社会問題小説・評論板

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はりぼて王国の女王様。
日時: 2017/08/16 01:42
名前: 小麦 (ID: Uk0b6ssr)





私立黎明女子学園。——屈指のお嬢様学園。
選りすぐりのお嬢様達が通う、正に白亜の宮殿のような学園。
しかしその中にも、やはり『格差』が有った。

私、——伊集院小瑠璃こそがそのピラミッドの頂点。
容姿端麗、文武両道、大企業伊集院グループ会長の一人娘。

私はこの宮殿の女王様。
下級生は勿論、同級生、上級生も私には敬語を使う。
私の命令は絶対。逆らうなんて絶対に有り得ない。

—こんなに完璧な私も、ストレスは溜まる。
高貴な家柄だから、作法には気をつけなくてはならない。
屋敷内の乱れた言葉はけして許されない。
常に文武ともに学園のトップでなければならない——。

そのストレスを発散するには人間を甚振るのが一番。
逆らう生意気な小娘は、私が自らの手で『制裁』する。—学園の掟。
小娘は私たちの格好の玩具になって、壊れて果てる。

だって私は女王様、周りの小娘はすべて奴隷なんだから。

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.55 )
日時: 2015/08/15 15:51
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

一時間目が始まっても、騒がしさは止まなかった。
幸いな事に自習時間なので、それを注意する輩も居なかったのだ。
話題はもちろんあの投票のことだ。
自習とはいっても授業中なので小声で喋ってはいるが、小声でもそれが大量に集まるとざわめきにもなり得る。
娘共のざわめきの声には、心配と期待が入り混じっていた。
期待。…自分達が始めて直接、制裁を下せるという事。
それが下層カーストの連中にとっては、たまらなく嬉しいのだろう。
訳もない。今まであいつらに出来る事といったら小瑠璃に決められた玩具を殴る蹴るするか、目当ての人間の粗探しをして、小瑠璃になにとぞとぺこぺこ頭を下げて玩具にしてもらう事ぐらいしか許されていなかったのだ。下手にでしゃばると告発され、自分が玩具に堕とされてしまう。

そんな下層カーストの立場が一遍したのだ。
上手くいけば、自分達も小瑠璃のように玩具を決定できる。
今まで見上げる事しか出来なかったカースト上位層を思う存分に虐げられる。
そして今までの恨み嫉みを思いっきりぶつけてやれるのだ。

下層カーストの連中とも交友が広い美鈴は、何やら下衆と話し込んでいた。
ちらりと目をむけ、こっそりと耳を傾ける。

「ねぇ美鈴ちゃん、もう投票する人決めた?」
「ううん決まってないのー。」
「ね。いきなり投票って言われてもさあ、無理だよね、いきなりぃ」
「…でもさぁ、私達が協力すればさぁ、なんてゆーか…上の人達をさ、…投票で、玩具、に、…出来る、って、ことだよね」

グループの間で沈黙が続く。
ほんの数秒だけれど重みのある沈黙だった。

「…もうやだ怖いこと言わないでよぉ!きゃはは」
「チョー怖かった今のー。冗談でもやめてってばぁ」

「…冗談じゃ、ないよ」
「…え?」
その声の冷たさに、私も少しどきりとした。
「…私は、私は本気で言ってるんだよ。ほら、いつも私達ってさ、玩具に回されることが多いじゃん?まぁこの間のとか…上の、人たちも、回されるけど、…たまに、じゃん?その点私達は玩具にされるリスクがかなり高く、おちおち歩いているだけで目をつけられたりしたけど…だけど今は違うんだよ」
「かっ、かなめ?どうしたの、急、に…」
「この学校の…カースト、って言えばいいのかな?そのカーストって大体ピラミッド状じゃない?頂点が小瑠璃…様、で、その一つ下はその取り巻きとかいろいろ…それで下のカーストに行くほど多くなってる。」
「…あ」
「気付いた?そう、今回の投票ではそれが多くの意味を持つんだよ。今回一番権力を持っているのは…私達、なんだよ」


Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.56 )
日時: 2015/08/18 10:33
名前: 哀霧 (ID: J1W6A8bP)

どうも、続きが気になって仕方無くてまた来てしまいました。

玩具決めの投票、ですか・・・

下層カーストさん達はどうするんでしょうね・・・

堕ちるのは可憐?美玲?

それとも小瑠璃?

それ以外?

