの物だ。民衆のうちの何人かは可憐と美鈴にゴミ屑を投げたり、蹴りを入れたり、罵声を浴びせたりしてさっそくアピールに入る。
可憐と美鈴はそのたびに逆上し、怒声を上げるが、もうその声に意味も価値も効力ももはや無い。
私はそれをただ、薄笑いを浮かべて、見物するだけだ。
- Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.24 )
- 日時: 2015/01/12 02:00
- 名前: 小麦 (ID: SEcNJIKa)
下校時刻。
民衆は飽き足らず美鈴と可憐を集団で虐めている。
殴る蹴るでは飽き足らず、二人のカバンに落書きをし始めた連中を尻目に、また何時ものように民衆の視線を一身に浴びながら帰宅し、自室に入った。
ふと辺りを見渡す。と、自室の花瓶に挿されたカーネーションが萎れているのが見えた。使用人が交換するのを忘れていたらしい。
中庭にいくらかの花が咲いていたと思うので、花瓶を片手に中庭に入る。と、そこに——…夜船 月乃が、一人突っ立っていた。
「何?あなた。何でこんなとこに居るのかしら」
「…この中庭の手入れを、と思いまして」
「はぁ?…ああ、この中庭は、あなたの母親が管理してるんだっけね」
「ええ。一応お嬢様のお父様にも許可を得ております」
「花が萎れてたの。あなた花好きだったわよね?いい花、紹介して」
「一応まぁ…ここの花の事は全て熟知しております」
そう言って月乃は花の紹介を始めた。
「これはアカネグサ。英訳するとブラッドルート、直訳すると血の根。…何故こんな名前が付いたのかと言いますと、根から赤い汁が採れるからなのです。北東アメリカに自生していることが多いです」
「これはイヌサフラン。欧州とニュージーランドでは珍しくない花です。名前にサフランと付きますが、…サフランとは全くの別物です」
「聞いたことない花が多いわね」
「…そうですか、私はこの…レンゲツツジとか、好きですよ」
「…いまいち気に入らないわ。やめにする。有り難う、為にはなったわ」
歩き出した私に、月乃は最後に吐き捨てるように言った。
「この中庭、死んだ母が私に譲ってくれたものなんですよ」
「…へぇ」そういえばこいつの母親は数年前、病死していたっけ。
「母が、最期に、最期に…私に、譲ってくださったんですよ」
「…ああ、そう」
「そろそろ使いどきだと思うんです」
「…は?」
「…本当に、何もわからないんですね。ヒントもあげたのに」
「…さっきから何を言いたいのか理解しがたいのだけれど」
「何でもありません。では、お嬢様」
月乃はゆっくりとお辞儀をした。顔にうすら笑いを浮かべて。
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