相変わらず続きを気にさせる終わり方ですね・・・

また来ますね。

しつこくてごめんなさい。

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.57 )
日時: 2015/08/18 23:26
名前: みなみ (ID: l8Wvg9Qa)

すっごく続きが気になります。
本当凄いですね。他の人達とは一味違う書き方で読み手を引き込んでいて…すごく、読み入ってしまいます。
更新、頑張って下さいね!

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.58 )
日時: 2015/08/23 16:53
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

「…じゃっじゃあさ」
沈黙の中、口を開いたのは、私が昨日こっそり痛めつけたあの女だった。
まさかこのクラスだったとは。もう7月だというのに、未だに下層カーストの連中の名前と顔は一致しない。
「こ…り…小瑠璃、…さま、を堕とす…投票で、一番にする…私達で、協力、して…って言うのも、出来るってこと?」
「出来るよ」
場の空気が固まる。
「だけどそれは賢明な策じゃない」
さっきから黙り込んでいた美鈴はゆっくりと顔を上げた。
「どういう、…事?」
「仮に小瑠璃…様、を私達でどうにか協力して、投票一位に仕立て上げたとして…どうせ、この投票は破棄されて、いろいろとやってた事が突き止められて、まとめて玩具みたいに痛めつけられてカーストの違いを見せ付けられる、それだけ」
「…確かに、これ、自分の名前も書く、んだっけね」
「たぶん小瑠、小瑠璃様…は、私達の中から危険因子を探し出そうともしているんだと思う。でもメインの目的はそれじゃない」
「そっその、メインの目的って言うのは?」
美鈴が柄にもなく身を乗り出す。
「私達…下層カーストの票を操るための、上位の人たちによる、心理戦を巻き起こすため、…なんじゃないかって」

ほう。

私は思わず感心した。
下層カーストの癖に、先読みが出来るじゃないか。
正直、私も同じ考えを持っていた。
この投票で狙われるのは間違いなく私達…上層カーストの生徒。
玩具になるのを防ぐためにも、どうにかしてもっとも強い下層カーストの浮遊票を操り、自分から矛先を背けたい。

これからは上の人間達による、下の連中へのご機嫌取りが始まるだろう。
さて、私はどうするか、だが。

正直、何も考えていないというのが本音だった。

Re: はりぼて王国の女王様。 ( No.59 )
日時: 2015/08/24 12:35
名前: 小麦 (ID: lkF9UhzL)

チャイムが鳴り、することも無いので西廊下へ歩く。
すると背後から肩を叩かれた。振り向くとそこに居たのは—甘露寺香澄。
「可憐ちゃぁん?今授業終わったとこぉ?話があるんだけどぉ、いいなかぁ?」
ねっとりとした鬱陶しい甘い声。しかし断る理由も無いので、とりあえず話を聞いてやることにしよう。私がゆっくりと頷いた。
「ほんとぉ?いいのぉ?ここじゃ人目があるからぁ…んー、あぁ、東廊下!東廊下にまで行ったら人はいないよねぇ、いっつも人が集まってる西廊下とは正反対の方向だしぃ…じゃあ行こう可憐ちゃん?」

私達二人は歩き始める。
東のほうに歩みを進めるとともに、人気は無くなって来る。小瑠璃の影響力を目の当りにしたような気がした。

そして東廊下に着く。
「あのねぇ…話ってゆーのはぁ、ね?…投票、についてなんだけど」
やっぱりそうか。
「…何?手を組もう、とかいう話じゃないわよね?」
「あはは違う違うー!んー、でも言い方を換えれば…そうなるかなぁ?どうだろぉ?でもまぁこの方法をもってすれば、今回の投票で玩具になることを確実、うんうん確実に回避できちゃうんだよぉ」
ごくりと唾を飲む。そんな秘策があるのか?たった2人が手を組むだけで。
「今回一番の要となるのはぁ、やっぱり下層階級?って言っちゃっていいかなあ?まあそんな感じの人たちだよねぇ。なんてゆーかうちの学校カーストっぽいアレがあるじゃぁん?それがピラミッド状になってて。下に行くほど人数が多くなってぇ…ってことは下の人たちの票をどうにかして…獲得?いや、獲得しちゃだめか…あ、操ればいいんだよねぇ」
「…」
「下の人達の票は上の私達に集中するに決まってる」
「…」
「囮を使うんだよぉ」
「…おとり?」
「そう。囮。矛先を私達じゃなくて他の人に向けるんだよぉ」
「誰を、囮…にするって言うのよ」



「お前だよ、西条可憐」


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